【QAあり】エアークローゼット、サービス改善により継続率が良化し各損益が通期予想を上回り着地 株主優待も導入

投稿:2024/11/21 19:00

2025年6月期第1四半期決算説明

天沼聰氏(以下、天沼):みなさま、本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。株式会社エアークローゼット代表取締役社長兼CEOの天沼です。これより、2025年6月期第1四半期決算についてご報告します。

私から決算説明を行ったのち、質疑応答の時間を設けます。よろしくお願いします。

決算説明の要旨

まずは、7月から9月の第1四半期決算の要旨です。airCloset事業ではサービス改善に伴って継続率が良化しました。会員数が堅調に推移したことで、売上・各損益も想定を上回って着地しています。

現状、順調に推移していますが、特に我々は春に需要が増しますので、第2・第3四半期には成長に向けた投資による費用増も見込んでいます。現時点では通期の計画は維持すると決定しました。

第1四半期は、今後の成長に向けたさまざまな新しい取り組みを増やしてきました。丸井さまの体験型店舗では顧客接点を拡大する施策に取り組んだほか、我々が通常取り扱っていなかったアウターのレンタルオプションのテストを発表しました。今後の成長に向けた施策には積極的に取り組んでいます。これからも成長に向けた取り組みをしっかりと増やし、事業を拡大していきます。

サービスそのものに加えて、循環型物流を活用したプラットフォームの事業でも、ユナイテッドアローズさまの傷物商品等の再商品化業務を受託開始するなど、しっかりと拡大に向けた動きを取っています。

さまざまなファッション・アパレル業界のみなさまにとって、小売事業の中で傷物になってしまった商品をそのまま売ることができないというのは、これまで1つの課題になっていたと思います。これらは私たちの循環型物流だからこそ、再商品化して販売することができます。サーキュラーエコノミーをより小売で推進していく事業としても可能性は高いのではないかと感じています。今後さらに、受託を広げていきたいと思っています。

IRの観点では、まだまだ株価が、株主のみなさまにご心配をおかけしている水準です。時価総額という観点でも、まずは我々経営陣が、今の会社の価値に見合うような高さにしっかりと上げていくことを大前提にしていきたいと思っています。

その先には、サービスが世の中の当たり前になっていく過程でより大きな時価総額になる際にも株主として応援していただけるように、中長期的に株式を保有する株主さまにはより多くのメリットを享受していただけるような会社でありたいという願いも込めて、株主優待制度の導入を決定しました。

導入は、認知拡大はもちろんですが、当社のサービスを知ったり利用したりする中でサービスに共感していただくことが、よりサービスを応援していただける要素の1つになるとも考えています。

業績サマリー

業績のサマリーです。売上、営業利益、四半期純利益の数字になります。売上は予想の成長率を上回って推移しています。2025年6月期の前期実績比は114パーセントの予想ですが、第1四半期は120.5パーセントと、予想を上回って推移しています。

各損益に関しても通期予想を上回っていますが、先ほど少し触れた季節性の影響や第2四半期以降の成長に向けた投資による費用増も見込んでいますので、現時点では据え置いています。

一方で、前第1四半期比では営業利益が8.4倍、四半期純利益は16.7倍になり、大きく成長できました。母数が少ないため倍率が高くなっている部分はもちろんありますが、しっかりとした推移だと思います。

目次

続いて、当社の事業をあらためてご説明しつつ、取り巻く環境の変化や第1四半期の業績、重要トピックスと今後の成長戦略に触れたいと思います。

Visionおよび主力事業

当社の事業および取り巻く環境の変化についてです。我々のビジョンは変わりません。時間価値を高めます。人の人生で限りのある時間の価値を高めていくことで、会社を長期的にご愛顧していただけるようなサービスを生み出す会社でありたいと、「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」というビジョンを掲げて現在、大きく3つの事業を展開しています。

展開しているのは、「airCloset」が中心のファッションレンタル事業と、コロナ禍の2020年スタートになったファッション以外のレンタル事業である「airCloset Mall」、これらをプラットフォームとして支えてきた私たちの循環型物流を法人向けの事業として他社に展開していくプラットフォーム事業の3つです。

airClosetのサービス概要

「airCloset」のサービスの概要です。こちらは月額制のファッションレンタルサービスです。お客さまにご自身の好みやサイズ等を登録していただきます。スマートフォンを使って登録されるお客さまが多いです。

