S&P500月例レポート(2024年9月配信)<後編>
米国経済
○7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は事前予想の49.5を上回る49.6となりましたが、6月の51.6から低下しました。
○7月のISM製造業景気指数は46.8に低下しました。事前予想は6月の48.5を上回る48.8 でした。
○7月のサービス業PMI確報値は55.0となりました。事前予想は56.0でした (速報値は56.0)。
○7月のISM非製造業景気指数は51.4となりました。事前予想は51.0、6月は48.0でした。
○8月のPMI速報値は、製造業が市場予想の49.5に対し、48.0となりました。サービス業は市場予想の54.0に対し、55.2となりました。
○7月の生産者物価指数(PPI)は、市場予想の前月比0.2%上昇に対し、同0.1%上昇となりました。前年同月比では2.2%上昇となり、6月の同2.6%上昇から低下しました。コアPPIは前月比変わらず(市場予想は同0.2%上昇)となり、前年同月比では2.4%上昇しました (6月の同3.0%上昇から低下)。
○7月の消費者物価指数(CPI)は、事前予想通りに前月比で0.2%上昇しました(6月は同0.1%低下)。前年同月比では2.9%上昇となり、6月の同3.0%上昇から低下しました。食品とエネルギーを除いたコアCPIは、こちらも事前予想通りに前月比で0.2%上昇し(6月は同0.1%上昇)、前年同月比では3.2%上昇となりました(6月は同3.3%上昇)。前年比変化率で目立ったのが住居費の同5.1%上昇、食品の同2.9%上昇、交通サービスの同8.8%上昇で、中古の車・トラックは同10.9%下落しました。
○2024年第2四半期のGDP成長率は、市場予想が速報値から変わらずの前期比年率2.8%だったのに対し、同3.0%に上方修正されました。個人消費支出(PCE)は、市場予想が速報値から変わらずの前期比2.3%増だったの対し、同2.9%増となりました。
○2024年第2四半期の企業利益の速報値は前年同期比11.2%増となりました。
○7月の個人所得は前月比0.3%増となりました。事前予想は同0.2%増でした(6月は同0.2%増)。個人消費支出は予想通り同0.5%増となりました(6月は同0.3%増)。7月の個人消費支出(PCE)価格指数は、市場予想通りの前月比0.2%上昇となりました(6月は同0.1%上昇)。前年同月比では6月と変わらずの2.5%上昇となりました。
○6月の建設支出は市場が前月比0.2%増を見込んでいたのに対し、同0.3%減となりました。前年同月比では6.2%増でした。また、5月分が当初発表の前月比0.1%減から同0.4%減に下方修正されましたが、前年同月比では当初発表の6.4%増から9.8%増に上方修正されました。
○7月の小売売上高は前月比1.0%増となりました。事前予想は同0.3%増でした。6月は当初発表の前月比横ばいから同0.2%減に下方修正されました。
○2024年第2四半期の労働生産性の速報値は前期比年率2.3%上昇となりました。事前予想は同1.6%上昇でした。単位労働コストは前期比0.9%上昇となりました。事前予想は同1.9%の上昇でした。
○7月の鉱工業生産指数は市場予想の前月比0.1%低下に対し、同0.6%の低下となりました。6月は当初発表の前月比0.6%上昇から同0.3%上昇に下方修正されました。設備稼働率は77.8%となり、6月の78.4%から低下しました。
○6月の卸売在庫は市場予想通り前月比0.2%増となりました。5月は当初発表の同0.6%増から同0.5%増に下方修正されました。
⇒7月の卸売在庫は前月比0.3%増となりました。6月は当初発表の同0.2%増から0.1%増に下方修正されました。
○7月の小売在庫は前月比0.8%増となりました。6月は当初発表の同0.7%増から同0.9%増に上方修正されました。
○6月の企業在庫は市場予想通り前月比0.3%増となりました。5月は同0.5%増でした。
○6月の製造業新規受注は市場予想通り前月比3.3%減となりました。5月は当初発表の同0.5%減から同3.0%減に下方修正されました。
○6月のS&P コアロジック・ケース・シラー 住宅価格指数(季節調整前)は前月比0.6%上昇しました。5月は同1.0%の上昇でした。前年同月比では6.5%上昇となりました(5月は同6.9%上昇)。
○7月の輸入物価指数は前月比0.1%上昇しました。事前予想は同0.1%低下でした(6月は同横ばい)。前年同月比では1.6%上昇しました (6月は同1.5%上昇)。輸出価格指数は前月比0.7%上昇しました。事前予想は同0.1%低下でした(6月は同0.3%低下)。前年同月比では1.4%上昇しました(6月は同1.0%上昇)。
○6月の貿易収支の赤字額は731億ドルとなりました。5月は750億ドルの赤字でした。
⇒7月の財の貿易収支の赤字額は1027億ドルとなりました。輸入は前月比2.3%増(6月は同0.8%増)、輸出は前月比変わらずでした(6月は同2.7%増)。
○民間調査機関コンファレンスボードが発表した8月の消費者信頼感指数は事前予想の100.1に対し、103.3となりました。7月も当初発表の100.3から101.9に上方修正されました。
○8月のミシガン大学消費者信頼感指数の確報値は67.9となりました。1年先のインフレ期待は前月の2.9%から2.8%に低下しました。
雇用関係
