【QAあり】QPS研究所、世界トップレベルの小型SAR衛星の開発・運用により着実に成長、第2四半期単体では営業黒字化
2024年5月期第2四半期決算説明
大西俊輔氏(以下、大西):本日はQPS研究所の2024年5月期第2四半期の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長CEOの大西です。よろしくお願いします。
市來敏光氏(以下、市來):代表取締役副社長の市來です。よろしくお願いします。
大西:業績説明の前に、私から弊社について、続いて市來から市場環境と競争優位性についてご説明します。
はじめに
弊社の競争力の源泉は、世界トップレベルの小型SAR衛星を開発・運用できる技術力です。黎明期にある宇宙産業の中で、着実なビジネスを展開しています。今後も継続的に企業価値を向上させていきます。
会社概要(2023年12月6日時点)
会社概要です。2005年に創業し、ニュースペースと呼ばれる宇宙ベンチャーの中で、日本で一番の老舗と言われている会社です。私が代表取締役社長、市來が代表取締役副社長を担っており、代表取締役2名体制をとっています。
『日本初』分解能1m以下100kg級小型SAR衛星
スライドの写真のとおり、弊社が開発・製造し、ビジネスを構築しているのは、分解能1メートル以下という高い解像度を持ちながら質量は100キログラム級と、衛星としては小型の部類に入る、電波を使って地球を観測するSARというレーダー衛星です。
沿革
沿革です。弊社は、2005年に「九州に宇宙産業を根付かせる」ことを目的に創業しました。九州大学教授(当時)の八坂・桜井の2人は1995年から小型衛星の研究開発を推進してきたメンバーであり、九州大学での研究開発の歴史とあわせ、約30年間の連綿と蓄積された知見と経験を有しています。
2016年には小型SAR衛星開発の核となる小型衛星用の展開アンテナを開発しており、2019年に1号機の打上げに成功し、これまでに6機の衛星を製造し打上げを行っています。
光学衛星の課題とSAR衛星
あらためて、小型SAR衛星が必要である理由をご説明します。スライド左側は、観測衛星の主流であるカメラを使って撮影する光学衛星です。このカメラは太陽の反射光を利用して撮影するため、夜間は見ることができません。加えて、観測したい対象物の間に雲や煙などの遮るものがあると、これらが邪魔になり観測できません。
このように、カメラを使った衛星は機数を増やしても晴天時の昼間しか撮影できず、リアルタイムの観測ができないという課題がありました。
右側は弊社が開発したSAR衛星です。SAR衛星は自らマイクロ波を照射し、対象物が反射する電波を画像化します。昼夜関係なく撮影できますし、使用する周波数が雲や煙を透過しますので、天候不良でも撮影が可能です。
ただし、SAR衛星は電力を大量に消費するマイクロ波を使用するため、長い間、大型衛星でしか実現できないと考えられていました。なおかつ、1機あたりのコストが数百億円と高額で、複数の衛星を打上げられないという課題もありました。
弊社の技術的優位性
弊社のSAR衛星は、大型衛星と変わらない高い解像度を実現し、同時に衛星の質量を100キログラム級に小型化することで、衛星1機あたりの製造コストを約5億円まで低減しています。
小型SAR衛星の参入障壁は非常に高く、2016年までは一般的に実現不可能とされていました。これまで数トン級の大型のSAR衛星はあったものの、一番のネックであった電力を大量消費するレーダーを、太陽電池を多くつけられない小型衛星でも実現できるよう省電力化した技術です。
省電力化に必要なのはアンテナです。SAR衛星は地上500キロメートルから600キロメートルの宇宙空間から、50センチメートル以下の細かいものを観測できます。上空から強い電波を発射する必要があり、イメージとしては、大きなレンズで太陽の光を一点に集めると発火するように、大きなアンテナでレーダーをギュッと絞ると強い電波を打つことができます。
弊社の展開式パラボラ型アンテナ
弊社の衛星に搭載されているのは、直径3.6メートルの展開式パラボラ型アンテナです。1トンや2トン級の衛星につくようなサイズであり、通常はこのアンテナだけで400キログラムから500キログラムほどの質量になるため、とても100キログラム級の小型衛星に搭載することはできません。
