・企業価値とは何か。企業の存在(パーパス)が社会に役立っているか。ステークホルダーの幸せ(ウェルビーイング)に貢献しているか。
・これをどう測るか。KPIの設定に、その会社の姿勢が表れてくる。財務vs非財務、経済的価値vs社会的価値、数値で測れる価値vs数値で測れない価値など、さまざまな視点があろう。
・一度原点に戻って、財務的な数値のあり方から価値を広げてみよう。株主からみた企業価値は時価総額(株価×発行済株式数)に表れる。東証プライム市場(1647銘柄)の時価総額は965兆円(5/31)で、まもなく1000兆円に達しよう。
・これに対して、東証スタンダードは時価総額27.6兆円(1602銘柄)、東証グロースは6.8兆円(578銘柄)である。1社あたりの平均時価総額がプライム市場5859億円、スタンダード172億円、グロース118億円と全く違う。
・企業別の時価総額ランキングでは、トヨタ自動車 <7203> の53兆円(6/3)をトップに10兆円以上が18社、1兆円以上が176社である。5000億円以上で298社であるから、5000億円以上が日本を代表する会社といってよいかもしれない。
・しかし、これには異論があろう。大きければよいというものではない。規模以外にも、質が重要である。一定の質がなければ、規模は大きくなれない。規模があっても、その中身が不十分かもしれない。
・マーケットを代表する株価指数に、日経平均株価(225種)、東証株価指数(TOPIX)、JPX日経インデックス400、JPXプライム150指数などがある。
・日経平均は225社、東証株価指数は2140社(5/31現在)、JPX日経インデックス400は400社、JPXプライム150は150社から構成される。代表するインデックスに入ると、売買頻度が高まるので、流動性が上がる。パッシブ取引の対象になるからである。
・規模だけでなく、資本効率性、収益性などを考慮したインデックスの開発が進んでいる。プライムに上場している企業にとっては、まずJPX日経インデックス400に入りたいであろう。日本を代表する上位400社というイメージである。さらに、JPXプライム150は最近できた指数で、資本効率や収益性を一段と重視している。この150社に入ることはさらに意味があろう。
・PBR=ROE×PERという関係を日経平均、JPX日経400、東証プライムの各指数で比較してみよう。5/31で日経平均は、PBR 1.48倍=ROE 9.0%×PER 16.5倍、JPX日経400は、PBR 1.56倍=ROE 9.4%×PER 16.6倍、東証プライムPBR 1.39倍=ROE 8.5%×PER 16.3倍である。
・つまり、PERはほぼ同じである、ROEはJP×日経400が9.4%と最も高く、それがPBRの高さにも結び付いている、バランスシートに表れない非財務資本のよさが資本収益性を示すROEに結び付いているとも解釈できる。
・では、スタンダードとグロースはどうか。スタンダードでは、PBR 1.00倍=ROE 7.1%×PER 14.0倍、グロースはPBR 3.00倍=ROE 6.5%×PER46.4倍であった。つまり、スタンダードはROEが低く、グロースはまさに成長性への期待を示すPERの高さが目立っている。
・PBR=ROE×PERは1つの恒等式であり、現在の断面をとらえているにすぎない。ROE 8%×PER 10倍ではPBR 0.8倍である。やはりROEを10%に高め、将来の成長性を示してPER15倍にもっていかないと、マーケットの平均的な期待PBR 1.5倍には応えられない。
・ROEを10%に高めても、成熟マーケットの中で自らの成長性を示すことができなければ、PERは10倍にとどまってしまう。そうするとROEを高めてもPBRは1.0倍が精一杯となってしまう。
・今、日本企業に求められているのは、1)まずはROEを上げよ、2)次にそれを活かして、成長性を高めよ、3)そのために、バランスシートに表われない非財務項目にもっと投資をして、そのリターンを求めよ、という好循環を作り出すことである。
・株価=EPS×PERであるから、EPSを上げよ。それが成長性に結び付いているなら株価は上昇しよう。株価は業績で決まるという基本型である。
・次に、企業にとって大事なのはキャッシュである。設備投資をしたり、M&Aをしたり、その減価償却やのれんの償却はキャッシュアウトしないので、営業利益ではなくEBITDAで収益性を見た方がよい、という見方も有力である。当然、その時の設備やのれんが、次の成長性に結び付いてくるという確信を得られることが前提となる。
・さらにもっと広げてみよう。人件費はP/L上費用であり、キャッシュアウトしてしまう。でも、その人材は会社の中で、企業価値を生み出すべく働いている。人件費は付加価値の源泉であり、人材投資の証である。
・1人当たり付加価値が労働生産性である。これを分解して、1人当たり付加価値=1人当たり人件費×付加価値人件費比率となる。これは、人材投資(1人当たり人件費)×人材投資効率(付加価値/人件費)と読み替えられる。
・人材投資を増やして、その人材を活用して、より高い付加価値を生み出す。高く売れる製品・サービスを、AIを活用した自動化システムに組み入れて提供していく。ここがカギとなる。あらゆる分野で人材投資と人材投資効率が問われよう。こうした付加価値分析に一段と力を入れて、企業価値を評価したい。
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