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―重症化リスク高まる「N501Y」、変異と闘う検査・治療薬・空気清浄機に注目―
新型コロナウイルスの感染が止まらない。ここにきては、感染力が強い「変異株」の流行が不安を増幅させている。特に「N501Y」といわれる変異株が急速に広がりを見せており、重症化リスクが非常に高いことから警戒感が高まっている。4月に入ってからは、猛威を振るうインド型変異株についても国内で確認されるなど懸念は深まる一方だ。危機的な状況下で、変異株の脅威と闘う関連銘柄の動向を追った。
●「もう7割近くまで上昇している」
政府は、変異株の感染拡大などを背景に、4都府県の緊急事態宣言について31日まで延長。また、12日から愛知県と福岡県を対象地域に加えることを決定した。ここにきて急激な感染拡大をみせるN501Y変異株は、主に英国型、南アフリカ型、ブラジル型が持っているといわれる。小池百合子東京都知事は7日の記者会見で、N501Y変異株について「従来株に比べ感染力が1.3から1.9倍強い」とし、「都内での発生割合がもう7割近くまで上昇している」と危機感をあらわにした。東京都の資料によると、海外においてはN501Y変異株について、死亡リスクが1.55倍上昇するとの報告もあるだけに、これまで以上の感染防止対策の実行が重要になる。
新型コロナウイルスのワクチン接種が思うように進まないことに加え、医療現場の逼迫が急激に進んでおり、状況は悪化の一途をたどっている。更に、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性が指摘されている「E484K」の変異株にも警戒が必要なうえ、インドで急拡大している1つのウイルス内で2つの変異が起きる「二重変異株」も国内で確認された。変異株に流行の主体が移行するなか、この新たな脅威と対峙するための新しい戦略と技術が求められている。
●休養十分で動向注視
急速に変異をみせる新型コロナウイルスだが、最大の不安材料は承認及び申請中のワクチンの有効性への影響だ。厚生労働省は、現在のところ「一般論として、ウイルスは絶えず変異を起こしていくもので、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではない」と公表している。ただ、高まる重症化リスクに加え、インド型においてはワクチンの有効性の低下も伝わっているだけに早急な対応が迫られている。
変異株の流行は、ここまで新型コロナウイルスと闘ってきた研究機関や企業にとっても大きな脅威となっている。急拡大する感染状況において、変異株に対応した新技術の開発は時間との闘いでもあり、そうたやすくはない。株式市場でも変異株の感染拡大阻止に絡む銘柄に関心が高まっているが、関連株の株価は総じて冴えない状況が続いている。ただ、コロナ禍においても業績面で健闘している銘柄も多く、変異株が感染拡大するなか見直し機運が高まる可能性もある。また、休養十分な銘柄も少なくないだけに、決算発表を絡め今後の動向から目が離せない。
●急速人気のトランスG
直近では、創薬用マウスを使った遺伝子解析を手掛けるバイオベンチャーで新型コロナウイルスの検査受託事業も展開しているトランスジェニック <2342> [東証M]に注目が集まった。同社は6日取引終了後、子会社を通じて新型コロナウイルス変異株のスクリーニング検査受託を10日から開始することを発表。同検査は、現在実施している新型コロナウイルス PCR検査において陽性となった検体を対象に、N501Y変異株のスクリーニング検査を追加実施するもの。これを受け、翌日の株価は急動意しており、変異株に対する株式市場の関心の高さをうかがわせるものとなった。
●変異検査リードするタカラバイオ、島津
タカラバイオ <4974> は今月19日から、変異株の2種類の変異(N501Y、E484K)を同時に検出可能なPCR試薬(研究用試薬)を販売する。同時に行うことで、1時間以内で迅速・簡便に検出できるようになったという。従来は、2度行う必要があったが、今回の改良により時間短縮につながった。同社は、これまでもPCR検査関連製品の安定供給に取り組んできており、これを業績にも反映させている。また、アンジェス <4563> [東証M]、大阪大学などのグループとともに開発を進める新型コロナワクチンへの期待も大きく、“日の丸ワクチン”誕生が待望されるなか、その動向にも注目が集まっている。株価は2月15日に3340円まで買われ年初来高値を更新したものの、その後は調整局面入り。現在は2800円近辺で下値模索の状況にある。
