AIの光と影

著者:鈴木 行生
投稿:2024/11/29 18:33

・AIは誰でも使うようになりつつある。今やソフトウェアがGPTを使って、システム開発をスピードアップしている。一般的な外部データではなく、組織内にある特定のデータの活用こそ、AIのナレッジを上げて、差別化することに役立つ。

・AIインダストリーとどう関わっていくか。NVIDIAの半導体、AWSのクラウド、OpenAIのテクノロジーツールの上に、AIアプリケーションがある。このアプリでいかにオリジナルな開発を行い、AIを利用するか。ここに多くの企業にとってのビジネスチャンスがある。

NTT <9432> の島田社長はAIのつながりに注目し、連鎖型AIのビジネス展開を目指す。サプライチェーンやバリューチェーンにおいて、部門や企業を越えて、AIの最適化を図っていく必要がある。それによって、生産性が一層高まる。

・個別AIは、さまざまな場面で使われるようになっているが、それをどうつなぐか。例えば、ダイナミックな流行のサプライチェーンにおいて、AIチェーンによって、在庫の全体最適化や配送の効率化を図ることができる。

・DC(データセンター)は膨大な電力を使用するが、例えば、九州地域の太陽光発電は使いきれずに余剰となることもある。それをAPN(オールフォトニクス・ネットワーク:All-Photonics Network)でつないで、関東圏でも使うことができるようになれば、効率性は大幅に向上する。

・DCも1か所ではなく、10㎞離れていても、100㎞離れていても、1つのDCのようにコントロールして使うことができれば効率は高まる。こうしたコントロールをIOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)で実現していく。

・IOWNによる光電融合は、IOWN 1.0から2.0(2025年、デバイス)、3.0(2028年、チップ間)、4.0(2032年、チップ内)へとレベルを上げ、電力消費量を100分の1に下げることを目標とする。

・日本IBMの山口社長は、AIのオープン化を強調する。社会の課題を解決していくには、やはりテクノロジーの利用がカギを握る。その中で、AIは不可欠となっている。熱エネルギーの活用、災害対応情報システム、食品ロスの削減、難病情報照合システム、IT障害復旧システムなどにおいて、AIの活用を実践し、成果を上げている。

・生成AIは企業の5割で、何らかの形ですでに使われている。外部にある公開データは、ほぼ読み込まれている。一方で、企業内データ活用はまだ十分でない。

・これをビジネス拡張のためのAIとして、開発が進もう。AI教育を進めて、ガバナンスを確立していく必要がある。AIの活用を広げるためのオープン化(ソフトウェア、モデルの公開、データセットの共有など)も重要である。

・AIの普及で、計算量が指数関数的に増大する。DCでの電力使用も膨張しよう。これにどう対応するか。ビットレベルでは、ラピダスが目指す2ナノの回路線幅で高性能化を図る。1つのチップに500億個のトランジスターが入っているレベルとなる。

・ニューロン化という点では、メモリーと演算(CPU、GPU)の処理を一体化して、ここでのやりとりの効率アップを図る。

・さらに、量子ビット(キュービット)の利用を進める。IBMでは2030年に向けて実用化を逐次進めていく。開発は計画通りであるという。量子ビットの暗号化にも取り組んでいる。

・量子コンピュータは、いわば3次元の計算方式なので、空を飛ぶスピードである。従来のコンピュータは、高性能化して、リニアモーターカーレベルに到達している。2次元の計算はこれからも残り、3次元の量子コンピュータと住み分けていくと、山口社長はみている。

・もう1つ、山口社長は重要な指摘をしている。今の社会課題に、テクノロジーをもっていかに立ち向かうか、という姿勢には注意を要するという。テクノロジーには進化と革新を伴う。社会課題も、先をみると変容する可能性がある。

・よって、ソリューション・プロジェクトを推進する時、将来社会と将来テクノロジーを想定して、バックキャストせよ。その上でプロジェクトの遂行を具体化することが必須である、と話した。

・確かに、将来は不確定である。現状の延長線上にはない。シナリオとシミュレーションを持った上で、自らのリソースの充実を図る必要がある。さもないと、プロジェクトの途中で足元をすくわれてしまうかもしれない。

・では、AIテクノロジーは楽観できるのか。第4次産業革命をもたらすとすると、それが定着するまでに、社会はかなり混乱しよう。1つは、AIの利用において、フェイク情報やでっち上げで、不正取引がまん延するかもしれない。これに対して、何らかの規制、ガバナンスを働かせるとしても、それは常に後追いになりかねない。

・もう1つは、新たな産業革命とすると、光と影が人々の生活基盤に大きな影響をもたらす。AIをリードする人々は新たな富裕層となり、一方で、AIアプリの浸透で自らの職を失い、うまくリスキリングできない人々にとっては、苦しい先行きとなる。

・産業構造の転換に30年を要するとすると、AI革命がもたらす良さに対して、それに乗り切れない人々を救済していく必要がある。その仕組み作りが国際社会、各国、各企業において問われよう。

・それでも、イノベーションは止められないし、止めてはならない。活用すれば良き社会が築けるはずである。AIを活用して、社会課題のソリューションに、ビジネスとして取り組む企業に大いに投資したい。但し、ブームに惑わされず、本物の企業にじっくり参画していきたい。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

配信元: みんかぶ株式コラム

関連銘柄

銘柄 株価 前日比
153.4
(11/29)
-1.0
(-0.71%)