しかし、先端的な素材である金属メッシュを使用することにより、直径3.6メートルでありながら質量はわずか10キログラムのアンテナを世界に先駆けて開発しました。
スライドに掲載している写真は展開式パラボラ型アンテナが開く様子です。巻き付くようにコンパクトに畳まれており、大きく開く展開アンテナとなっています。
大口径で軽量のアンテナは、世界の他企業でも開発できたと思いますが、重要なのは展開後のアンテナがきれいなお椀型になっている点です。お椀型にも理想的な形があり、その形から1ミリメートル、2ミリメートルずれた途端にレーダーの質が低下してしまいます。
そのため、打上げる前はコンパクトに畳むことができ、打上げた後はミリ単位のずれなくきれいなお椀型に開く構造が一番の肝です。弊社はこの構造を含めて特許を取得し、周辺特許も継続して強化しています。
弊社のSAR画像
スライドには、SAR衛星の6号機で撮った画像を掲載しています。左側はみなとみらい地区の臨港パークの画像で、公園の木々も鮮明に見えています。右側は本牧ふ頭エリアの画像で、クレーンやコンテナの集積具合が精緻に確認できます。このように高解像度での画像取得が可能です。
弊社の目指す世界
弊社は最終的に小型SAR衛星を36機打上げることにより、世界中のほぼどこでも10分から20分で準リアルタイム観測できる世界の実現を目指していきます。
準リアルタイム観測できる世界を実現することで、災害が起きた時に被災地の状況や不審船を観測したり、都市の変化や車両の動きを調べたりと、防衛安全保障、災害対策、インフラ管理等への幅広い活用が期待されています。
ビジネスモデルと商流
ビジネスモデルと商流についてです。主要な売上は、弊社が開発・製造する小型SAR衛星から取得できる画像データの販売によって得ており、防衛省や内閣府、国交省といった官公庁、インフラ業者、地図データ会社、気象情報、保険会社など、幅広いエンドユーザーを見込んでいます。
特に民間のエンドユーザーは、衛星画像ではなくソリューションを必要とするため、弊社の衛星画像を解析し、ソリューションに作り上げられる代理店を通じた販売がメインとなります。
データ販売の売上モデル
データ販売の売上モデルです。弊社は分解能50センチメートル以下という高分解能スポットライト画像の販売をメインにしており、収益は大きく3つの要素から成り立っています。
1つ目は販売枚数です。衛星から取得できる画像枚数は、衛星の機数が増加すれば増加するほど頻繁かつ短時間で撮影できるため、データの有用性や価値が高まり、1機あたりの販売枚数が増えていきます。
弊社では、安全保障をベースに最低限販売できる枚数ならびに世界中で販売可能性の高い地域を検討した結果、1機あたり1日6枚、機数の増加により15枚販売できると考えています。なお、1機あたりの1日の撮影キャパシティは約160枚となります。
2つ目はエンドユーザーへの販売単価です。現在の標準的な販売単価は1枚約40万円ですが、官公庁等によるプレミアムの販売等、販売条件によって約2倍まで上昇することがあります。
3つ目は代理店マージンです。代理店マージンは25パーセントですので、75パーセントを掛けた金額が弊社の販売単価となり、1機あたりの月間ならびに年間の収益が計算できます。1機あたりの収益がそのコストより高ければ黒字となりますが、スライド中央の黄色の部分に2つの主要なコストを記載しています。
1つ目は開発・打上げコストです。1機あたり約10億円となり、運用期間は5年ですので、定額償却により1年あたり2億円の見込みとなります。2つ目は運用コストで、1機あたり年間3.5億円かかります。これらの年間コストを合計すると1機あたり5.5億円、月間コストは 4,900万円となります。
スライド下部の表には月間の売上コストイメージを記載しています。想定するパフォーマンスで衛星が稼働していけば、少なく見積もっても1機あたりの売上は月5,400万円、対するコストは月4,900万円で黒字となります。
衛星の打上げでは3ヶ月の初期運用を行い、定常運用に移って画像販売していくため、初期は差し引きゼロかやや赤字ですが、機数が増えれば利幅が増えます。1機あたりの1日の販売枚数が増えると運用コストは低下するため、8機稼働時の売上は月5.7億円、対するコストは月3.7億円となります。
24機稼働時の売上は月23.7億円、対するコストは8.8億円を見込んでいます。要するに、機数が増加するほど利幅も増える売上モデルです。
