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―能登半島地震、改めて問われる災害に強い都市や街づくりの構築―
1月1日、石川県能登地方を震源とする能登半島地震が発生し、甚大な被害を引き起こした。国土の強靱化を進めてきた日本だが、巨大地震の脅威の前には、なすすべがなかったといえる。ただ、地震に限らずさまざまな災害に直面する日本にとって、 防災・減災に向けた取り組みは、今後も最重要課題であることは言うまでもない。国土強靱化が一大テーマとなるなか、災害に強い都市や街づくりで重要な役割を担う建設コンサルタントが存在感を見せている。「建設コンサル」関連株を点検した。
●防災・減災事業で存在感みせる
元日の午後4時過ぎ、能登地方を最大震度7の大規模地震が襲った。石川県のほか近隣県などでも大きな被害が発生しており、いまだ多くの行方不明者がいることに加え、住民が避難を余儀なくされている。こうしたなか、復旧活動もままならない状況であり、市民生活が被災前に戻るまでには、かなりの時間を要することが予想される。災害への対応は行政に頼る面が多いが、防災・減災、そして復旧に向けた具体的な施策を進めるうえでは民間企業との連携は欠かせないものとなる。
近年、日本では台風などによる記録的な豪雨をはじめとする大規模な自然災害が増加している。加えて、南海トラフ巨大地震、首都直下地震の発生が高い確率で予想されるなか、防災・減災への取り組みは待ったなしの状況だ。今後、能登半島地震においては本格的な復旧活動が始まることになるが、同時に更なる国土の強靱化が求められる。また、2020年12月には総事業費15兆円という巨額に及ぶ「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定され、公共事業を巡る環境は良好で、建設コンサルを取り巻く状況に陰りはない。国土強靱化が更に推進されることが予想され、防災・減災事業を展開してきた「建設コンサル」の役割はいま以上に大きくなりそうだ。
●「下期偏重」の構造
建設コンサルについては、いままで幾度となく取材を行ってきた。同業界の業績が「下期偏重」であることは知られるところだが、関係者は「行政や官公庁に絡む仕事が多いため、年度末が一つの節目になる」とし、一般的な話と断りながら「継続的な予算以外は、どうやって予算を消化するかが重要になるため下期偏重になる傾向は当然強くなる」としていた。
建設コンサルの事業領域は防災・減災に加え、国土基盤の整備、街づくり、設計、環境、新エネルギー、システム開発などと幅広く、さまざまな社会的基盤構築のニーズに応えている。年度末に突入するなか、建設コンサル関連株には注視が必要といえそうだ。
●オオバ、巻き返しに期待
オオバ <9765> [東証P]は12日、24年5月期上期(6~11月)の決算を発表。連結営業利益は前年同期比31.9%増の5億6400万円となった。24年通期は前期比5.0%増の18億円を予想しており、通期計画に対する進捗率は31%にとどまった。ただ、振り返ってみれば23年も上期の進捗率は27%だったものの、通期は17億1400万円と予想(16億円)を上振れて着地している。もちろん状況の変化や個々の案件規模により一概には言えないが、建設コンサル業界の特性を考えれば、下期に書き入れ時になるのは常であることは念頭に置いておきたい。震災復興関連業務がピークアウトするなか、社会インフラ整備では今後も国内外の政策的課題を背景に、同社は防災・減災、国土強靱化、防衛土木など市場拡大が期待される分野に注力する構えだ。
●新領域にも攻勢掛ける人・夢・技術
人・夢・技術グループ <9248> [東証P]は橋梁や道路が主力の建設コンサル大手。これまでも頻発化する台風や豪雨などによる法面や斜面の崩落に対する、ドローンの活用での災害状況の把握に加え、応急復旧への支援などの災害対応を行ってきた。加えて、点検による健全度診断や補修・補強などの強靱化による防災・減災への事業にも積極的に参画している。23年9月期は、連結営業利益が前の期比15.8%減の28億6000万円と苦戦。続く24年9月期は、前期比1.4%増の29億円と微増を予想するが、傘下の長大は公共投資向けで実績が豊富なだけに、ここからの展開に注目しておきたい。また、スマートシティ・デジタル田園都市、空飛ぶクルマ、そして量子コンピューターといった新領域にも果敢に取り組んでいる点も見逃せない。
●いであ、進捗率は順調に推移
いであ <9768> [東証S]は環境コンサルと建設コンサルが2本柱だが、11日に「地震発生翌日の2日から、本社や北陸支店を中心に災害復旧に向けた要請への対応を開始」していることを公表しており、対応の速さが目を引く。23年12月期は、連結営業利益段階で前の期比20.8%減の25億円と減益見通しだが、昨年11月6日に発表した第3四半期累計(1~9月)は22億5700万円(前年同期比23.6%減)と通期計画に対する進捗率は90%に達した。また、直近3カ月の7~9月期の営業利益は前年同期比75.0%増の3億8500万円となっている。
●キタックは短期資金流入
キタック <4707> [東証S]は新潟を地盤に北陸、東北に展開する総合建設コンサルだが、ここ急速に物色され株価が動意している。事業の4大テーマの一つに「防災」を掲げており、同社が能登半島にも近いことから、復興関連としての側面を持つことで短期資金が流入した格好だ。業績も回復色が鮮明で、23年10月期は連結営業利益段階で前の期比61.4%増益となり、続く24年10月期は伸びが加速し、前期比70.5%増の2億1200万円を予想している。同社では、豪雨などによる自然災害が頻発化・激甚化するなか、災害からの復旧工事や災害防止のための需要、災害発生の予兆把握のための需要が今後も継続するとみている。
●応用地質、応用技術、アジア航にも注目
地質調査業最大手で建設コンサルも手掛ける応用地質 <9755> [東証P]にも注目しておきたい。同社は、最先端の人工知能(AI)や地盤3次元化技術などを駆使し、さまざまな防災・減災ソリューションを提供している。19日には、災害発生後に事業統轄本部と技術本部を中心として対応本部を立ち上げ、被災地の復旧対応を行っていると公表した。復旧と復興に向けて、関係機関と連携し、グループの総力をあげて対応していくという。昨年11月には、23年12月期の連結営業利益予想を40億円から24億円(前の期比4.7%減)に引き下げたが、株価はこれを織り込む形で、12月18日につけた1926円を底に切り返しに転じている。
そのほかでは、構造解析、防災環境解析に定評がある応用技術 <4356> [東証S]、航空測量大手で建設コンサルと情報システムが主力のアジア航測 <9233> [東証S]、そしてオリエンタルコンサルタンツホールディングス <2498> [東証S]、FCホールディングス <6542> [東証S]など関連銘柄からも目が離せない。
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