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AOI TYO Holdingsのニュース
■決算概要
1. 2019年12月期の業績
AOI TYO Holdings<3975>の2019年12月期の業績は、売上高が前期比0.7%増の65,229百万円、営業利益が同38.3%減の2,118百万円、経常利益が同47.0%減の1,763百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が1,280百万円(前期は1,952百万円の利益)と増収ながら減益となった。特に、最終損失に落ち込んだのは、基盤整備に伴う減損損失の計上によるものである。また、計画に対しても、利益面では下振れる着地となっている。
売上高は、「海外事業」を除くすべての事業が増収となった。特に、主力の「動画広告事業」はプリント売上の減少が続くなかで、オンライン動画の増加により増収に転じるとともに、「ソリューション事業」も広告主直接取引が順調に拡大。また、「広告関連事業」については、イベント関連の新規連結子会社が大きく寄与した。
顧客別の売上高では、博報堂グループ向けが増加したものの、電通グループ向けが大きく減少し、大手広告会社向け全体では若干減少する結果となった。一方、注力する広告主直接取引は、新規・既存顧客ともにテレビCMやイベント等の受注が順調に拡大し、売上高全体に対する割合は30%を超えるまでに成長したところは注目すべきポイントである。
利益面では、利益率の高いプリント売上の減少による影響は想定内。受注拡大に伴う実行利益率の低下のほか、「働き方改革」や新基幹システムの稼働に伴う費用の増加、業績不振な一部子会社の影響等が重なったことにより、計画を下回る営業減益となった。さらには、業績不振な子会社の整理に伴う損失、システム統合に向けたソフトウェアの減損損失、投資有価証券評価損など特別損失の計上により、最終損失に落ち込んだ。
財政状態は、ソフトウェアの減損処理や投資有価証券の評価損などにより総資産は前期末比4.1%減の53,352百万円に縮小。一方、自己資本も最終損失の計上により同8.7%減の22,935百万円に大きく縮小したことから、自己資本比率は43.0%(前期末は45.1%)に若干低下した。
2. 各事業の業績と活動実績
(1) 動画広告事業
インターネット広告費が地上波テレビ広告費※1を超え、媒体別で初めて首位となる環境のもと、売上高は前期比0.5%増の43,860百万円と増収に転じた※2。プリント売上の減少(430百万円)は想定内。「働き方改革」の影響が一巡するなかで、オンライン動画の増加により増収を確保。一方、利益面では、利益率の高いプリント売上の減少に加え、受注拡大に伴って実行利益率は32.8%(前期は35.5%)に低下した。もっとも、今後は再度実行利益率の改善に取り組む方針である。
※1 電通発表の「日本の広告費2019」によれば、2019年のインターネット広告費は21,048百万円(前年比19.7%増)と大きく伸び、テレビメディア広告費の18,612百万円(前年比2.7%減)を初めて上回った。たた、一方では、テレビCMのリーチ力を再評価する動きもあり、それぞれの利点を生かしたメディアミックスが益々重要になってきている。
※2 前期(2018年12月期)は、「働き方改革」の導入が進むなかで、採算重視の案件絞り込みにより減収となった一方、実行利益率は大きく改善した。当期は、採算を重視しつつも、将来につながるような案件は積極的に取りにいく方針に若干軌道修正した。
(2) ソリューション事業
売上高は前期比9.4%増の8,145百万円と順調に伸びた。特に、TYOオファリングマネジメント部門の売上高(メディア費を除く)は前期比27.1%増の4,723百万円と大きく拡大。新規・既存顧客ともにテレビCMやイベント等の受注が増加した。新興企業のみならず、ナショナルクライアントを含めた顧客基盤の拡充を図ったことが奏功したようだ。一方、Quark tokyo(及びMediator)の売上高は前期比6.2%減の2,087百万円と減少。既存の大口案件が運用フェーズ(売上規模は縮小)に入ったことに加え、人材面がボトルネックとなっており、売上高は伸び悩んでいる。ただ、クライアントのニーズを捉えながら事業領域※が拡大してきたことは、今後に向けてプラスの材料と言える。
※動画の企画・制作・配信・運用にとどまらない、マーケティングコミュニケーションやコンサルティングなど上流領域への拡充。
(3) 海外事業
売上高は前期比16.3%減の3,378百万円に減少。もっとも、業績不振であった北京現地法人の整理や東南アジアのリストラ(一時的な縮小)等に伴うものであり、今後の再強化に向けた布石と捉えることができる。
(4) 広告関連事業
売上高は前期比2.1%増の9,846百万円に伸長。映画・ドラマ等のエンタテインメントコンテンツの売上が減少※したものの、イベント制作会社のM&A効果を含めて、イベント制作、PR、デジタルコンテンツ・販促物の制作等が好調に推移した。
※前期(2018年12月期)は、AOI Pro.が出資・制作し、是枝裕和(これえだひろかず)氏が監督を務めた映画『万引き家族』が業績に大きく貢献した。
3. 2019年12月期の総括
以上から、2019年12月期の業績を総括すると、利益面では、一過性の減損損失による影響を含めて大きく落ち込んだものの、売上高は、オンライン動画の増加により「動画広告事業」が増収に転じたことや、注力する広告主直接取引が顧客基盤拡大により本格的に軌道に乗ってきたところは、明るい材料と言える。また、後述するように、海外を含めた不採算子会社の整理やシステム統合に着手したところも、今後の取り組みを加速するうえで前向きに評価することができるだろう。一方、やり残した課題は、ボトルネックとなっている人材の強化にある。特に、動画制作はもちろん、データ活用等に専門性を有する人材の確保は、今後の注力分野(動画コンテンツマーケティング等)を伸ばすために重要なテーマとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>
