*15:43JST 平和不動産リート投資法人 Research Memo(3):2024年5月期の分配金は過去最高を更新
■平和不動産リート投資法人<8966>の業績動向
1. 2024年5月期の業績概要
2024年5月期(第45期)は、営業収益8,735百万円(前期比0.9%増)、営業利益4,483百万円(同0.3%減)、経常利益3,939百万円(同1.4%減)、当期純利益3,938百万円(同1.4%減)であった。オフィス、レジデンスともに高稼働と賃料増額の進展により、賃料収入が増加した。バリューアップ投資の実行により費用計上が先行したが、譲渡益でバリューアップ費用をカバーした。その結果、営業収益及び各段階利益は、2024年3月25日に公表した修正予想を上回って着地している。なお、REITでは、税引前利益の90%超を分配金として支払う場合には法人税が免除されることから、当期純利益は経常利益とほぼ同水準となっている。
内部成長としては、第1にバリューアップを通じた既存物件の内部成長が進展し、オフィス、レジデンスともに賃料改定額は2020年以降の最高値を更新した。賃料改定による賃料収入増加率はオフィスで年率0.40%増、レジデンスで同0.56%増、ポートフォリオ全体で0.48%増であった。第2にポートフォリオ稼働率は高稼働が継続した。期中平均稼働率はオフィスで98.6%(前期比0.14ポイント増)、レジデンスで97.3%(同0.18ポイント増)、全体では97.8%(同0.2ポイント増)の高水準であった。レジデンスでは、繁忙期(5月期は入学、卒業や就職などが重なる3~4月を含むため繁忙期になる)に当たるが、2023年5月期比で退去戸数が少なく、更新が多かったことも高稼働率の一因である。外部成長としては、将来の内部成長の基礎となる資産の取得を実行した。スポンサーパイプライン及び第三者との資産入替による外部成長を継続し、14期連続となる資産入替に伴う含み益の顕在化により譲渡益9.0億円を計上した。また、公募増資の活用によって、資産規模は順調に拡大している。財務運営でも調達期間、金利固定化比率の水準を維持し、健全な財務基盤を維持した。
以上から、本来EPUは、バリューアップ投資の実行により費用計上が先行したことで2,676円(前期比40円減)であった。本来EPUとは、バリューアップ工事に伴う費用(営業費用に含まれる)がPLに与える影響が拡大したことで、賃料上昇の流れを分かり易くするための指標であり、具体的には譲渡益及び内部留保充当額を除いた1口当たり分配金に、譲渡益及び内部留保を充当する方針であるバリューアップ関連費用を足し戻して計算する。また、DPU(1口当たり分配金)は、資産入替に伴う含み益の顕在化による譲渡益計上でバリューアップ費用をカバーし、内部留保取崩の一方で内部留保繰入を行った結果、3,380円(同80円増)と17期連続で過去最高水準を更新した。着実な成長に加え、潤沢な内部留保(57.5億円)と含み益(585.6億円)を有することで、継続的な物件取得、財務基盤の安定化、安定的な分配金支払いなどを可能にしている。
2. 財政状態
2024年5月期末(第45期末)の財政状態は、総資産243,163百万円(前期末比1.0%増)、純資産118,953百万円(同0.4%増)、有利子負債114,037百万円(同1.3%増)であった。平均調達金利は0.851%(同0.077ポイント上昇)となったが、主要金融機関との良好な関係の下、今後は比較的金利水準が高い過去の借入金が満期を迎えることで、引き続き低水準の調達コストが続くと見込まれる。平均調達期間は7.39年、長期有利子負債比率は100.0%、金利固定化比率は70.4%で、将来の金利上昇リスクに十分備えている。将来予想される金利上昇に対しては、内部留保や含み益を活用したバリューアップ工事による賃料増額によってカバーする計画である。また、大手都銀からのコミットメントライン(必要な時に借りられる、銀行からの融資枠)を2024年11月期の期初より従来の70億円から80億円に拡大し、不測の事態にも対応できるように、手元流動性を拡充している。
一方、鑑定LTV(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は40.3%と良好な低水準を維持している。2024年11月期の期初に行った公募増資後には、鑑定LTVは39.3%に低下している。同REITでは、同比率40~50%を標準水準として維持し、上限を65%に設定しているが、鑑定評価額の増加に伴って長期的に同比率は低下し、近年は横ばいながら良好な低水準で推移し、安全性が高いと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2024年5月期の業績概要