○7月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想の18万人増を下回る11万4000人増となりました。6月は当初発表の20万6000人増から17万9000人増に下方修正されました(6月の当初の市場予想は18万9000人増)。
⇒7月の失業率は、予想が6月から横ばいの4.1%だったのに対し、4.3%に上昇しました(5月は4.0%、4月は3.9%、3月は3.8%、2月も3.9%、1月と2023年12月、11月は3.7%、10月は3.9%、9月は3.8%でした。2020年2月は3.5%でしたが、同年5月は13.3%となりました)。
⇒労働参加率は6月から横ばいの62.6%という予想に対し、7月は62.7%に上昇しました(5月は62.5%、4月は62.7%、3月は62.7%、2月、1月と2023年12月は62.5%、11月は62.8%、10月は62.7%、9月は62.8%)。
⇒7月の週平均労働時間は、予想が6月から変わらずの34.3時間だったのに対し、34.2時間に減少しました(5月は34.3時間、4月は34.3時間、3月は34.4時間、2月は34.3時間、1月は34.2時間、2023年12月は34.3時間、11月は34.4時間、10月は34.3時間、9月は34.4時間)。
⇒7月の平均時給は前月比0.3%増の予想に対し、同0.2%増(前月の35.00ドルから35.07ドルに増加)となりました(6月は同0.3%増、5月は同0.2%増、4月は同0.2%増、3月は同0.3%増、2月は同0.2%増、1月は同0.5%増、2023年12月、11月は同0.4%増、10月は同0.2%増、9月は同0.3%増)。
→前年同月比では3.6%増に伸びが低下し、6月は当初発表の同3.9%増から同3.8%増に下方修正されました(5月は同4.1%増、4月は同4.0%増、3月は同4.1%増、2月は同4.3%増、1月は同4.4%増、2023年12月は同4.0%増、11月は同4.0%増、10月は同4.0%増、9月は同4.2%増)。
○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の185万1000件から186万3000件に増加しました。
⇒2024年8月1日発表の週間新規失業保険申請件数:24万9000件(当初の発表通り)。
⇒2024年8月8日発表の週間新規失業保険申請件数:23万3000件
⇒2024年8月15日発表の週間新規失業保険申請件数:22万7000件
⇒2024年8月22日発表の週間新規失業保険申請件数:23万2000件
⇒2024年8月29日発表の週間新規失業保険申請件数:23万1000件
企業業績
○2024年第2四半期の決算発表を終えていない企業はわずか数社となりました。時価総額の98.1%に相当する494銘柄が発表を終え、そのうち、389銘柄(78.7%)で営業利益が予想を上回り、492銘柄中303銘柄(61.6%)で売上高が予想を上回りました。
⇒2024年第2四半期の営業利益は前期比で7.0%増、前年同期比では6.6%増が見込まれており、過去最高を更新する勢いです。
⇒売上高は前期比で3.6%増、前年同期比では5.8%増となる見通しで、過去最高を記録した2023年第4四半期をわずか0.3%下回る水準となる見込みです。
⇒2024年第2四半期の営業利益率は、2024年第1四半期の11.58%と2023年第2四半期の11.87%を上回る11.99%になると予想されます(1993年以降の平均は8.83%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
⇒2024年第2四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は12.9%となっています。この割合は、2023年第1四半期は13.1%、2023年第2四半期は16.3%でした。
○2024年第3四半期(決算期がずれている企業は9月末に決算発表を開始する予定)に目を向けると、営業利益は前期比で4.4%増、前年同期比で16.8%増と予想され、過去最高を更新する見通しです。
○2024年通年の利益は前年比11.4%増が見込まれており、この予想に基づく2024年の予想株価収益率(PER)は23.8倍となっています。
○2025年通年の利益は前年比16.6%増が見込まれており、予想PERは20.4倍となっています。
個別銘柄
○半導体メーカーのインテル
○情報技術企業のシスコ・システムズ
○コーヒーチェーン大手のスターバックス
○ランジェリー小売業のヴィクトリアズ・シークレット
○米国の格安航空会社のジェットブルー・エアウェイズ
配当金
○2024年8月の配当支払額は前年同月比5.9%減となりました。7月は同9.0%増、6月は同15.1%増で、年初来では3.4%増加しています。
⇒8月の配当支払金は前年同月の1株当たり8.13ドルから7.65ドルに減少し、支払総額も前年同月の679億ドルから642億7000万ドルに減少しました。
○2024年8月は、増配が21件、配当開始が0件、減配が1件で、配当停止は2件でした。2023年8月は、増配が19件、配当開始が0件で、減配が4件、配当停止は0件でした。
⇒年初来では、増配が235件、配当開始が6件、減配が10件、配当停止が2件となっています。2023年の同期間は、増配が240件、配当開始が7件、減配が19件で、配当停止は4件でした。
⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5 件で、配当停止はありませんでした。
