スリー・ディー・マトリックス、米国での高成長により累計売上高前年比+78.3% 米国子会社は当期累積期間で黒字転換

投稿:2024/12/23 19:00

エグゼクティブサマリー

岡田淳氏:代表取締役社長の岡田です。2025年4月期第2四半期の決算についてご説明します。

まずサマリーです。累計売上高は32億7,400万円で、前年同期比78.3パーセント増、予算達成率121パーセントとなっています。売上高の増加に伴い、営業利益はマイナス5億3,100万円で、前年同期と比べ約6億8,000万円、56.2パーセントの改善となりました。

第2四半期単独で見た場合は、赤字幅が2億2,000万円まで減少してきています。それに伴い、米国子会社は財務会計上、当期累積期間で黒字に転換しています。

損益計算書の概要

財務状況および開発状況を続けてご説明します。まず財務状況からです。

損益計算書について、売上高は前年同期比1.8倍に拡大しています。それに伴い、粗利益も前年同期比約1.9倍と10億円以上の拡大となりました。営業利益はマイナス12億1,400万円からマイナス5億3,100万円まで大きく改善することができました。

ただし、経常利益と当期純利益に関しては、前期同期と比べて財務諸表上で悪化しています。こちらについては、参考までに次のスライドでご説明します。

為替差損益が発生する仕組み

為替差損益が発生したことによって、経常利益および当期純利益が悪化しているのですが、その仕組みについてご説明します。

当社には子会社があり、そこに貸し付けをしています。例えば、1ドル100円で貸し付けたとすると、貸付側に100円、借入側に100円という記載になります。しかし、期末に1ドル90円になったらどうなるかというと、親会社側は円で換算しているため100円のままですが、子会社側はドルで換算しているため90円になります。

このままでは連結で相殺することができなくなるため、親会社のほうを10円縮めて、90円貸したことにします。この10円分がすなわち資産の縮小となり、為替差損として計上されます。当期に関しては為替差損が計上されたため、経常利益および当期純利益が営業利益に対して若干悪くなっています。

一方、前期のように円安に動いた場合は、スライド右側に示しているとおりです。1ドル100円で貸し借りがあったものの、期末になって1ドル110円に振れたとすると、子会社のほうが膨らむため、親会社がそれに合わせます。その膨らんだ10円分がすなわち益と認識されることで、為替差益が発生します。前期は大幅に円安に振れましたので、この益が非常に大きく計上されて、見かけ上では経常利益および当期純利益が非常に大きく上振れしました。

なお、こちらはあくまでも財務諸表上の計算上の損益であって、事業上でコストの増加やキャッシュアウトが発生したというわけではありません。

(参考)為替差損益を除いた経常利益・純利益の比較

もし為替差損がなかったらどうなのかを示したのが、スライドの表です。現状として、経常利益および当期純利益が営業利益より若干悪化しています。

前期は黒字で赤字幅が小さかったため、それと比べて大きく悪化したように見えますが、ここから為替差損益を除くと、実は表の右側のようになっています。経常利益および当期純利益はそれぞれマイナス約6億円です。

前期は円安に大きく振れたことで、為替差益が大きく計上されていましたが、それを除くと経常利益がマイナス12億5,000万円、当期純利益がマイナス14億3,000万円でした。為替差損を除いて計算すると、経常利益は約6億円、純利益は約8億円改善しています。

貸借対照表の概要

貸借対照表です。売上高の増加に伴い、売掛金が増えています。また、転換社債は一部を償還したため減っており、その分だけ潜在株式数も減少しています。純資産は前年同期比約12億円増と大きく増加しました。

(再掲)年度実績推移と3か年の計画と目標

今期に発表した中期経営計画について、簡単におさらいします。今期は売上高を30パーセント増の約60億円に、赤字をマイナス約20億円からマイナス約10億円まで半減させることが目標です。これを達成して、満を持して来期に黒字化を達成する計画です。

四半期売上実績推移

四半期売上実績推移です。第2四半期は、第1四半期あるいは前第4四半期から順調に伸び、高い成長を継続しており、過去最高の四半期売上高を記録しています。

売上高 前年同期比

当期累積で見ると、売上高は32億7,400万円となり、前期比78.3パーセント増となりました。スライドのグラフでは、内訳として地域ごとの比率を示しています。一番伸びているのが米国で、そのおかげで前年同期比78.3パーセント増という高い成長を継続しています。