また、島津製作所 <7701> も変異株の感染拡大に敏速に対応している。同社は、昨年の感染拡大当初から新型コロナウイルス検出試薬キットを発売するなど検査体制の拡充に貢献してきた。5月6日にはN501Y変異を持つ新型コロナウイルス変異株をPCR検査で検出する「新型コロナウイルス変異検出コアキット」及び「N501Yプライマー/プローブセット」(いずれも研究用試薬)を国内で販売開始した。昨年4月発売の「新型コロナウイルス検出試薬キット」(研究用試薬)をベースにしたもので、特定の変異部位を唾液や鼻咽頭拭い液などの検体から直接検出することが可能だという。同社のPCR検査の試薬キットは、従来の煩雑な核酸(RNA)の抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手が削減でき、かつ2時間以上かかっていた検査を約1時間に短縮できるという。株価は、2月22日に4450円で年初来高値をつけた後は上昇一服、現在は4000円手前まで戻したことで底打ち感も。
●PSS、シスメックスに活躍期待
プレシジョン・システム・サイエンス <7707> [東証M]は、提携するエリテック社(フランス)製のCOVID-19ウイルス変異検出用試薬(研究用試薬)を4月19日から販売開始。同製品は、PSSが販売する全自動PCR検査装置「ジーンリード エイト」と「エリート インジーニアス」に対応した、N501Y及びE484K変異を同時検出するマルチプレックスPCR試薬。研究機関によるゲノム解析の結果を待たずに、医療現場において従来株感染と変異株感染との区別が可能となることで、院内感染対策としても効力を発揮しそうだ。
検体検査機器大手のシスメックス <6869> にも注目したい。同社は4月14日に新型コロナウイルスのRNAを検出するSARSコロナウイルス核酸キット「DetectAmp SARS-CoV-2 RT-PCRキット」について体外診断用医薬品としての製造販売承認を取得し、同日付で保険適用された。同製品は、変異株(英国型、南アフリカ型、ブラジル型)について理論上検出が可能であることが基礎実験として確認されたとしており、今後臨床検体を用いてその性能を確認する予定だという。
●オンコリス、「OBP-2011」が有効性確認
世界各国で新型コロナウイルスのワクチン開発競争が繰り広げられ、日本でも国産ワクチン誕生が待たれるが、治療薬の開発も重要課題の一つだ。特に、変異型が凄まじい勢いで広がる状況においては、これに対応した治療薬への関心は非常に高い。
治療薬を巡る動きで、直近注目を集めたのがオンコリスバイオファーマ <4588> [東証M]だ。同社は3月23日取引終了後、開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬「OBP-2011」が変異型コロナウイルスに対する有効性を実験で確認したと発表している。更に同社は4月20日、OBP-2011に関して、新日本科学 <2395> と共同開発契約を締結することで合意したと発表。OBP-2011は、新型コロナウイルス感染症の発症初期に対する経口治療薬を目指し前臨床試験を進めているが、今後予定されている同薬の前臨床試験における開発スピードを上げ、臨床試験開始までの期間を短縮することを目指す。更に、治験薬原薬のGMP製造をイワキ <8095> 連結子会社の岩城製薬へ委託することを決定している。同社は、前週末7日に決算を発表。このなかで、同治療薬について「2022年の治験申請を目指した活動を推進する」としており、オンコリスに加え、強力タッグを組む新日本科学、イワキの動向からも目が離せない。
●日機装、深紫外線LEDの変異株不活化確認
繰り返される新型コロナウイルスの感染拡大だが、商業施設をはじめ医療機関など、あらゆる場所で目につくようになったのが深紫外線LEDを用いた空気清浄機だ。いまやウイルス対策として欠かせない存在となったが、変異株の流行がその効果に不安を投げかけている。
こうしたなか日機装 <6376> は、4月5日に共同研究講座を持つ宮崎大学が、深紫外線LEDを用いた新型コロナウイルス変異株の不活化試験で、不活化を確認したと発表。同社は、深紫外線LED技術を活用した空間除菌消臭装置「エアロピュア」が好調で、医療機関を中心に公共交通機関、飲食店などから引合いが増加している。変異株の不活化が確認できたことで、更なる需要拡大につながりそうだ。また4月27日には、より広い空間に対応した空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)Series M(20畳用)」を発売しており、消費者のニーズを果敢に捉えている。株価は調整局面が続いていたものの、ここにきて1000円近辺で底堅さをみせるなど売り一巡感が漂っている。
株探ニュース
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