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Eストアーのニュース
■事業の概要
1. 7年ごとに変化する注力事業
Eストアー<4304>は1999年の設立以来、一貫してEC支援関連事業を展開してきた。しかしその過程で、事業環境の変化や同社自身の成長に合わせて、おおよそ7年ごとにその注力事業を変えながら成長してきた。それまでの事業が軌道に乗って収益基盤を形成する段階に入ると、その収益を使って次の新たな収益事業づくりに進出するというサイクルを繰り返してきた。そして2020年の現在、3つ目のサイクルから4つ目のサイクルに切り替わるところにあると言える。
(1) 1999年−2006年頃
同社の事業はショッピングカートサービスからスタートした。その後、サイトを開設するうえで必要なレンタルサーバーの提供を開始し、このレンタルサーバー事業が同社の創成期を支える事業となった。同社はレンタルサーバー事業を主軸にしつつ、ショッピングカートに加えてECを行う上で必要なサービスを逐次追加し、2006年にスタートするEC総合支援のASPサービス「ショップサーブ」の素地を整えていった。
(2) 2006年−2012年
2006年からの7年間は、ECシステム事業、すなわち、EC総合支援サービス「ショップサーブ」が収益源となった。「ショップサーブ」は店舗のWebサイト、ドメイン、メール、決済、受注、顧客の管理などが1つになったASPサービス。その収益は顧客からASPサービスの月次利用料を徴収するもので、タイプとしてはいわゆるストック型事業モデルと言われるものだ。ストック収入(月額固定料金収入)は経営基盤を安定させるためには非常に有効で、「ショップサーブ」の顧客数が拡大するとともに、同社の成長と経営安定化に大きく貢献していった。
ECシステム事業が軌道に乗ると、顧客企業の売上高拡大を側面支援する意味合いもあり、同社はストック型事業と並行して、顧客から決済代行手数料などの名目で、(「ショップサーブ」上の店舗サイトを経由した)売上高の一定割合を徴収する収入(商規模連動料金収入)の拡大に乗り出した。事業タイプとしてはフロウ型と言え、同じ顧客からの収入ではあるが、「ショップサーブ」の月次利用料(ストック収入)と分けて管理している。
(3) 2012年−2018年
既存顧客(ECシステムの顧客)の売上高が順調に拡大し、内容的にもストック収入とフロウ収入の構成がバランス良く順調に伸長するなか、同社は「マーケティング事業」を次の収益の中核事業として育成すべく、その強化に乗り出した。これは、顧客の売上高増大をもたらす販促支援のノウハウを事業化したサービスで、ポイントは、1)販促支援のノウハウや施策を商品化することでコンサルティングや業務運営代行のフィー収入を得るようにしたこと、2)既存客(ECシステム顧客)のみならず外部へも販売することにしたこと、の2つだ。
当初は、マーケティング事業の内容として、コンサルティングや業務運営代行を行う「販促事業」と、ECショッピングモール「park」を運営する「メディア事業」の2つがあった。販促事業こそが同社の最も注力すべき事業領域として位置付けられたため、後述するマーケティングシステムと区別して、現在では販促サービス事業(あるいはマーケティングサービス事業)と呼称されている。ちなみに、メディア事業については、Amazonなど強力なライバルが存在することや、一定の目的を果たしたことから非注力事業と位置付け、2018年9月末をもってサービスを終了した。
(4) 2018年−
販促サービス事業には、一般に高コストで運営が難しいと言われる人的サービスが含まれるため、同社は、人的サービスの対極にあるシステムによる販促支援サービスを次代の成長ドライバーと設定し、システムの開発に取り組んだ。その結果、2017年から「Eストアーコンペア(COMPARE)」と「Eストアークエリー(QUERY)」の2つのソフトウェアの提供を開始することになった(こうした販促システムを総称して「バックストア群」と呼ぶこともある)。こうしたサービスをマーケティングシステム事業(あるいは販促システム事業)と称し、2018年からは上記の2つのソフトウェアの拡販に本格的に取り組んでいる。
以上のような変遷を経て、現在の同社は事業セグメントを、「EC事業」という単一セグメントから、提供するサービスの目的(販売か販促か)と、提供する主体・手法(機械・ソフトか人的サービスか)によって分け、販促サービス事業、販促システム事業、販売システム事業の3つのセグメントに分類した。なお、ほかに電子認証事業もある。
販売−販促、システム−サービスの2軸で区分された各事業が関係性に応じて立体的・重層的に機能する
2. 事業体制
前述のように、2017年に販促システム事業を開始したことで、現在、販売システム(ECシステム)事業、販促サービス(マーケティングサービス)事業、及び販促システム(マーケティングシステム)事業の3事業体制が完成した。この3事業を、販売と販促(マーケティング)の軸と、システム(機械・ソフトウェア)と人的サービスの軸という2つの軸から成る3つの象限で以下に表現した。
同社の成長戦略は、この事業領域図にある3つの象限において収益拡大を目指すことにほかならない。その際のポイントとして、各事業は他の事業から区切られて(独立して)存在しているわけではなく、因果関係や代替関係、補完関係など様々な関係性を相互に持ち、各事業がその関係性に応じて立体的・重層的に存在・機能しているということが挙げられる。したがって同社は、収益拡大を目指すうえで、複数の事業を連携させてシナジー効果を追求することはもちろんだが、市場環境や時代の変化に応じて、事業の組み合わせや関係性を変えながら顧客に相対しているのである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 7年ごとに変化する注力事業
