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ファーストブラザーズのニュース
■要約
ファーストブラザーズ<3454>は、2004年2月創業の独立系不動産投資運用会社。2015年2月に東証マザーズに上場、2016年10月には東証1部への市場変更を達成し、2016年11月期からDOE(株主資本配当率)2%を目安に配当を開始した。代表取締役社長の吉原知紀(よしはらともき)氏をはじめ、キーマンに旧三井信託銀行(株)(現 三井住友信託銀行(株))の出身者が多い。不動産私募ファンドの運用会社としてスタートしたが、足元では自己勘定投資に軸足を移して、順調に資産規模を拡大している。2019年4月には(株)東日本不動産(本店:青森県弘前市)を買収したことに伴い、資産規模を大幅に拡大した。
2014年頃から積極化した自己勘定投資は、首都圏の中小規模(10億円前後)の商業ビル、オフィスビルを主な対象とする。東京ビジネス地区(都心5区)の平均賃料は過去3年間で年5.9%上昇、空室率も2.33ポイント低下しており堅調に推移する。2019年11月期第2四半期末の自己勘定投資の残高は、取得価格ベースで49,130百万円(前期末比16,118百万円増)と大幅に増加した。期中増加額が17,929百万円、そのうち70.9%(12,709百万円)は買収した東日本不動産の保有分である。一般的に中小規模物件はストックや流通量が膨大で、所有者は不動産のプロではない個人富裕層や事業会社などが多いため、大型物件と異なり潜在的価値が高い物件を取得できる。安定収益となる賃料収入の拡大を図りつつ、バリューアップ後、適宜、物件入れ替えにより売却益を実現させていくのが同社の勝ちパターンだ。
2019年11月期第2四半期連結決算は、売上高4,081百万円(前年同期比71.1%減)、売上総利益1,268百万円(同65.6%減)、営業利益416百万円(同86.3%減)、経常利益95百万円(同96.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益12百万円(同99.3%減)と減収減益となった。主力の投資銀行事業において、賃貸不動産ポートフォリオの入れ替えに伴う物件の売却(引き渡し)が下期に集中することが要因。ちなみに、3月に売却の開示が行われた2物件(東京都台東区、埼玉県川口市)は、いずれも2018年11月期の売上高の10%(2,186百万円)以上の売却価格であり、上期に契約は終了しているが引き渡し(決済)が下期になるため、業績への貢献も下期となる。また、6月にも同様に売却の開示が行われていることからも、売却活動は順調に進捗している模様である。投資銀行事業の売上高は4,013百万円(前年同期は14,103百万円)、売却粗利が607百万円(同3,094百万円)であった。また、賃貸粗利は595百万円(同551百万円)と、投資銀行事業が売上総利益の94%を占めている。東日本不動産を連結化した直近月次2019年5月以降では、安定収益が大幅に増加し賃貸粗利が販管費を上回る水準で推移している(月次の販管費カバー率約115%)。貸借対照表に関しては、東日本不動産を買収した影響で資産規模が大幅に拡大した。特徴的な変化としては、販売用不動産(仕掛含む)が54,680百万円(前期末比17,400百万円増)と増え、それに伴って負債合計も50,381百万円(前期末比16,621百万円増)と増えた。
2019年11月期連結決算は、売上高20,020百万円(前期比8.4%減)、売上総利益5,380百万円(同17.1%減)、営業利益3,850百万円(同25.0%減)、経常利益3,170百万円(同32.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,000百万円(同30.7%減)と期初の計画から変更はない。投資銀行事業では、売上総利益の通期予想に対する上期の進捗率が22.4%と数字上は低調な水準に見えるが、先に述べたように物件の売却が下期に集中したことが背景にあり、契約が終了している物件が複数あることからも実態は順調である。弊社では、1)足元の市場環境は引き続き良好であり流動性に変化はないこと、2)東日本不動産の保有物件も含めて販売用不動産の残高が過去最高水準であり売却可能物件は豊富なこと、3)下期に想定以上の賃貸不動産収入が見込まれること、などから、業績予想を達成する可能性は高いと見ている。