登録するだけで、数日待つと私たちのスタイリストがお客さまの情報を参照して、数十万着の洋服の中から3点ないしは5点を選定して、ご自宅にお届けしています。ご返却の際にクリーニングなどは不要で、そのまま返却していただいて数日待つと、再びスタイリストが選んだ洋服が届くサービスです。これを好きなだけ楽しんでいただいて、もし気に入ればそのまま買い取れる仕組みにしています。

生活の中に小売からレンタルという変化をもたらしたいのではなく、時間が限られている忙しい方にもたくさんの洋服を実際に試していただき、気に入った洋服をしっかりと買い取っていただくことを新しい消費のかたちにしていきたいと考えています。

ですので創業当初から、レンタルのみならずそのまま買い取れるような仕組みを導入するとともに、お客さまに対して洋服をご提案するパーソナルスタイリングサービスを展開しています。

airClosetの背景にある社会課題

このようなサービスをスタートさせた背景です。大きくは、やはり今の社会課題、特に「情報・モノの圧倒的な増加」です。

お客さまが触れる情報量が20年弱で200倍以上に増えている中で、たくさんのモノから選ぶ時間を生活の中に取るのがなかなか難しくなっていきます。

このように時間の価値が相対的に高まっていく中で、個の多様化を重視する社会の傾向もあいまって、パーソナライゼーションのニーズが非常に高まっています。

大量生産、大量消費、大量廃棄による環境問題の深刻化に対しては、リユース・リサイクルなど持続可能なかたちで資源を消費していくサーキュラーエコノミーへの転換も求められています。転換という選択肢が増えるのではなく、転換そのものが求められているというところも背景の1つに挙げられるかと思います。

サーキュラーエコノミーへの更なる気運の高まり

近年、サーキュラーエコノミーへの気運は非常に高まっており、特にファッション・アパレル業界は石油産業に次いで2番目に環境負荷が高い産業であることから、見直しが求められています。国内アパレルにおいては商品の約3割が売れ残り、現状では毎日1,200トンが廃棄されています。さまざまな低価格ECの台頭による環境負荷の上昇懸念も非常に高まっています。

このような環境問題やサステナビリティへの課題解決に対して積極的なEUでは、売れ残った衣料品の廃棄が禁止になりました。日本でも、経済産業省では、成長志向型の資源自律経済戦略を策定していく中で、資源循環分野に2兆円以上を投資することにより世の中をサーキュラーエコノミーに転換させようと動き始めています。

我々のようなファッション業界にとって、サーキュラーエコノミーの中心となるような事業は、環境問題も含めた社会課題に非常にフィットする事業だと思います。

一方で、これは1年や2年で大きく変わっていくものではなく、中長期の単位の中で大きな変化になっていくと確信しています。

ファッションレンタルによる環境負荷の低減効果

ファッションレンタルサービスに環境負荷の低減効果があるということは、環境省との効果実証事業の中で数値化しています。CO2の排出量がベースラインである通常の小売の事業に対して、ファッションレンタルサービスは19パーセントの削減がなされています。

廃棄物の抑制では、ベースラインに対して27パーセントの削減が実現できています。サステナブルな選択ができる仕組みをしっかりと実現して、サービスを楽しんでいただくことで、お客さまが消費の中で「環境問題なので我慢しなければいけない」や、「無理をする」ではなくて、我慢なく、無理なく環境負荷の低減を可能にします。

サービスをご利用いただくことで自然にサステナブルへ貢献するような姿を1つの消費の理想形として描いています。

airClosetの事業構造

このような事業をどのように実現するのかは難しいポイントになります。世界的に見ても、このようなスタイリングを含むファッションのレンタルサービスが、独立型で黒字を生んだ事例を私たちは把握していません。当社がおそらく初めて、この事業でしっかりと黒字化を果たしてきているかと思います。

