*13:58JST ティムス:東京農工大発の創薬ベンチャーで臨床パイプラインが3つに拡大
東京農工大発の創薬ベンチャー。現在は、「TMS-007」「JX09」「TMS-008」の3つの臨床パイプラインを有している(上場時は1つ)。2018年にBiogen社とオプション契約を締結し、2021年にBiogen社がオプション権を行使、その後昨年3月には「TMS-007」の臨床試験の概要が登録されたが、昨年4月にBiogen社からこの試験の開始を一時停止し、再検討するという発表があった。約8ヶ月半後の2024年1月に、SMTP化合物全般に関する契約上の地位がBiogen社からJIXING(ジシン)社へ譲渡され、現在はJIXING社を中心に「TMS-007」の次の臨床試験を計画している。JIXING社は、米国の有力投資家RTW社が2019年に設立した企業であり、RTW社は当社とJIXING社との提携に伴い当社へ出資(株式3,659,487株を取得)。
「TMS-007」は、急性期脳梗塞に対する治療薬候補で、炎症を抑え、血栓を溶かす機能を併せ持っている、世界で初めての化合物。同社は、日本における開発販売権を無償で再取得している。日本を除く世界においては、「TMS-007」の開発販売状況に応じて開発マイルストーンとして最大1,250万ドル、販売マイルストーンとして最大3億5,500万ドル、さらに、販売額に応じて1桁台後半から10%台前半のロイヤリティーが同社に入ってくる可能性がある。「JX09」については、日本における開発販売権の無償ライセンスを取得しており、「TMS-007」及び「JX09」の日本での開発を行うにあたり、一定条件のもと、JIXING社から国内開発費の75%の補償を受けられるという契約内容になっているようだ。上限としては、「TMS-007」が1,000万ドル、「JX09」が500万ドルと設定されている。
「TMS-008」に関しては、6月19日から第1相臨床試験の投与が開始された。これまでの非臨床試験結果からTMS-008の非臨床フェーズでの有効性と安全性は確認されているが、本試験においては健常な成人男性を対象としてTMS-008をコホート毎に漸増的に投与し、ヒトでの安全性、忍容性及び薬物動態等について確認を進めていく。今年度中に全ての被験者への投与及び観察を終了し、最初のリードアウトを25年度第1四半期に行う予定とした。
24年2月期の最終損益9.6億円の赤字(前期は8.6億円の赤字)に赤字幅が拡大している。手元のキャッシュは30億円程度で自己資本比率は96%程度。主要パイプラインの承認は時間がかかる可能性があり、事業収益をどのように上げつつ、公的助成金などから開発費を取得するか注目しておきたい。
ただ、同社のパイプラインと同様の製品を開発している企業は少なく、急性期脳梗塞に対して先進各国で共通に承認されている薬は「t-PA」の1つしかない。数年内に「TMS-007」が販売できた場合、営業収益の寄与としては、少なくとも「t-PA」の世界年間販売額21億ドル強が売上の将来的なターゲットになってくる(ティムス<4891>は、日本以外の売上に対しては一桁台後半~10%台前半のロイヤリティを予定)。シェアをどれだけ取れるか、薬価の状況にもよるが、想定よりも収益拡大余地がでてくる可能性もある。現状は費用先行の状況が続いているが、今後のコスト管理や収益化の見通しについては引き続き注視が必要だ。
<NH>
「TMS-007」は、急性期脳梗塞に対する治療薬候補で、炎症を抑え、血栓を溶かす機能を併せ持っている、世界で初めての化合物。同社は、日本における開発販売権を無償で再取得している。日本を除く世界においては、「TMS-007」の開発販売状況に応じて開発マイルストーンとして最大1,250万ドル、販売マイルストーンとして最大3億5,500万ドル、さらに、販売額に応じて1桁台後半から10%台前半のロイヤリティーが同社に入ってくる可能性がある。「JX09」については、日本における開発販売権の無償ライセンスを取得しており、「TMS-007」及び「JX09」の日本での開発を行うにあたり、一定条件のもと、JIXING社から国内開発費の75%の補償を受けられるという契約内容になっているようだ。上限としては、「TMS-007」が1,000万ドル、「JX09」が500万ドルと設定されている。
「TMS-008」に関しては、6月19日から第1相臨床試験の投与が開始された。これまでの非臨床試験結果からTMS-008の非臨床フェーズでの有効性と安全性は確認されているが、本試験においては健常な成人男性を対象としてTMS-008をコホート毎に漸増的に投与し、ヒトでの安全性、忍容性及び薬物動態等について確認を進めていく。今年度中に全ての被験者への投与及び観察を終了し、最初のリードアウトを25年度第1四半期に行う予定とした。
24年2月期の最終損益9.6億円の赤字(前期は8.6億円の赤字)に赤字幅が拡大している。手元のキャッシュは30億円程度で自己資本比率は96%程度。主要パイプラインの承認は時間がかかる可能性があり、事業収益をどのように上げつつ、公的助成金などから開発費を取得するか注目しておきたい。
ただ、同社のパイプラインと同様の製品を開発している企業は少なく、急性期脳梗塞に対して先進各国で共通に承認されている薬は「t-PA」の1つしかない。数年内に「TMS-007」が販売できた場合、営業収益の寄与としては、少なくとも「t-PA」の世界年間販売額21億ドル強が売上の将来的なターゲットになってくる(ティムス<4891>は、日本以外の売上に対しては一桁台後半~10%台前半のロイヤリティを予定)。シェアをどれだけ取れるか、薬価の状況にもよるが、想定よりも収益拡大余地がでてくる可能性もある。現状は費用先行の状況が続いているが、今後のコスト管理や収益化の見通しについては引き続き注視が必要だ。
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