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―関連予算要求1兆6000億円規模、関連企業のビジネス機会拡大へ―
政府は8月27日にグリーントランスフォーメーション(GX)実行会議を開き、2025年度予算の概算要求でGX関連として複数年にまたがる項目を含めると総額1兆6000億円規模を求める方針を示した。今回の議論を踏まえ、40年に向けた脱炭素化や産業政策の方向性を盛り込んだ新しい国家戦略「GX2040ビジョン」の検討を加速するとしており、関連銘柄から目が離せない。
●国力を左右する重要課題
概算要求では ペロブスカイト太陽電池や 洋上風力発電設備といった革新的脱炭素製品などの国内サプライチェーン(供給網)の構築支援に2555億円、次世代革新炉の研究開発支援に3年間で1152億円(過年度に採択した案件の後年度負担分も含めて25年度は829億円)を計上。また、既存住宅の高断熱窓や高効率給湯器(ヒートポンプなど)の導入支援に1880億円、持続可能な航空燃料「SAF」の製造設備やサプライチェーン整備の支援に838億円、中小企業をはじめとする先進的な省エネ投資支援に5年間で2025億円(同1743億円)を充てるとしている。
会議に出席した岸田文雄首相は「GXの取り組みは国力そのものを左右する。こうした認識のもと試行錯誤を恐れず、迅速に実行していかなければならない」と強調。今回の会議では、データセンターや半導体工場の新増設で電力需要が大幅に増加することが見込まれるなか、徹底した省エネや再生可能エネルギーの拡大、原子力発電所の再稼働、新型革新炉の設置が重要になると指摘している。
●ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を用いた太陽電池のこと。「薄く軽くフレキシブルであるため、設置対象の場所の範囲が広がる」「製造技術開発によって大量生産、製造コストが低下する可能性がある」「主原料のヨウ素は世界産出量の約30%が国内産である」といった特徴があり、シリコン系太陽電池に対して高い競争力が期待されている。
直近ではヒラノテクシード <6245> [東証S]が、塗布技術に関する世界最大の国際会議でペロブスカイト型太陽電池専用の塗工設備に関わる基本特許出願の報告と、製造装置の基本的な仕様、今後の開発計画について発表。25年1月に塗工設備の詳細仕様発表及び受注活動開始、26年1月に展示会で実機の展示、26年5月に初号機の納入を予定しているという。
倉元製作所 <5216> [東証S]は8月、新たにペロブスカイト太陽電池事業を開始すると発表。将来的に政府機関、地方自治体、自動車や住宅、建材などのナショナルブランドメーカーと協業することで需要を確保するとともに、社会実装の早期実現に向けて、強力かつ独自の中国ネットワークを活用し、自社ブランドの早期量産・早期供給体制を目指す構えだ。
このほかでは、ペロブスカイト太陽電池の正孔輸送材料を扱う日本精化 <4362> [東証P]、製造装置を手掛けるエヌ・ピー・シー <6255> [東証G]、技術開発に取り組むエネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)と資本・業務提携している伯東 <7433> [東証P]、ヨウ素を生産するK&Oエナジーグループ <1663> [東証P]や伊勢化学工業 <4107> [東証S]、社会実装に向けて注力する積水化学工業 <4204> [東証P]などが関連銘柄として挙げられる。
●浮体式の洋上風力発電
洋上風力発電施設の基礎構造形式は、海底に基礎を構築して風車を支持する着床式と、海に浮かべた基礎に風車を設置する浮体式があり、日本は遠浅の海域が少ないことから水深が深い海域に適した浮体式の導入が期待されている。
大林組 <1802> [東証P]はこのほど、青森県東通村岩屋の沖合の海域で、漁業への配慮と高い発電効率を兼ね備えた浮体式基礎構造体の実証実験を開始。今回の浮体には風車を搭載していないが、今後は風車を搭載した浮体による実海域実証実験を行うことで、商用化に向けた開発を推進していくという。
日立造船 <7004> [東証P]は8月、鹿島 <1812> [東証P]と浮体式洋上風力発電向けに半潜水型のセミサブ型浮体式基礎の量産化技術を開発し、水上接合による基礎製造工法の実証を行ったと発表。この活用により、今後導入拡大が見込まれる浮体式洋上風力発電で浮体式基礎の量産化、低コスト化実現につながることが期待される。
日揮ホールディングス <1963> [東証P]と住友商事 <8053> [東証P]は7月、浮体式洋上風力発電事業領域での浮体構造部材の詳細設計・製造・納入における協業可能性の検討に関して合意書を締結した。
これ以外では、洋上風力建設に必要な「SEP船」を保有する東亜建設工業 <1885> [東証P]、風力発電機の故障を回避するCMFS機器を展開するナブテスコ <6268> [東証P]、洋上風力発電における基礎構造物や関連船舶事業の強化を目的とした「洋上風力事業推進プロジェクト」を立ち上げている住友重機械工業 <6302> [東証P]、風力発電装置向けベアリングを扱うNTN <6472> [東証P]、洋上風力発電に関わる海底地盤調査を行う応用地質 <9755> [東証P]などに注目したい。
●SAF(Sustainable Aviation Fuel)
SAFとは、サトウキビなどのバイオマス燃料や廃食油、都市ごみ、廃プラスチックを用いて生産される航空燃料のこと。廃棄物や再生可能エネが原料のため、ジェット燃料と比較して約60~80%の二酸化炭素(CO2)削減効果があるとされる。
ユーグレナ <2931> [東証P]は20年に次世代バイオディーゼル燃料を、21年にはバイオジェット燃料の供給を開始し、車両・船舶・航空機で利用が拡大している。航空分野ではこれまでに、航空自衛隊の戦闘機や政府専用機などに国産SAF「サステオ」を給油した実績がある。
木村化工機 <6378> [東証S]は8月、SAFの原料用バイオエタノールを蒸留する際のCO2排出をゼロにする新型「ヒートポンプ式バイオエタノール蒸留装置」を発明したと発表。同装置のシステムとシミュレーションプログラムを開発し、特許を出願している。
他の関連銘柄としては、子会社がSAFなどの生産技術を持つレンゴー <3941> [東証P]、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のバイオジェット燃料生産プロジェクトにおける精製工程の一部で自社の精密蒸留精製が活用されたことがある大阪油化工業 <4124> [東証S]、国産SAFの大規模生産実証設備向け廃食油精製用遠心分離機を受注した実績のある三菱化工機 <6331> [東証P]などがある。
●次世代革新炉(高温ガス炉)
高温ガス炉は、原子炉として現在主流の軽水炉に比べて安全性が高いうえ、熱効率が高く経済性に優れているため、カーボンニュートラルにつながる第4世代の原子炉として注目されている。
東洋炭素 <5310> [東証P]は、世界で唯一高温ガス炉の炉内構造材として採用されている黒鉛材を手掛けている。高温ガス炉について公的機関などとの長年にわたる共同研究により、原子力用途における黒鉛材料のデータ・ノウハウを蓄積しており、日本及び中国における試験炉・実証炉への納入実績を持つ。
三菱重工業 <7011> [東証P]は23年に経済産業省が推進する高温ガス炉の開発を担う中核企業に選定されている。資源エネルギー庁が30年代の運転開始を目指す実証炉の建設に向け、研究開発及び設計、建設まで一括して取りまとめるとされている。
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