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昭和産業のニュース
*18:04JST 昭和産業 Research Memo(4):2024年3月期は価格改定が進み増収増益(1)
■業績動向
1. 2024年3月期の業績
昭和産業<2004>の2024年3月期の連結業績は、売上高346,358百万円(前期比3.4%増)、営業利益13,146百万円(同214.2%増)、経常利益16,558百万円(同153.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益12,358百万円(同58.9%増)と増収増益で着地した。経営環境は新型コロナウイルス感染症の5類移行後、インバウンド需要の回復や経済活動の正常化等が進んだが、前期に続き為替の円安傾向が輸入コストやエネルギーコストの上昇を招いた。一方、穀物相場は前期と比べ期中を通じて比較的落ち着いたトレンドで推移した。同社は、輸入小麦の政府売渡価格が2023年4月に平均5.8%引き上げられ、同10月には平均11.1%引き下げられたことを受けて、価格改定を実施した。同社では2024年3月期からマーケットイン志向のワンストップ型の営業組織に改編しており、これが奏功したことに加え、適正価格での販売に注力したことにより主力の食品事業を中心に売上高を伸ばし、増収を確保した。食品事業の増収の要因としては、製粉カテゴリにおける小麦粉製品の価格改定の実施のほか、製油カテゴリにおける長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど課題解決型営業提案の効果。さらに糖質カテゴリにおける子会社とのシナジー効果が大きい。販売数量では小麦粉は前期並み、プレミックスは前期比減、パスタは前期を上回ったが、価格改定により全体での増収を確保した形である。製油カテゴリも同様に、適正価格での販売と、商品提案や課題解決型営業に取り組んだが、減収となった。糖質カテゴリは適正価格での販売に努めたほか、独自性のある商品の拡販や飲料用途などの需要増加により販売数量が前期を上回り、増収となった。
利益面については、各カテゴリで原価に見合った適正価格での販売の推進や、食品事業の各カテゴリでグループ全体での生産拠点最適化による生産性向上・原価低減等により、物流コスト増加等による販管費の増加をカバーしたことで大幅増益を確保した。
2. 営業組織改編
同社は、2023年2月に策定した「中期経営計画23-25」の基本戦略の第一歩として、同年4月に営業組織を、「プロダクトアウト型」の事業管理・販売活動から、業態別・顧客別の「ワンストップ型」に抜本的に改編した。従来は、製粉部、油脂部、食品部、糖質部など各専門分野に強みを持つ営業部門のそれぞれが、重複する顧客に対して提案・製品販売を行っていたが、営業部門を販売チャネルに対応した業態別に再編し、顧客に対する営業窓口を一本化する「マーケットイン型」の組織体制・事業管理体制に移行した。これにより、同社グループの強みである多様な事業ポートフォリオを最大限に生かし、顧客の「食」に関するあらゆる課題やニーズに最適なソリューションをワンストップで提供することを目指している。足元では顧客ニーズに対応した提案などの効果が製品面や顧客開拓で表れていることから、営業組織改編による取り組みへの効果は同社の業績に寄与すると弊社では考えている。
営業組織の改編に併せて、新たに事業領域の拡大を推進する専門組織「ビジネスプランニング部」を新設した。事業を軸としたグループ会社との一体的な経営管理・事業展開を進めることで、事業ポートフォリオのマネジメントを強化し、グループシナジーを最大化することで、新商品開発や新規市場参入への注力、機能性商品の販売強化による顧客基盤の拡充・拡販を計画している。そのほか、事業戦略と連携した商品開発体制を強化するため、研究開発部門と生産・技術部門を「テクニカル部門」に統合した。管理部門は「コーポレート部門」に改編し、グループ全体のコーポレート部門として機能の専門化を推進する。
同社によれば、営業組織改編は2024年3月期から効果が出ているようだ。乾麺パスタを水に浸けて茹で時間の短縮を図っているが、味覚や食感等の品質が犠牲になっているという外食産業の顧客の課題に対し、複数の小麦粉の最適配合と製造工程で工夫を凝らすことにより弾力性のある食感と風味の向上に加え、茹で時間を短縮した生パスタを開発した。また、乾麺パスタの提供時間を短縮し、アルデンテ食感のパスタを提供したいという顧客ニーズに対し、乾麺パスタの原料と製造工程を見直しし、新商品を開発した。
営業組織の改編は営業社員にも好影響を与えている。ワンストップ型の営業体制となったことで営業社員の裁量権が拡がり、仕事を進めやすい環境になっているようだ。その効果もあって、営業社員が自発的にワンストップ型営業の推進に必要な多方面の知識(各事業で取り扱う製品知識)を習得し、不足する知識はその製品に関する専門知識を有するベテラン社員に教えを乞うなどしているようで、社内に人材育成の良好な環境が醸成されている。同社としてもそのような環境を後押しすべく、営業社員に学習教材を提供するなど、営業活動をバックアップする体制整備を進めている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<SO>