これをどのように実現してきているのか、さらにはこれに対して今後、どのような成長戦略を描いているのかも、お話しできればと思います。

基本的には、レンタル用の循環型物流の機能で、我々がAC-PORTと呼んでいる機能をプラットフォームとして捉えています。AC-PORTでは、ブランドさまやメーカーさまから毎シーズン、仕入れた洋服を採寸して写真に撮ってから入庫させた洋服をお客さまに出荷し、返却していただいた洋服に関しては全点、検品・クリーニング・メンテナンスを行い再度保管し、貸し出し可能な洋服を再度出荷するという循環を作っています。

レンタル対象から外れる洋服に関してはリセールし、当社でエコセールを実施したりリサイクルの事業者さまと協業したりすることで、衣服の廃棄ゼロを実現しています。

独自開発WMSによる唯一無二の循環型物流プラットフォーム構築

実はこれまで、日本にはこのような循環型物流の仕組みがなかったことから、我々は自社で業務フローを作りました。倉庫管理システムについてもフルスクラッチで自社開発したシステムを活用しています。

特に非接触のRFIDタグを活用した独自の物流システムに関しては特許を取得しました。今後の「airCloset」の事業拡大のみならず、環境問題に必要なサーキュラーエコノミー・サーキュラーファッションを実現していく基盤になるプラットフォームとして非常に期待しています。

プラットフォーム構築・改善による効果

もちろんこのプラットフォームはこれからの成長というところで非常に重要な部分かと思いますが、まずは自社にどのような影響があったかを、スライド左側のairCloset事業の損益改善に関するグラフでご説明します。

循環型プラットフォームのコストメリットが徐々に出てくることによって、事業としての黒字化を前期はしっかりと果たし、今期に関しては全社での黒字化に向け推進しています。

この基盤が確立されてプラットフォームが実現できているため、2本目の柱としてご説明した「airCloset Mall」という事業は、airCloset事業が同規模の際と比べてコストが10分の1ぐらいになります。

すなわちファッションレンタルのみならず新たな循環型の事業を10倍の効率で実現できています。このプラットフォームを活用することにより、今後新しい取り組みを実行しやすくなる状況を作ることができました。

当初から私たちが設計・構築を想起していたことにより汎用的に作ってきたこのプラットフォームが今後、活躍していくと考えています。

プラットフォームの活用拡大

プラットフォームの活用イメージです。サブスクリプション型のサービス「airCloset」「airCloset Mall」をプラットフォームに乗せてきたとイメージしていただければと思います。

レディースと同じように、メンズ、シニア、マタニティと他の領域に広げる際に、このプラットフォームの機能を使っていくことで効率良くサービスを開始することができるかと思います。

さらに昨年スタートした「Disney FASHION CLOSET」は、サブスクリプション型ではなく都度課金型のサービスです。都度課金型サービスをプラットフォームの機能として加えたことにより、今後我々がファッションレンタルサービスなどの都度課金型サービスを開始しやすくなったとご理解いただければと思います。

これに加えて、このプラットフォームを対外的に物流機能として外販しています。アウトドア用品やフォーマルウェアのレンタル事業者さまが行ってきた物流の部分を私たちのプラットフォームに変更し、活用いただいています。

レンタルの事業を手がけてきた事業者さまが我々のプラットフォームを活用してくださる理由は、コストメリットがあり、システム管理面での個品管理の信頼性からだといえるかと思います。

今回新しく発表したユナイテッドアローズさまの既存商品再生業務に関しても、今後の外販の1つとしていきたいと思っています。

第1四半期業績要旨

第1四半期に関しては、冒頭でも挙げたように、広告宣伝費を抑制しながら会員数は堅調に推移しています。

また、今後の成長に向け倉庫移転を実施していきますので、こちらに向けた一時的な費用増約3,500万円およびレンタル用資産の耐用年数の変更に伴う一時的な費用減約4,000万円が発生しています。この双方の費用に関しては、相殺するかたちとなっています。

また、利益面では会社想定を上回っているものの、通期の計画に関しては据え置きとしています。

新規事業である「airCloset Mall」に関しては高い成長率が継続しており、今後しっかりとした2本目の事業の柱として立っていくことが期待されています。

この事業の成長は、私たちが作っていく大きな社会変革に対してはあくまでもスタートラインだと考えています。それを成していくためには、プラットフォームをより拡大していくことに加え、サービス改善を継続していくためのシステム開発力の強化が必要不可欠です。

