*14:31JST 富士紡HD Research Memo(1):半導体市場の底入れと上向き傾向で、2024年3月期下期から業績回復へ
■要約
富士紡ホールディングス<3104>は1896年に設立し、研磨材事業と化学工業品事業を主力事業、生活衣料(B.V.D.など)事業を準主力事業として事業展開している。同社は日本の繊維産業とともに栄えてきたが、現在では大きく業態転換が行われ、祖業の繊維・紡績業は事業全体の2割以下となり、この3つが中核3大事業である。売上構成は研磨材4割、化学工業品3割、生活衣料2割で、その他事業の中の化成品(樹脂金型)事業を“第4の柱”とすべく育成を図っている。
1. 2024年3月期第2四半期の業績概要
2024年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前期比12.8%減の17,098百万円、営業利益が同72.6%減の917百万円、経常利益が同62.9%減の1,262百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同61.1%減の896百万円となった。また期初計画比では、売上高は4.5%減、営業利益で16.6%減、経常利益で9.9%減、親会社株主に帰属する四半期純利益で0.4%減と計画を下回り、大幅な減収減益となった。
2023年3月期下期から2024年3月期上期にかけて、“史上最悪級”の半導体不況が直撃し、半導体関連材料の研磨材を扱う事業を中核とする同社も深刻な受注減に陥った。半導体需要は2024年3月期下期以降に緩やかな回復に向かうと見られ、同社では短期的な「収益改善速攻策」と中長期の研磨材事業の「成長戦略」のバランスを図った経営の舵取りを行うことが肝要である。
2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期通期の業績予想は、売上高36,100百万円(前期比1,569百万円減)、営業利益2,950百万円(同1,922百万円減)、経常利益3,350百万円(同1,691百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,200百万円(同1,199百万円減)と、期初計画を修正していない。
中核事業である研磨材事業は売上高12,800百万円(前期比15.1%減)、営業利益950百万円(同66.4%減)を見込んでいる。半導体市場が2023年6~7月期に底入れし下期から上向き傾向となっていることから、同社の研磨材事業も業績回復が見込まれる。また、新用途市場として、「SiC※ウエハー」と「半導体の微細化と積層化」に大きな期待が寄せられている。前者は、自動車のEV化が進展するなか、SiCウエハー(パワー半導体)市場が伸長している。同社の2024年3月期受注額は数億円程度が見込まれる。後者は、メモリー半導体分野でも積層化が進むと微細化技術が必要となり同社の研磨材(ソフトパッド)の出番がある。既にNANDフラッシュメモリ分野ではソフトパッドが使われ始めている。
※SiCはシリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料。Siの限界を超えるパワーデバイス用材料。
3. 台湾半導体集積拠点に研究開発センターの創設(研磨材事業の成長投資の実行)
微細化が進展する半導体デバイスのCMP※用途での研磨材事業拡大に向けて、最先端の半導体関連企業群が集積する台湾に、2026年秋に最新鋭の研究開発センターを創設する。施設内に研磨装置・評価機器等を設置することで、顧客とほぼ同等のCMPプロセスの環境を実現して顧客ニーズにきめ細かく対応し、高性能・高品質の研磨材製品開発を推進する。投資総額は約57億円を見込んでいる。
※化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、研磨剤の入った薬品と砥石でウエハーの表面を磨き、平坦化する技術。
4. 株主還元と成長投資の適正な利益配分。減益下でも年間配当金110円と自己株式取得を実施
同社は、株主への利益還元を経営の最重要課題の1つに位置付け、利益配分については経営環境や業績動向等を総合的に勘案し、長期安定的かつ業績に対応した配当を行うことを基本方針としている。また、中長期的な企業価値向上のため、中核事業(研磨材事業、化学工業品事業)の成長投資に振り向ける内部留保を確保している。
同社の基本方針である「安定配当の継続」については、過去15年間配当の増配・維持を継続している。今後もこれを継続していく予定である。2024年3月期は大幅な減益(当期純利益前期比1,199百万減)見通しであるが、2024年3月期の年間配当も、3期連続の110.0円(中間配当金55.0円、期末配当金55.0円)と高い水準を見込んでいる。また、株主還元の強化及び資本効率性向上を図るため、自己株式取得を8年ぶりに実施する。
■Key Points
・半導体市場の底入れと上向き傾向により、2024年3月期下期から業績回復が見込まれる
・ソフトパッドでは、他の追随を許さない圧倒的な世界シェアで地位を確立
・台湾半導体集積拠点に研究開発センターの創設
・「株主還元」と「成長投資」の適正な利益配分