限られた小型SAR衛星プレーヤー
市來:市場環境と競争優位性についてご説明します。SAR衛星は技術的に非常に難しく、参入障壁が高いという点については、小型SAR衛星の主要プレーヤーが世界でわずか5社しかおらず寡占状態であることからもおわかりいただけるかと思います。
そのような中で、弊社は46センチメートルと世界2位の分解能を実現しています。現在の機数はA社やB社の2桁に対して弊社は1桁ですので、追いつけるようにSAR衛星コンステレーションの構築に注力しています。
質量については、「軽いほうがよいのではないか?」とよくご質問をいただきますが、実際はそうではありません。昔は重たいものほどロケットの打上げコストが高くなっていたため軽いほうがよかったのですが、現在は100キログラムでも200キログラムでも、300キログラムまでは打上げコストはそれほど変わりません。
実際に、高分解能・高画質を実現するためには、およそ200キログラムが1つの最適重量とされています。例えば、A社の質量は当初は85キログラムでしたが、最新は倍増して170キログラムくらいを目指しているという記事が出ており、B社は113キログラムであった質量が、最新は187キログラムと、200キログラムに近づいてきているところです。
一方で、C社やD社のように70キログラム、100キログラムと軽量の衛星もありますが、100キログラム以下の衛星は分解能が低い、もしくは、仮に分解能が高くても、画質や撮像枚数など何らかのトレードオフがあると考えていただければと思います。
加えて、弊社の分解能46センチメートルに対して、世の中には25センチメートルという小型SAR衛星がありますが、技術的には弊社もすでに実現できる目処が立っています。現在はお客さまともお話ししながら、25センチメートルを実現すべきか否かを詰めているところです。
SAR衛星関連市場規模と成長性
SAR衛星関連市場規模と成長性についてです。宇宙業界における衛星市場は、全体で年間約5パーセント成長していると言われています。市場データ会社によると、その中でもSAR衛星については、10パーセント以上の高い成長率で先々まで拡大する見込みです。
分解能1メートル以下の小型SAR衛星が実現されたのは2019年と歴史が非常に浅く、一方で、天候不良でも24時間データが獲得できるため市場性が高く、今後大きく伸びていくと想定されています。
SAR衛星関連市場の見通し【国内官公庁】
SAR衛星関連市場の見通しについてです。観測衛星すべてに言えることですが、需要の中心は官公庁にあります。国内の官公庁の宇宙関連予算は年間約15パーセント以上のペースで増えており、2019年度の約2,900億円から2023年度は約6,100億円と、4年間で倍以上となっている状況です。
スライド左側のグラフは、弊社側で確認できた防衛省と内閣府で公表されているSAR衛星の入札案件の結果です。2021年度の19.5億円から2022年度は43.5億円と倍以上に増加しています。2023年度は9月までの半期実績が公表されており、内閣府は2022年度の11億円から2023年度は30億円、防衛省は2022年度の32.5億円から2023年度半期で40億円超の実績で、少なくとも2023年度は70億円以上になることが確定しており、さらに大きく成長しています。
9月以降の実績は公表されていないため、公表を待って次の決算発表でご説明します。
また、経済産業省でもSAR衛星に対して最大82億円の補助事業の採択がなされ、そのうち半分の41億円を弊社が獲得しました。先ほどお伝えした70億円に加え、さらに経済産業省の80億円も入れて、官公庁全体で150億円以上となります。
SAR衛星関連市場の見通し【国内民間】
国内民間の市場はいまだ黎明期ですが、需要開拓は強く推進しています。昨年12月22日には、東京海上日動火災保険と衛星データを活用したサービス開発に向けた協業開始を発表しました。
保険契約者の国内外の拠点を地図上に表示し、拠点ごとに契約情報を確認できる「東京マリングローバルリスクマネジメントサポート(TM-GRS)」という東京海上日動火災保険の独自システムに弊社の小型SAR衛星のデータを加えることで、例えば拠点ごとの地震や洪水、風災などの自然災害のリスクをハザードマップに表示したり、リスク評価に関する情報や調査結果を確認したりするようなシステムの構築を目指しています。
