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―「建設の2024年問題」解消は喫緊の課題、8月30日からのイベント開催にも注目―
物流業界では、2024年4月以降、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間に制限されることにより発生する「2024年問題」が大きな社会問題となっている。この「物流の2024年問題」と同様かそれ以上に喫緊の課題となっているのが「建設の2024年問題」だ。
特に深刻化する人手不足を解消するためには、建設業界にもさまざまな業務を効率化するための「建設テック」の導入が必要となる。特に建設業界は他の業界に比べてDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が遅れているといわれているだけに、関連企業の今後のビジネスチャンスも大きそうだ。
●建設の2024年問題とは
「建設の2024年問題」は、24年4月から時間外労働をめぐる上限規制が厳格化されることによって起きると予想されるさまざまな問題のこと。政府は19年4月に施行された「働き方改革関連法」で残業規制を強化し、大企業は19年4月から、中小企業は20年4月から既に適用されているが、長時間労働が常態化していた建設業界は対応に時間がかかるとして5年の猶予を与えられていた。この猶予期間が過ぎることで24年4月からは建設業界でも時間外労働の規制が強化されることになり、原則として時間外労働は月45時間、年360時間が上限となる。1人あたりの労働時間が削減されれば、従来の業務をより多くの人数でこなさなくてはならなくなり、人手不足に拍車がかかるといわれている。
●建設業界の人手不足は深刻
建設業界の人手不足を表す数字がある。総務省の「労働力調査」によると、22年の建設業界の就業者数は479万人となり、前年に比べて6万人減少した。就業者数はピークであった1997年の685万人から徐々に減少しており、25年間で200万人以上も減少したことになる。
また、働き手の高齢化も深刻だ。就業者のうち55歳以上が占める割合は35.9%で、全産業と比較すると4.4ポイント高い。逆に29歳以下は11.7%で全産業と比較すると4.7ポイント低くなっている。
就業者数の減少と高齢化は、人手不足だけではなく、伝統的な建築技法を次の世代へつなぐことができないなど、技術継承の面でも深刻な問題といえる。これを解消するために、建設業界では賃金の引き上げなどに取り組んでいるが、解消には時間がかかる。そこで同時に求められているのが「建設テック」の導入だ。
●他の産業と比べて少ない情報化投資
建設テックとは、建設におけるITや最先端技術の導入により、効率化を図る取り組みのこと。広い意味ではドローンの活用や建設機械の遠隔操作なども含まれるが、ここでは特に建設DXに注目したい。これまでも建設業界では設計や図面に関するCADや、積算などにITを導入してきたが、現場や管理分野では他の業界に比べて導入が遅れているのが現状であり、その分、成長余地が大きいといえる。
例えば、22年9月に発表された国土交通省の「建設業活動実態調査の結果」によると、21年の建設業の設備投資額は3713億円(前年比8.3%減)に上るが、うち情報システム関連の設備投資は124億円(同4.9%減)と全体の3%強に過ぎない。総務省が今年7月に発表した「情報通信白書」では民間企業の設備投資に占める情報化投資は18%弱であり、それと比べても少ないのがみてとれる。「2024年問題」をきっかけに、前述のCADや積算以外の分野でも、ITを導入する動きが強まるとみられ、遅れていた分建設業界のDX化の成長余地は大きそうだ。
●建設DXを主力とする銘柄に注目
建設DXの代表格といえば、スパイダープラス <4192> [東証G]だろう。建設DXを主力とする企業としては初めて上場(21年3月)し、建設現場の膨大な図面や写真、検査記録をクラウドで一元管理する建設・メンテナンス業向け建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を展開している。3月末時点で契約企業数は1600社近くに上り、建設現場におけるDXのデファクトスタンダードになりつつある。
Arent <5254> [東証G]は、建設業界特化のDXコンサルティングや新規事業創出(プロダクト共創開発事業)を主な事業としている。同事業は本開発費用(フロー収入)と継続開発費用(ストック収入)からなり、開発期間が長期間に及ぶことから収益の安定的な成長を実現しており、案件が継続して積み上がることで今後も業績を牽引する。
シーティーエス <4345> [東証P]は、工事に関するファイルや図面、写真、動画などのデータをクラウドで管理するクラウドストレージサービスや測量計測システムの提供が主力。今年7月には建設現場を遠隔地から支援するための情報を統合して提供する現場業務支援サービス「サイトアシスト」をリリースしており、データをシームレスに共有することで、効率化に貢献している。
●「建設DX展」への関心も高まる
インフォマート <2492> [東証P]は、企業間の商取引に必要な「見積・発注・受注・納品・受領・検収」といった業務をデジタル化し、クラウド上で一元管理できるサービス「BtoBプラットフォーム TRADE」を提供している。今年7月には建設業界向け原価管理ソフト「どっと原価シリーズ」とシステム連携を開始しており、元請け・下請け間の発注から支払い処理業務の効率化に貢献している。
エイトレッド <3969> [東証S]は、複雑な承認フローにも対応できる標準機能と高い拡張性を併せ持つ中堅・大規模組織向けワークフローシステム「AgileWorks」を提供している。東急建設 <1720> [東証P]や清水建設 <1803> [東証P]など大手建設にも導入されており、更に導入企業数を増やしている。
コアコンセプト・テクノロジー <4371> [東証G]は、製造業・建設業・物流業にフォーカスしたDX支援ビジネスに強みがある。コンピューター上に現実と同じ建造物の3次元モデルを再現し、建築・建設業務の効率化や高度化を実現するBIM/CIMマネジメントシステムの開発などに実績も多い。
ウイングアーク1st <4432> [東証P]は、データ集約・活用プラットフォーム「MotionBoard」が、建設現場向けに対応しており、経営指標の分析から、現場のカメラとの連携、3D表現までをオールインワンで実現している。今年2月には、構造物の点検業務に関連するロボット開発やAIシステムを開発するオングリットホールディングス(福岡市博多区)と資本・業務提携し、建築・土木におけるクラウドサービスの展開強化を図っている。
なお、8月30日から9月1日までの3日間、「インテックス大阪」(大阪市住之江区)では「建設DX展」が開催される。上記以外にも建設DX関連企業が多く出展する予定であり、関心が高まりそうだ。
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