同社は、2019年4月26日付で、東日本不動産の株式(議決権保有割合99.6%)を取得し子会社化した。東日本不動産の総資産は11,059百万円、売上高1,844百万円、営業利益493百万円(いずれも2018年2月期)となっており、財務的にも健全で創業以来35年以上にわたって安定した経営を行ってきた会社である。長年事業を行ってきたオーナーが第三者に事業を承継するという経緯のなかで、今回の株式譲渡が成立した。取得価額は、4,159百万円(同社による株式取得額及び東日本不動産による自己株式取得額、並びにアドバイザリー費用等の概算合計額)。同社は東日本不動産の一部ローン返済の肩代わりをした分を合わせて、金融機関から6,850百万円の借入を実施。2019年5月からは、同社の決算に連結された(上期は1ヶ月分のみ)。東日本不動産の賃貸不動産の残高は12,709百万円(2019年11月期第2四半期末)であり、同社の残高の25.9%に当たる。物件の用途では、オフィスと商業が多い。オフィスでは、東日本不動産仙台ファーストビル(宮城県仙台市)、東日本不動産盛岡駅前ビル(岩手県盛岡市)など駅前やビジネス街に優良資産を保有する。平均の物件規模は508百万円であり、同社の既存の物件規模1,255百万円と比較して小さい。東日本不動産の物件の特長はNOI(減価償却前の営業純利益)利回りが8.0%と高いことであり、既存物件の安定稼働時のNOI利回り6.4%と比較するとその違いは際立つ。今後は相互に協力しながら、保有すべき不動産に磨きをかけ、売却すべきタイミングの不動産は売却するという展開になるだろう。
同社は、配当による継続的な株主還元を方針としている。配当方針としては、自己勘定投資の物件売却のタイミングで業績が大きくぶれやすいため、配当性向の目安は定めずに、安定的かつ毎期着実な増配が見込めるDOEを基準に配当を行っていくこととしている。DOEは2%を目安とする(連結株主資本は期初と期末の平均値を用いる)。2019年11月期の配当予想は21円(3円増配)である。ROEが25.7%(2016年11月期)、19.1%(2017年11月期)、22.3%(2018年11月)と高水準のため株主資本の積み上がりは速く、中期的に速いペースの増配が期待できる。
■Key Points
・首都圏・東北地方都市部の中小規模(10億円前後)の商業・オフィス物件に投資・運用する不動産投資運用会社
・2019年11月期第2四半期は東北エリアに多数の優良不動産(平均NOI利回り8.0%)を保有する東日本不動産を買収し賃貸不動産ポートフォリオが大幅拡充。今期は物件売却が下期に集中するため、第2四半期減収減益となるも想定どおり
・2019年11月期は、売上高200億円、営業利益38.5億円と期初予想を据え置き。今期は下期に売却が集中する見込み。安定収益である賃貸粗利は、東日本不動産の連結化により大幅増加
・2019年11月期は配当21円(3円増配)予想。ROE高水準のため速いペースの増配が期待できる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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ファーストブラザーズ<3454>は、2004年2月創業の独立系不動産投資運用会社。2015年2月に東証マザーズに上場、2016年10月には東証1部への市場変更を達成し、2016年11月期からDOE(株主資本配当率)2%を目安に配当を開始した。代表取締役社長の吉原知紀(よしはらともき)氏をはじめ、キーマンに旧三井信託銀行(株)(現 三井住友信託銀行(株))の出身者が多い。不動産私募ファンドの運用会社としてスタートしたが、足元では自己勘定投資に軸足を移して、順調に資産規模を拡大している。2019年4月には(株)東日本不動産(本店:青森県弘前市)を買収したことに伴い、資産規模を大幅に拡大した。
2014年頃から積極化した自己勘定投資は、首都圏の中小規模(10億円前後)の商業ビル、オフィスビルを主な対象とする。東京ビジネス地区(都心5区)の平均賃料は過去3年間で年5.9%上昇、空室率も2.33ポイント低下しており堅調に推移する。2019年11月期第2四半期末の自己勘定投資の残高は、取得価格ベースで49,130百万円(前期末比16,118百万円増)と大幅に増加した。期中増加額が17,929百万円、そのうち70.9%(12,709百万円)は買収した東日本不動産の保有分である。一般的に中小規模物件はストックや流通量が膨大で、所有者は不動産のプロではない個人富裕層や事業会社などが多いため、大型物件と異なり潜在的価値が高い物件を取得できる。安定収益となる賃料収入の拡大を図りつつ、バリューアップ後、適宜、物件入れ替えにより売却益を実現させていくのが同社の勝ちパターンだ。
2019年11月期第2四半期連結決算は、売上高4,081百万円(前年同期比71.1%減)、売上総利益1,268百万円(同65.6%減)、営業利益416百万円(同86.3%減)、経常利益95百万円(同96.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益12百万円(同99.3%減)と減収減益となった。主力の投資銀行事業において、賃貸不動産ポートフォリオの入れ替えに伴う物件の売却(引き渡し)が下期に集中することが要因。ちなみに、3月に売却の開示が行われた2物件(東京都台東区、埼玉県川口市)は、いずれも2018年11月期の売上高の10%(2,186百万円)以上の売却価格であり、上期に契約は終了しているが引き渡し(決済)が下期になるため、業績への貢献も下期となる。