Eストアー<4304>は1999年の設立以来、一貫してEC支援関連事業を展開してきた。しかしその過程で、事業環境の変化や同社自身の成長に合わせて、おおよそ7年ごとにその注力事業を変えながら成長してきた。それまでの事業が軌道に乗って収益基盤を形成する段階に入ると、その収益を使って次の新たな収益事業づくりに進出するというサイクルを繰り返してきた。そして2020年の現在、3つ目のサイクルから4つ目のサイクルに切り替わるところにあると言える。
(1) 1999年−2006年頃
同社の事業はショッピングカートサービスからスタートした。その後、サイトを開設するうえで必要なレンタルサーバーの提供を開始し、このレンタルサーバー事業が同社の創成期を支える事業となった。同社はレンタルサーバー事業を主軸にしつつ、ショッピングカートに加えてECを行う上で必要なサービスを逐次追加し、2006年にスタートするEC総合支援のASPサービス「ショップサーブ」の素地を整えていった。
(2) 2006年−2012年
2006年からの7年間は、ECシステム事業、すなわち、EC総合支援サービス「ショップサーブ」が収益源となった。「ショップサーブ」は店舗のWebサイト、ドメイン、メール、決済、受注、顧客の管理などが1つになったASPサービス。その収益は顧客からASPサービスの月次利用料を徴収するもので、タイプとしてはいわゆるストック型事業モデルと言われるものだ。ストック収入(月額固定料金収入)は経営基盤を安定させるためには非常に有効で、「ショップサーブ」の顧客数が拡大するとともに、同社の成長と経営安定化に大きく貢献していった。
ECシステム事業が軌道に乗ると、顧客企業の売上高拡大を側面支援する意味合いもあり、同社はストック型事業と並行して、顧客から決済代行手数料などの名目で、(「ショップサーブ」上の店舗サイトを経由した)売上高の一定割合を徴収する収入(商規模連動料金収入)の拡大に乗り出した。事業タイプとしてはフロウ型と言え、同じ顧客からの収入ではあるが、「ショップサーブ」の月次利用料(ストック収入)と分けて管理している。
(3) 2012年−2018年
既存顧客(ECシステムの顧客)の売上高が順調に拡大し、内容的にもストック収入とフロウ収入の構成がバランス良く順調に伸長するなか、同社は「マーケティング事業」を次の収益の中核事業として育成すべく、その強化に乗り出した。これは、顧客の売上高増大をもたらす販促支援のノウハウを事業化したサービスで、ポイントは、1)販促支援のノウハウや施策を商品化することでコンサルティングや業務運営代行のフィー収入を得るようにしたこと、2)既存客(ECシステム顧客)のみならず外部へも販売することにしたこと、の2つだ。
当初は、マーケティング事業の内容として、コンサルティングや業務運営代行を行う「販促事業」と、ECショッピングモール「park」を運営する「メディア事業」の2つがあった。販促事業こそが同社の最も注力すべき事業領域として位置付けられたため、後述するマーケティングシステムと区別して、現在では販促サービス事業(あるいはマーケティングサービス事業)と呼称されている。ちなみに、メディア事業については、Amazonなど強力なライバルが存在することや、一定の目的を果たしたことから非注力事業と位置付け、2018年9月末をもってサービスを終了した。
(4) 2018年−
販促サービス事業には、一般に高コストで運営が難しいと言われる人的サービスが含まれるため、同社は、人的サービスの対極にあるシステムによる販促支援サービスを次代の成長ドライバーと設定し、システムの開発に取り組んだ。その結果、2017年から「Eストアーコンペア(COMPARE)」と「Eストアークエリー(QUERY)」の2つのソフトウェアの提供を開始することになった(こうした販促システムを総称して「バックストア群」と呼ぶこともある)。こうしたサービスをマーケティングシステム事業(あるいは販促システム事業)と称し、2018年からは上記の2つのソフトウェアの拡販に本格的に取り組んでいる。
以上のような変遷を経て、現在の同社は事業セグメントを、「EC事業」という単一セグメントから、提供するサービスの目的(販売か販促か)と、提供する主体・手法(機械・ソフトか人的サービスか)によって分け、販促サービス事業、販促システム事業、販売システム事業の3つのセグメントに分類した。なお、ほかに電子認証事業もある。
販売−販促、システム−サービスの2軸で区分された各事業が関係性に応じて立体的・重層的に機能する
2. 事業体制
前述のように、2017年に販促システム事業を開始したことで、現在、販売システム(ECシステム)事業、販促サービス(マーケティングサービス)事業、及び販促システム(マーケティングシステム)事業の3事業体制が完成した。この3事業を、販売と販促(マーケティング)の軸と、システム(機械・ソフトウェア)と人的サービスの軸という2つの軸から成る3つの象限で以下に表現した。
同社の成長戦略は、この事業領域図にある3つの象限において収益拡大を目指すことにほかならない。その際のポイントとして、各事業は他の事業から区切られて(独立して)存在しているわけではなく、因果関係や代替関係、補完関係など様々な関係性を相互に持ち、各事業がその関係性に応じて立体的・重層的に存在・機能しているということが挙げられる。したがって同社は、収益拡大を目指すうえで、複数の事業を連携させてシナジー効果を追求することはもちろんだが、市場環境や時代の変化に応じて、事業の組み合わせや関係性を変えながら顧客に相対しているのである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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