九州電力とJAXAとの取り組みでは、九州電力の所有する九州電力発電所やダム、鉄塔といったインフラを、弊社の衛星を使って効率的に管理できるかどうかの実証研究を行っています。
九州電力は、これまで九州に存在するインフラの点検管理を、人が定期的に巡回して行っており、点検に膨大な時間と、特定の分野においては多額の人件費がかかっているとうかがっており、我々の衛星を活用することで、効率化を目指しているところです。
SAR衛星関連市場の見通し【海外】
世界市場への販売も想定しています。現在、欧米の代理店候補9社と協議を行っています。また株主であるスカパーJSATの海外支社・海外子会社を通じて、海外代理店の開拓を進めています。
そのような中で、最も大きな顧客候補は米国国防省だと考えています。スライド左側のグラフは、米国国防省の全体予算と宇宙予算です。グラフの青色部分が宇宙予算となっており、2022年度の予算227億ドル、1ドル145円で換算するとおよそ3.3兆円の予算に対して、2028年度には343億ドル、およそ5兆円まで大きく成長すると見込まれています。
つまり、これほど大きな予算があるということは、SARに対しても大きな金額が期待できるということです。
右下に示しているとおり、米国国防省は2017年から小型SAR衛星への支援を行っています。例えばSAR衛星ベンチャー企業に対して最大9.5億ドル、日本円にしておよそ1,400億円の契約実績です。
また、小型SAR衛星ではないものの、いわゆる光学衛星のベンチャーを含む企業計3社に対しては52.4億ドル、日本円にしておよそ7,600億円の、10年間の画像購入契約と、桁違いな金額を出しているという実績もあります。我々もこのようなところを狙っていきたいと考えています。
契約獲得実績
契約獲得実績です。弊社は競争優位性の高いSAR画像を取得できていることもあり、昨年3月より内閣府と防衛省、経済産業省、さらにJAXAから約60億円超の案件を獲得しています。
特に内閣府の案件については、2022年度の2億8,480万円から2023年度は15億3,890万円と大きく増額しています。また、昨年10月には経済産業省より41億円の契約を採択されています。これらのことから弊社へ寄せられている期待、さらには弊社がどれほど成長しているかがおわかりいただけると思います。
多くの方からご質問をいただくところで「官公庁案件では、あまり利益が取れないのではないか?」という印象を持たれがちです。少なくとも小型SAR衛星については、そのようなことはありません。
むしろ官公庁向けでは、例えば「優先的に画像を撮影してください」「緊急でデータを提供ください」といった撮像優先権、緊急配信権など、プレミアムをつけて販売することを望まれます。このようなプレミアムがつくと、通常より高い価格で販売することできます。実際には厳しいお客さまであるどころか、非常にありがたいお客さまであるとご認識ください。
内閣府の令和6年度の案件は現在協議中です。おそらく金額含めて、発表は3月末から4月になると想定しています。
2024/5期 第2四半期サマリー
第2四半期の業績についてご説明します。まずはサマリーです。第2四半期には初の商用機である「QPS-SAR 6号機」による画像販売が開始され、ビジネスが本格化した3ヶ月間となりました。
大きく3つのトピックをご紹介します。1つ目は、昨年6月13日に打上げられた初の商用機「QPS-SAR 6号機」による画像販売を10月より開始しました。
販売開始後も、順調に月ごとの販売枚数を増やしています。分解能46センチメートルという高解像度・高画質により、日々、官公庁を中心とした旺盛な需要に応えています。
2つ目は、上期業績予想を上回る着地です。業績予想2億7,600万円の営業損失という見込みに対し、実績として8,100万円に縮小しました。これは計画を上回る順調な売上に伴う、売上総利益の増加によるものです。採用計画の未達や広告宣伝費、支払手数料の計画比での減少も要因となっています。さらに会計基準の変更に伴う保険料の抑制、その他販管費の減少などにより、上期予想の2億7,600万円から実績は8,100万円の営業損失と、およそ2億円近い改善となりました。
3つ目は、銀行借り入れによる50億円の融資枠の確保です。昨年10月末に総額約50億円の融資契約を締結しました。
