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明豊ファシリ Research Memo(2):「フェアネス」と「透明性」を企業理念とするCM業界のパイオニア(1)

配信元:フィスコ
投稿:2020/01/16 15:02
■事業概要

1. コンストラクション・マネジメントとは
コンストラクション・マネジメント(以下、CM)とは、米国において普及した建設生産・管理システムである。具体的にはコンストラクション・マネージャー(CMr)が技術的な中立性を保ちつつ、発注者の代行者または補助者となって発注者側に立ち、基本計画作成や工事発注方式の検討、設計者選定支援、設計マネジメント、施工マネジメント等各種マネジメント業務を通じたコスト管理、工事進捗管理などを行う発注者支援サービスのことを指す。明豊ファシリティワークス<1717>はCM事業(発注者支援事業)を専業とした国内の先駆け的な唯一の東証1部上場企業である。

同社サービスの契約形態は「ピュアCM方式」と「アットリスクCM方式」の2通りに分かれている。「ピュアCM方式」とは同社と施主がCM業務委託契約(マネジメントフィー契約)を結ぶ方式で、設計や施工会社との契約は施主が直接行う格好となる。同社の売上高に計上されるのはマネジメントフィーのみとなり、売上原価としてマネジメントに関わるコストなどが計上される。

一方、「アットリスクCM方式」とは、同社が施主に代わって施工会社と直接、工事請負契約を結ぶ方式で、売上高はマネジメントフィーに工事管理フィー、建設工事の実費額(コスト)が加算されることになる。売上原価にはマネジメントフィーや工事管理フィーにかかる社内コストと、施主が承認した建設工事の実費額(オープンブック方式)が含まれる。工事実費額が売上高と売上原価に同額で計上されるため、この部分に関して同社の利益は発生しないことから、売上高総利益率で見れば「アットリスクCM方式」のほうが低くなる。

どちらの方式を選択するかは、施主側の意向によって変わるため、事業全体で見た場合に「ピュアCM方式」による契約率(または収入)が上昇すれば売上高が減少する代わりに、売上総利益率が上昇することになる。このため、同社は経営指標として売上高ではなく、売上総利益と経常利益をベースに収益管理を行っている。

2. 「明豊のCM」の特徴
同社は経営理念に「フェアネス」と「透明性」を掲げ、プロが供給側に偏在するなかで、施主側に立つことに徹した発注者支援をメイン業務としている。CM方式の最大のメリットは、一般的な一括請負方式と比較して、発注プロセスと工事項目別コストを発注者(施主)と可視化されたなかで共有し、複数の選択肢から顧客が納得する最適な方法を選択、実行できることにある。同社は20数年にわたる数多くの事例から得られた実勢コストを社内でデータベース化しており、発注者側に立って適正な費用の査定が行えることを強みとしている。

「明豊のCM」方式では基本計画や、建築、電気・空調・情報通信・AV機器などの設備工事に至るまであらゆる分野の専門家を社内に配置し、顧客側に立った適正な基本計画づくりやコスト管理・査定を行っている。このため、過大に見積もられた費用があれば元請け業者に指摘し改善させる、あるいは分離発注を行って直接施工業者へ発注することで、余剰なコストを圧縮している。また、顧客が事業の検討を開始した基本構想段階で精緻な予算を作成し、これを顧客の予算を上限(CAP)として管理された予算内での「プロジェクトの早期立ち上げ」に貢献するなど、顧客目標を確実に達成することで高い信頼を獲得している。

3. 同社の強み
CM事業者にとって競争力の源泉は人材となる。特に大規模工事に対応するために必要となるのは、各工程において施主側に立ち設計要件の整理やコスト管理・審査ができる専門家や、工期管理などトータルマネジメントができる人材、大手施工会社や設計事務所などとの交渉において対等に渡り合える経験やノウハウを持ち合わせた人材をどれだけそろえているかが重要となる。

同社は、建設会社や施工会社、設計事務所など実際の現場を経験した人材を中途採用により厳選して獲得しており、建設プロジェクトの基本計画策定からコスト見積り・工期管理まですべての工程におけるプロフェッショナル集団とも言える。CM事業を先駆けて展開してきたことで、業界内でのブランド力も向上しており、こうした専門的なスキルを持つ人材を多数そろえていることが同社の強みとなっている。特に、公共分野のプロポーザル方式によるCM案件では、評価基準の1つとしてCCMJ(認定コンストラクションマネージャー)の保有資格者をどの程度配置しているかが含まれており、重要な指標となっている。

また、社員一人ひとりが経営理念である「フェアネス」と「透明性」を心掛け、顧客からの信頼を獲得してきたことが、同社の成長の原動力になっている。社員数246名(2019年9月末)の企業規模において、新規顧客の開拓、特に大規模案件の開拓は一般的に困難だが、同社は既存顧客のうち9割近くがメーカーや金融機関、学校・医療法人、地方自治体を含めた大企業や公共体で占められており、新規顧客もその大半を既存顧客からの紹介によって獲得している。受注粗利益に占める既存顧客の比率で見ると、既存顧客で7割弱を占めているが、これは同社のCMサービスを利用した企業から、継続してプロジェクトの依頼を受けているためで、顧客からの信頼性の高さの裏付けともなっている。また、LEGOLAND Japan(株)やSAPジャパン(株)、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)、トムソン・ロイター・ジャパン(株)(現 リフィニティブ・ジャパン(株))など大手外資系企業の日本拠点の案件を多く手掛けているのも特徴となっている。

一方で、同社は信頼関係の構築に関して、顧客だけでなく利害関係者となる元請けの建設会社とも良好な関係を構築している。最近では、着工後における施工者からの改善提案など、施主側が理解し難い専門的な検討事項についても、同社が間に立って施主に丁寧に説明することで、スムーズに話が進むといった点が高く評価されている。利害関係者からであっても真に顧客の役に立つ提案については真摯に向き合う「フェアネス」「透明性」の基本方針が、顧客に対してだけでなくすべての関係者に対して実践されている証左と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ
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