S&P500月例レポート(2024年9月配信)<前編>
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
THE S&P 500 MARKET:2024年8月
個人的見解:ボラティリティ、不確実性、動揺はあったが、最終的に上昇
インデックスの動き
8月の株式市場は7月のボラティリティ、不確実性、動揺が続きましたが、最終的にS&P500指数は2.28%上昇して5648.40で月を終えました。配当込みのトータルリターンはプラス2.43%でした(7月は1.13%上昇とプラス1.22%)。8月に最高値更新はなく(7月は7回)、2024年7月16日に付けた終値での過去最高値(5667.20)からわずか0.33%安の水準で月末を迎えました。年初来では18.42%上昇(トータルリターンはプラス19.53%)となりました。マグニフィセント・セブン銘柄は、8月もグループとして大きな存在感を示しましたが、指数全体のリターンにおける影響力は低下し(少なくとも8月は)、グループ全体ではS&P500指数の月間トータルリターンを0.75%押し下げました。
セクター別では、消費関連セクターに顕著な動きが見られ、支出とインフレに対する懸念から一般消費財が1.08%下落(年初来では5.79%上昇)した一方で、生活必需品は5.78%上昇(同15.78%上昇)し、セクター別で最高のパフォーマンスとなりました。月間の下落幅が最大だったのはエネルギーで、8月は2.32%下落(同8.72%上昇)しました。ガソリン価格の下落が続いていることが要因ですが、これはドライブが多くなる夏にしては珍しい現象です。
過去3ヵ月間の騰落率は7.03%上昇となりました(トータルリターンはプラス7.39%)。年初来では18.42%上昇となり(同プラス19.53%)、年率換算すると28.66%上昇(同プラス30.46%)に相当します。過去1年間では25.31%上昇となっています(同プラス27.14%)。
8月は値上がり銘柄数が355銘柄、値下がり銘柄数が148銘柄となり、差は縮小したものの、依然として値上がり銘柄が圧倒的に多くなっています(7月は値上がり銘柄数が364銘柄に対し、値下がり銘柄数は139銘柄)。8月は22営業日のうち13営業日で上昇し(7月は22営業日のうち14営業日で上昇。年初来では168営業日のうち95営業日で上昇)、9営業日で1%以上変動しました(上昇が6日、下落が3日)。11セクターのうち9セクターが上昇しました(7月は9セクターが上昇)。出来高は前月比1%増(営業日数調整後)、前年同月比では2%減となりました。
S&P500指数の時価総額は8月に1兆590億ドル増加(7月は5360億ドル増加)して、47兆4480億ドルとなりました。年初来では7兆4000億ドル増加しました。2023年は7兆9060億ドルの増加、2022年は8兆2240億ドルの減少でした。
⇒ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は8月に4回最高値を更新しました(年初来では26回。終値での最高値は4万1563.08ドル、取引時間中の最高値は4万1585.21ドル)。7月の最高値更新は3回でした。同指数は8月に1.76%上昇して(配当込みのトータルリターンはプラス2.03%)、4万1563.08ドルで月を終えました。7月は4.41%上昇して(同プラス4.51%)で4万0842.79ドル、6月は1.12%上昇して(同プラス1.23%)3万9118.86ドルで月を終えました。ダウ平均は過去最高値を更新して8月を終えています。過去3ヵ月間の騰落率は7.44%上昇(同プラス7.95%)、年初来では10.28%上昇(同プラス11.75%)、過去1年間では19.70%上昇(同プラス22.06%)となっています。2023年は13.70%の上昇(同プラス16.18%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。
○8月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、1.32%(2023年3月の1.51%以来の水準)と7月の0.95%から上昇し、年初来では0.91%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。
○8月の出来高は、7月の前月比9%減少の後に、同1%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では2%減少となりました。2024年8月までの12ヵ月間では前年同期比8%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。
○8月は1%以上変動した日数は22営業日中9日(上昇が6日、下落が3日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。7月は1%以上変動した日数は22営業日中6日(上昇が4日、下落が2日)、2%以上変動した日数は1日(下落)でした。年初来では、1%以上変動した日数は36日(上昇が24日、下落が12日)で、2%以上変動した日数は4日(上昇が2日、下落が2日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。8月は22営業日中14日で日中の変動率が1%以上となり、4日で日中の変動率が2%以上となりました。対して7月は1%以上の変動が22営業日中9日で、2%以上変動した日はありませんでした。年初来では、56日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は6日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
過去の実績を見ると、8月は58.3%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.89%、下落した月の平均下落率は3.90%、全体の平均騰落率は0.64%の上昇となっています。2024年8月のS&P500指数は2.28%の上昇でした。
9月は43.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.09%、下落した月の平均下落率は4.70%、全体の平均騰落率は1.16%の下落(1年で最もパフォーマンスの悪い月)となっています。
今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2024年は9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日、2025年は1月28日-29日、3月18日-19日、5月6日-7日、6月17日-18日、7月29日-30日、9月16日-17日、10月28日-29日、12月9日-10日となっています。
主なポイント
○8月の市場は2.28%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス2.43%)となりました。7月は辛うじて上昇したものの上値が重く(1.13%上昇、同プラス1.22%)、6月(3.47%上昇、同プラス3.59%)と5月(4.80%上昇、同プラス4.96%)の力強い上昇基調から減速していました。過去3ヵ月では7.03%上昇(同プラス7.39%)となりました。また、年初来では18.42%上昇(同プラス19.53%)となり、年率換算すると28.66%上昇 (同プラス30.46%)に相当します。過去1年間では25.31%上昇(同プラス27.14%)となっています。
