PER、PBR、配当利回りで思わず買いたくなる銀行株が何故か上がらない理由

著者:木村佳子
投稿:2014/06/27 07:02

上がってほしい銀行株が何故か上がらない理由

リーマンショックから6年。思えば、ここまでよく立ち直ったものだと感慨深いものがありますが、欧米先進国で発生した金融危機の影響がたちまち世界に押し寄せ、通貨、株式、債券、不動産価格など、軒並み大きく変動した2007年の序章から2009年にかけてはなかなか忘れられるものではありません。

その際、大儲けした会社や個人もいた一方、金融商品を所有していない人に予想外の影響がおよび、就職や雇用維持が困難になるなどのクライシスが見受けられました。

元は?といえば、土地価格のうなぎのぼりの状況で、その最高値を本来はローンを組めないような収入状況の人に住宅購入資金を貸し、それを収益源にしていた金融機関やそれに伴う信用保証のリスクをクレジット・デフォルト・スワップなどの金融商品に仕立てて高格付の金融商品に組み込んでいたことが発端でした。

そこで、リーマンショックのような世界規模の金融クライシスが二度と起こらないように、あるいは起こったとしても国民の税金では破たん処理をしないで済むように、金融機関の健全性と破綻のルールを作ろうとする世界規模の金融規制が検討されてきました。

その成果は2014年11月に予定されているブリスベーン・サミットでルールの最終化と適用に向けての確認がなされる予定です。

さて、そこで日本の金融機関は?

銀行の世界的な規制はバーゼル3と呼ばれる枠組みですが、日本の金融機関はこの規制に関してはほぼクリアしているようです。しかし、バーゼル3実行後の追加的な改革=バーゼル3.5、あるいはバーゼル4と呼ばれる規制(このコラムではバーゼル3.5と表記します)では日本の銀行は自己資本の積み増しをしなくてはならなくなる可能性がありそうです。

仮にそうなら、公募増資という選択肢が考えられ、公募増資は需給緩和となり得ることから敬遠要素と受け止める投資家が一定量いるようです。

実際はどうなるかわかりませんが、アベノミクス以来、一貫して上昇してきた面もあることから利益確定をしようとする動きとも相まって、せっかく日経平均株価が15000円台に乗っても、なぜか銀行株が冴えない状況が続いているのは確かで、その背景には銀行規制改革・バーゼル3.5が意識されているという構図には関心を持っておいて損ではないと思います。

リーマンショックのようなクライシスはもう二度と御免、ということから世界規模で取り組んでいる金融規制。

本来は銀行株にとって信頼性回復の基盤になるはずですが、投資の世界ではもろ手を挙げて評価する、というわけでもないところが難しくもあり、ある意味、投資の面白い所ですね。

引き続き、金融規制関連のニュースがあればコラムでご報告していきますね。
配信元: 達人の予想

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