下方の窓を下ひげで埋め、強い調整一巡感

著者:黒岩泰
投稿:2015/03/25 17:19

ROEは株式投資に不適当

 本日の日経平均は32.75円高の19746.20円で取引を終了した。後場に入ってから下落幅を拡大させる場面があったものの、引けにかけては持ち直し。プラス圏へと転じている。引き続き主力銘柄を循環物色する動きが出ており、期末の配当・優待取りの動きも相場を支えた。
 
 日経平均の日足チャートでは、長い下ひげが出現した。下方の窓(19565.44円―19584.73円)を完全に埋めており、調整一巡感の強いチャート。下値リスクは一気に後退しており、再び上昇しやすい需給となっている。明日は権利付き最終日ということもあり、配当・優待取りの駆け込み買いが入りそう。それにつれて日経平均も高値を更新しそうである。

 本日、循環物色の対象となったのは、建設や不動産セクターであった。いわゆる出遅れ感の強い銘柄群であり、一部では「低ROE銘柄が物色された」との解説も聞かれた。

 そこでいつも気になるのが「ROE」という指標だ。これは最近話題になっている指標でもあるが、日本語に直せば「株主資本利益率」ということになる。計算式は以下の通りだ。

「ROE=純利益÷純資産(株主資本)」

 それに対して、我々がよく使っているのは、PERやPBRである。PERとPBRの計算式はこうである。

「PER=株価÷1株当たり純利益(=時価総額÷純利益)」
「PBR=株価÷1株当たり純資産(=時価総額÷純資産)」

 この違いが分かるだろうか。そう、ROEには「株価」が入っていないのである。株価の値動きにまったく左右されないのだ。PERやPBRは株価指標であるのに対して、ROEは単なる財務指標。基本的に株式投資に使うのは不適当なのである。

 だから、最近「高ROEを物色」なんていう話が出ていたが、たとえばそのような銘柄をいくら買い上がっても、基本的にROEの値は変化しない。言い換えるならば、「高ROE銘柄は、いつまでも高ROE銘柄」なのである。ここに“違和感”を覚えるのである。
 
 一般投資家は、このへんを厳密に理解していない人が多い。マスコミが「高ROEがいい」って言ったら、その通りだと思ってしまうし、低PER銘柄や低PBR銘柄を素直に「割安」と考えている人も多いはずだ。それぞれの指標はそれぞれの特徴があり、使い方を間違うと、トンでもないミスを犯してしまう。だいたい、みんなが「高ROE」なんて言っているときは、その銘柄群は株価としてはピークを迎えているのだ。だから、本日のような「低ROEを物色」なんていうのは、単なる循環物色が進んでいるということを“後付けで”解説しているにすぎない。言葉をストレートに捉えてはいけないということだ。重要なのは、なぜそのような解説がなされているのかということ。その本質・背景を自分なりに考えてみることが大事なのだ。投資家にとって重要なのは、勝敗を左右する「変化の兆し」である。「何か変だな」と思う感覚が必要であり、それが投資経験として自らの脳に潜在的に刻み込まれていく。そろそろ起こるであろう「日経平均、ついに2万円を回復!」という大見出しも、「相場を始まり」を意味するものではなく、「終焉」を意味するということを、我々は本能で知っているということだ。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想