⇒マグニフィセント・セブン銘柄は引き続きグループとしては大きな存在感を示していますが、8月にグループとしての株価は下落し、S&P500指数のトータルリターンを0.75%押し下げました。これら7銘柄のS&P500指数の年初来上昇率に占める割合は44.7%となっています。8月は、7銘柄の株価が平均0.88%下落したのに対し、指数構成銘柄の平均騰落率は2.31%上昇となりました。
○8月の主なデータ
⇒S&P500指数は8月も変動の激しい展開となりましたが、最終的には上昇して月を終えました(2.28%上昇)。7月は1.13%上昇、6月は3.47%上昇でした。8月は22営業日のうち13営業日で上昇しました(7月は22営業日のうち14営業日で上昇)。また、値上がり銘柄数が355銘柄、値下がり銘柄数が148銘柄となり、差が縮小したものの、依然として値上がり銘柄が圧倒的に多くなっています(7月は値上がり銘柄数が364銘柄、値下がり銘柄数は139銘柄でした)。8月の出来高は前月比1%増、前年同月比では2%減となりました。
→8月は11セクターのうち9セクターが上昇しました。7月は9セクターが上昇、6月は5セクターが上昇しました。8月のパフォーマンスが最高となったのは生活必需品で、5.78%上昇しました(年初来では15.78%上昇、2021年末比では9.69%上昇)。パフォーマンスが最低だったのはエネルギーで、2.32%下落しました(同8.72%上昇、同64.61%上昇)。
⇒S&P500指数は8月に2.28%上昇して、5648.40で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス2.43%)。7月は1.13%上昇(同プラス1.22%)して5522.30、6月は3.47%上昇(同プラス3.59%)して5460.48で月を終えました。過去3ヵ月間では7.03%上昇(同プラス7.39%)、年初来では18.42%上昇(同プラス19.53%)、過去1年間では25.31%上昇(同プラス27.14%)となりました。2023年通年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年通年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。
→S&P500指数は8月に終値での最高値更新はなく、2024年7月16日に付けた終値での過去最高値から0.33%安の水準で月末を迎えました。7月は7回、6月は7回(5月は2回、4月は0回、3月は8回、2月は8回、1月は6回)でした。年初来での最高値更新回数は38回となっています。2023年の最高値更新回数は0回、2022年は1回、2021年は70回でした(過去最高は1995年の77回)。
→コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは66.81%上昇 (同プラス79.26%)となっています。
○米国10年国債利回りは7月末の4.04%から3.91%に低下して月を終えました(2023年末は3.88%、2022年末も3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は 2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは7月末の4.31%から4.20%に低下して取引を終えました(同4.04%、同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは7月末の1ポンド=1.2859ドルから1.3131ドルに上昇し(同1.2742ドル、同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは7月末の1ユーロ=1.0824ドルから1.1050ドルに上昇しました(同1.0838ドル、同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円(対米ドル)は7月末の1ドル=150.00円から146.14円に上昇し(同141.02円、同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は7月末の1ドル=7.2193元から7.0930元に上昇しました(同7.1132元、同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○8月末の原油価格は6.3%下落し、7月末の1バレル=78.49ドルから同73.58ドルとなりました(2023年末は同71.31ドル、2022年末は同80.45ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は8月に4.6%下落しました(現在1ガロン=3.433ドル、7月末は3.598ドル、2023年末は同3.238ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は52.0%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は47.3%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。
⇒2024年7月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、56%が原油、16%が販売・マーケティング費、13%が精製コスト、15%が税金となっています。
○金価格は7月末の1トロイオンス=2492.20ドルから上昇し、2535.40ドルで8月の取引を終えました(2023年末は2073.60ドル、2022年末は1829.80ドル、2021年末は1901.60ドル、2020年末は1520.00ドル、2019年末は1284.70ドル、2018年末は1305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は7月末の16.36から15.00に低下して8月を終えました。月中の最高は65.73、最低は14.46でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。
⇒同指数の2023年の最高は30.81、最低は11.81でした。
⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。
⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。
⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。
○目標株価は引き続き上昇しています。S&P500指数に対する市場関係者の1年後の目標株価は2023年12月末時点から9ヵ月連続で上昇し、現在値から10.4%上昇の6238となっています(7月末時点では10.8%上昇の6119、6月末時点では5972)。それ以前の目標値は、9ヵ月連続の低下から11ヵ月連続の上昇を経て、2023年11月まで2ヵ月連続で低下していました。ダウ平均の目標株価も3ヵ月連続の上昇から2ヵ月連続の低下を経て、8月まで9ヵ月連続で上昇し、現在値から6.5%上昇の4万4282ドルとなっています(7月末時点では8.0%上昇の4万4097ドル、6月末時点では4万3158ドル)。
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