京葉瓦斯 Research Memo(9):主力の都市ガス事業が大きく改善した

配信元:フィスコ
投稿:2024/05/29 15:39
*15:39JST 京葉瓦斯 Research Memo(9):主力の都市ガス事業が大きく改善した ■業績動向

1. 2023年12月期の業績動向
京葉瓦斯<9539>の2023年12月期の業績は、売上高122,853百万円(前期比3.4%増)、営業利益1,704百万円(同4,253.4%増)、経常利益2,431百万円(同234.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,460百万円(同566.2%増)と大幅増益となった。期初計画との比較では、売上高で10,147百万円、営業利益で2,596百万円、経常利益で2,569百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で2,040百万円の未達となった。

日本経済は、景気の緩やかな回復が見られるものの、先行きについては、世界的な金融引き締めに伴う影響など、海外景気の下振れが景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇や地政学的情勢などの影響にも十分注意する必要がある。エネルギー業界においては、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などを背景に世界的にエネルギー価格が高騰しており、多くを輸入に頼る日本のエネルギー事業者にとって大変厳しい状況が続いている。このような状況のなか、同社は「長期経営ビジョン2030」で掲げた2030年のありたい姿である「“つぎの「うれしい!」”を提供することで、顧客の“期待を超える”存在となる」の実現に向け、3つの事業領域である地域エネルギー領域、トータルライフサポート領域、エリアマネジメント領域において、それぞれの事業戦略を推進した。

その結果、売上高については、燃料費調整による販売単価の上方調整などにより電力小売事業の売上高が増加したことなどから増収を確保、営業利益に関しては、ガスの採算改善により電力調達の安定化に向けたコスト増加などを吸収して大幅増益となった。業績未達の要因は、売上高については、気温・水温が高く推移したことや物価高騰による節約意識の高まりにより、主に家庭用ガス販売量が想定を下回る動きとなったことにある。営業利益以下の各利益については、ガス販売量の減少に加え、電力調達の安定化に向けたコストの増加があったことが要因である。


電力小売の減益をガスの増益がカバー
2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績は、売上高については、ガス販売量の減少によってガス事業の売上が減少したが、その他の増収でカバーした。利益面では、不動産とその他が比較的安定した動きだったのに対し、電力調達の安定化に向けたコストの増加による電力小売の減益を、スライドタイムラグ※の改善によるガスの大幅増益でカバーした格好である。

※スライドタイムラグ:ガス原料価格の変動が原料費調整制度に基づくガス販売単価に反映されるまで一定の時間差が生じることで発生する一時的な増減益。2022年は天然ガスが暴騰して9月にピークを付けたのち値下がりしたため、2023年にスライドタイムラグが発生した。


(1) ガス
都市ガスの顧客件数は、人口が着実に増えていることなどを背景に1,049,909件(前期末比1.0%増)となった。ガス販売量は、家庭用については、気温・水温が前年に比べて高めに推移したことや物価高騰による節約意識の高まりなどにより11.0%の減少となった。業務用については、コロナ禍に伴う行動制限の解除により顧客設備の稼働が増加したことや、夏場の気温が高く推移したことで空調需要が増加したことなどにより商業用のガス販売量が増加した一方で、顧客設備の稼働が減ったことなどにより工業用が減少、業務用合計で2.9%の減少となった。この結果、ガス販売量は合計で661百万m3(前期比6.7%減)となった。ガス売上高はガス販売量の減少などにより93,224百万円(同0.4%減)となったものの、スライドタイムラグの改善による影響などにより、営業利益は8,946百万円(同104.3%増)となった。

(2) 電力小売
電力小売の売上高は燃料費調整による販売単価の上方調整などにより16,217百万円(前期比8.0%増)となったが、電力調達の安定化に向けたコストの増加などにより4,628百万円の営業損失(前期は1,069百万円の営業損失)となった。

(3) 不動産
不動産は比較的安定しているが、大規模再開発事業リーフシティ市川の先行費用などがあったため、売上高は1,421百万円(前期比3.3%増)、営業利益は712百万円(同0.8%減)となった。

(4) その他
ガス工事・ガス機器販売等は、小中学校向けの空調ガス機器販売の増加や連結の範囲の変更の影響により、売上高が14,327百万円(前期比30.1%増)、営業利益は967百万円(同22.5%増)となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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