また、第2四半期からは外れますが、昨年12月6日に東証グロース市場への上場を実現したことにより、総額36.7億円を調達しました。この資金により18号機までの小型SAR衛星の製造と打上げ費用を確保しています。
2024/5期 上期業績予想との差異
さらに詳細についてご説明します。スライドは上期業績予想の差異になります。売上高は、業績予想の4億4,600万円に対して4億6,900万円と、順調に達成しています。
それに対して販管費については、先ほどもご説明したとおり、採用計画に対する未達や広告宣伝費、支払手数料などにより計画比で減少しました。また、来年の稼働を予定している新工場の地代家賃について、今期から支払いを始めると見込んで計画に組み込まれていたものの、未発生となっています。加えて、会計基準の変更に伴う保険料の抑制もあり、販管費が予想を大きく下回っています。
結果として、上期予想の2億7,600万円から実績は8,100万円の営業損失と、約2億円の改善となりました。
営業外の部分では、昨年10月に契約したシンジケートローンの支払利息について、もともと契約時に借入枠全額を借り入れるという計画に対し、実行ベースでは1年かけて必要な分を段階的に借り入れていくことになり、その分の支払利息が減少しています。そのため、経常利益、当期純利益も、業績予想よりさらに改善しています。
事業実績の推移
通期の実績との差異についてご説明します。採用計画の未達分については、引き続きキャッチアップを計画しています。また今後、上場関連費用の支払いが出てくる予定です。
さらに、昨年12月に打上げを行い、先週ファーストライト(初画像)を発表した5号機について、今年4月からの画像販売開始に向けて順調に進んでいます。ただし、不確実性もありますので、通期の業績予想については据え置きとしています。
今後、状況が明確になってきたところで、必要な修正があれば発表させていただきます。
スライドの表は前期からの推移を示していますが、2022年5月期、2023年5月期は通期実績、2024年5月期については第2四半期までの上期のみの実績となっており、期間に違いがあります。ただし売上高については、10月より商用機の「QPS-SAR 6号機」が販売を開始したこともあり、今期上期の時点で、すでに前期の通期の売上高を超えています。
9月から11月の第2四半期に限っては、計画以上の売上高を達成し、販管費が縮小したことにより、営業損益は短期的に黒字化しています。
業績等の推移詳細
スライド右側に、過去3期からの業績等の推移をグラフで示しています。こちらも同じく、今期は半期、それ以外は通期となっています。スライド25ページでもご説明しましたが、売上高が上期の時点で前期の通期を超えていることについて、強調したい点があります。
1つ目は、第2四半期の販売増加の要因となっている昨年6月に打上げた「QPS-SAR 6号機」の画像販売が、昨年10月から始まったことです。第2四半期である9月、10月、11月の3ヶ月のうち10月から販売開始したということは、実際には第2四半期の途中から売上が貢献していることになります。
2つ目は、販売を開始した後も調整を継続しながら、実際に提供できる画像枚数は3ヶ月から4ヶ月かけて徐々に増えていくという側面です。そのような点を考慮すると、第3四半期以降は、上期よりもさらに売上がステップアップしていくと考えていただければと思います。
SAR画像データの取得実績と今後の見通し
小型SAR衛星の打上げ実績と今後の見通しです。弊社はこれまでに6機の衛星を製造し、打上げています。6機目の打上げとなった5号機については、昨年12月15日にニュージーランドからRocket Lab社によって打上げられ、予定どおりの軌道に無事投入されました。そして1月17日には初画像を発表しました。
7号機、8号機については、製造を開始しています。こちらも打上げの契約を締結済みで、今年度中の打上げを予定しています。ただし、例えば飛行機では前の便が遅れたり、急遽整備が必要になって出発時刻が変更になったりすることが頻繁にあるように、ロケットも状況によっては急遽打上げが遅れることが起こり得ます。そのような点がありますことをご理解いただけますと幸いです。
コンステレーション構築計画
