明日の株式相場に向けて=電光石火S高ラッシュ、年の瀬・材料株奇譚
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比128円高の4万9512円と3日ぶり反発。日経平均は足もとで再び4万9000円台に押し返されているとはいえ、4月初旬の波乱で3万1000円台まで売り込まれたことを考えれば、時価は別世界といえるほどの高みに位置していることはいうまでもない。また、TOPIXは前週末12日メジャーSQ算出日に史上最高値を更新し、週明け15日まで最高値圏の景色を満喫した。したがって、今の株価水準で弱気論を展開しても一笑に付されるところだが、今年の相場は二極化相場の極致であり、プライム市場の主力どころに資金が集中し、それ以外では日の目を見ない銘柄も多かった。最も割を食ったのはグロース市場で、25日移動平均線を上値抵抗ラインとする典型的な中期切り下げトレンドを強いられており、足の長い資金が食指を動かす気配もない。週明け15日には日経平均が660円あまりの急反落を強いられたのを横目にグロース指数、グロース250指数ともに大幅反発し、大型株物色との入れ替わりで気を吐いたものの色めき立ったのはその場限りで、かりそめの上昇に終わった。
「最近は、グロース市場に特化したような超短期張りのネットトレーダーはおらず、値動きの荒いグロース銘柄に資金を振り向けるタイプの投資家も、プライム市場の大型株との掛け持ちが多い」(ネット証券ストラテジスト)という。つまり、師走相場はプライム市場でキャピタルゲインを確定させる動きが目立つ一方、それと同じ時間軸で含み損のグロース市場銘柄も投げ売りで整理するという動きが例年になく激しいのである。今年後半相場の“隠れテーマ”となっていたプライム市場とグロース市場の二極化が、年末にきて「合わせ切り」というテクニカル的な投資行動を誘発し、結果としてプライム市場もグロース市場も売り圧力に晒されるという羽目に陥っている。当然ながら、ダメージが大きいのはグロース市場ということになる。片や日経平均は前日に25日移動平均線を陰線で下回ったことを話題にする市場関係者が多かったが、これ自体は11月中旬から12月初旬にかけて経験済みで何の希少性もない。むしろ、9月以降3カ月以上にわたって漬物石のようにグロース指数(グロース250指数)の頭を押さえ続けた強靭な25日移動平均線の存在の方が、はるかに話のネタとしてインパクトがある。
ただし、この損益通算売りに関しては、繰り返しになるが銘柄によっては絶好の買い場を提供しているという捉え方も可能だ。いったんキャッシュポジションを高めた投資家の再出動も含め、年末年始の餅つき相場をグロース市場もしくはスタンダード市場の小型材料株で彩るようなケースも考えられる。現状は、まだ損益通算ラッシュが続いていることで逆風は強いが、その片鱗はすでに散見される。いうなればマグロの一本釣りのように材料不在(餌なし)で急騰株を吊り上げるような動きが見られる。
例えば戸建て分譲住宅事業を手掛ける誠建設工業<8995.T>が3日連続ストップ高、メタバース関連事業を展開するmonoAI technology<5240.T>が2日連続のストップ高、フィジカルAIのテーマで急騰後に反落していた菊池製作所<3444.T>もきょうは仕切り直して再びストップ高に買われた。また、ダイヤモンド・超硬合金工具の中村超硬<6166.T>は朝方に一時ストップ高に買われたが、その後は値を消し結局6%高にとどまった。居合い抜きのような電光石火の上昇下落もあって、短期トレーダーでもよほどの手練れでない限りは参戦を控えた方が賢明だが、実際こうした業績不問の急騰は年の瀬によくある風景ではある。
そうしたなか、きょうストップ高を演じた銘柄の中で、ファンダメンタルズからのアプローチで物色人気に合理性が伴う銘柄としてエムケー精工<5906.T>を見ておきたい。今3月期は営業減益見通しながら従来予想を既に増額しており、なおかつ上期時点の進捗率を考慮して一段の上振れの可能性を内包している。投資指標面でPER6倍台は子会社株式譲渡に伴う特別利益計上分を割り引いて考える必要はあるが、有配かつ今期増配を計画しているにもかかわらず、PBRが会社解散価値の半値である0.5倍前後に放置されているのは見直し余地が大きい。本業もメカトロ技術に定評があり、食品用充填機と協働ロボットをパッケージ化した職人技レベルの繊細な作業を自動的に行う製品を開発。これはフィジカルAIのテーマに合流する材料だ。
あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に11月の白物家電出荷額が発表される。また、3カ月物国庫短期証券の入札も行われる。この日はIPOが1社予定されており、東証グロース市場にミラティブ<472A.T>が新規上場する。海外ではスウェーデン中銀の政策金利発表、ノルウェー中銀の政策金利発表のほか、英国でも金融政策委員会が行われ政策金利が決定される。また、ECB理事会の結果にも注目度が高い。米国では11月の消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高いほか、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、週間の新規失業保険申請件数、10月の対米証券投資なども開示される。個別ではナイキ<NKE>の8~10月決算に耳目が集まる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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