第1四半期にベトナムに開発子会社を立ち上げ、現在順調に稼働を開始しています。採用も非常に順調に推移しており、ハノイに拠点を構えたことによって、ハノイ工科大学の卒業生などエンジニアとして一流のベトナムの人材を採用することができています。

会員数の推移

会員数に関しては季節性の推移がありますが、スライドのグラフに赤で示した第1四半期ごとの推移から、しっかりと会員増ができていることが見ていただけると思います。長引いた猛暑の影響などもありますが、しっかりと成長することができています。

継続率の改善

また、継続率の改善を続けています。特に顧客満足度をしっかりと上昇させるために絶えずサービス品質の改善を実施してきていることによるものです。

我々のサブスクリプション事業では、初回継続率と、3ヶ月経過したあとの4ヶ月目継続率が非常に重要になってきています。

スライド左側のグラフに示した初回継続率の推移を見ていただくと、前四半期からしっかりと継続的に高めることができています。また、スライド右側に示した4ヶ月目継続率に関しても同様に高めることができています。

ロイヤルユーザー数の堅調な推移

6ヶ月超利用してくださっているお客さまに関しては、ロイヤルユーザーと定義をしていますが、全体利用の中でそのようなお客さまのパーセンテージが徐々に高まっていくことで、サービスの安定性が増していくと捉えています。

全体の会員数と同様に、その中の会員さまがどのようなご利用状況なのかをデータにし、常にウォッチしながら経営をしています。

このような6ヶ月超のロイヤルのお客さまに関しては、常に約94パーセント以上の高い継続率を維持しており、このようなお客さまに継続していただきやすいサービスにしていくことが肝要だと思っています。

安定したオペレーション運営

また、1配送あたりのオペレーションコストと月額会員1人あたりの限界利益に関しても、しっかりとコントロール下に置きながら経営をしていく指標だと捉えています。これらに関しては過去の第1四半期の水準と比較しても、安定して推移しています。

業績概要 第1四半期会計期間 対前年同期比

第1四半期会計期間の対前年同期比の業績概要です。売上、限界利益は前年同期比で増加しています。スライドの表からも売上総利益率が大きく増加していることが見てとれるかと思います。これは先ほども触れたレンタル用資産の耐用年数を18ヶ月から24ヶ月へ変更したことにより改善しています。

今後さらにこの耐用年数を伸ばしていくのかというと、洋服の耐用年数からおそらく24ヶ月、あるいはもう少し増えるか増えないかくらいが妥当な水準ではないかと思っています。我々は当初からデータを取り、どの耐用年数が妥当かを見てきましたが、しっかりとその年月を伸ばしてきました。

販売費及び一般管理費の四半期推移

こちらのスライドでは、販売費および一般管理費がどのように推移しているかを示しています。主にシステム開発力の強化とモール事業の拡大により、費用全体としては前年同期比で増加しています。

広告宣伝費率の低下により、対売上比率が前年第1四半期の48.3パーセントから45.4パーセントと約2.9ポイント改善し、コスト効率を上げながら運営しています。

限界利益及び営業損益の四半期推移

限界利益については、会員数の増加に伴いしっかりと増加し、営業損益に関しても売上増や採算性の改善によって大幅に増加しています。

業績概要 第1四半期会計期間 事業毎内訳

業績について、ここではモール事業やその他事業の事業ごとの内訳を示しています。特筆すべき部分としては、airCloset事業の営業利益です。

今期に関しても全社合計では営業利益が6,500万円ですが、airCloset事業に関しては9,500万円の営業利益と、しっかり高めることができています。

2025年6月期第1四半期主要トピックス

このような業績の中で、我々が第1四半期に実施してきた主要トピックスです。

「airCloset」サービスの強化として、料金の一部改定や体験型の新しい成長に向けた取り組み、アウターのレンタルやプラットフォームの活用に向けて、基盤を強めていくための投資、これからの成長に向けた投資も行っています。また、IRや株主還元に向けた取り組みも始めています。