1. 2019年12月期の業績
AOI TYO Holdings<3975>の2019年12月期の業績は、売上高が前期比0.7%増の65,229百万円、営業利益が同38.3%減の2,118百万円、経常利益が同47.0%減の1,763百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が1,280百万円(前期は1,952百万円の利益)と増収ながら減益となった。特に、最終損失に落ち込んだのは、基盤整備に伴う減損損失の計上によるものである。また、計画に対しても、利益面では下振れる着地となっている。
売上高は、「海外事業」を除くすべての事業が増収となった。特に、主力の「動画広告事業」はプリント売上の減少が続くなかで、オンライン動画の増加により増収に転じるとともに、「ソリューション事業」も広告主直接取引が順調に拡大。また、「広告関連事業」については、イベント関連の新規連結子会社が大きく寄与した。
顧客別の売上高では、博報堂グループ向けが増加したものの、電通グループ向けが大きく減少し、大手広告会社向け全体では若干減少する結果となった。一方、注力する広告主直接取引は、新規・既存顧客ともにテレビCMやイベント等の受注が順調に拡大し、売上高全体に対する割合は30%を超えるまでに成長したところは注目すべきポイントである。
利益面では、利益率の高いプリント売上の減少による影響は想定内。受注拡大に伴う実行利益率の低下のほか、「働き方改革」や新基幹システムの稼働に伴う費用の増加、業績不振な一部子会社の影響等が重なったことにより、計画を下回る営業減益となった。さらには、業績不振な子会社の整理に伴う損失、システム統合に向けたソフトウェアの減損損失、投資有価証券評価損など特別損失の計上により、最終損失に落ち込んだ。
財政状態は、ソフトウェアの減損処理や投資有価証券の評価損などにより総資産は前期末比4.1%減の53,352百万円に縮小。一方、自己資本も最終損失の計上により同8.7%減の22,935百万円に大きく縮小したことから、自己資本比率は43.0%(前期末は45.1%)に若干低下した。
2. 各事業の業績と活動実績
(1) 動画広告事業
インターネット広告費が地上波テレビ広告費※1を超え、媒体別で初めて首位となる環境のもと、売上高は前期比0.5%増の43,860百万円と増収に転じた※2。プリント売上の減少(430百万円)は想定内。「働き方改革」の影響が一巡するなかで、オンライン動画の増加により増収を確保。一方、利益面では、利益率の高いプリント売上の減少に加え、受注拡大に伴って実行利益率は32.8%(前期は35.5%)に低下した。もっとも、今後は再度実行利益率の改善に取り組む方針である。
※1 電通発表の「日本の広告費2019」によれば、2019年のインターネット広告費は21,048百万円(前年比19.7%増)と大きく伸び、テレビメディア広告費の18,612百万円(前年比2.7%減)を初めて上回った。たた、一方では、テレビCMのリーチ力を再評価する動きもあり、それぞれの利点を生かしたメディアミックスが益々重要になってきている。
※2 前期(2018年12月期)は、「働き方改革」の導入が進むなかで、採算重視の案件絞り込みにより減収となった一方、実行利益率は大きく改善した。当期は、採算を重視しつつも、将来につながるような案件は積極的に取りにいく方針に若干軌道修正した。
(2) ソリューション事業
売上高は前期比9.4%増の8,145百万円と順調に伸びた。特に、TYOオファリングマネジメント部門の売上高(メディア費を除く)は前期比27.1%増の4,723百万円と大きく拡大。新規・既存顧客ともにテレビCMやイベント等の受注が増加した。新興企業のみならず、ナショナルクライアントを含めた顧客基盤の拡充を図ったことが奏功したようだ。一方、Quark tokyo(及びMediator)の売上高は前期比6.2%減の2,087百万円と減少。既存の大口案件が運用フェーズ(売上規模は縮小)に入ったことに加え、人材面がボトルネックとなっており、売上高は伸び悩んでいる。ただ、クライアントのニーズを捉えながら事業領域※が拡大してきたことは、今後に向けてプラスの材料と言える。
※動画の企画・制作・配信・運用にとどまらない、マーケティングコミュニケーションやコンサルティングなど上流領域への拡充。
(3) 海外事業
売上高は前期比16.3%減の3,378百万円に減少。もっとも、業績不振であった北京現地法人の整理や東南アジアのリストラ(一時的な縮小)等に伴うものであり、今後の再強化に向けた布石と捉えることができる。
(4) 広告関連事業
売上高は前期比2.1%増の9,846百万円に伸長。映画・ドラマ等のエンタテインメントコンテンツの売上が減少※したものの、イベント制作会社のM&A効果を含めて、イベント制作、PR、デジタルコンテンツ・販促物の制作等が好調に推移した。
※前期(2018年12月期)は、AOI Pro.が出資・制作し、是枝裕和(これえだひろかず)氏が監督を務めた映画『万引き家族』が業績に大きく貢献した。
3. 2019年12月期の総括
以上から、2019年12月期の業績を総括すると、利益面では、一過性の減損損失による影響を含めて大きく落ち込んだものの、売上高は、オンライン動画の増加により「動画広告事業」が増収に転じたことや、注力する広告主直接取引が顧客基盤拡大により本格的に軌道に乗ってきたところは、明るい材料と言える。また、後述するように、海外を含めた不採算子会社の整理やシステム統合に着手したところも、今後の取り組みを加速するうえで前向きに評価することができるだろう。一方、やり残した課題は、ボトルネックとなっている人材の強化にある。特に、動画制作はもちろん、データ活用等に専門性を有する人材の確保は、今後の注力分野(動画コンテンツマーケティング等)を伸ばすために重要なテーマとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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