*13:21JST 富士紡HD Research Memo(1):半導体需要の上向き傾向により、2024年3月期下期から業績は緩やかに回復へ
■要約
富士紡ホールディングス<3104>は1896年に設立し、研磨材事業と化学工業品事業を主力事業、生活衣料(B.V.D.など)事業を準主力事業として展開している。同社は日本の繊維産業とともに栄えてきたが、現在では大きく業態転換が行われ、祖業の繊維・紡績業は事業全体の2割以下となり、この3つが中核3大事業である。売上構成比は研磨材約4割、化学工業品約3割、生活衣料約2割で、その他事業のなかの化成品(樹脂金型)事業を“第4の柱”とすべく育成を図っている。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.1%減の36,108百万円、営業利益が同42.2%減の2,818百万円、経常利益が同35.0%減の3,276百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同37.7%減の2,117百万円となった。また期初計画比では、売上高は0.02%増、営業利益で4.5%減、経常利益で2.2%減、親会社株主に帰属する当期純利益で3.8%減と、売上高以外は計画を下回った。
2023年3月期下期から2024年3月期上期にかけて、“史上最悪級”の半導体不況が直撃し、半導体関連材料の研磨材を扱う事業を中核とする同社も深刻な受注減に陥った。半導体需要は2023年6~7月に底入れし緩やかな回復基調にあることから、同社では短期的な「収益改善策」と中長期の研磨材事業の「成長戦略」のバランスを図った経営の舵取りが肝要だと考えている。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の業績予想は、売上高42,000百万円(前期比5,891百万円増)、営業利益5,100百万円(同2,281百万円増)、経常利益5,300百万円(同2,023百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,500百万円(同1,382百万円増)としている。
中核事業である研磨材事業は売上高16,500百万円(前期比23.0%増)、営業利益3,100百万円(同185.2%増)を見込んでいる。半導体市場が2023年6~7月に底入れし上向き傾向となっていることから、同社の研磨材事業も緩やかに業績が回復しており、今後さらなる回復が見込まれる。また、新用途市場として、「SiC※ウエハー」と「半導体の微細化と積層化」に大きな期待が寄せられている。前者は、自動車のEV化が進展するなか、SiCウエハー(パワー半導体)市場が伸長しており、後者はメモリー半導体分野でも積層化が進むと微細化技術が必要となり同社の研磨材(ソフトパッド)の出番がある。既にNANDフラッシュメモリ分野ではソフトパッドが使われ始めている。
※SiCはシリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料のこと。Siの限界を超えるパワーデバイス用材料。
3. 化学工業品事業における能力増強投資
化学工業品事業では、中長期的にはグローバル展開も視野に入れた戦略的新製品の受注が見込まれている。新製品は、同社にしか作れない差別性と独自性のある“オンリーワン”製品である。需要量は堅調に拡大する見通しで、現有生産能力を超えた発注量が見込まれる。今回は、その発注量に見合う形で大きな設備投資(総額約62億円)を行う。なお、顧客企業との関係のなかで、中長期の発注量(見通し)と価格がある程度見えている。その前提で大型投資に踏み切った。また、比較的短期間での投資回収も可能と同社では見ている。既に、柳井・武生両工場の連携強化を進め、新プラントの建設を開始している。
4.「資本コストや株価を意識した経営」の実現
先行き不透明な時代において、『資本効率』や『資本コスト』を重視する企業が増えており、株主や金融機関をはじめステークホルダーからも注目されている。同社では「資本コストや株価を意識した経営」の実現について、1) 「成長投資の推進」、2) 「ROIC経営の実践」、3) 「情報開示の強化」、4) 「株主還元を重視」の4つの視点で取り組みを進めている。『資本効率』重視の経営の肝となるのは「成長投資の推進」である。特に、最先端半導体分野で研磨材(ソフトパッド)の開発競争で勝ち残っていくためには高水準の研究開発投資を継続し、迅速な投資回収と次の成長投資につなげる、いわゆる“キャッシュ・フロー循環”を確立することが肝要であると弊社では考えている。
■Key Points
・半導体需要の底入れと上向き傾向により、2024年3月期下期から業績回復へ
・研磨材用途市場として、「SiCウエハー」と「半導体の微細化と積層化」に大きな期待
・化学工業品事業における能力増強投資
・「資本コストや株価を意識した経営」の実現
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<SO>