価格改定の実施

具体的には、2024年9月2日に新規の会員さまを対象として価格改定を実施しています。180円という小さな変化かもしれませんが、徐々に今後積み上がっていく中で、収益性の向上を見込みたいと考えています。

体験型店舗によるオフラインでの顧客接点の強化

体験型店舗に関しては、コロナ禍にはなかなか実施できなかったオフラインでの顧客接点の強化のために、カラー診断や骨格診断を含めたパーソナルスタイリング体験を行いました。すでに終了していますが、期間限定で行い、予約で受付をして、かつ会員登録をしていただくような流れを作りました。

予約の充足率は我々が当初想定していたよりも高く、今後は全国展開も含めて検討したいと思っています。

物流機能の一体化と拡張に向けた倉庫移転

今後は外販も含め、積極的にプラットフォームを活用していきたいと考えていることから、物流機能の一体化と拡張に向けて倉庫移転を計画しています。

千葉県で最も人口が今増えている地域であり、物流が集まり、物流銀座と呼ばれている流山市の「GLP ALFALINK流山」に入ることを予定しています。工事は前半・後半と大きく分けて進めており、前半工事がしっかりと終わることを確認しています。現在は後半の工事に入り、順調に準備が進んでいます。

事業拡大に向けたベトナムシステム開発子会社の設立

さらに、物理的に物が動くアナログ部分だけではなく、システムの活用が我々の肝要な部分であり、ITの利活用が1つの強みになっています。

今後、2026年までに現在のシステム開発力を倍増することを目指し、airCloset Engineeringという会社をベトナムのハノイに設立し、順調に稼働を開始しています。

ユナイテッドアローズ様の傷物商品等の再商品化業務を受託

また、先ほども触れましたが、ユナイテッドアローズさまの既存商品の再商品化という新しい取り組みを行っていくことで、今後他のアパレル企業やアパレルブランドさまにもこのような提案を広げていきたいと思っています。

株主優待制度の導入

株主優待の制度に関しては、株主のみなさまへの感謝を表すとともに、支えていただいている個人の投資家さまにおける当社株式への投資の魅力と認知を広めるだけではなく、当社のサービスの認知や理解の拡大を図っていくために、当社のサービスをご利用いただける最大1万3,980円相当のクーポンを優待内容として発行することを意思決定しました。

さまざまな株主優待を見て、どのような優待が株主のみなさまに対して公平性があり、かつ将来的に私たちが応援していただきたい株主のみなさまに喜んでいただけるのかを考えました。

そこで、やはり一過性の優待制度ではなく、私たちのサービスを知っていただけるもので、中長期目線になっていただけるような優待制度が合っているのではないかと考え、このような制度の導入を意思決定しました。

エアークローゼットの経営戦略

今後の成長戦略についてご説明します。基本的な経営戦略については大きく変化していません。ビジョンを中心に、私たちがしっかりと実現すべき「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」という時間価値の向上に向け、目標とする売上1,000億円に向けた100億円の土台を作ることを短期目線で目標としています。

Steady Base の具体的な施策群と注力時期

そのために事業および機能戦略を「Steady Base」と呼称し、各期にそれぞれ利益を生む仕組みの構築を行っていく観点、顧客基盤の拡大を行っていく観点、そして事業拡大に向けた基盤の強化をしていく観点、この大きく3つの観点に分けてそれぞれの施策の展開と実施を行っています。

前期までは物流基盤やプラットフォームを作ることも含め、成長基盤を確立させていく期でしたが、当期、そして来期以降に関しては事業拡大期、多角化期としています。

事業領域の拡大による成長の加速

プラットフォームの成長戦略です。このプラットフォームを活用し、今後はToCの拡大に加え、ToBの法人向け案件もしっかりと拡大させ、成長していきたいと考えています。

メーカー公認月額制レンタルモール airCloset Mall

先ほど、このプラットフォームを活用して10倍の効率で立ち上げたと触れたサービスは「airCloset Mall」というサービスです。こちらはファッションのサービスではなく、ファッション以外のレンタルサービスです。

