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戸田工業のニュース
*13:47JST 戸田工業 Research Memo(7):中期経営計画「Vision2026」を策定(1)
■中長期の成長戦略
1. 中期経営計画「Vision2026」
戸田工業<4100>は、200年の歴史に学び未来を切り開くべく原点に回帰し、2030年度のありたい姿の実現に向け、選択と集中の加速による事業成長を推し進めるため、事業戦略として電子素材事業では高付加価値化、シナジー効果、機能性顔料事業では収益を伴う事業の継続、産学官連携による次世代事業の早期事業化を目指して中期経営計画「Vision2026」を策定した。2027年3月期に売上高385億円、営業利益率5%を目指す。
今回発表された「Vision2026」については電子素材事業での着実な成果拡大と、機能性顔料事業における選択と集中による収益の黒字化、そして2030年度に向けた新規事業の事業化を目指すもので、2030年度のありたい姿の実現に向けた足場固めの中期経営計画となっており、全体として達成可能な計画と言える。
2. 電子素材事業
2030年度のありたい姿の中心となるのが電子素材事業であり、2024年3月期売上高181億円、営業利益8億円に対し、「Vision2026」最終年度の2027年3月期には売上高285億円、営業利益19億円を目指す。
(1) 磁石材料
磁石材料は従来用途に加え、自動車用途に適した耐熱性の確保を目指し、素材開発、サプライチェーンの強化を図る。中心となるボンド磁石材料は、複写機・プリンターなどのマグネットロール向け、エアコンのファンモーターなどに加え、今後は特に自動車用の希土類ボンド磁石の拡大が期待される。現在EVが普及しつつあるなかで、EVではモーターコアのローターに磁力の強いネオジウム磁石が使われているが、同社の希土類ボンド磁石はEV用電動ウォーターポンプ(EWP)向けに拡大が期待される。EVでは内燃機関と異なり、バッテリーの温度とモーターの冷却、熱風の管理、吸気インタークーラーからの熱の調節などシステムの性能を維持するために効率的な熱マネージメントが必要で、その中心的な役割を果たすのがEWPとなる。機械式ではエンジン車と異なり駆動する動力源がないために利用できない。またEWPはモーターの回転数に関係なく必要に応じて冷却水の流量を制御できる。EWPには軽量化、軸インサート成形が可能なボンド磁石が多く使われているが、高温対応や耐環境性、高磁気特性の要求が高まり、高性能な希土類ボンド磁石の需要が拡大している。すでに同社のボンド磁石全体での希土類ボンド磁石の売上構成比は40%まで高まっているが、さらにこの比率が高まるだろう。なお2022年には、ボンド磁石材料の1つであるフェライトPPSコンパウンドの設計を見直し、新たな製品を開発した。具体的には、加熱時の腐食性ガス発生量を大幅削減するPPSコンパウンドも開発、成型時の金型へのダメージが軽減されるため、金型の長寿命化やメンテナンス頻度の減少も狙える。同製品も自動車用モーターやセンサー部品に拡大が見込める。ちなみに同社では2022年〜2030年の年平均成長率を12.5%と予測している。今後、日本でのEV本格拡大によって日系ポンプメーカーの採用が拡大するにつれて、売上拡大が加速すると見られるほか、自動車用以外でもエアコンの部品にも利用可能なため、用途開発にも力を入れている。なお、磁石成形事業会社である江門協立を買収したことで、素材から部品加工までの一貫生産体制を構築し、シナジー効果による、磁石事業の収益性向上が見込まれる。具体的には2024年3月期の売上高118億円、営業利益率8%に対し2027年3月期には売上高160億円、営業利益率10%を目標としている。
(2) 誘電体材料
