*14:03JST バリューC Research Memo(3):マーケティングDX事業はレガシー業界に強みを持つ
■事業概要
バリュークリエーション<9238>は、マーケティングDX事業と不動産DX事業の2事業を展開しており、マーケティングDX事業ではWeb領域において顧客の集客に関わる課題の解消を支援、新規事業の不動産DX事業では「解体の窓口」の運営を行っている。2024年2月期の売上高構成比は、収益基盤であるマーケティングDX事業が96%、不動産DX事業はまだ4%である。しかし、2事業間のシナジーが大きく、「解体の窓口」の運営ではマーケティングDX事業のノウハウを低コストで利用する一方、不動産DX事業で蓄積しつつあるノウハウをマーケティングDX事業の顧客支援に活用しており、こうしたシナジーをさらに高めるため事業部間での情報交換も常時行っている。
1. マーケティングDX事業
(1) 事業内容
マーケティングDX事業では、顧客のWebサイトへの集客を適切に行うため、運用型広告を中心とするプロモーション手法により課題抽出から戦略立案、広告運用までの支援策をワンストップで提供しているほか、顧客のマーケティング戦略に応じて複数種類の広告手法やプラットフォームを柔軟に組み合わせたプロモーションも設計・運用している。運用型広告とは、インターネットのユーザーに対し、広告効果を確かめながらほぼリアルタイムに入札額やクリエイティブ、ターゲットなどを変更・改善して配信する広告である。こうした広告手法であるため、運用者によって広告効果に大きな違いが生まれるが、同社は2008年の創業から現在まで、多種多様なクライアントへのサービスを継続してきており、そうした業界や業種特有の課題を識別し情報を蓄積していることから、運用の品質が高いとの評価を受けている。同社が具体的に提供している広告は、主にYahoo!やGoogleなどが提供する検索エンジンの検索結果に表示される検索連動型広告、Webサイトの広告枠に表示される画像広告、動画広告、テキスト広告といったディスプレイ広告、Webサイトやアプリのコンテンツとコンテンツの間に表示されるインフィード広告などである。
ほかに、ビジネス、デジタル、お金、恋愛、旅行、グルメ、スポーツ・レジャー、エンタメ、ヘルスケア、ビューティ、暮らし、ファッションといったカテゴリに関して、自社サイト「Mola(モーラ)」を運営している。
同社最大の特徴は、市場規模が大きくしかも成熟しているが、既存の商習慣や伝統などによりDXに取り組むことが遅れている「レガシー業界」の企業や団体を戦略的なターゲットとしている点にある。こうした企業や団体に対して、創業から現在まで業界・業種特有の課題や解消ノウハウを蓄積することで高めてきたサービス品質を背景に、経営の課題抽出から戦略の立案、広告の実施までの施策をワンストップで支援していることが好評で、同社の高い取引継続率※につながっている。また、レガシー業界は、市場として未開拓・未成熟で保守的な企業や団体が多いことから、いったん支援が始まり支持が広がれば、良好なリレーションを継続しやすいという特質がある。
※前月から当月に継続した社数と過去取引があった先で当月取引を再開した社数を分子、前月の取引社数を分母として算出。
(2) 強み
マーケティングDX事業では、高い継続率を生む顧客基盤、持続的な成果創出が可能なサービス領域、事業創出経験による顧客目線での支援といった強みを有しており、厳しい競争環境のなか高収益かつ高成長を持続している。
高い継続率を生む顧客基盤はレガシー業界で、97%以上という同社の高い取引継続率の源になっている。例えばレガシー業界には、ふるさと納税の直営化を図りたい自治体や消費者向け訴求の不得意な不動産業界、少子化のなかで生徒募集を強化したい学校法人などが含まれる。レガシー業界の特徴は、産業の規模が非常に大きいが古い体質の企業が多いためDXの取り組みが進んでおらず、課題は常に見えているものの独特の慣習や保守的な性格からサービス設計に手がかかる一方、新規参入が難しいうえ価格競争が起こりにくく、いったん支援が始まると深い領域まで一貫して支援することになるという点にあり、このため取引継続率が高くなる傾向がある。したがって、ポータルサイトの料率が高いためふるさと納税の申し込みを直営に変えてしかも増やしたいという自治体に対して、同社はキーワード選定や入札、クリエイティブ制作などのノウハウを駆使し、ふるさと納税サイトの広告からYahoo!やInstagramなどの運用型広告までをトータルでプランニングするなど、認知から獲得までを一貫して支援することになる。この結果、申込納税額が2.8倍、ROAS(広告の費用対効果)が1.4倍になったという実例もある。こうしたレガシー業界の売上高構成比はマーケティングDX事業の4割程度へと高まっており、同社マーケディングDX事業の成長をけん引しているのである。