販売活動の進捗:米国

国ごとに見ていきます。まず最大の米国からです。米国は売上高14億3,100万円と、前年同期比で151パーセント伸ばしており、予算に対しても56パーセント増と、想定外の高い成長を記録しています。

販売活動強化のために少しずつ人員を増やしていますが、その分売上高も増え、貢献利益も増えるため、コストになっていません。それだけ需要が強いと言えるかと思います。

消化器内視鏡領域はこれまで東海岸中心で事業を展開してきましたが、巨大市場がある西海岸にも順次エリアを拡大しており、順調に広がっています。それにより、財務会計上で米国法人は黒字になりました。

耳鼻咽喉科領域の売上高は小さいですが、貢献利益が黒字を維持していますので、このまま成長させていきたいと思っています。

販売活動の進捗:ヨーロッパ

次にヨーロッパです。前年同期比47パーセント増と、こちらも計画以上の成長を維持しています。予算に対してはほぼ達成しています。

消化器内視鏡領域はドイツで深耕策が実るかどうかが今後の課題としてありますが、他の国に関しては非常に順調に伸びている状況です。

心臓血管外科領域では動きがありました。ヨーロッパ最大規模の病院を順次開拓していたものの、計画未達となり、貢献利益の黒字化が不透明な状態となりました。そのため直販を中止し、販売代理店に回帰することでコストの削減を優先させることとしています。

耳鼻咽喉科領域は第1四半期に遅れが生じた影響で計画未達ではあるものの、成長度合いは高いため、このまま成長基調を維持していきたいと思っています。

販売活動の進捗:日本

日本については前年同期比50パーセント増と成長し、当期予算を達成しました。貢献利益はさらに拡大しています。既存顧客の製品使用量を増やす施策は現在も成果が出ていますが、引き続き注力していきます。

販売活動の進捗:オーストラリア

オーストラリアについては前年同期比で33パーセント増となり、当期予算を達成しました。不確定要素を背景に買い控えがありましたが、政府による民間保険価格の見直しが2024年7月に終結したため、徐々に通常購買にシフトし、我々の営業活動も通常に戻っています。その結果、過去最高の販売本数を達成し、前期を上回る成果となりました。

四半期営業利益

営業利益についてご説明します。第1四半期は前年同期のマイナス6億4,500万円から、今期はマイナス3億1,600万円まで半減させました。

第2四半期はさらに削減し、前年同期のマイナス5億6,900万円から、今期は2億1,500万円となり、3億5,300万円、62パーセントの改善です。この調子で第3四半期、第4四半期も営業赤字を減らしていきたいと思っています。

住商ファーマインターナショナル株式会社様との業務提携

トピックスとして、住商ファーマインターナショナル(SPI)と業務提携しました。SPIは医薬品に特化した専門商社です。外科用止血材製品に関し、原材料のグローバル調達および製品の物流を、当社がSPIに委託しています。また、特定分野における情報交換を行うことで、製品供給体制を含む事業体制の強化を図ることを期待しています。

さらに、SPIから当社に与信枠をいただいています。与信とは短期借入のようなもので、購買全体ではないものの、我々が支払う前にSPIにお支払いいただき、時期を見て返済することにより、当社の資金繰りの改善が期待されます。足元が赤字の中、我々の業績改善の取り組みを踏まえ、将来性を評価した与信をつけていただけたものと、大変ありがたく思っています。

直近で追加された/現在アクティブなプロジェクト

開発についてご説明します。前回からスライドのフォーマットを変えました。直近で追加されたプロジェクトをリストにまとめて、一つひとつご紹介します。

止血関連では、新しいプロジェクトがいくつも始まっています。上から順にご説明します。

まず、小児の心臓手術の止血です。小児とは新生児からティーンエイジャー前くらいまでを指します。基本は、生まれつき心臓の調子が悪い赤ちゃんに対し、正常になるまで繰り返し手術を行うという領域です。新生児向けには承認を受けている安全な止血材がなく、「ピュアスタット」がその第1候補になる可能性があります。

赤ちゃんへの手術であるため、術野が確保されていること、小さな心臓や血管を圧迫しないように手術後に止血材が膨張しないこと、また、繰り返し手術を行うため癒着を抑えられることが臨床ニーズとなります。「ピュアスタット」はこれらすべてを達成できる可能性があるとして、ヨーロッパで使用が広がっています。こちらはヨーロッパでの承認申請を準備中です。

頭部・頸部の止血は、現在行っている耳鼻咽喉科領域からの派生です。「ピュアスタット」で止血した症例において、術後ドレーンからの廃液が減少し、早期の抜管、早期の退院が可能になるという事象が観察されています。

