世界的な“通貨安競争”が激化!そこで注目すべきものとは・・・?

著者:津田隆光
投稿:2015/01/28 21:44

金融緩和ラッシュ

世界的な金融緩和連鎖、いわば“通貨安競争”が繰り広げられているのはご存知の通り。
2008年のリーマン・ショック以来、経済危機を乗り切るための“特効薬”として量的金融緩和(QE)を行った中央銀行を順に挙げてみると、米FRB、イングランド銀行、スウェーデン中央銀行、そして日銀と続き、直近では先週22日にECBが初のQEを実施。(QE規模は1兆ユーロ超)
そんな中、本日28日にシンガポール中銀が予想外の金融緩和を実施し、新たに“通貨安競争”に参入する形となりましたが、その背景にあるのは同国の相対的通貨高放置は観光立国として死活問題になってしまう焦燥感の証左とも。

また、来月4日にはトルコ中銀においても緊急利下げの可能性が取り沙汰されており(当初予定は2月24日。前日のCPI結果次第では20日の前倒し開催の可能性も。) 、まさに世界の金融市場は中央銀行による“金融緩和ラッシュ”と言っていいほど。

ここで少しおさらいを。同じ金融政策でも中央銀行が金利の調節を適宜行う「伝統的金融政策」と、マネタリーベースを拡大・縮小して金利の調整を行う「非伝統的金融政策」の2種類が存在し、ここで言う「金利」を前者では【名目金利】、後者では【実質金利】と呼び、主に日・米・欧で行っている中央銀行による金融政策では【実質金利】のコントロールがその目的となっています。
これ以上政策金利を下げることがままならない国・地域の中央銀行が、マネーを市中に放出してインフレ率を上昇させることにより【実質金利】を下げようとすることの理論的支柱こそ、“フィッシャー方程式”。

その“フィッシャー方程式”とは・・・<実質金利=名目金利-期待(予想)インフレ率>。
要は【実質金利】を下げることが自国経済を活性化するためのカンフル剤と捉えているため、その目的のための手段こそ、①【名目金利】(=政策金利)を下げるか、②【期待(予想)インフレ率】を上げるかのいずれかの施策を執っているのが現状。
自国経済のカンフル剤としての即効性で言えば、②の【期待(予想)インフレ率】を上げる方が有効とされていることもあり、多くの国や地域では「非伝統的金融政策」、つまりマネーを市場にばら撒く(=ヘリコプター・マネー)ことを主に先進国の中央銀行(日銀、ECB)が躍起になって行っているのが今の構図。
明日23日に予定されているRBNZ(NZ準備銀行)オフィシャルキャッシュレートや来月4日の開催可能性も取り沙汰されているトルコ中銀の決定会合において【名目金利】、つまり政策金利の引き下げがあるか否かに注目が集まっていますが、今後は物価動向、ひいては原油価格の動向が握っていると言っても過言ではありません。
今後の通貨動向を見通す上では、先述したフィッシャー方程式の【期待(予想)インフレ率】を左右する原油価格の動きと消費者物価指数からは目が離せない状況が続きそうです。
津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想