井関農 Research Memo(7):2024年12月期は最終損益のみ下方修正。プロジェクトZの各種施策を継続推進

配信元:フィスコ
投稿:2024/10/17 16:07
*16:07JST 井関農 Research Memo(7):2024年12月期は最終損益のみ下方修正。プロジェクトZの各種施策を継続推進 ■井関農機<6310>の今後の見通し

● 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の連結業績は、売上高で前期比0.0%増の170,000百万円、営業利益で同11.3%減の2,000百万円、経常利益で同52.2%減の1,000百万円、親会社株主に帰属する当期純損失で3,100百万円(前期は29百万円の利益)を見込んでいる。期初予想との比較では、プロジェクトZ実施に伴う費用を特別損失として計上する見込みのため、親会社株主に帰属する当期純損益のみ3,500百万円下方修正したものの、それ以外の売上高、各利益に関して変更はない。期末に向けては、国内市場において稲刈りが最盛期を迎える。足元では米価上昇などを受け顧客の投資マインドも上向いてきており、大型農機や需要期を迎えるコンバインなどの拡販に注力することにより、国内事業のトップラインを伸ばしていく方針だ。利益面では、国内事業に加えて、海外事業も着実に成長させることにより、上期終了時点で積み上げた利益を期末に向けて最大限維持していく。また、同社は2024年7月にプロジェクトZの具体的な取り組みを決定・公表した。企業価値のさらなる向上を目的に、期末に向けても各種施策を確実に実行していく構えだ。

国内事業の売上高は、前期比1.8%増の115,000百万円を見込んでいる。上期においては3月に実施した価格改定前の駆け込み需要の反動などの影響を受けたものの、足元では米価の上昇を受け生産農家の投資マインドが上向くなど、期末に向けた事業環境の見通しは比較的良好である。そうしたなか、好調な中型トラクタBFシリーズの拡販に引き続き注力していくほか、新型コンバインのFMシリーズや機能を厳選し低価格を実現したHFRシリーズを始め、需要期を迎えるコンバインの販売にも注力していく。また、プロジェクトZの国内商品戦略として大型・先端・環境・畑作に注力していく方針を掲げるなか、自動直進アシスト付きトラクタや可変施肥田植機、大型のフラッグシップモデルであるjapanシリーズの拡販にも注力していく。これらにより、商品別の売上高は、農機製品の売上高が同2.2%増の46,000百万円、作業機・部品・修理収入の売上高が同2.8%増の43,700百万円を見込んでいる。

海外事業の売上高は、前期比3.2%減の55,000百万円を見込んでいる。地域別では、北米市場の増収を見込んでいるものの、欧州市場、アジア市場、その他の市場が減収となる見通しだ。北米に関しては、コンパクトトラクタ市場の調整局面が想定より長引いてはいるものの、期末に向けてもAGCO社との連携を強化しながら各種販売促進施策を実行することにより業績拡大を図る。下期に複数の新商品を投入することも予定しており、このことも業績予想達成に向けたプラス材料となりそうだ。2024年12月期第2四半期累計期間においても業績が好調だった欧州では、インフレは鈍化傾向にあるものの、期末にかけて在庫調整局面に入ることが想定されている。そうしたなかにあっても、ISEKIフランス、ISEKIドイツを中心に販売・サービス体制の強化、品揃えの拡充などを推進することにより業績を着実に伸ばしていく方針だ。同地域に関しては、やや保守的な見通しである。外部環境が低調ななかでも上期は増収を確保したことから、通期業績予想を上振れて着地する可能性もあると弊社は見ている。アジア市場に関しては、通期で前期比減収予想ではあるものの、各地域のニーズ、経済・政策動向を鑑みながら、新商品の投入や技術面での差別化を図り、同社のプレゼンスを高めていく。特に、タイに関しては製糖工場を始めとした法人向け営業を引き続き強化していくほか、2024年12月期第2四半期において畑作向けが好調だったことことから、畑作向け農機の拡販にも注力していく。これらにより、北米市場の売上高は同12.7%増の16,000百万円、欧州市場の売上高は同3.6%減の32,000百万円、アジア市場の売上高は同21.0%減の6,400百万円を見込んでいる。

また、同社は2024年2月に発表した「プロジェクトZ」の施策について、より具体的な追加施策を同年7月に発表した。2024年12月期上期終了時点で既に、国内生産拠点の集約(2024年4月発表)や広域販売会社の統合(2024年6月発表)を始め、各施策が確実に進捗している状況である。期末に向けても各種施策を断行し、2027年12月期までに抜本的構造改革と成長戦略を完遂することを目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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