これにより病院において大幅なコスト削減になり得るため、非常に大きなニーズをつかむことができるということです。ヨーロッパにおいてはすでに販売中で、今ぐんぐん伸びています。ヨーロッパでデータを蓄積し、米国での承認申請の準備段階に入っています。

新しいものとしては、オスラー病(HHT)の止血があります。HHTは全身の血管に異常が生じ、出血や動脈・静脈の奇形などを引き起こす遺伝性の疾患で、治療法はありません。8割は繰り返す鼻血をきたし、毎週のように鼻血が出て止まらないという、非常にQOLの悪い病気です。

現在、鼻血を止めるにはクリニックに行って焼灼する以外になく、患者の負荷が非常に大きくなっています。しかし、「ピュアスタット」を用いることで止血すれば、在宅医療ができる可能性があり、病院と患者の負担を大きく減らすことができると期待しています。こちらはヨーロッパの学会にてポスター発表済みで、さらに臨床研究をもう1つ準備中です。

生検後の止血についてです。例えば経内視鏡の生検鉗子による組織採取では、肺等部位によって出血した場合は有効な止血の手立てがありません。したがって、出血させないために極めて少量ずつ組織を採取する必要があります。そのため、組織を採取しても十分なサンプル量がなく、「評価できませんでした」「再度採取してください」という話になりかねません。

「ピュアスタット」を使うと止血が困難な部位でも止血可能ですので、出血を気にすることなく十分量のサンプル採取ができるため、使用が広がってきています。こちらは適応拡大を検討中です。

前立腺肥大手技の止血には、ロボット手術で肥大部を削るために尿道から手技を行いますが、ウージングが起こった際には経尿道カテーテルによる止血が必要です。現在は使える止血材がないため、主に焼灼による止血が行われています。

焼灼した場合は男性生殖機能を低下させるリスクがあるため、「ピュアスタット」の出番となっている領域です。現在、ヨーロッパで販売中であり、今後は手術ロボット企業と提携しテストマーケティングを行う予定です。今後、提携も模索していきます。

脳外科における止血については、今まで次世代止血材として開発パイプラインに入れていました。経鼻で脳を手術する場合、焼灼したくないというニーズがもちろんありますが、使える止血材がありません。

ここでも「ピュアスタット」が焼灼以外で使える唯一の止血材になる可能性があります。次世代止血材ですので、当社が独自に開発した新規ペプチドシークエンスを用いています。ヨーロッパにおいて承認申請済みで、承認待ちのステータスです。

直近で追加された/現在アクティブなプロジェクト

こちらのスライドからは、止血プラスアルファの治癒の領域に入ります。

放射線直腸炎は、以前も開発パイプラインに入れていました。これはがんの放射線治療の副作用である難治性の潰瘍と出血で、現在は治療法がないアンメットの状態です。「ピュアスタット」を塗ることで潰瘍の治癒が観察されており、ヨーロッパの内視鏡学会で論文を発表済みです。

また、学会のガイドラインに、治療法として「ピュアスタット」を追加していただいており、今はガイドラインを見た方が「こういう治療法があるのだな」とわかる状況になっています。将来の保険収載を目指し、学会主導で臨床研究が開始されています。

似たような領域に放射線膀胱炎があります。実はこれも同じ病態で、放射線治療の副作用により直腸ではなく膀胱に難治性の潰瘍ができてしまうものです。こちらもケースレポートを欧州泌尿器学会にて発表予定で、放射線直腸炎と同様、将来的にガイドライン等に入り、広く使われていく可能性があります。

炎症性腸疾患も開発パイプラインに入れていたものです。原因不明の難治性の炎症で、一度発症すると繰り返すため、生涯治療が必要です。多数の薬がありますが、今は粘膜そのものを治療しにいく治療法はありません。

薬と併用して粘膜も治療したほうが効果は上がるのではないかといわれており、「ピュアスタット」は現在唯一の候補として研究されています。こちらに関しては日本で臨床研究中であり、群馬大学と札幌医科大学で症例リクルート中のステータスです。

新しいものとしては、放射線治療用の吸収性組織スペーサがあります。放射線治療の際に直腸にダメージがあると放射線直腸炎になってしまいますので、そのダメージを減少させることを目的として、臓器間に経皮的に注入します。

当社のペプチドは生体分解性と生体適合性が良いことから、スペーサに適しているのではないかと、研究が進んでいます。日本の大学と共同研究を実施しており、今は動物実験の準備を進めています。