また、6月にも同様に売却の開示が行われていることからも、売却活動は順調に進捗している模様である。投資銀行事業の売上高は4,013百万円(前年同期は14,103百万円)、売却粗利が607百万円(同3,094百万円)であった。また、賃貸粗利は595百万円(同551百万円)と、投資銀行事業が売上総利益の94%を占めている。東日本不動産を連結化した直近月次2019年5月以降では、安定収益が大幅に増加し賃貸粗利が販管費を上回る水準で推移している(月次の販管費カバー率約115%)。貸借対照表に関しては、東日本不動産を買収した影響で資産規模が大幅に拡大した。特徴的な変化としては、販売用不動産(仕掛含む)が54,680百万円(前期末比17,400百万円増)と増え、それに伴って負債合計も50,381百万円(前期末比16,621百万円増)と増えた。
2019年11月期連結決算は、売上高20,020百万円(前期比8.4%減)、売上総利益5,380百万円(同17.1%減)、営業利益3,850百万円(同25.0%減)、経常利益3,170百万円(同32.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,000百万円(同30.7%減)と期初の計画から変更はない。投資銀行事業では、売上総利益の通期予想に対する上期の進捗率が22.4%と数字上は低調な水準に見えるが、先に述べたように物件の売却が下期に集中したことが背景にあり、契約が終了している物件が複数あることからも実態は順調である。弊社では、1)足元の市場環境は引き続き良好であり流動性に変化はないこと、2)東日本不動産の保有物件も含めて販売用不動産の残高が過去最高水準であり売却可能物件は豊富なこと、3)下期に想定以上の賃貸不動産収入が見込まれること、などから、業績予想を達成する可能性は高いと見ている。
同社は、2019年4月26日付で、東日本不動産の株式(議決権保有割合99.6%)を取得し子会社化した。東日本不動産の総資産は11,059百万円、売上高1,844百万円、営業利益493百万円(いずれも2018年2月期)となっており、財務的にも健全で創業以来35年以上にわたって安定した経営を行ってきた会社である。長年事業を行ってきたオーナーが第三者に事業を承継するという経緯のなかで、今回の株式譲渡が成立した。取得価額は、4,159百万円(同社による株式取得額及び東日本不動産による自己株式取得額、並びにアドバイザリー費用等の概算合計額)。同社は東日本不動産の一部ローン返済の肩代わりをした分を合わせて、金融機関から6,850百万円の借入を実施。2019年5月からは、同社の決算に連結された(上期は1ヶ月分のみ)。東日本不動産の賃貸不動産の残高は12,709百万円(2019年11月期第2四半期末)であり、同社の残高の25.9%に当たる。物件の用途では、オフィスと商業が多い。オフィスでは、東日本不動産仙台ファーストビル(宮城県仙台市)、東日本不動産盛岡駅前ビル(岩手県盛岡市)など駅前やビジネス街に優良資産を保有する。平均の物件規模は508百万円であり、同社の既存の物件規模1,255百万円と比較して小さい。東日本不動産の物件の特長はNOI(減価償却前の営業純利益)利回りが8.0%と高いことであり、既存物件の安定稼働時のNOI利回り6.4%と比較するとその違いは際立つ。今後は相互に協力しながら、保有すべき不動産に磨きをかけ、売却すべきタイミングの不動産は売却するという展開になるだろう。
同社は、配当による継続的な株主還元を方針としている。配当方針としては、自己勘定投資の物件売却のタイミングで業績が大きくぶれやすいため、配当性向の目安は定めずに、安定的かつ毎期着実な増配が見込めるDOEを基準に配当を行っていくこととしている。DOEは2%を目安とする(連結株主資本は期初と期末の平均値を用いる)。2019年11月期の配当予想は21円(3円増配)である。ROEが25.7%(2016年11月期)、19.1%(2017年11月期)、22.3%(2018年11月)と高水準のため株主資本の積み上がりは速く、中期的に速いペースの増配が期待できる。
■Key Points
・首都圏・東北地方都市部の中小規模(10億円前後)の商業・オフィス物件に投資・運用する不動産投資運用会社
・2019年11月期第2四半期は東北エリアに多数の優良不動産(平均NOI利回り8.0%)を保有する東日本不動産を買収し賃貸不動産ポートフォリオが大幅拡充。今期は物件売却が下期に集中するため、第2四半期減収減益となるも想定どおり
・2019年11月期は、売上高200億円、営業利益38.5億円と期初予想を据え置き。今期は下期に売却が集中する見込み。安定収益である賃貸粗利は、東日本不動産の連結化により大幅増加
・2019年11月期は配当21円(3円増配)予想。ROE高水準のため速いペースの増配が期待できる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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