持続的な成果創出が可能なサービス領域を持っていることも同社の強みと言える。同社のメイン顧客は、相対的に関心の移り変わりのリスクが少ない中高年層を広告ターゲットとするものの、DX化に取り組めていない企業・団体などが多いため、変動の激しい新興媒体ではなく、安定的なパフォーマンスが期待できる検索連動型広告やディスプレイ広告、インフィード広告など運用型広告によって着実に成果を創出する仕組みを有している。このため、期せずして中長期的に運用を支援することになり、ストック型の売上を積み上げることとなるため、結果的にこれも高い取引継続率にもつながっている。また、事業創出経験による顧客目線での支援も強みで、同社自らが施策に取り組んで実際に蓄積してきたノウハウや既存事業の課題を起点に、「解体の窓口」や「車査定・買取の窓口」など多様な事業を創出してきたノウハウを顧客に還元するモデルを構築しており、そうしたリアリティのある支援を行うことで高い満足度を実現している。
(3) 収益構造と事業戦略
同社のマーケティングDX事業では、広告の出稿量に比例した報酬とプロモーションの設計・運用フィーを得ている。この際、原価は広告原価のみとなるが、粗利益率は類似企業の25%前後に対して35%程度と高くなっている。これは、顧客との付き合いを長く維持すること(97%という高い取引継続率)で、取引効率の向上やクロスセル/アップセルによる単価上昇につながっていることが要因である。このように顧客と強くつながることができる理由の1つに、同社の営業力がある。自社内に広告部隊・運用部隊を有していることから、営業が広告運用の詳細まで説明したり顧客の状況に合わせて提案したりすることができる。また、資格試験の取得などを通じてスキルとノウハウを持つ人材を育成できる教育体制(このため離職率も低くなっている)、休眠客へのアプローチノウハウ、蓄積してきた様々な業界の顧客対応ノウハウも、強い営業力の背景となっている。このため、マーケティングDX事業の営業利益率は20%台と高く、同社の収益源となっている。同社は、こうしたマーケティングDX事業で、今後もトップラインで2ケタのオーガニック成長を続けたい考えである。上場により大手クライアントとのつながりが増えてきたことは、オーガニックな成長に向けての支援材料と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<AS>
バリュークリエーション<9238>は、マーケティングDX事業と不動産DX事業の2事業を展開しており、マーケティングDX事業ではWeb領域において顧客の集客に関わる課題の解消を支援、新規事業の不動産DX事業では「解体の窓口」の運営を行っている。2024年2月期の売上高構成比は、収益基盤であるマーケティングDX事業が96%、不動産DX事業はまだ4%である。しかし、2事業間のシナジーが大きく、「解体の窓口」の運営ではマーケティングDX事業のノウハウを低コストで利用する一方、不動産DX事業で蓄積しつつあるノウハウをマーケティングDX事業の顧客支援に活用しており、こうしたシナジーをさらに高めるため事業部間での情報交換も常時行っている。
1. マーケティングDX事業
(1) 事業内容
マーケティングDX事業では、顧客のWebサイトへの集客を適切に行うため、運用型広告を中心とするプロモーション手法により課題抽出から戦略立案、広告運用までの支援策をワンストップで提供しているほか、顧客のマーケティング戦略に応じて複数種類の広告手法やプラットフォームを柔軟に組み合わせたプロモーションも設計・運用している。運用型広告とは、インターネットのユーザーに対し、広告効果を確かめながらほぼリアルタイムに入札額やクリエイティブ、ターゲットなどを変更・改善して配信する広告である。こうした広告手法であるため、運用者によって広告効果に大きな違いが生まれるが、同社は2008年の創業から現在まで、多種多様なクライアントへのサービスを継続してきており、そうした業界や業種特有の課題を識別し情報を蓄積していることから、運用の品質が高いとの評価を受けている。同社が具体的に提供している広告は、主にYahoo!やGoogleなどが提供する検索エンジンの検索結果に表示される検索連動型広告、Webサイトの広告枠に表示される画像広告、動画広告、テキスト広告といったディスプレイ広告、Webサイトやアプリのコンテンツとコンテンツの間に表示されるインフィード広告などである。
ほかに、ビジネス、デジタル、お金、恋愛、旅行、グルメ、スポーツ・レジャー、エンタメ、ヘルスケア、ビューティ、暮らし、ファッションといったカテゴリに関して、自社サイト「Mola(モーラ)」を運営している。
