*14:34JST 富士紡HD Research Memo(4):高収益体質をつくり、「ニッチ」と「利益重視」で存在感ある企業へ(2)
■富士紡ホールディングス<3104>の会社概要
(c) 生活衣料事業(旧 繊維事業)
B.V.D.を中心に高品質なアンダーウエアの製造・販売を行っている。B.V.D.とアングルの2ブランドで生活衣料事業売上高の75%を占める。採算性の高い製品への絞り込みにより、今では営業利益率11.1%を達成している。特に、Eコマース販売(ネット販売)の強化により、新規顧客開拓と顧客ニーズにきめ細かな対応を図っている。Eコマース販売は2005年からスタートし、2017年中期経営計画からさらに注力して取り組んでいる。
同社の子会社アングル(株)(旧 アングル・ミユキ(株))は2012年に東洋紡<3101>から買収した。元々、百貨店中心の高級インナーウエアを販売していたが、百貨店販売が不振続きで在庫を積み上げて儲からなくなった。そこで百貨店販売を縮小しEコマース販売へシフトした格好だ。2020年に(株)フジボウアパレルとアングルが合併し、Eコマース販売を加速化している。他にも、一部高級ブランドにも取り組んでいる。ビキューナを使った超高級肌着、B.V.D.高級タイプ(ヘビーウエイトシリーズ)、夏用大人気商品「涼ブラ(約33g軽量)」などがある。
同事業は最盛期には売上高が数百億円規模であったが、その後長期的繊維不況に陥り、不採算製品の縮小・撤退や在庫縮減など地道な合理化活動を進め、利益が出る体質になった。今では売上高の規模は縮小したものの、ビジネスモデルをEコマースへ転換することで高効率販売と低コスト構造を実現、高収益体質の事業転換に成功した。縫製工場はタイ工場に集約し、国内や中国の縫製工場はすべて撤退することで身軽になった。コアコンピタンスも、従来のモノづくりからマーケティング、商品企画、ブランディングなどにシフトし、リソース(ヒト、モノ、カネ、情報)も大きく入れ替えた。
(d) その他(化成品)事業
同社の化成品事業は、精密機械・医療分野で高評価される射出成形技術で成形加工の事業を展開してきた。2018年には樹脂金型の(株)東京金型を子会社化した。これにより、上流(金型の設計・製造)と下流(射出成形)の一気通貫プロセスが実現し、顧客にとっての選択肢が広がった。東京金型は自動車Tier1(自動車部品)との取引があり、同社の新しい取引先拡大に貢献している。また、2022年には(株)IPMを買収した。精密小型金型分野での金型の幅広いラインナップ化と金型・射出成形品を合わせた提案強化ができるようになり、顧客の多様なニーズに応えている。
化成品金型市場は、不採算金型企業と競争力ある高収益金型企業に二極化する傾向があるが、東京金型やIPMは後者の高収益金型企業である。ちなみに、東京金型は、精度、価格、納期、品質面で自動車業界向けに競争力と知名度があり、顧客から厚い信頼を受けている。
射出成形事業(従来の社内ビジネス)と樹脂金型事業(東京金型、IPMの買収事業)は事業シナジーが強くあり、今後、同社の戦略事業と位置付け、“第4の柱”事業に育てていく考えだ。
3. 特長と強み
(1) 顧客に選ばれるニッチNo.1
同社の中期経営計画「増強21-25」のあるべき姿の「顧客に選ばれるニッチNo.1」が特長及び強みである。「ニッチNo.1」には2つの意味があり、1つは一般に使われる「事業領域でのニッチポジション」、もう1つは「顧客のニーズにシッカリ応えるという意味でのニッチ」と称している。研磨材事業では、欧米トップシェア企業のデファクトスタンダード(標準化)戦略に対して、同社は独自開発のソフトパッドにより“小さな池で大きな魚になる”ことに成功している。また、化学工業品事業でも、大手化学メーカーが自社生産しない小ロット品の中間体製品の受託生産でニッチNo.1ポジションを築いている。
(2) 利益重視
同社は、「売上規模は追求しない。利益重視」を徹底している。この背景には、2006年から始まった「事業構造改革」を実践した経験が生かされている。実際に、旧 繊維事業は2006年には売上高500億円からリーマンショックの2009年には300億円まで縮小した。その間、合理化と構造改革を推進、複数の工場を閉鎖して赤字体質から脱却した。今では営業利益率10%台を達成し、高収益事業へ見事変身した。このストーリーを経営層や現場の幹部が体現しているので、新しい経営体制への移行後も、経営の軸はブレないと弊社では見ている。
(3) 繊維技術から派生した技術を応用
レーヨン技術の延長線上でフィルム加工技術や不織布技術へと発展してきた同社の技術は、元々繊維関連がベースである。研磨材(ソフトパッド)は、有機合成技術(ポリウレタン樹脂)、フィルム加工技術を活用したものである。一方、化学工業品もレーヨン材料(二硫化炭素)から派生したものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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(c) 生活衣料事業(旧 繊維事業)
