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―地方経済活性化に向け農業の生産性向上は必須、営農支援事業の展開など注目―
10月1日に石破茂氏が首相に就任し「新政権」が誕生するとともに、一気に27日投開票の総選挙へとなだれ込んだ。選挙結果次第で、新政権の行方は流動的となることも起こり得る。しかし、自民党の新政権が誕生した意味は小さくなく、市場に新たな物色の流れが巻き起こっている。特に、投資家の関心を集めているのが、石破氏が地方経済に目を向け 「地方創生」を再び前面に掲げたことだ。なかでも、地方経済の再生に欠かせないのが農業であり、その生産性向上に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが注目を集めている。
●所信表明演説で「地方こそ成長の主役」の信念示す
自民党の石破氏が新たに第102代の内閣総理大臣となり、株式市場関係者は当初、金融所得課税強化への警戒感を強めていたものの、「現時点で具体的に検討することは考えていない」と発言するなど、ひとまず安心感が生まれる形となった。警戒材料が払拭された格好となると今度は一転して、同氏の政策関連のテーマに関心が向かうことになった。
今後の動向は、総選挙の結果に左右される面はあるものの、「地方創生」「農業」といった地方経済の活性化は、避けて通れず、選挙結果にかかわらず本腰を入れていくことは間違いないだろう。石破氏が初代の地方創生大臣を務めたこともあり、かねてから地方創生に情熱を持っていることは広く知られているが、同氏は2008年の麻生内閣では農林水産大臣を務めており、「農業所得倍増」を掲げていたことは忘れてはいけない。
実際、石破氏は所信表明演説において「地方こそ成長の主役」との信念を示しているが、成長エンジンとしての役割を担うには、「補助金頼りの構造」に対する変革が求められるだろう。
●「AI」や「ビッグデータ」、「ドローン」を本格活用へ
地方にとって基幹産業である農業について「IoT(モノのインターネット)」「AI(人工知能)」「 ビッグデータ」「 ドローン」などをはじめとした先端技術を駆使し、従来の労働集約型から脱却していくことを目指していく必要がある。その結果、農作業の生産効率を大幅に向上させると同時に、収穫量を最大化することができる。また、地球温暖化の進行や激甚化する自然災害への対応という観点からもこうした技術の導入は重要となるだろう。加えて、地方創生のためには東京への過度な人口集中を食い止め、若者や女性の地方定住をいかに実現していくかが大きなポイントになる。そういった意味でも、最新テクノロジーは柔軟な働き方のほか、農業参入へのハードル引き下げにつながる可能性を生み出すことも期待される。
●スマート農業での展開などに注目
そこで求められるのが、生産性向上に向けた「農業DX」の推進だ。例えば、クボタ <6326> [東証P]がグーグルマップを利用した圃場(ほじょう)管理や、作付け計画のデジタル化などが行える営農支援システム「KSAS」を提供しており、これに対応したトラクター、田植え機、コンバインなどの農業機械を手掛けている。また、ヤマハ発動機 <7272> [東証P]は、農業用ドローンや自動飛行機能などを追加した次世代型農業用無人ヘリコプター、井関農機 <6310> [東証P]はロボットトラクターや田植え機などのスマート農機や営農管理システム、トプコン <7732> [東証P]は農機の自動化や生育センサーによる可変施肥システムを手掛けており、オプティム <3694> [東証P]はピンポイント農薬散布・施肥テクノロジーを始めとした、 スマート農業ソリューションを提供している。
そのほか、住友化学 <4005> [東証P]、東レ <3402> [東証P]、旭化成 <3407> [東証P]といった化学メーカーなどが関連銘柄の中心になるだろう。加えて、農業DXを展開するスタートアップ企業も多く、注目度が高い銘柄は少なくない。
●NXHDやヨコオ、ヤマタネなどに活躍期待
NIPPON EXPRESS ホールディングス <9147> [東証P]~テクノロジーで農業課題を解決するスタートアップ企業のAGRIST(宮崎県新富町)と9月30日に資本・業務提携契約を締結した。AGRISTは収穫ロボットなど、AIとロボットを活用したスマート農業パッケージを販売している。今後は日本各地の地方自治体と連携し、農業に関する共同実証プロジェクトなどに取り組む計画だ。
ヨコオ <6800> [東証P]~車載アンテナなどの通信機器や回路検査用コネクターなどを手掛ける。北海道標津町で創業したスタートアップ企業のエゾウィン社が手掛ける農作業支援システム「Reposaku(レポサク)」に、同社の小型フルバンドGNSSアンテナが採用されている。
ユナイテッド <2497> [東証G]~教育事業、人材紹介・採用支援の人材マッチング事業、ウェブ広告運営などのアドテク・コンテンツ事業のほか、企業への投資を行う投資事業を手掛ける。投資事業においては、これまで数々のベンチャー・スタートアップ企業に投資を行ってきた。21年7月には農業分野の総合人材サービスを展開するLife Lab(東京都港区)、23年10月にはAIとロボットで有機農業の自動化を進めるトクイテン(名古屋市西区)、同11月には水稲栽培用の自動抑草ロボット「アイガモロボ」を開発するNEWGREEN(東京都小金井市)社へ出資している。
伊藤園 <2593> [東証P]~茶系飲料の「お~いお茶」が看板商品の大手総合飲料メーカー。24年2月に営農支援ツール「アグリノート」などを開発・運営するウォーターセル(新潟市中央区)社に出資している。今回の資本・業務提携により、茶業従事者に沿うシステム開発を高度化し、茶農業のデジタル化による持続可能な茶農業の実現に取り組む。
九州電力 <9508> [東証P]~九州電グループで蓄電システムや無停電電源装置、IP対応監視端末装置などを手掛けるニシム電子工業では、IoTを活用した農業向けセンサー「MIHARAS(ミハラス)」を展開。水田、畑、ハウスの環境データを手元で簡単に監視できる製品であり、圃場の「見回り省力化」「生産性向上」を支援する。
NSW <9739> [東証P]~ソフト開発やデバイス開発、クラウドサービスなどを手掛ける情報システム会社。汎用ロボットシステム開発フレームワーク「GEBOTS」は、各種走行装置(ロボット)に取り付けることで、必要な機能を付与できる自律走行制御ユニットになる。また、「自動草刈りロボット」を用いたシェアリングサービスを推進している。
ヤマタネ <9305> [東証P]~農家向け脱炭素施策の収益化とカーボンクレジットの流通サポートを手掛けるフェイガー(東京都千代田区)と23年7月に業務提携。環境フレンドリーなイメージのある農業だが、農業由来の温室効果ガスの排出も非常に多く、世界的に課題視されている。業務提携はこの課題解決をするだけでなく、同時に農家の新たな収益源の獲得につながる可能性もあり、今後の取り組みにも注目したい。
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