富士紡ホールディングス<3104>は1896年に設立し、研磨材事業と化学工業品事業を主力事業、生活衣料(B.V.D.など)事業を準主力事業として展開している。同社は日本の繊維産業とともに栄えてきたが、現在では大きく業態転換が行われ、祖業の繊維・紡績業は事業全体の2割以下となり、この3つが中核3大事業である。売上構成比は研磨材約4割、化学工業品約3割、生活衣料約2割で、その他事業のなかの化成品(樹脂金型)事業を“第4の柱”とすべく育成を図っている。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.1%減の36,108百万円、営業利益が同42.2%減の2,818百万円、経常利益が同35.0%減の3,276百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同37.7%減の2,117百万円となった。また期初計画比では、売上高は0.02%増、営業利益で4.5%減、経常利益で2.2%減、親会社株主に帰属する当期純利益で3.8%減と、売上高以外は計画を下回った。
2023年3月期下期から2024年3月期上期にかけて、“史上最悪級”の半導体不況が直撃し、半導体関連材料の研磨材を扱う事業を中核とする同社も深刻な受注減に陥った。半導体需要は2023年6~7月に底入れし緩やかな回復基調にあることから、同社では短期的な「収益改善策」と中長期の研磨材事業の「成長戦略」のバランスを図った経営の舵取りが肝要だと考えている。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の業績予想は、売上高42,000百万円(前期比5,891百万円増)、営業利益5,100百万円(同2,281百万円増)、経常利益5,300百万円(同2,023百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,500百万円(同1,382百万円増)としている。
中核事業である研磨材事業は売上高16,500百万円(前期比23.0%増)、営業利益3,100百万円(同185.2%増)を見込んでいる。半導体市場が2023年6~7月に底入れし上向き傾向となっていることから、同社の研磨材事業も緩やかに業績が回復しており、今後さらなる回復が見込まれる。また、新用途市場として、「SiC※ウエハー」と「半導体の微細化と積層化」に大きな期待が寄せられている。前者は、自動車のEV化が進展するなか、SiCウエハー(パワー半導体)市場が伸長しており、後者はメモリー半導体分野でも積層化が進むと微細化技術が必要となり同社の研磨材(ソフトパッド)の出番がある。既にNANDフラッシュメモリ分野ではソフトパッドが使われ始めている。
※SiCはシリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料のこと。Siの限界を超えるパワーデバイス用材料。
3. 化学工業品事業における能力増強投資
化学工業品事業では、中長期的にはグローバル展開も視野に入れた戦略的新製品の受注が見込まれている。新製品は、同社にしか作れない差別性と独自性のある“オンリーワン”製品である。需要量は堅調に拡大する見通しで、現有生産能力を超えた発注量が見込まれる。今回は、その発注量に見合う形で大きな設備投資(総額約62億円)を行う。なお、顧客企業との関係のなかで、中長期の発注量(見通し)と価格がある程度見えている。その前提で大型投資に踏み切った。また、比較的短期間での投資回収も可能と同社では見ている。既に、柳井・武生両工場の連携強化を進め、新プラントの建設を開始している。
4.「資本コストや株価を意識した経営」の実現
先行き不透明な時代において、『資本効率』や『資本コスト』を重視する企業が増えており、株主や金融機関をはじめステークホルダーからも注目されている。同社では「資本コストや株価を意識した経営」の実現について、1) 「成長投資の推進」、2) 「ROIC経営の実践」、3) 「情報開示の強化」、4) 「株主還元を重視」の4つの視点で取り組みを進めている。『資本効率』重視の経営の肝となるのは「成長投資の推進」である。特に、最先端半導体分野で研磨材(ソフトパッド)の開発競争で勝ち残っていくためには高水準の研究開発投資を継続し、迅速な投資回収と次の成長投資につなげる、いわゆる“キャッシュ・フロー循環”を確立することが肝要であると弊社では考えている。
■Key Points
・半導体需要の底入れと上向き傾向により、2024年3月期下期から業績回復へ
・研磨材用途市場として、「SiCウエハー」と「半導体の微細化と積層化」に大きな期待
・化学工業品事業における能力増強投資
・「資本コストや株価を意識した経営」の実現
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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