いわゆるシャワーヘッドや美顔器など、話題の商品で手に取って試してみたいものがあっても、店頭では例えば濡れた髪で試すことができなかったり、どの程度使うかという頻度がわからなかったりします。使った感触やご自身で使えるのかがわからないようなアイテムもたくさん存在します。

それをファッションのサービス「airCloset」でこれまで洋服で実現してきたような、自宅でご自身に合うのかどうかを試すことはレンタルの要素として非常に魅力的だと考えています。買う前に自宅で試せるという要素を、この「airCloset Mall」では美容家電やその他の領域のアイテムに活用しています。

事業戦略上の狙いとしては、当然売上利益の増加もありますが、我々が今後メンズ展開を立ち上げ広げていくにあたり、顧客層という顧客基盤を重要視していますので、男性も含む顧客層の拡大を1つの狙いに置いています。

さらに、私たちも社長室の直下にデータサイエンスチームを設けて人工知能の活用やデータサイエンスを行っていますが、データサイエンスの活用を当社の1つの強みに置き、このようなデータを集めていく観点でも、非常に有用なサービスだと思っています。

「物流機能の外販」の幅広い可能性

私たちがファッションレンタルサービス「airCloset」やファッション以外のレンタルサービスや「airCloset Mall」のノウハウを持っていることにより、物流機能の外販に幅広い可能性が出てきています。

当初から循環型物流をプラットフォームとして捉えていたからこその可能性の広がりですが、1つはスライド上部に示しているファッションレンタルのフルフィルメントサービスです。

他社がファッションレンタルサービスを実行したいという際に、物流業務を我々が受託できる準備が整っています。新規に始めたいという会社はもちろんのこと、既存の会社の物流機能を受託する取り組みはすでにスタートしています。

また、左下のノンファッションレンタルのフルフィルメントサービスですが、「airCloset Mall」はファッション以外の循環型物流を実現しています。すでにアウトドア用品のレンタル事業者さまの物流の受託を行っていますが、他社がさまざまなもののレンタルビジネスを始める場合、循環型物流を探した時には我々が手を挙げられる準備が整っています。

さらに、フルフィルメントではなく、右下に記載した個別カスタマイズも行います。例えばEC事業での返品再生業務や、クリーニングやメンテナンスなど、一部機能を切り出して提供することもできるように、現場の業務フローを作っています。

今回ユナイテッドアローズさまの事例にあるような既存商品の再生業務や、もしくはクリーニング単体でのなんらかの業務など、そのような業務も受託できる準備を行い、プラットフォーム事業の今後の成長に向けた準備がしっかり整ってきた期だと思います。

IR方針・株主還元について

IR方針と株主還元の考え方についてです。基本的なIR方針としては、引き続き投資家向けの公平かつ適切なタイミングでの情報開示をしっかりと行っていきたいと思っています。

昨日の決算発表に加え、我々は今回も決算発表会を行っています。しっかりと私たちが取り組んでいくこと、事業の戦略、将来の可能性についてご説明したいと思います。

その説明に関しては、私が直接コミュニケーションするだけではなく、機関投資家をはじめとする投資家さまには1on1のミーティングも開催し、積極的に意見交換を行っていきたいと思っています。それらは、当然経営方針にも反映をしていく必要性があると思っており、しっかりと将来の大きな成長につなげていきます。

現状、双方向のコミュニケーションというのも大切にしたいと思っており、本日もそうですが、こうした場に質疑応答の時間を確保し、お答えをするということにより、我々がしっかりと考えている経営方針の理解をより深めていただけるようなIRの方針を取っています。

株主さまへの還元や優待に関しては、現状、利益還元を経営上の重要課題の1つと認識していますが、今は会社法上の分配可能額がマイナスで、自己株式の取得や配当が実施できないという状況です。まずはしっかりと事業の収益性を改善し、今後行っていけるような準備を行うというところが、大前提として挙げられるかと思います。

それに加えて、株主優待の制度も活用し、私たちのことを知っていただきたいと考えています。まだ私たちのことを知らない投資家のみなさまも多くいらっしゃるため、まずは知っていただいたうえで、サービスの社会的な必要性にもご共感いただきたいと思います。