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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富士紡ホールディングス<3104>は1896年に設立し、研磨材事業と化学工業品事業を主力事業、生活衣料(B.V.D.など)事業を準主力事業として事業展開している。同社は日本の繊維産業とともに栄えてきたが、現在では大きく業態転換が行われ、祖業の繊維・紡績業は事業全体の2割以下となり、この3つが中核3大事業である。売上構成は研磨材4割、化学工業品3割、生活衣料2割で、その他事業の中の化成品(樹脂金型)事業を“第4の柱”とすべく育成を図っている。
1. 2024年3月期第2四半期の業績概要
2024年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前期比12.8%減の17,098百万円、営業利益が同72.6%減の917百万円、経常利益が同62.9%減の1,262百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同61.1%減の896百万円となった。また期初計画比では、売上高は4.5%減、営業利益で16.6%減、経常利益で9.9%減、親会社株主に帰属する四半期純利益で0.4%減と計画を下回り、大幅な減収減益となった。
2023年3月期下期から2024年3月期上期にかけて、“史上最悪級”の半導体不況が直撃し、半導体関連材料の研磨材を扱う事業を中核とする同社も深刻な受注減に陥った。半導体需要は2024年3月期下期以降に緩やかな回復に向かうと見られ、同社では短期的な「収益改善速攻策」と中長期の研磨材事業の「成長戦略」のバランスを図った経営の舵取りを行うことが肝要である。
2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期通期の業績予想は、売上高36,100百万円(前期比1,569百万円減)、営業利益2,950百万円(同1,922百万円減)、経常利益3,350百万円(同1,691百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,200百万円(同1,199百万円減)と、期初計画を修正していない。
中核事業である研磨材事業は売上高12,800百万円(前期比15.1%減)、営業利益950百万円(同66.4%減)を見込んでいる。半導体市場が2023年6~7月期に底入れし下期から上向き傾向となっていることから、同社の研磨材事業も業績回復が見込まれる。また、新用途市場として、「SiC※ウエハー」と「半導体の微細化と積層化」に大きな期待が寄せられている。前者は、自動車のEV化が進展するなか、SiCウエハー(パワー半導体)市場が伸長している。同社の2024年3月期受注額は数億円程度が見込まれる。後者は、メモリー半導体分野でも積層化が進むと微細化技術が必要となり同社の研磨材(ソフトパッド)の出番がある。既にNANDフラッシュメモリ分野ではソフトパッドが使われ始めている。
※SiCはシリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料。Siの限界を超えるパワーデバイス用材料。
3. 台湾半導体集積拠点に研究開発センターの創設(研磨材事業の成長投資の実行)
微細化が進展する半導体デバイスのCMP※用途での研磨材事業拡大に向けて、最先端の半導体関連企業群が集積する台湾に、2026年秋に最新鋭の研究開発センターを創設する。施設内に研磨装置・評価機器等を設置することで、顧客とほぼ同等のCMPプロセスの環境を実現して顧客ニーズにきめ細かく対応し、高性能・高品質の研磨材製品開発を推進する。投資総額は約57億円を見込んでいる。
※化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)、研磨剤の入った薬品と砥石でウエハーの表面を磨き、平坦化する技術。
4. 株主還元と成長投資の適正な利益配分。減益下でも年間配当金110円と自己株式取得を実施
同社は、株主への利益還元を経営の最重要課題の1つに位置付け、利益配分については経営環境や業績動向等を総合的に勘案し、長期安定的かつ業績に対応した配当を行うことを基本方針としている。また、中長期的な企業価値向上のため、中核事業(研磨材事業、化学工業品事業)の成長投資に振り向ける内部留保を確保している。
同社の基本方針である「安定配当の継続」については、過去15年間配当の増配・維持を継続している。今後もこれを継続していく予定である。2024年3月期は大幅な減益(当期純利益前期比1,199百万減)見通しであるが、2024年3月期の年間配当も、3期連続の110.0円(中間配当金55.0円、期末配当金55.0円)と高い水準を見込んでいる。また、株主還元の強化及び資本効率性向上を図るため、自己株式取得を8年ぶりに実施する。
■Key Points
・半導体市場の底入れと上向き傾向により、2024年3月期下期から業績回復が見込まれる
・ソフトパッドでは、他の追随を許さない圧倒的な世界シェアで地位を確立
・台湾半導体集積拠点に研究開発センターの創設
・「株主還元」と「成長投資」の適正な利益配分
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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