誘電体材料は、MLCCの小型化に対応したさらなる微粒子化を追求し、コスト削減を図り、先端材料としての事業拡大を目指す。現在、環境対応車や自動運転支援の普及で、自動車1台当たりのMLCC使用数量が従来の1,000個〜3,000個程度から3,000個〜6,000個程度まで伸長している。また今後はパワートレイン系、xEV系、ボディ系、走行安全系、インフォテインメント系、すべての分野で使用個数が拡大すると見られる。MLCCの内部構造は、チタン酸バリウム(BaTiO3:TB)からなる誘電体層とニッケルからなる電極層が積層された構造となっている。高性能化を実現するためには電極層、誘電体層の薄層化・多層化が必要で、構成材料のナノ粒子化が求められる。内部電極では内部電極層(金属)と誘電体層との機械的接合強度を高めるためにTBナノ粒子が共材として必要である。電極層の機械的強度を上げる理由は、製造工程で電極層の割れや欠けを防ぐためで、MLCCの電気特性の低下や故障を防ぐ効果がある。共材は電極と誘電体層の間の電界を均一化し、誘電体層の電気分極を高めるなど重要な役割を持つ。同製品の生産額は大きくないが共材としての付加価値は非常に高いと見られる。今後は高容量化で電極層のさらなる薄層化が進み、電極材料として100nm以下のNi粒子に20nm以下の共材が必要とされるなど、微細化が進むと見られる。また同社は共材供給に加え、分散体供給も始める。分散体は、粒子同士の凝集を防ぎ、均一な誘電体層を形成するために使用される。現在は一度乾燥してユーザーに出荷し、ユーザー側で分散剤を付加して利用しているが、湿式状態のままユーザーに提供できる分散体を開発中で、分散体で出荷できれば付加価値が高まろう。なお、足元の状況は、スマートフォン向けの停滞などから在庫調整が長引き、MLCC各社の収益が悪化、同社も2024年3月期は売上高が横ばいの中で営業減益を余儀なくされたが、在庫調整の進展により改めて需要回復の兆しが見えている。同社は今後、微細化ニーズに沿って高付加価値化を進め、2027年3月期には売上高20億円、営業利益率8%を目指す。さらにEV等の普及が高まる2030年度に向けてさらに収益性を高め、営業利益率18%を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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1. 中期経営計画「Vision2026」
戸田工業<4100>は、200年の歴史に学び未来を切り開くべく原点に回帰し、2030年度のありたい姿の実現に向け、選択と集中の加速による事業成長を推し進めるため、事業戦略として電子素材事業では高付加価値化、シナジー効果、機能性顔料事業では収益を伴う事業の継続、産学官連携による次世代事業の早期事業化を目指して中期経営計画「Vision2026」を策定した。2027年3月期に売上高385億円、営業利益率5%を目指す。
今回発表された「Vision2026」については電子素材事業での着実な成果拡大と、機能性顔料事業における選択と集中による収益の黒字化、そして2030年度に向けた新規事業の事業化を目指すもので、2030年度のありたい姿の実現に向けた足場固めの中期経営計画となっており、全体として達成可能な計画と言える。
2. 電子素材事業
2030年度のありたい姿の中心となるのが電子素材事業であり、2024年3月期売上高181億円、営業利益8億円に対し、「Vision2026」最終年度の2027年3月期には売上高285億円、営業利益19億円を目指す。
(1) 磁石材料
磁石材料は従来用途に加え、自動車用途に適した耐熱性の確保を目指し、素材開発、サプライチェーンの強化を図る。中心となるボンド磁石材料は、複写機・プリンターなどのマグネットロール向け、エアコンのファンモーターなどに加え、今後は特に自動車用の希土類ボンド磁石の拡大が期待される。現在EVが普及しつつあるなかで、EVではモーターコアのローターに磁力の強いネオジウム磁石が使われているが、同社の希土類ボンド磁石はEV用電動ウォーターポンプ(EWP)向けに拡大が期待される。EVでは内燃機関と異なり、バッテリーの温度とモーターの冷却、熱風の管理、吸気インタークーラーからの熱の調節などシステムの性能を維持するために効率的な熱マネージメントが必要で、その中心的な役割を果たすのがEWPとなる。