コンステレーション構築計画です。昨年末の時点では、2機の商用機が稼働しています。1機目が昨年6月に打上げた6号機、2機目が昨年12月に打上げた5号機です。5号機については先ほどお伝えしたとおり、3ヶ月超の調整の後、4月頃からの販売開始を計画しています。2027年度の24機体制実現を目処に進めているところです。
2023年度については、現在までに2機を打上げていますので、残り2機を打上げる計画となります。昨年10月に契約したシンジケートローンと、昨年12月の上場による調達資金を合わせて、2024年度には4機、2025年度は6機の打上げを計画しており、18号機までの製造費用と打上げ費用は手当ができています。
今年の中頃には新工場も稼働する予定です。年間製造能力も現在の4機から最大10機まで増強されることになっています。
1点だけ追加で説明すると、現状採用が未達であるとお伝えしましたが、年間10機の製造体制を整えるための採用、いわゆる製造人員の採用が未達であることが大きな原因となっています。ただし、2022年度にはすでに3号機から6号機までを製造しており、現在の人員数で4機を作ることについては、まったく問題ありません。
来期2024年度も4機を製造する予定ですので、採用計画が未達であるものの、我々の計画上、影響はないと考えており、今年度の4機、来年度の4機、再来年度の6機についても問題ないと考えています。
売上の拡大イメージ
売上の拡大のイメージです。現在、国内民間の衛星画像市場はいまだ黎明期です。まずは市場が確立されている国内官公庁において、確固たる収益の軸を確立することを優先し、国内民間と海外への展開を進めていきたいと考えています。
最終的には、国内官公庁とそれ以外で、50:50になるような構成を目指していきます。それにより、市場リスクと環境リスクに対応できる安定した収益と利益成長を出せる体制を作っていきたいと考えています。
私からのご説明は以上となります。
質疑応答:7号機・8号機の打上げスケジュールについて
司会者:「2024年5月期に予定されている7号機、8号機の打上げスケジュールの発表時期について、現時点でわかる範囲でご説明いただけますか?」という質問です。
市來:今年度中に打上げることはご説明のとおりですが、ロケット打上げの発表については、ロケット会社から正式に「発表してよい」という承諾を得るまでは、我々からは発表できないことになっています。
許可なく発表すると過去には訴訟問題になったケースもあるとうかがっているため、申し訳ありませんが、こちらについてはロケット会社から許可を得た際に、あらためて発表させていただきます。
質疑応答:衛星画像ビジネスにより良く変わっていく世界について
司会者:「御社は『衛星画像ビジネスを通じて世界をより良くする』というビジョンを掲げられています。『より良くなる世界』とはどのような世界をイメージしていけばよいでしょうか?」というご質問です。
大西:すでにプレスリリースも出していますが、弊社は年初に能登半島地震に関して画像提供も行っていました。何が起きるかわからない中で、宇宙から見るデータはそこに影響せず、リアルタイムに見えてきます。リアルタイムに情報があるのとないのとでは、その先にある生活をどのように改善していくかが違ってきます。
能登半島地震でもそうでしたが、災害に対してデータが取りづらい世の中となっています。日本だけでなく世界中のあらゆる地域で、この先何が起こるかわからない状況の中では、宇宙からいつでも見られるSAR衛星のデータを使って、リアルタイムにデータを提供することは、その先の情報をつかむ手段となります。
まさに宇宙からしかできないことであり、準リアルタイム観測を目指す当社にしかできないことですので、これによって人々の生活もよりよく豊かにしていく、安心を得られる手段を作っていきたいと考えています。
質疑応答:売上高の目標について
司会者:「試算でも構いませんので、24機、36機体制になった時の売上高などの目標を教えてください。また、最終黒字化はいつを見込んでいますか?」というご質問です。
市來:売上についての具体的なご説明は難しいところがありますが、先ほど大西からもお伝えしたとおり、スライドに8機体制もしくは24機体制の場合の月間売上を示しています。
当然ながら、この数字は機数が増えていく中で緩やかに増えていきます。例えば、1機あたりの想定販売数が急に8枚や11枚になったり、稼働機数が24機になると同時に11枚に増えたりするわけではありません。
