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昭和産業のニュース
*18:01JST 昭和産業 Research Memo(1):2024年3月期は価格改定が進み増収増益、グループシナジーの効果が現れる
■要約
昭和産業<2004>は、1960年に世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した食品中核企業である。「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」をグループ経営理念とし、小麦・大豆・菜種・トウモロコシの4つを国内食品メーカーのなかで唯一取り扱う。ブランドメッセージとして「穀物ソリューション・カンパニー」を掲げている。
1. 2024年3月期の業績
2024年3月期の連結業績は、売上高346,358百万円(前期比3.4%増)、営業利益13,146百万円(同214.2%増)、経常利益16,558百万円(同153.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益12,358百万円(同58.9%増)と増収増益で着地した。経営環境は、新型コロナウイルス感染症の5類移行後、インバウンド需要の回復や経済活動の正常化等が進んだが、前期に続き、為替の円安傾向が輸入コストやエネルギーコストの上昇を招いた。一方、穀物相場は前期と比べ期中を通じて比較的落ち着いたトレンドで推移した。同社は経済活動等の回復を背景に、2024年3月期からマーケットイン志向のワンストップ型の営業組織に改変しており、これが奏功したことに加え、適正価格での販売に注力したことにより主力の食品事業を中心に売上高を伸ばし、増収を確保した。食品事業の増収の要因としては、製粉カテゴリにおける小麦粉製品の価格改定の実施のほか、製油カテゴリにおける長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど課題解決型営業提案の効果。さらに糖質カテゴリにおける子会社とのシナジー効果が大きい。販売数量では小麦粉は前期並み、プレミックスは前期比減、パスタは前期を上回ったが、価格改定により全体での増収を確保した形である。製油カテゴリも同様に、適正価格での販売と、商品提案や課題解決型営業に取り組んだが、減収となった。糖質カテゴリは適正価格での販売に努めたほか、独自性のある商品の拡大や飲料用途などの需要増加により販売数量が前期を上回り、増収となった。利益面については、各カテゴリで原価に見合った適正価格での販売の推進や、食品事業の各カテゴリでグループ全体での生産拠点の最適化による生産性向上・原価低減等により、物流コスト増加等による販管費の増加をカバーしたことで大幅増益を確保した。
2. 2025年3月期の業績予想
2025年3月期は、売上高346,000百万円(前期比0.1%減)、営業利益12,000百万円(同8.7%減)、経常利益13,000百万円(同21.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益11,000百万円(同11.0%減)を計画している。前期に引き続き経済活動や社会活動の正常化、インバウンド需要の回復等が期待される一方で、緊迫した世界情勢など、先行き不透明な状況にある。穀物相場は落ち着いた状況にあるが、為替の動向は円安基調が継続している。加えて2025年3月期はいわゆる物流の2024年問題で物流コストの上昇が予想されるほか、賃上げ等の人件費の増加要因もあって、厳しい事業環境が予想される。同社は、引き続き製造コスト等に見合った適正価格での製品販売に注力するとともに、事業環境に左右されにくい収益構造の確立に向けて「中期経営計画23-25」で掲げた5つの基本戦略に基づく施策を推進する考えである。セグメント別に見ると、売上高は食品事業及びその他については前期並みだが、飼料事業については若干の減収を見込む。営業利益は食品事業で減益を見込んでいる。
3. 「中期経営計画23-25」の進捗状況
同社は創立90周年を迎える2026年3月期のありたい姿として、長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」(2018年3月期~2026年3月期の9年間)を策定しており、2023年2月に3rd Stage「中期経営計画23-25」を公表した。基本戦略として、1) 基盤事業の強化、2) 事業領域の拡大、3) 環境負荷の低減、4) プラットフォームの再構築、5) ステークホルダーエンゲージメントの強化、の5つを掲げ、組織改編による販売力の強化、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化、高付加価値商品の拡販、海外事業の拡大、適正な価格改定などにより、2026年3月期に経常利益130億円を達成する計画だ。定量目標では、経常利益以外に、ROE(自己資本当期純利益率)7.0%以上、NET D/Eレシオ0.6倍以下、新たな管理指標としてROIC※14.0%以上、CCC※275日を掲げた。
※1 ROIC=税引後営業利益(法人税等を営業利益の30%として計算)÷投下資本(有利子負債(NET)+自己資本)。
※2 CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル):運転資金の回転期間=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数。
中期経営計画の初年度となる2024年3月期は、基盤事業の強化で2023年3月期比27億円増の目標に対し39億円、事業環境の回復・環境変化への対応で同30億円増の目標に対し49億円を創出し、大きな成果を挙げた。一方、事業領域の拡大では同8億円増の目標に対して1億円の創出にとどまった。同社としては中期経営計画2期目となる2025年3月期においても、ワンストップ型営業体制を生かした穀物ソリューションの進化やグループを挙げての事業構造改革によるコスト圧縮、ベトナム子会社の新工場建設、コロナ禍や物価高騰により売上げが減少している製品の販売数量回復等の施策を推進して計画達成を図る考えである。
■Key Points
・2024年3月期は価格改定が進み増収増益を達成
・2025年3月期は適正価格での販売に注力する方針だが、コストアップを考慮し、売上高は前期並み、各利益は減益を見込む
・営業体制を「プロダクトアウト型」から業態別・顧客別の「ワンストップ型」に改編
・新たな財務KPIとしてROIC、CCCを導入し、経営の進捗状況を管理