機械式ではエンジン車と異なり駆動する動力源がないために利用できない。またEWPはモーターの回転数に関係なく必要に応じて冷却水の流量を制御できる。EWPには軽量化、軸インサート成形が可能なボンド磁石が多く使われているが、高温対応や耐環境性、高磁気特性の要求が高まり、高性能な希土類ボンド磁石の需要が拡大している。すでに同社のボンド磁石全体での希土類ボンド磁石の売上構成比は40%まで高まっているが、さらにこの比率が高まるだろう。なお2022年には、ボンド磁石材料の1つであるフェライトPPSコンパウンドの設計を見直し、新たな製品を開発した。具体的には、加熱時の腐食性ガス発生量を大幅削減するPPSコンパウンドも開発、成型時の金型へのダメージが軽減されるため、金型の長寿命化やメンテナンス頻度の減少も狙える。同製品も自動車用モーターやセンサー部品に拡大が見込める。ちなみに同社では2022年〜2030年の年平均成長率を12.5%と予測している。今後、日本でのEV本格拡大によって日系ポンプメーカーの採用が拡大するにつれて、売上拡大が加速すると見られるほか、自動車用以外でもエアコンの部品にも利用可能なため、用途開発にも力を入れている。なお、磁石成形事業会社である江門協立を買収したことで、素材から部品加工までの一貫生産体制を構築し、シナジー効果による、磁石事業の収益性向上が見込まれる。具体的には2024年3月期の売上高118億円、営業利益率8%に対し2027年3月期には売上高160億円、営業利益率10%を目標としている。
(2) 誘電体材料
誘電体材料は、MLCCの小型化に対応したさらなる微粒子化を追求し、コスト削減を図り、先端材料としての事業拡大を目指す。現在、環境対応車や自動運転支援の普及で、自動車1台当たりのMLCC使用数量が従来の1,000個〜3,000個程度から3,000個〜6,000個程度まで伸長している。また今後はパワートレイン系、xEV系、ボディ系、走行安全系、インフォテインメント系、すべての分野で使用個数が拡大すると見られる。MLCCの内部構造は、チタン酸バリウム(BaTiO3:TB)からなる誘電体層とニッケルからなる電極層が積層された構造となっている。高性能化を実現するためには電極層、誘電体層の薄層化・多層化が必要で、構成材料のナノ粒子化が求められる。内部電極では内部電極層(金属)と誘電体層との機械的接合強度を高めるためにTBナノ粒子が共材として必要である。電極層の機械的強度を上げる理由は、製造工程で電極層の割れや欠けを防ぐためで、MLCCの電気特性の低下や故障を防ぐ効果がある。共材は電極と誘電体層の間の電界を均一化し、誘電体層の電気分極を高めるなど重要な役割を持つ。同製品の生産額は大きくないが共材としての付加価値は非常に高いと見られる。今後は高容量化で電極層のさらなる薄層化が進み、電極材料として100nm以下のNi粒子に20nm以下の共材が必要とされるなど、微細化が進むと見られる。また同社は共材供給に加え、分散体供給も始める。分散体は、粒子同士の凝集を防ぎ、均一な誘電体層を形成するために使用される。現在は一度乾燥してユーザーに出荷し、ユーザー側で分散剤を付加して利用しているが、湿式状態のままユーザーに提供できる分散体を開発中で、分散体で出荷できれば付加価値が高まろう。なお、足元の状況は、スマートフォン向けの停滞などから在庫調整が長引き、MLCC各社の収益が悪化、同社も2024年3月期は売上高が横ばいの中で営業減益を余儀なくされたが、在庫調整の進展により改めて需要回復の兆しが見えている。同社は今後、微細化ニーズに沿って高付加価値化を進め、2027年3月期には売上高20億円、営業利益率8%を目指す。さらにEV等の普及が高まる2030年度に向けてさらに収益性を高め、営業利益率18%を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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