また、私たちがそれを実現できる組織であるという組織力についても知っていただきたいと考えます。これは継続的に実績を見ていただくことで信頼が積み重なっていく部分ではあるかと思いますが、しっかりと組織がそれを成し得ているんだということを知っていただくためにも毎回発信を行っていきたいと思っています。

質疑応答:通期で黒字になる可能性について

「第1四半期に黒字額が大きく増加しているのは素晴らしいことです。通期で大きな黒字になる可能性はありますか?」というご質問です。

我々の予想に対して、上回る現状の数字が出ていますが、季節変動がある中で、秋だけではなくて春が最大の繁忙期になっています。そこに対して広告宣伝費の増額や取り扱い商品の拡大に向けた投資なども実行して費用増も見込んでいるため、今のところ通期の計画としては据え置きとしています。

利益面も意識をして黒字化を実現しながら、今後の成長を加速するための投資を行っていきますので、最終的に良い数字としてみなさまにお見せできるように事業推進を実施していきたいと思っています。

質疑応答:株主優待の対象者が限定的であることについて

「優待開始前に、年齢層のさらなる拡充や、男性ないしはジェンダーレスファッションブランドの導入、『airCloset Mall』との併用などは検討されないのでしょうか?」というご質問です。

「優待のお知らせでの懸念のとおり、現状ではサービス対象者が限定されていて、優待に対する魅力も限定的かと思います」というご意見もいただきました。

年齢層については、実はレディースではかなり幅広い年齢層のご利用をいただいています。

また、メンズサービスに関しては、我々がサービスを開始するためには、お洋服のしっかりとした準備が必要で、その場合にP/Lに大きく影響を及ぼすところもありますので、スタートに向けては慎重に検討していきたいと考えています。

今回の優待制度に関しては、レディースでご利用いただけますが、株主優待のクーポンはパートナーにもご利用いただけます。そのようなご利用を促していただけますが、改善に向けて検討していきたいと思っています。

「airCloset Mall」との併用については、まだ認知度・知名度として低い部分があり、まずは「airCloset」のサービスを優待に加えました。今後「airCloset Mall」の併用ができるような優待の制度も、可能性として十二分にあると思いますので、しっかりと検討していきたいと思っています。

ご意見をいただいたとおり、今後はやはり優待の魅力が限定的にならないように、公平になっていくように、サービスや優待制度の拡充を行っていきたいと思っています。

質疑応答:株主優待の対象者および開始時期について

「株主名簿での確認が、『6月末のみ6ヶ月以上の保有が対象で、2025年度の業績影響は軽微』と記載ですが、2024年の6月末、ないしは今回のみ2024年12月末の株主名簿を参考に、2025年度から配送をされるのでしょうか? それとも、優待の配送開始は2026年となるのでしょうか?」というご質問です。

森本奈央人氏:優待は、2025年9月に最初のお届けをする予定になっています。

「2025年6月末時点で300株以上を保有している方」かつ、「その時点で6ヶ月以上継続して株主となっている方」が対象となっています。したがって、2025年6月末を基準日としての優待制度の開始となります。

こちらに関して、2025年6月期の時点ではまだクーポンを発行しておらず、利用率も不明なため、基本的には今期への影響は軽微と認識しています。

質疑応答:株主優待を1ヶ月にした理由について

天沼:「株主優待が1ヶ月では、初回の内容によってはサービスの体感が不十分に感じられるのですが、1ヶ月とした理由がありますか?」というご質問です。

「個人的には、株主が十分にサービスを体感できるように、必要保有数を引き上げてでも2ヶ月程度付与すべきかと考えています」というご意見もいただいています。

まさに、サブスクリプションのサービスで、かつ当社のサービスを非常にご理解いただいた上でご質問をいただいていると大変うれしく感じています。おっしゃるとおり、特に初回に1ヶ月の優待ですとサービスの体感が不十分になる場合もあるかと思っています。

今回は期間を1ヶ月と設定しましたが、選択できるプランは、1ヶ月に1回のレンタルの「ライトプラン」や、借り放題の「レギュラープラン」など全プランの中からお好きなプランをお選びいただけます。おそらくご利用にあたっては借り放題になる「レギュラープラン」をご利用いただくことが多くなるかと思っています。