1. 2024年3月期の業績
昭和産業<2004>の2024年3月期の連結業績は、売上高346,358百万円(前期比3.4%増)、営業利益13,146百万円(同214.2%増)、経常利益16,558百万円(同153.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益12,358百万円(同58.9%増)と増収増益で着地した。経営環境は新型コロナウイルス感染症の5類移行後、インバウンド需要の回復や経済活動の正常化等が進んだが、前期に続き為替の円安傾向が輸入コストやエネルギーコストの上昇を招いた。一方、穀物相場は前期と比べ期中を通じて比較的落ち着いたトレンドで推移した。同社は、輸入小麦の政府売渡価格が2023年4月に平均5.8%引き上げられ、同10月には平均11.1%引き下げられたことを受けて、価格改定を実施した。同社では2024年3月期からマーケットイン志向のワンストップ型の営業組織に改編しており、これが奏功したことに加え、適正価格での販売に注力したことにより主力の食品事業を中心に売上高を伸ばし、増収を確保した。食品事業の増収の要因としては、製粉カテゴリにおける小麦粉製品の価格改定の実施のほか、製油カテゴリにおける長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど課題解決型営業提案の効果。さらに糖質カテゴリにおける子会社とのシナジー効果が大きい。販売数量では小麦粉は前期並み、プレミックスは前期比減、パスタは前期を上回ったが、価格改定により全体での増収を確保した形である。製油カテゴリも同様に、適正価格での販売と、商品提案や課題解決型営業に取り組んだが、減収となった。糖質カテゴリは適正価格での販売に努めたほか、独自性のある商品の拡販や飲料用途などの需要増加により販売数量が前期を上回り、増収となった。
利益面については、各カテゴリで原価に見合った適正価格での販売の推進や、食品事業の各カテゴリでグループ全体での生産拠点最適化による生産性向上・原価低減等により、物流コスト増加等による販管費の増加をカバーしたことで大幅増益を確保した。
2. 営業組織改編
同社は、2023年2月に策定した「中期経営計画23-25」の基本戦略の第一歩として、同年4月に営業組織を、「プロダクトアウト型」の事業管理・販売活動から、業態別・顧客別の「ワンストップ型」に抜本的に改編した。従来は、製粉部、油脂部、食品部、糖質部など各専門分野に強みを持つ営業部門のそれぞれが、重複する顧客に対して提案・製品販売を行っていたが、営業部門を販売チャネルに対応した業態別に再編し、顧客に対する営業窓口を一本化する「マーケットイン型」の組織体制・事業管理体制に移行した。これにより、同社グループの強みである多様な事業ポートフォリオを最大限に生かし、顧客の「食」に関するあらゆる課題やニーズに最適なソリューションをワンストップで提供することを目指している。足元では顧客ニーズに対応した提案などの効果が製品面や顧客開拓で表れていることから、営業組織改編による取り組みへの効果は同社の業績に寄与すると弊社では考えている。
営業組織の改編に併せて、新たに事業領域の拡大を推進する専門組織「ビジネスプランニング部」を新設した。事業を軸としたグループ会社との一体的な経営管理・事業展開を進めることで、事業ポートフォリオのマネジメントを強化し、グループシナジーを最大化することで、新商品開発や新規市場参入への注力、機能性商品の販売強化による顧客基盤の拡充・拡販を計画している。そのほか、事業戦略と連携した商品開発体制を強化するため、研究開発部門と生産・技術部門を「テクニカル部門」に統合した。管理部門は「コーポレート部門」に改編し、グループ全体のコーポレート部門として機能の専門化を推進する。
同社によれば、営業組織改編は2024年3月期から効果が出ているようだ。乾麺パスタを水に浸けて茹で時間の短縮を図っているが、味覚や食感等の品質が犠牲になっているという外食産業の顧客の課題に対し、複数の小麦粉の最適配合と製造工程で工夫を凝らすことにより弾力性のある食感と風味の向上に加え、茹で時間を短縮した生パスタを開発した。また、乾麺パスタの提供時間を短縮し、アルデンテ食感のパスタを提供したいという顧客ニーズに対し、乾麺パスタの原料と製造工程を見直しし、新商品を開発した。
営業組織の改編は営業社員にも好影響を与えている。ワンストップ型の営業体制となったことで営業社員の裁量権が拡がり、仕事を進めやすい環境になっているようだ。その効果もあって、営業社員が自発的にワンストップ型営業の推進に必要な多方面の知識(各事業で取り扱う製品知識)を習得し、不足する知識はその製品に関する専門知識を有するベテラン社員に教えを乞うなどしているようで、社内に人材育成の良好な環境が醸成されている。同社としてもそのような環境を後押しすべく、営業社員に学習教材を提供するなど、営業活動をバックアップする体制整備を進めている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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