そのあたりの移行は推測していただく必要がありますが、およそスライドに示しているような売上を実現できると考えていただければと思います。
黒字化のタイミングについても、はっきりとお示しすることは難しいのですが、例えば1機あたりの収支はほぼプラスマイナスゼロです。打上げ後の3、4ヶ月は初期運用がありますので、画像の販売はできません。そのため、1年目はどうしてもトントンか、若干の赤字になります。
ただし、稼働機数が8機くらいになってくると明らかに利益が出ます。2024年度に商用機が少なくとも8機に達していれば、恐らくそこに至るまでのどこかで黒字化するだろうとイメージできると思います。
一時的な可能性はありつつも、今期の第2四半期も黒字化していますので、黒字化はそれほど遠い先の話ではないと考えています。このあたりの情報からご推測いただければと思います。
質疑応答:年間売上高の算出について
司会者:「年間売上高については、単純に月間売上高を12倍とするイメージでよいでしょうか?」というご質問です。
市來:おっしゃるとおり、年間売上高については月間売上高の12倍で考えています。販売枚数の「約6〜15枚/日」というベースの値ですが、例えばこの「6枚」は「少なくとも官公庁や安全保障ではこれくらい売れるだろう」という予測をベースにしています。
特に官公庁では、年間契約になってきますので、1ヶ月で一気に売上が上がるというような話はありません。そのため、月間売上高の12倍と考えていただければと思います。
質疑応答:地場製造業との連携による競争力について
司会者:「御社は九州の地場製造業のノウハウを活用して、世界に通用する競争力を示していると思います。具体的な強みや差別化要因があったら教えてください」というご質問です。
大西:小型SAR衛星および小型衛星は、さまざまな技術や分野が組み合わされて成り立っています。例えばバスを作る構造、その中にある電源システム、熱、アンテナを作る板バネなど、いろいろなものが組み合わされています。
それらをどのように組み合わせて作っていくかは、私たちが20年以上かけて小型衛星を研究してきた中で培ってきた技術です。
一つひとつを作るノウハウや尖った技術力は、製造業にあります。その一つひとつを組み合わせて、「小型SAR衛星をどのようにしていくか」「開いた時にきれいな形になる展開アンテナを有する小型SAR衛星を作ることができるか」を考え、弊社は地場企業の方々と一緒に取り組んできました。その結果として、現在この衛星ができています。
今日、「こうやって衛星ができますよ」とお話ししていますが、実際に形にしていくのは大変です。自社で作ろうと思ったものを形にするためには、地場企業の方々とさまざまな擦り合わせをしていかなければなりません。
私たちと地場企業は非常に近くに位置しています。最初に作った1号機は、世界でも小型SAR衛星の実現は難しいと言われていた中で、1年弱で作ることができました。これは近い距離にいながらも、幾度となくトライアンドエラーを繰り返すことによってできたということです。
私たちにとって、九州の地場企業と一緒に作るということは、世界が作ることができないものもスピーディーに確実に作ることができるという強みにつながっています。
質疑応答:一般市民向けの活用について
司会者:「一般市民向けのサービスに御社の技術を活用するとして、どのような可能性があり得るのか教えてください」というご質問です。
大西:最終的には、さまざまな方々にSAR衛星を使っていただきたいという思いがあります。同じような宇宙インフラとして思い浮かぶものとしてGPSがあります。GPSも宇宙からそれぞれのポジショニングを正確に把握することができますので、位置のリアルタイムデータだと言えます。
実際に私自身を含めて一般市民は「GPSを使っている」という感覚はほぼないと思いますが、それを使ったシステムがいろいろなところで動いています。ナビゲーションシステムもそれにあたると思いますが、SAR画像においても、GPSと同じくらい日常生活に溶け込んだ活用が1つの終着点ではないかと考えています。
この先いろいろなリアルタイムのシステムが出てくる中で、おそらく位置情報はGPS、表面のデータはSARデータが使われてくることによって、おのずとみなさまが知らない間に活用されるようなかたちをイメージしています。