○8月の増配率の中央値は、7月の5.66%から6.76%に上昇しました(6月は2.62%でした)。年初来では6.76%(7月末時点は6.67%、6月末時点は6.78%)となっています。8月の平均増配率は7月の9.24%から7.15%に低下し(6月は8.46%)、年初来では8.35%(7月末時点は8.48%。いずれも2倍以上になった銘柄を除く)となりました。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。
○2024年の配当に関して、予想は引き続き増加となっており、年間の増配率は1936年以降の平均である5.79%を上回る見通しです。この予想では、アルファベット
⇒注目すべき点として、2024年第3四半期と2024年第4四半期の配当支払い額は、過去最高の更新が予想されます(現在の過去最高は2023年第4四半期)。
インデックス・レビュー
◇S&P500指数
8月のS&P500指数は厳しい出だしとなり、月初の3営業日で6.08%下落しました。背景には円キャリートレードの巻き戻しがあり、円が1ドル142円まで上昇した結果、日経平均株価は3営業日で12.40%下落しました。米国のVIX恐怖指数は、景気後退懸念が再燃し、米国株が幅広く下落する中で、65.37まで上昇しました(これら3つの指数は月末までにある程度回復)。数日をかけてキャリートレードが解消され、経済を巡る懸念が後退するのに伴い、市場は回復基調となり、9月17‐18日のFOMC会合で予想される利下げに投資家の注目が集まりました(0.25%と0.50のどちらの利下げ幅が見込まれるかが議論されています)。相場の好転に加えて、2024年第2四半期決算(98%の銘柄が発表済み)は好調な内容が続いており、利益は四半期ベースで過去最高を更新する見通しです(2024年第3四半期と第4四半期も過去最高益の更新が予測されています)。更にインフレ率も低下が続きました。その結果、幅広い銘柄で株価が反発し、S&P500指数は前月末比6.08%の下落から切り返し、同2.28%上昇で月を終え、終値での過去最高値を僅かに0.33%下回る水準となりました。
8月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は7月の0.95%から1.32%に上昇し、2023年3月(1.51%)以来の高水準となりました。年初来では0.91%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。8月の出来高は、7月の前月比9%減少の後に、同1%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では2%減少となりました。2024年8月までの12ヵ月間では前年同期比8%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。
8月は1%以上変動した日数は22営業日中9日(上昇が6日、下落が3日)で、市場は2日で2%以上の変動を記録しました(上昇が1日、下落が1日)。7月は1%以上変動した日数は22営業日中6日(上昇が4日、下落が2日)、2%以上変動した日数が1日(下落)でした。年初来では、1%以上変動した日数は36日(上昇が24日、下落が12日)で、2%以上変動した日数は4日(上昇は2日、下落は2日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。8月は22営業日中14日で日中の変動率が1%以上となり、4日で日中の変動率が2%以上となりました。対して7月は1%以上の変動が22営業日中9日で、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、56日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は6日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
8月は値上がり銘柄数が若干減少しましたが、なお値下がり銘柄数を大幅に上回りました。8月の値上がり銘柄数は355銘柄(平均上昇率は5.51%)と、7月の364銘柄(同8.19%)から減少しました。8月の10%以上上昇した銘柄数は52銘柄(同14.21%)と、7月の116銘柄(同14.89%)から減少し、2銘柄(7月は6銘柄)が25%以上上昇しました。一方、8月の値下がり銘柄数は148銘柄(平均下落率は5.39%)と、7月の139銘柄(同5.63%)から増加しました。8月の10%以上下落した銘柄数は19名柄(同17.81%)と7月の22銘柄(同16.58%)から減少し、4銘柄が25%以上下落しました(7月は4銘柄)。年初来では、値上がり銘柄数は372銘柄(平均上昇率は20.65%)で、272銘柄(同26.31%)が10%以上上昇し、110銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は129銘柄(平均下落率は13.06%)で、68銘柄(同21.32%)が10%以上下落し、18銘柄が25%以上下落しました。2023年通年では、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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