このように、1ヶ月の中で複数回レンタルをしてご体感いただけるということから、まずはプランをフリーにし、1ヶ月からスタートをすることを考えました。

一方で、おっしゃっていただいているとおり、必要保有数を引き上げて、2ヶ月程度付与という点ですが、先ほどグラフでお示ししたとおり、継続率については3ヶ月まで見ていただくことが非常に重要な1つの分岐点になります。

ですので、今後、2ヶ月だけでなく3ヶ月の付与も含めて、ご利用状況も鑑みながら株主優待制度について見直しを図っていきたいと思っています。

当社が初めて行っていく優待制度になりますので、しっかりと利用状況をふまえ、お客さまや株主のみなさまからのお声をいただきながら、中長期的に見てもサービスの成長につながるような制度に仕上げていきたいと考えています。

質疑応答:第2四半期での上方修正の可能性について

「第1四半期は、想定を上回る結果とのことですが、例年、下期で利益面が急降下となるために、上期の結果を株価に反映しにくいかと思います。このまま好調に推移した場合に、第2四半期での上方修正は可能でしょうか?」というご質問です。

当社は季節変動の関係で、第2四半期にあたる10月から11月が秋の繁忙期、3月から4月は春の繁忙期となります。この春と秋の繁忙期では広告宣伝の効果が非常に出やすいので会員が増えますが、そのぶん広告宣伝費として費用も増える期でもあります。

したがって、第2四半期での結果を踏まえて、上方修正の意思決定をするかについては、想定以上に大幅な上振れがない限りは、第2四半期での上方修正を行ったためにその後想定以上に費用が増してしまったと見られないように、しっかりと誤解を招かないような発表はしていきたいと思っています。

第2四半期が我々の想定を上回って好調に推移をしたからといって、いたずらに第3四半期の投資も増していくようなビジネスモデルではないため、今は上方修正も起こりうる水準に来ているかとは思いますが、そこは慎重に判断をしていきたいと考えています。

天沼氏からのご挨拶

現状、サブスクリプションの事業として、airCloset事業はしっかりと単体で黒字を出していくことができており、今後はキャッシュフローベースでの黒字もターゲットにして動いていきたいと考えています。

そのためには、まずこの事業が安定して利益を生み出していき、次の成長に対して、今度は新たに大きく事業転換する必要があります。当社はすでに「airCloset」のレディースがメインセグメントとして実証されていますので、続いてメンズ・その他のセグメントへ横展開していく準備をしっかりと進めていきたいと考えています。

そうすることにより、当社が描いている大きな社会の変化に対しても、作り込みができていくのではないかと思っています。

今回のご質問にはありませんでしたが、株価や時価総額に関しても、ここでお伝えしたいと思います。

当社は、社会の課題を解決するためのインフラになりたいと考えています。一方で、世界的に見ても、このサブスクリプション型の「モノの循環するビジネス」において、大きく黒字化して成長軌道に乗っている企業というのは、当社が調査する限りあまり見当たらない状態です。

したがって私たちがパイオニアとなり、「モノの循環サービス」で一つひとつ丁寧に改善活動を行ってきた結果として、今はairCloset事業において黒字となることができました。

今の資本市場では黒字が当然評価されるため、全社での黒字の実現に向けてしっかりと取り組んでまいります。また、サブスクリプション事業は成長が予想しやすい事業と思いますので、成長可能性が大きいということも見ていただけるように、今後もご説明をしていきたいと思っています。

我々は、ファッションの事業でスタートをしていますが、人生において消費される時間が有限である中で、「時間価値」は今後もますます高まっていくと考えます。その時間価値の中で「モノがなかなか探せない・選べない」とならないように、人工知能やパーソナルスタイリングなど、デジタル・アナログ両方を利用したキュレーションによる消費を支えていきたいと考えています。

また、モノが一方的に消費されていくだけではなく、循環して効率的・合理的に使われていくような社会の生成に向けて、一翼を担える企業にしっかりと成長していきたいと思っています。

このような機会にご質問をいただくことによって、我々のサービスや経営も磨かれるため、みなさまからのお声をしっかりとお受けした上で、我々の夢の実現や社会の変革に向けて邁進していきたいと思っています。

配信元: ログミーファイナンス

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