株価上昇と円安一服が好都合なワケ

著者:津田隆光
投稿:2015/03/12 19:01

6月までは“リスクテイク相場”継続か?

昨今、日本株の堅調さが際立ちます。
約15年ぶりの高値圏で推移し、かつて東京株式市場は『NY市場の写真相場』、また東京時間は『世界の昼休み』と揶揄された姿は今や昔。
その大きな原動力がGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)に代表されるPKO(プライス・キーピング・オペレーション:株価維持政策)、つまり公的資金の影響とも。

4月に迫った統一地方選挙に必勝を期す官邸サイドの思惑は、株価の上昇と円安の一服。
株高が選挙に与える効果は言うまでもありませんが、来月12日・26日に予定されている統一地方選挙投開票日までに急激な円安はむしろ“逆風”になってしまうという政治事情が。

この時期の急激な円安は、製造業主体の地方経済にとって大きな負担となり、「悪い円安」という野党の格好の攻撃材料にもなり得るため、“ほどほどのペース”で推移してくれることが好都合。
一方で、株価上昇自体は選挙支援になるため大いに歓迎すべき材料。その株価堅調の背景はGPIFのみならずゆうちょマネーや国家公務員共済組合連合会といった巨額の公的マネーが株式市場に流入していることや、企業のフリーキャッシュフローが自社株買いに向かっていることなどが取り沙汰されていることもあり、当面の株価下支え材料になりそう。

来週18日に公表されるFOMC声明文に「辛抱強く(be patient)」の一文が削除されることがほぼほぼ既定路線となる中、相場の教科書通りに従えば「6月リフトオフ」→「株価下落(ドル上昇)」となることが予想されていますが、裏を返せば一時的な下落はあっても6月まではリスクテイク相場環境が継続すると捉えてもよさそう。(少なくとも6月までは利上げをしない訳ですから。)

今年の相場は、例年の“Sell in May, and go away.”(=5月に売り逃げろ!)ではなく、“Sell in June, and take a rest.”(=6月に売って、ひと休み!)となるのでしょうか?

RBNZの本音は“利上げ回帰”?

本日東京時間早朝に発表されたRBNZ(NZ準備銀行)理事会では、政策金利を事前予想通り3.50%に据え置きましたが、声明文を見る限り政策スタンスがより「中立」に。ウィーラーRBNZ総裁が「原油安の影響をこなせばインフレ率は持ち直す」「NZは利下げに踏み切った国と置かれている状況が違う」とのコメントの言外の意を察すると、いつでも外部環境さえ整えば利上げに舵取りを戻したいとの本音も見え隠れします。

国内外を問わず、マーケットの鉄則は『中央銀行(の意向)には逆らうな』。
当面は素直に相場に乗ることを心掛け、再度「相場は極めてシンプルなロジックで動く」という金科玉条に従ってみてはどうでしょうか?
津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想