ダイコク電 Research Memo(4):2024年3月期はスマート遊技機に必要な製品群が計画を大きく上回る(1)

配信元:フィスコ
投稿:2024/07/26 12:04
*12:04JST ダイコク電 Research Memo(4):2024年3月期はスマート遊技機に必要な製品群が計画を大きく上回る(1) ■ダイコク電機<6430>の決算動向

1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の業績は、売上高が前期比69.2%増の53,861百万円、営業利益が同198.6%増の12,001百万円、経常利益が同184.1%増の12,102百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同189.1%増の8,464百万円と期初計画を上回る大幅な増収増益となり、各段階利益で最高益を更新した。

スマート遊技機の普及とともに、「情報システム事業」が大きく伸び、過去最高売上高を更新した。スマートパチスロの稼動が好調に推移するなかで、パチンコホールではスマート遊技機に対応するための設備投資が活発化し、スマート遊技機専用を含むカードユニットや情報公開端末等の販売台数が計画を大幅に上回った。計画を大きく上回ったのは、スマートパチスロの設置台数が想定よりも急ピッチで伸びたことに加え、2024年7月からの新紙幣流通に先駆けたカードユニットの改刷対応需要が業績(第4四半期)に乗ってきたことが理由である。また、サービス売上についてもMGサービスを中心に着実に積み上げることができた。一方、「アミューズメント事業」については、市場全体でパチンコ販売台数が伸び悩んだ影響を受け、遊技機向けの表示ユニット及び制御ユニット販売が前期を下回った。

利益面では、将来に向けた開発投資を積極投入しながらも、「情報システム事業」の拡大が収益を大きく押し上げた。特に、利益率の高い主力製品が伸びたことで大幅な営業増益を実現し、過去最高益を更新。営業利益率も22.3%(前期は12.6%)に大きく改善した。

財政状態については、総資産が売上増に伴う現金及び預金並びに営業債権の増加、設備投資需要に備えた製品在庫の増加により前期末比22.7%増の59,281百万円に拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより、同21.9%増の40,720百万円となったことから、自己資本比率は68.7%(前期末は69.2%)とほぼ横ばいで推移した。

事業別の業績は以下のとおりである。

(1) 情報システム事業
売上高は前期比88.5%増の49,412百万円、セグメント利益は同166.0%増の14,603百万円と拡大し、過去最高業績を更新した。スマートパチスロの稼動が好調に推移したことにより、パチンコホールにおいて「スマート遊技機」に対応する設備投資が活発化し、スマート遊技機専用を含むカードユニット「VEGASIA」※1や情報公開端末「REVOLA」「BiGMO PREMIUM」等の販売台数が計画を大幅に上回った。2024年7月からの新紙幣流通に先駆けたカードユニットの改刷対応需要も上振れ要因となった。また、サービス売上についても、「スマート遊技機」登場による市場変化への対応に関連したMGサービスの加盟店舗数が増加したこともあり、着実に積み上げることができた。特に商圏分析サービス「Market-SIS」及びクラウドチェーン店管理サービス「ClarisLink」に、省力化ツール「楽らく入替運用オプション」(遊技機の入替設定が1分でできる)を加えた3つの経営支援サービスがそれぞれ順調に伸びている※2。利益面は、クラウド開発等への先行費用が増加したものの、利益率の高い主力製品の伸びやMGサービスによるストック収益の積み上げにより大幅な増益を達成し、セグメント利益率は29.6%(前期は20.9%)と大きく改善した。

※1 カードユニット「VEGASIA」シリーズについては、2013年に後発で市場参入して以来、順調にシェアを拡大(2024年3月期末は17.6%)してきたが、今後「スマート遊技機」へのシフトとともにシェア拡大に拍車がかかる可能性が高いと弊社では見ている。
※2 2019年4月にリリースした「Market-SIS」の2024年3月期末の掲載店舗数は4,296店舗(2020年9月末比1,267店舗増)、2021年11月にリリースした「ClarisLink」の契約店舗数は786店舗(2022年9月末比655店舗増)、2022年6月にリリースした「楽らく入替運用オプション」の契約店舗数は381店舗となっている。


なお、同社「DK-SIS」データ等から市場全体の動きに目を向けると、パチスロ機全体におけるスマートパチスロの設置割合は2024年3月末で36.4%(前年同月末は8.2%)と想定よりもハイペースで普及している※1。また、年間(2023年4月~2024年3月)のパチスロ販売台数(77.6万台)のうち、スマートパチスロの販売台数は70.9%(55.0万台)を占めた※2。特に、2023年10月以降は毎月80%前後の販売シェアで推移しており、スマートパチスロ機への入れ替えが順調に進んでいることが窺える。

※1 一方、2023年4月より市場導入されたスマートパチンコについては、パチンコ機全体における設置割合は2024年3月末で未だ4.7%にとどまっている。
※2 一方、2023年4月〜2024年3月のパチンコ販売台数は、稼動をけん引する新たなタイトルがなかったことやスマートパチスロへのシフトを優先する動きから82.6万台と伸び悩み、そのうち、スマートパチンコの販売シェアは14.4%(11.9万台)にとどまっている。


また、同社「DK-SIS」データによると遊技機全体の稼動状況(期間平均)は、前年度比105.6%と好調に推移している。パチスロ機がスマートパチスロの登場により同122.1%と稼動全体の伸びをけん引しており、パチンコホールの設備投資需要を高める要因となっている。一方、パチンコ機の稼動状況は前年度を下回ったが、2024年3月にラッキートリガーという新たな遊技性を持った遊技機が登場しファンから高い支持を得たことから、3月単月では前年同期比103.1%に上昇している。

(2) アミューズメント事業
売上高は前期比20.2%減の4,499百万円、セグメント損失は390百万円(前期は140百万円の利益)と減収減益となった。市場全体でパチンコ機販売台数が伸び悩んだ影響を受け、遊技機向けの表示ユニット及び制御ユニットの販売が前期を下回った。利益面でも、大幅な減収に伴う収益の押し下げのほか、自社ブランドによるスマートパチスロ機の開発費用(2025年3月期に市場投入予定)などにより、セグメント損失を計上した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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