豪ドル
RBA(豪中銀)は23年11月に利上げを実施した後、24年9月まで7会合連続で政策金利を4.35%に据え置きました。
ハウザーRBA副総裁は10月21日、RBAの金融政策の先行きについて「(利上げと利下げの)どちらの方向にも対応する用意がある」と述べ、状況によっては利上げする可能性もあることを示しました。日銀を除いて主要中銀の多くはすでに利下げを実施し、年内に追加利下げを行うと市場は予想しています。一方で市場では、RBAの政策金利は少なくとも年内据え置かれるとの見方が有力です。これらのことは、豪ドルにとってプラスになると考えられます。
日銀はいずれ追加利上げを行うかもしれません。その場合でも、RBAが積極的に利下げを行わなければ、RBAと日銀との政策金利差はそれほど縮小しないと考えられます。両中銀の金融政策面からみれば、豪ドル/円は底堅い展開になりそうです。
豪ドル/米ドルについては、米FRBの利下げペースがどうなるのか?も重要です。FRBの利下げペースが緩やかになる場合、豪ドル/米ドルは上値が重くなる可能性もあります。
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【豪ドル/NZドル】
RBAの政策金利は当面据え置かれそうです。一方、RBNZ(NZ中銀)は8月と10月の2会合連続で利下げを実施し、今後さらに利下げを行うと予想されます(*詳細はNZドルの項をご参照ください)。RBAとRBNZの金融政策面から見れば、豪ドル/NZドルには上昇圧力が加わりやすいとみられます。
RBAの次の一手は利下げになると市場は予想しています(利下げは早ければ25年2月?)。将来的にRBAの利下げが現実味を帯びれば、豪ドル/NZドルは軟調に転じると考えられます。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は8月に0.25%、10月に0.50%の利下げを実施しました(9月は政策会合なし)。
10月会合時の声明では「NZの経済活動は景気抑制的な金融政策の影響もあって低調」、「企業投資と消費は低迷しており、雇用情勢は引き続き悪化している」、「NZ経済は現在、過剰生産能力を抱えた状態にある」などと、NZ景気の弱さが指摘されました。会合の議事要旨では、「(10月の利下げ後の)4.75%の政策金利は依然として景気抑制的」との認識が示されました。
RBNZは次回11月27日の会合で追加利下げを行うと市場は予想。利下げ幅については、0.50%との見方が有力ですが、より大幅な0.75%との観測も一部にはあります。
RBNZと日銀の政策金利差は今後さらに縮小すると考えられることから、NZドル/円は軟調に推移するかもしれません。米FRBの利下げペースが緩やかになれば、NZドル/米ドルは軟調に推移する可能性があります。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は10月23日の政策会合で、0.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を4.25%から3.75%へと引き下げました。利下げは4会合連続で、利下げ幅は過去3会合の0.25%から拡大されました。BOCの声明では、「経済がおおむね(BOCの)予想通りに展開すれば、政策金利はさらに引き下げられると予想している」とされ、今後さらに利下げする可能性が示されました。
市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場では25年3月までにさらに合計0.75%の利下げが行われるとの見方が有力です。BOCの利下げ観測は、カナダドルにとってマイナスです。
BOCと日銀の政策金利差は今後一段と縮小する可能性が高いとみられます。カナダドル/円は軟調に推移する可能性があります。
米ドル/カナダドルについては、FRBの利下げペースがどうなるのか?も重要です。BOCと比べてFRBの利下げペースが緩やかになれば、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わりやすいと考えられます。米ドル/カナダドルは1.40000カナダドルに接近するかもしれません。
原油価格(米WTI原油先物など)が大きく変動する場合、それにカナダドルが反応する可能性があります。原油安はカナダドルにとってマイナスです。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)のこれまでの利上げなど(※)の影響によって、トルコではインフレ率が鈍化しています。24年5月に前年比75.45%に達したCPI(消費者物価指数)上昇率は9月には49.38%へと鈍化しました。
(※)TCMBは23年6月から24年3月にかけて合計41.50%の利上げを実施。24年3月以降は政策金利を50.00%に据え置いています。
インフレ率の鈍化を受けてTCMBはいずれ利下げ(早ければ12月?)に転じると市場は予想しています。10月23日のTCMBの政策会合時の声明をみると、近く利下げが行われる可能性は低そうです。
TCMBの声明では、これまでと同様に「インフレリスクに細心の注意を払う」とされました。また、フォワードガイダンス(先行きの政策に関する示唆)も前回9月会合時から変化なし。「月次のインフレ(率)の基調的なトレンドが大幅かつ持続的に低下し、インフレ期待が(TCMBの)予測範囲に収束するまで、金融引き締めスタンスを維持する」、「インフレの大幅かつ持続的な悪化が見込まれる場合には、金融政策手段を効果的に使用する」との方針が示されました。
これまでマイナスで推移していたトルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)は、足もとでわずかながらもプラスになりました(政策金利:50.00%、9月CPI上昇率:49.38%)。TCMBが政策金利を据え置き続けるなどして、実質金利がプラス圏に定着してさらにプラス幅を拡大していけば、トルコリラは持ち直すかもしれません。
23年6月に経済チームを刷新(財務相とTCMB総裁が交代)してからは、エルドアン大統領がTCMBの金融政策について発言することは少なくなりましたが、エルドアン大統領の発言に注意は必要です。エルドアン大統領が再び金融政策に干渉するようなら、トルコリラには下押し圧力が加わりそうです。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は3月・8月9月の政策会合で、それぞれ0.25%の利下げを行いました(5月と6月の会合は政策金利を据え置き)。
BOMは9月会合時の声明で「政策金利のさらなる調整が可能になると予想している」と表明。追加利下げを示唆しました。BOMの利下げはメキシコペソにとってマイナスですが、追加利下げのペースが緩やかならば、メキシコペソ安はそれほど進まないかもしれません。主要国の中銀と比べてBOMの政策金利の水準がかなり高い状況に大きな変化はないと考えられるからです。
米国の政治情勢には注意が必要です。米国では11月5日に大統領選挙の投開票が行われます。米国のトランプ前大統領は、大統領に返り咲けばメキシコから輸入する自動車すべてに対して高い関税を課すとの考えを示しました(税率は200%以上とする可能性にも言及しました)。米大統領選挙の結果次第では、メキシコペソに対して下押し圧力が加わる可能性があります。
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