2024年5月期(第45期)は、営業収益8,735百万円(前期比0.9%増)、営業利益4,483百万円(同0.3%減)、経常利益3,939百万円(同1.4%減)、当期純利益3,938百万円(同1.4%減)であった。オフィス、レジデンスともに高稼働と賃料増額の進展により、賃料収入が増加した。バリューアップ投資の実行により費用計上が先行したが、譲渡益でバリューアップ費用をカバーした。その結果、営業収益及び各段階利益は、2024年3月25日に公表した修正予想を上回って着地している。なお、REITでは、税引前利益の90%超を分配金として支払う場合には法人税が免除されることから、当期純利益は経常利益とほぼ同水準となっている。
内部成長としては、第1にバリューアップを通じた既存物件の内部成長が進展し、オフィス、レジデンスともに賃料改定額は2020年以降の最高値を更新した。賃料改定による賃料収入増加率はオフィスで年率0.40%増、レジデンスで同0.56%増、ポートフォリオ全体で0.48%増であった。第2にポートフォリオ稼働率は高稼働が継続した。期中平均稼働率はオフィスで98.6%(前期比0.14ポイント増)、レジデンスで97.3%(同0.18ポイント増)、全体では97.8%(同0.2ポイント増)の高水準であった。レジデンスでは、繁忙期(5月期は入学、卒業や就職などが重なる3~4月を含むため繁忙期になる)に当たるが、2023年5月期比で退去戸数が少なく、更新が多かったことも高稼働率の一因である。外部成長としては、将来の内部成長の基礎となる資産の取得を実行した。スポンサーパイプライン及び第三者との資産入替による外部成長を継続し、14期連続となる資産入替に伴う含み益の顕在化により譲渡益9.0億円を計上した。また、公募増資の活用によって、資産規模は順調に拡大している。財務運営でも調達期間、金利固定化比率の水準を維持し、健全な財務基盤を維持した。
以上から、本来EPUは、バリューアップ投資の実行により費用計上が先行したことで2,676円(前期比40円減)であった。本来EPUとは、バリューアップ工事に伴う費用(営業費用に含まれる)がPLに与える影響が拡大したことで、賃料上昇の流れを分かり易くするための指標であり、具体的には譲渡益及び内部留保充当額を除いた1口当たり分配金に、譲渡益及び内部留保を充当する方針であるバリューアップ関連費用を足し戻して計算する。また、DPU(1口当たり分配金)は、資産入替に伴う含み益の顕在化による譲渡益計上でバリューアップ費用をカバーし、内部留保取崩の一方で内部留保繰入を行った結果、3,380円(同80円増)と17期連続で過去最高水準を更新した。着実な成長に加え、潤沢な内部留保(57.5億円)と含み益(585.6億円)を有することで、継続的な物件取得、財務基盤の安定化、安定的な分配金支払いなどを可能にしている。
2. 財政状態
2024年5月期末(第45期末)の財政状態は、総資産243,163百万円(前期末比1.0%増)、純資産118,953百万円(同0.4%増)、有利子負債114,037百万円(同1.3%増)であった。平均調達金利は0.851%(同0.077ポイント上昇)となったが、主要金融機関との良好な関係の下、今後は比較的金利水準が高い過去の借入金が満期を迎えることで、引き続き低水準の調達コストが続くと見込まれる。平均調達期間は7.39年、長期有利子負債比率は100.0%、金利固定化比率は70.4%で、将来の金利上昇リスクに十分備えている。将来予想される金利上昇に対しては、内部留保や含み益を活用したバリューアップ工事による賃料増額によってカバーする計画である。また、大手都銀からのコミットメントライン(必要な時に借りられる、銀行からの融資枠)を2024年11月期の期初より従来の70億円から80億円に拡大し、不測の事態にも対応できるように、手元流動性を拡充している。
一方、鑑定LTV(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は40.3%と良好な低水準を維持している。2024年11月期の期初に行った公募増資後には、鑑定LTVは39.3%に低下している。同REITでは、同比率40~50%を標準水準として維持し、上限を65%に設定しているが、鑑定評価額の増加に伴って長期的に同比率は低下し、近年は横ばいながら良好な低水準で推移し、安全性が高いと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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