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PXB Research Memo(3):新鮮ヒト肝細胞PXB-cells関連製品の販売、受託試験サービスを展開

配信元:フィスコ
投稿:2024/08/20 15:33
*15:33JST PXB Research Memo(3):新鮮ヒト肝細胞PXB-cells関連製品の販売、受託試験サービスを展開 ■事業概要

1. 事業概要
フェニックスバイオ<6190>の創薬支援サービスは、独自開発した高品質なヒト肝細胞キメラマウスであるPXBマウスの販売、PXBマウスから採取した新鮮ヒト肝細胞PXB-cells関連製品の販売、及び新薬評価の受託試験サービス(薬効評価、安全性評価等)を展開している。受託試験サービスは同社の受託試験部門で行うほか、業務提携した外部CRO(受託試験実施機関)を活用している。

同社は世界の大手製薬企業が研究開発拠点を置く北米市場を中心に事業展開している。同社の顧客の約8割は海外の製薬企業・研究機関等(2024年3月期の顧客別売上高構成比は海外製薬企業が78.2%、海外その他が4.4%、国内製薬企業が6.2%、国内大学・研究機関等が11.5%)となっている。グループ各社の事業分担としては、同社はPXBマウス事業に係る研究開発、PXBマウス及びPXB-cells関連製品の生産・販売及び受託試験サービス等、連結子会社のPhoenixBio USA Corporationは北米市場を中心とする海外での受託サービスの提供、KMT Hepatech, Inc.は北米市場向けのPXBマウス及びPXB-cells関連製品の生産、CMHL Consortium LLCは製薬企業・研究機関等との共同研究等を行っている。

2. 特徴・強みと主要製品
キメラは同一の個体内に異なる遺伝子情報を持つ個体のことである。ヒト肝細胞キメラマウスは肝臓の一部がヒト肝細胞に置換されたマウスのことで、ヒトの肝細胞を実験動物(ホスト動物)であるマウスに移植して生産する。同社のヒト肝細胞キメラマウス(製品名:PXBマウス)の生産工程は、免疫不全のSCIDマウスと肝障害のcDNA-uPAマウスを交配したcDNA-uPA/SCIDマウスにヒト肝細胞を移植する。そして移植後おおむね11週目から被移植マウスの推定置換率が70%以上となり、ヒト肝細胞置換率70%以上のPXBマウスが誕生する。同社は(公財)東京都医学総合研究所、中外製薬<4519>との共同研究でcDNA-uPAを開発(国際特許取得済)し、これをホスト動物としてPXBマウスを生産している。このホスト動物を利用することにより、PXBマウスはより長期間、安定的にヒト化状態を維持できるという特徴がある。なおPXBマウスの生産に用いるヒト肝細胞は、単一ドナーから得られた肝細胞を大量に購入(ほぼ全量を米国から輸入)して凍結保管しており、現在は年間4,000匹以上のPXBマウスをコンスタントに生産している。

同社の事業領域は、製薬企業・研究機関等における新薬開発工程のうち非臨床試験を対象としている。PXBマウスの肝臓の中にあるヒト肝細胞は、ヒトの体内にある状態に極めて近いため、ヒト肝細胞に関連する様々な実験を、同じドナーの肝細胞を持つPXBマウスを用いて繰り返し実施することが可能になる。

一般的に新薬開発が困難な理由の1つとして、非臨床試験で「動物」を用いて有効性・安全性を確認できても、臨床試験では「ヒト」に対して有効性・安全性に問題が生じることがある。こうした問題に対して、ヒトの肝細胞をもつ同社のPXBマウスを用いることにより、非臨床試験段階で「ヒト」での有効性や安全性の予測が可能になり、臨床試験段階でのドロップアウトリスクを低減できる。

PXBマウスから採取したヒト肝細胞に関連する主要製品としては、新鮮ヒト肝細胞PXB-cellsのほか、2023年6月に発売したプレミアム肝細胞培地PXB-Shizuku、2024年1月に発売した次世代細胞培養技術向け高機能ヒト肝細胞PXB-cells RFなどがある。

新薬開発工程で一般的に利用されている凍結ヒト肝細胞の場合、一旦冷凍されることで細胞の機能がある程度低下するという問題があるのに対して、同社のPXB-cellsは非凍結であるため肝機能が高く維持されていることが強みである。また、あらかじめプレートに播種した状態で出荷・納品するため、研究者は容器から取り出してすぐに使用できるという利便性もある。PXB-Shizukuは、ヒト肝細胞の培養上清から調製した培地であり、幅広いユーザーをターゲットとした製品である。PXB-cells RFは、PXB-cellsの高い性能を維持しつつ、顧客の様々な利用の仕方に対応できるよう汎用性を高め、従来の接着状態ではなく、懸濁状態(浮遊)として安定供給できるように最適化した製品である。

製薬企業・研究機関等においては、新たなin vitro評価法(試験管や培養器などの中で、ヒトや動物など生物体から抽出した組織を用いて、体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の作用を調べる試験)として、三次元培養法(スフェロイド培養、オルガノイド培養)や3Dバイオプリンターなどの技術を組み合わせたMicrophysiological System(MPS:生体模倣システム)の開発が世界的に進められている。こうした幅広い顧客ニーズに対応するため新製品の開発・投入を積極的に推進している。

2024年3月にはエコセル(株)と業務提携した。エコセルは2022年7月に横浜市立大学発のベンチャーとして設立され、多細胞構造体及びスフェロイド(細胞塊)に関する技術をベースに受託試験やスフェロイド試作などを展開している。今回の提携により、同社製品のPXB-cells RFを用いてエコセルがスフェロイドを作製する。スフェロイドは三次元構造を維持した細胞塊のため、より肝臓に近い実験結果を得ることが期待されている。

なお2024年2月には、東京大学大学院工学研究科・酒井康行教授らの研究チームが研究論文「二臓器灌流MPSデバイスによる小腸・肝の新たな臓器関連メカニズムの可能性の発見」を発表し、動物試験に代わる新たなヒト臓器細胞培養システムを用いて、肝臓機能の向上における小腸と肝臓の臓器クロストークメカニズムを明らかにした。この研究に同社のPXB-cellsが肝臓細胞として使用されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

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配信元: フィスコ
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