もう1つ、新しいものとして食道狭窄予防があります。予防方法の確立していないESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)後の食道狭窄に対し、内視鏡的に「ピュアスタット」を塗布することで、その防止効果を目指すものです。

食道狭窄とは、食道が詰まってしまい、水も飲めず、食べ物も食べられないという非常にQOLが悪い状態になってしまう病気です。もし予防ができれば、非常に大きなクリニカルバリューがある領域だと考えます。ヨーロッパで複数の動物実験が行われており、有効性が確認されています。広島大学でも臨床研究が開始されています。

再生に関してもいくつかプロジェクトがありますが、1つは心筋機能低下の回復、すなわち心筋を再生するプロジェクトです。注入型の心筋機能回復デバイスとしての開発を目指しています。当社ペプチドにより心筋再生の足場環境が構築され、幹細胞および成長因子タンパク質の混合注入による心筋再生の促進が確認されています。現在、米国のハーバード大学で新しい論文の準備中です。

直近で追加された/現在アクティブなプロジェクト

再生に関するもう1つのプロジェクトが骨充填材です。これは骨の再生にあたります。当社ペプチドを骨再生の足場材料として使用し、患者本人の体液由来の成長因子を保持させることで、低侵襲かつ注入可能な骨再生充填材としての開発を目指しています。

歯槽骨再建にとどまらず、腫瘍切除後の骨欠損などの大型な骨欠損への再生材料を目指しています。歯槽骨再建における米国でのパイロット治験結果をもとに、国内の大学と大型の骨再生に向けた共同研究を実施中です。

ドラッグデリバリーの分野では3つのプロジェクトがあります。3つとも開発パイプラインに入れていましたが、あらためてご説明します。

1つ目は、乳がんを対象としたsiRNAのデリバリーです。がんの幹細胞を抑制するsiRNAを、当社ペプチドでデリバリーします。腫瘍縮小だけでなく、乳がんの再発や転移抑制にも寄与することを期待して開発中です。国内治験において、ヒトへの安全性と腫瘍抑制メカニズムの発揮を確認しています。国立がん研究センター中央病院で、医師主導による治験のPhase1が終了しました。

2つ目は、悪性胸膜中皮腫を対象としたmiRNA(マイクロRNA)のデリバリーです。2024年のノーベル生理学・医学賞でもマイクロRNA発見者が受賞していましたが、今後、医療に使われていく大きなトピックになり得るものです。

この治療法では、マイクロRNAの1つを使います。対象となる病気は、アスベストに暴露された後に長い潜伏期間を経て発症するがん、悪性胸膜中皮腫です。症例は今後増え続けると予測されており、治療法として既存の薬剤に決め手がありません。

マイクロRNAを画期的新薬として当社ペプチドでデリバリーし、治療することを考えています。導出先のPURMX社によって、グローバルPhase1、Phase2を準備中です。

3つ目は、ワクチンのデリバリーです。当社のペプチドと抗原を複合した徐放作用を持つワクチンにより、抗体価の上昇や単回投与での抗体獲得、炎症抑制に基づく副作用の低減などを目指しています。こちらは米国のテュレーン大学、北海道大学と共同研究を実施中です。

以上、直近で追加されたもの、もしくは直近で動きがあったものにフォーカスしてご説明しました。

研究開発方針

先ほどはリストでご説明しましたが、開発カテゴリとしてはいくつかに分かれています。1つは、ヨーロッパのデータを用いて適応拡大を目指すものです。これは、特に米国において適応拡大を今後目指していきたいと考えています。すでにヨーロッパで承認されており、症例が蓄積されているものに関しては、ヨーロッパのデータを用いて、米国でも早期に適応拡大を狙っていきます。

もう1つは、ヨーロッパでは止血材が幅広く使われていますが、ヨーロッパにおいてそこからの適応拡大を目指すものです。止血だけでなく、プラスアルファの部分も入ってきています。今後、止血材の価値をヨーロッパで高め、将来的には米国・日本にも持っていきたいと考えています。

エグゼクティブサマリー

最後にエグゼクティサマリーを繰り返しお伝えします。累計売上高は32億7,400万円、前年同期比78.3パーセント増です。売上高の増加に伴い、営業利益はマイナス5億3,100万円と、前年同期比で約6.8億円改善しました。

また、第2四半期単体では赤字幅が2億2,000万円まで削減されていますので、第3四半期、第4四半期でさらなる削減を目指していきます。これに伴い、米国子会社は財務会計上、黒字に転換しています。

私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

配信元: ログミーファイナンス

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