同社最大の特徴は、市場規模が大きくしかも成熟しているが、既存の商習慣や伝統などによりDXに取り組むことが遅れている「レガシー業界」の企業や団体を戦略的なターゲットとしている点にある。こうした企業や団体に対して、創業から現在まで業界・業種特有の課題や解消ノウハウを蓄積することで高めてきたサービス品質を背景に、経営の課題抽出から戦略の立案、広告の実施までの施策をワンストップで支援していることが好評で、同社の高い取引継続率※につながっている。また、レガシー業界は、市場として未開拓・未成熟で保守的な企業や団体が多いことから、いったん支援が始まり支持が広がれば、良好なリレーションを継続しやすいという特質がある。
※前月から当月に継続した社数と過去取引があった先で当月取引を再開した社数を分子、前月の取引社数を分母として算出。
(2) 強み
マーケティングDX事業では、高い継続率を生む顧客基盤、持続的な成果創出が可能なサービス領域、事業創出経験による顧客目線での支援といった強みを有しており、厳しい競争環境のなか高収益かつ高成長を持続している。
高い継続率を生む顧客基盤はレガシー業界で、97%以上という同社の高い取引継続率の源になっている。例えばレガシー業界には、ふるさと納税の直営化を図りたい自治体や消費者向け訴求の不得意な不動産業界、少子化のなかで生徒募集を強化したい学校法人などが含まれる。レガシー業界の特徴は、産業の規模が非常に大きいが古い体質の企業が多いためDXの取り組みが進んでおらず、課題は常に見えているものの独特の慣習や保守的な性格からサービス設計に手がかかる一方、新規参入が難しいうえ価格競争が起こりにくく、いったん支援が始まると深い領域まで一貫して支援することになるという点にあり、このため取引継続率が高くなる傾向がある。したがって、ポータルサイトの料率が高いためふるさと納税の申し込みを直営に変えてしかも増やしたいという自治体に対して、同社はキーワード選定や入札、クリエイティブ制作などのノウハウを駆使し、ふるさと納税サイトの広告からYahoo!やInstagramなどの運用型広告までをトータルでプランニングするなど、認知から獲得までを一貫して支援することになる。この結果、申込納税額が2.8倍、ROAS(広告の費用対効果)が1.4倍になったという実例もある。こうしたレガシー業界の売上高構成比はマーケティングDX事業の4割程度へと高まっており、同社マーケディングDX事業の成長をけん引しているのである。
持続的な成果創出が可能なサービス領域を持っていることも同社の強みと言える。同社のメイン顧客は、相対的に関心の移り変わりのリスクが少ない中高年層を広告ターゲットとするものの、DX化に取り組めていない企業・団体などが多いため、変動の激しい新興媒体ではなく、安定的なパフォーマンスが期待できる検索連動型広告やディスプレイ広告、インフィード広告など運用型広告によって着実に成果を創出する仕組みを有している。このため、期せずして中長期的に運用を支援することになり、ストック型の売上を積み上げることとなるため、結果的にこれも高い取引継続率にもつながっている。また、事業創出経験による顧客目線での支援も強みで、同社自らが施策に取り組んで実際に蓄積してきたノウハウや既存事業の課題を起点に、「解体の窓口」や「車査定・買取の窓口」など多様な事業を創出してきたノウハウを顧客に還元するモデルを構築しており、そうしたリアリティのある支援を行うことで高い満足度を実現している。
(3) 収益構造と事業戦略
同社のマーケティングDX事業では、広告の出稿量に比例した報酬とプロモーションの設計・運用フィーを得ている。この際、原価は広告原価のみとなるが、粗利益率は類似企業の25%前後に対して35%程度と高くなっている。これは、顧客との付き合いを長く維持すること(97%という高い取引継続率)で、取引効率の向上やクロスセル/アップセルによる単価上昇につながっていることが要因である。このように顧客と強くつながることができる理由の1つに、同社の営業力がある。自社内に広告部隊・運用部隊を有していることから、営業が広告運用の詳細まで説明したり顧客の状況に合わせて提案したりすることができる。また、資格試験の取得などを通じてスキルとノウハウを持つ人材を育成できる教育体制(このため離職率も低くなっている)、休眠客へのアプローチノウハウ、蓄積してきた様々な業界の顧客対応ノウハウも、強い営業力の背景となっている。このため、マーケティングDX事業の営業利益率は20%台と高く、同社の収益源となっている。同社は、こうしたマーケティングDX事業で、今後もトップラインで2ケタのオーガニック成長を続けたい考えである。上場により大手クライアントとのつながりが増えてきたことは、オーガニックな成長に向けての支援材料と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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