質疑応答:今後の販管費の推移について
司会者:「2027年度に向けて販管費がどのように増えていくのかを教えてください」というご質問です。
市來:先ほど、売上モデルについて大西がご説明しましたが、開発・打上げコスト、減価償却費とあり、それ以外のもの、販管費も含めて運用コストに入っています。
例えば人員計画などは未達ではあるものの、今後、47名に対して実際に機数が増えれば、運用コストも際限なく増えていくかというと、そうではありません。人員的にも今の倍程度まで増えたところで、それ以上はもう必要ないという段階が来ます。
一方でビジネスとして伸びていく部分がありますので、販管費が増え続けるのかというと、むしろ薄まっていくコストが大きいと考えています。
売上モデルの中で、1機あたりの運用コストは年間3.5億円と記載していますが、これは我々が計画を作っていく中で一番コストが重い時を基準にしています。機数が中途半端でコストも使っているという時期に、およそこのくらいのコストがかかっていると考えていただければ、ある程度コンサバな数値と取れると考えています。
質疑応答:償却年数と運用年数について
司会者:「衛星は5年償却とのことですが、実際の運用年数はそこから多少延びることはありますか? また、研究開発等で寿命を延ばす余地はありますか?」というご質問です。
大西:5年というのは設計寿命です。後ほどご説明しますが、この設計寿命は宇宙空間で降り注ぐ放射線やバッテリーの充放電回数などから設定しています。そのため、5年経っていきなり運用停止するというよりも、その段階でまだ稼働できるのであれば、そこからまた継続して運用していきます。
総じてJAXAの衛星もそうですし、世界の衛星を見ても基本的には設計寿命を超えて運用されるものが多いと思われます。弊社としても稼働している限りは運用を続けて、その後、運用ができなくなった後に破棄していくことを考えています。
研究開発によって寿命を延ばす余地については、大きく宇宙放射線による電子部品の故障とリチウムイオンバッテリーの充放電によるへたりの2つです。
まずは放射線に強い電子部品が登場してきていますので、それを適用するということによる寿命の延びは考えられます。バッテリーに関しても充放電に強いものはできていますので、そのあたりを加味すると耐久性が高くなることは考えられます。
一方、運用を終えた後には大気圏に破棄しますので、そこに対してのデブリ化をしないことも併せて考え、この先の寿命設定をしていきたいと思っています。ただし、研究できる余地は多くありますので、引き続き検討していきます。
質疑応答:SAR技術に対する脅威について
司会者:「SAR技術に対して脅威だと感じるような技術はありますか?」というご質問です。
大西:SAR技術に対する脅威というよりも、階層が分かれていく中で見ると、宇宙から撮るSARデータ、航空機などの中間層から見るSARデータ、さらにドローンを使ったSARデータがあると思っています。これらは一長一短ですが、宇宙から見ると、広範囲かつ天候にも左右されずに見ることができます。
航空機はそれよりも低い高度を見て、より高分解能を取れる一方で、飛行機を飛ばすためには許可が必要ですので、迅速に、かつ広範囲でのデータ取得も難しくなります。
ドローンに関しては、風が吹いたり雨が降ったりすると、なかなかデータが取れませんが、低いところをより詳細に見るということでは必要だと思います。
おそらく、このあたりが階層ごとに発展していきつつ、地球を見るいろいろなデータが活用されていきますので、脅威というよりも総じて市場としては広がっていくと考えています。
市來:少し補足すると、ご質問の意図としては、要は代替技術があるのかどうかということだと思います。
地球規模で24時間見られる方法という意味で言うと、SAR以外はありません。それ以外の技術は、我々もこのSARに取り組むかどうかを決める前にかなり調べました。
可能性があるとすれば赤外線ですが、水に弱く、分解能も悪いです。赤外線を使ったものの分解能は、数十メートルあたりが限界と理解しています。
46センチメートル、1メートルというレベルの高分解能で24時間いつでも見ることができ、しかも地球規模となると、今のところSAR以外の技術が見当たらないというのが我々の見解です。
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