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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昭和産業<2004>は、1960年に世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した食品中核企業である。「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」をグループ経営理念とし、小麦・大豆・菜種・トウモロコシの4つを国内食品メーカーのなかで唯一取り扱う。ブランドメッセージとして「穀物ソリューション・カンパニー」を掲げている。
1. 2024年3月期の業績
2024年3月期の連結業績は、売上高346,358百万円(前期比3.4%増)、営業利益13,146百万円(同214.2%増)、経常利益16,558百万円(同153.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益12,358百万円(同58.9%増)と増収増益で着地した。経営環境は、新型コロナウイルス感染症の5類移行後、インバウンド需要の回復や経済活動の正常化等が進んだが、前期に続き、為替の円安傾向が輸入コストやエネルギーコストの上昇を招いた。一方、穀物相場は前期と比べ期中を通じて比較的落ち着いたトレンドで推移した。同社は経済活動等の回復を背景に、2024年3月期からマーケットイン志向のワンストップ型の営業組織に改変しており、これが奏功したことに加え、適正価格での販売に注力したことにより主力の食品事業を中心に売上高を伸ばし、増収を確保した。食品事業の増収の要因としては、製粉カテゴリにおける小麦粉製品の価格改定の実施のほか、製油カテゴリにおける長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど課題解決型営業提案の効果。さらに糖質カテゴリにおける子会社とのシナジー効果が大きい。販売数量では小麦粉は前期並み、プレミックスは前期比減、パスタは前期を上回ったが、価格改定により全体での増収を確保した形である。製油カテゴリも同様に、適正価格での販売と、商品提案や課題解決型営業に取り組んだが、減収となった。糖質カテゴリは適正価格での販売に努めたほか、独自性のある商品の拡大や飲料用途などの需要増加により販売数量が前期を上回り、増収となった。利益面については、各カテゴリで原価に見合った適正価格での販売の推進や、食品事業の各カテゴリでグループ全体での生産拠点の最適化による生産性向上・原価低減等により、物流コスト増加等による販管費の増加をカバーしたことで大幅増益を確保した。
2. 2025年3月期の業績予想
2025年3月期は、売上高346,000百万円(前期比0.1%減)、営業利益12,000百万円(同8.7%減)、経常利益13,000百万円(同21.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益11,000百万円(同11.0%減)を計画している。前期に引き続き経済活動や社会活動の正常化、インバウンド需要の回復等が期待される一方で、緊迫した世界情勢など、先行き不透明な状況にある。穀物相場は落ち着いた状況にあるが、為替の動向は円安基調が継続している。加えて2025年3月期はいわゆる物流の2024年問題で物流コストの上昇が予想されるほか、賃上げ等の人件費の増加要因もあって、厳しい事業環境が予想される。同社は、引き続き製造コスト等に見合った適正価格での製品販売に注力するとともに、事業環境に左右されにくい収益構造の確立に向けて「中期経営計画23-25」で掲げた5つの基本戦略に基づく施策を推進する考えである。セグメント別に見ると、売上高は食品事業及びその他については前期並みだが、飼料事業については若干の減収を見込む。営業利益は食品事業で減益を見込んでいる。
3. 「中期経営計画23-25」の進捗状況
同社は創立90周年を迎える2026年3月期のありたい姿として、長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」(2018年3月期~2026年3月期の9年間)を策定しており、2023年2月に3rd Stage「中期経営計画23-25」を公表した。基本戦略として、1) 基盤事業の強化、2) 事業領域の拡大、3) 環境負荷の低減、4) プラットフォームの再構築、5) ステークホルダーエンゲージメントの強化、の5つを掲げ、組織改編による販売力の強化、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化、高付加価値商品の拡販、海外事業の拡大、適正な価格改定などにより、2026年3月期に経常利益130億円を達成する計画だ。定量目標では、経常利益以外に、ROE(自己資本当期純利益率)7.0%以上、NET D/Eレシオ0.6倍以下、新たな管理指標としてROIC※14.0%以上、CCC※275日を掲げた。
※1 ROIC=税引後営業利益(法人税等を営業利益の30%として計算)÷投下資本(有利子負債(NET)+自己資本)。
※2 CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル):運転資金の回転期間=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数。
中期経営計画の初年度となる2024年3月期は、基盤事業の強化で2023年3月期比27億円増の目標に対し39億円、事業環境の回復・環境変化への対応で同30億円増の目標に対し49億円を創出し、大きな成果を挙げた。一方、事業領域の拡大では同8億円増の目標に対して1億円の創出にとどまった。同社としては中期経営計画2期目となる2025年3月期においても、ワンストップ型営業体制を生かした穀物ソリューションの進化やグループを挙げての事業構造改革によるコスト圧縮、ベトナム子会社の新工場建設、コロナ禍や物価高騰により売上げが減少している製品の販売数量回復等の施策を推進して計画達成を図る考えである。
■Key Points
・2024年3月期は価格改定が進み増収増益を達成
・2025年3月期は適正価格での販売に注力する方針だが、コストアップを考慮し、売上高は前期並み、各利益は減益を見込む
・営業体制を「プロダクトアウト型」から業態別・顧客別の「ワンストップ型」に改編
・新たな財務KPIとしてROIC、CCCを導入し、経営の進捗状況を管理
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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