B.V.D.を中心に高品質なアンダーウエアの製造・販売を行っている。B.V.D.とアングルの2ブランドで生活衣料事業売上高の75%を占める。採算性の高い製品への絞り込みにより、今では営業利益率11.1%を達成している。特に、Eコマース販売(ネット販売)の強化により、新規顧客開拓と顧客ニーズにきめ細かな対応を図っている。Eコマース販売は2005年からスタートし、2017年中期経営計画からさらに注力して取り組んでいる。
同社の子会社アングル(株)(旧 アングル・ミユキ(株))は2012年に東洋紡<3101>から買収した。元々、百貨店中心の高級インナーウエアを販売していたが、百貨店販売が不振続きで在庫を積み上げて儲からなくなった。そこで百貨店販売を縮小しEコマース販売へシフトした格好だ。2020年に(株)フジボウアパレルとアングルが合併し、Eコマース販売を加速化している。他にも、一部高級ブランドにも取り組んでいる。ビキューナを使った超高級肌着、B.V.D.高級タイプ(ヘビーウエイトシリーズ)、夏用大人気商品「涼ブラ(約33g軽量)」などがある。
同事業は最盛期には売上高が数百億円規模であったが、その後長期的繊維不況に陥り、不採算製品の縮小・撤退や在庫縮減など地道な合理化活動を進め、利益が出る体質になった。今では売上高の規模は縮小したものの、ビジネスモデルをEコマースへ転換することで高効率販売と低コスト構造を実現、高収益体質の事業転換に成功した。縫製工場はタイ工場に集約し、国内や中国の縫製工場はすべて撤退することで身軽になった。コアコンピタンスも、従来のモノづくりからマーケティング、商品企画、ブランディングなどにシフトし、リソース(ヒト、モノ、カネ、情報)も大きく入れ替えた。
(d) その他(化成品)事業
同社の化成品事業は、精密機械・医療分野で高評価される射出成形技術で成形加工の事業を展開してきた。2018年には樹脂金型の(株)東京金型を子会社化した。これにより、上流(金型の設計・製造)と下流(射出成形)の一気通貫プロセスが実現し、顧客にとっての選択肢が広がった。東京金型は自動車Tier1(自動車部品)との取引があり、同社の新しい取引先拡大に貢献している。また、2022年には(株)IPMを買収した。精密小型金型分野での金型の幅広いラインナップ化と金型・射出成形品を合わせた提案強化ができるようになり、顧客の多様なニーズに応えている。
化成品金型市場は、不採算金型企業と競争力ある高収益金型企業に二極化する傾向があるが、東京金型やIPMは後者の高収益金型企業である。ちなみに、東京金型は、精度、価格、納期、品質面で自動車業界向けに競争力と知名度があり、顧客から厚い信頼を受けている。
射出成形事業(従来の社内ビジネス)と樹脂金型事業(東京金型、IPMの買収事業)は事業シナジーが強くあり、今後、同社の戦略事業と位置付け、“第4の柱”事業に育てていく考えだ。
3. 特長と強み
(1) 顧客に選ばれるニッチNo.1
同社の中期経営計画「増強21-25」のあるべき姿の「顧客に選ばれるニッチNo.1」が特長及び強みである。「ニッチNo.1」には2つの意味があり、1つは一般に使われる「事業領域でのニッチポジション」、もう1つは「顧客のニーズにシッカリ応えるという意味でのニッチ」と称している。研磨材事業では、欧米トップシェア企業のデファクトスタンダード(標準化)戦略に対して、同社は独自開発のソフトパッドにより“小さな池で大きな魚になる”ことに成功している。また、化学工業品事業でも、大手化学メーカーが自社生産しない小ロット品の中間体製品の受託生産でニッチNo.1ポジションを築いている。
(2) 利益重視
同社は、「売上規模は追求しない。利益重視」を徹底している。この背景には、2006年から始まった「事業構造改革」を実践した経験が生かされている。実際に、旧 繊維事業は2006年には売上高500億円からリーマンショックの2009年には300億円まで縮小した。その間、合理化と構造改革を推進、複数の工場を閉鎖して赤字体質から脱却した。今では営業利益率10%台を達成し、高収益事業へ見事変身した。このストーリーを経営層や現場の幹部が体現しているので、新しい経営体制への移行後も、経営の軸はブレないと弊社では見ている。
(3) 繊維技術から派生した技術を応用
レーヨン技術の延長線上でフィルム加工技術や不織布技術へと発展してきた同社の技術は、元々繊維関連がベースである。研磨材(ソフトパッド)は、有機合成技術(ポリウレタン樹脂)、フィルム加工技術を活用したものである。一方、化学工業品もレーヨン材料(二硫化炭素)から派生したものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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