S&P500月例レポート(23年10月配信)<後編>
雇用関係
○8月の月次雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月から18万7000人増となりました。市場予想は17万人増でした。7月分は当初発表の18万7000人から15万7000人に下方修正されました。
⇒失業率は3.5%で横ばいと予想されていましたが、3.8%に上昇しました(2023年6月3.6%、5月3.7%、4月3.4%、3月3.5%、2月3.6%、1月3.4%、2022年12月3.5%、8月~11月3.7%、6月~7月3.5%、3月~5月3.6%、2月3.8%、2020年の5月は13.3%、2月は3.5%)。
⇒労働参加率は7月の62.6%から62.8%に上昇しました。
⇒週平均労働時間は横ばいの34.3時間と予想されていましたが、34.4時間に増加しました。
⇒平均時給は7月の33.74ドルから8月は33.82ドルとなり、前月比0.2%増となりました。7月の0.4%増の後、8月の市場予想は0.3%増でした(6月0.4%増、5月0.3%増、4月0.5%増、3月0.3%増、2月0.2%増、1月0.3%増、2022年12月0.4%増、11月0.4%増、10月0.5%増、9月0.3%増、8月0.3%増、7月0.5%増)。前年同月比では7月の4.4%増から8月は4.3%増に低下しました(6月4.4%増、5月4.3%増、4月4.4%増、3月4.3%増、2月4.6%増、1月4.4%増、2022年12月4.9%増、11月4.8%増、10月4.9%増、9月5.0%増、8月5.1%増)。
○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は前月の170万2000件から165万8000件に減少しました。
⇒2023年9月7日発表の週間新規失業保険申請件数:21万6000件(当初の発表通り)
⇒2023年9月14日発表の週間新規失業保険申請件数:22万件
⇒2023年9月21日発表の週間新規失業保険申請件数:20万1000件
⇒2023年9月28日発表の週間新規失業保険申請件数:20万4000件
レイオフ(および関連事項):
○全米自動車労働組合(UAW)は、米国の大手自動車メーカー3社(フォード
M&A
○米連邦取引委員会(FTC)は、ヘルスケア大手のアムジェン
○スナックやゼリーを製造している大手食品メーカーJMスマッカー
○コミュニケーション・サービス企業のシスコ・システムズ
IPO、分配金、「空箱」SPAC
○ソフトバンクグループ <9984> [東証P]子会社の英半導体メーカー、アーム
○サンフランシスコを拠点とする食料品配達会社メイプルベア
○マーケティング・オートメーション・プラットフォームを提供するクラビヨ
○ベトナムの電気自動車会社ビンファスト・オート
○報道によると、マイクロソフト
企業業績
○1週間以内にすべての銘柄が2023年第2四半期決算の発表を終える予定です(2023年9月29日終了時点)。499銘柄(完全なデータ付き)が2023年第2四半期決算の発表を終え、そのうち380銘柄(76.2%)で営業利益が予想を上回り、496銘柄中315銘柄(63.5%)で売上高が予想を上回り、四半期売上高は過去最高を更新しました。
⇒2023年第2四半期のEPSは前期比4.4%増、前年同期比17.0%増でした。売上高は前期比2.4%増、前年同期比7.1%増となり、(過去最高を記録した2022年第4四半期を僅かに上回る)3.96兆ドルに達し、過去最高を更新しました。
⇒2023年第2四半期の営業利益率は、第1四半期の11.64%から上昇して11.87%となりました(1993年以降の平均は8.34%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
⇒2023年第2四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は16.3%となっています。この割合は、2023年第1四半期は18.6%、2022年第2四半期は19.8%でした。
○2023年第3四半期の利益は前期比0.8%増、第4四半期は前期比3.8%増が見込まれており、過去最高となる見通しです(現時点での過去最高は2021年第4四半期)。
○2023年通年の利益は前年比11.7%増となる見通しで、この予想に基づく2023年の予想株価収益率(PER)は19.5倍となっています。
○2024年の利益は同11.7%増(2023年と同じ)が見込まれており、2024年予想PERは17.4倍となっています。
個別銘柄
○中国は政府職員がアップル
⇒アップルはiPhoneの新型モデル「iPhone15」を発表しましたが、新モデルの投入は毎年恒例であるため、投資家の反応は限定的でした。
○米司法省がGoogle(親会社ルファベット
○米連邦取引委員会(および17の州)は、eコマース小売業者のアマゾン・ドット・コム
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、資産運用会社のブラックストーン
注目点
○新型コロナウイルスの感染拡大期に実施された米国連邦政府による学生ローンの返済猶予措置(1兆6000億ドル)が8月に打ち切られました。影響を受けた消費者が出費を減らすことで、小売売上高が減少すると予想する向きもあります。
○FRBの報告によると、7月の消費者信用(季節調整済み)は104億ドル増加して、前年同月比4.0%増で過去最高の4兆9860億ドルとなりました。
○米国の短期国債の金利コストが長期国債の金利コストを上回る見通しですが、このような事態はこの23年間で初めてのことです。
⇒米国10年国債の利回りは、2007年以来の高水準となる4.68%を記録しました。
○オンライン小売りのアマゾンは、来たるホリデーシーズンに向けてパートタイム職員を25万人増員(昨年の増員は15万人)し、時給を引き上げる計画を発表しました。百貨店のターゲット
⇒9月末、ターゲットは犯罪、盗難、治安の悪化を理由に、約2000店舗のうち9店舗を閉店すると発表しました。
配当金
○2023年第3四半期のS&P500指数構成銘柄の1株当たり平均配当額は17.26ドルとなり、2022年第3四半期の16.66ドルから3.59%増加、2023年第2四半期の17.13ドルから0.73%増加しました。支払総額は1441億8000万ドルで、2022年第3四半期の1403億4000万ドル、2023年第2四半期の1432億ドルから増加しました。
⇒四半期ベースで過去最高の配当支払額を記録したのは2023年第1四半期で、1株当たり17.54ドル、総額1467億6000万ドルでした。
○現金配当は2023年8月に前年同月比で12.81%増加(月ベースでの支払額としては過去最高)した後、2023年9月は前年同月比12.49%減となりました。年初来では4.83%の増加となりました。
⇒9月の配当支払額は1株当たり4.84ドルで、2022年9月の5.53ドルから減少、支払総額は404億6000万ドルで、2022年9月の465億5000万ドルから減少しました。
⇒2023年9月までの12ヵ月間の配当支払額は1株当たり69.31ドルで、2022年9月までの12ヵ月間の65.32ドルから増加し、2023年9月までの12ヵ月間の支払総額は5802億1000万ドルで、2022年9月までの12ヵ月間の5524億ドルから増加しました。
○2023年9月には、増配が16件、配当開始が1件、減配が1件、配当停止が0件であったのに対し、2022年9月は増配が19件、配当開始が0件、減配が0件、配当停止が0件でした。
⇒年初来では、増配が256件、配当開始が8件、減配が20件、配当停止が4件であったのに対し、2022年の9月末までの9ヵ月間では増配が281件、配当開始が6件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。
○増配率の中央値は引き続き低下しており、9月は6.06%と、8月の7.19%(7月は8.00%)を下回りました。9月の平均増配率は8.00%と、8月の7.79%(7月は8.24%)から上昇しました(いずれも、2倍以上となった銘柄を除外しています)。
⇒年初来では、増配率の中央値は7.27%(過去3ヵ月間では7.41%)、平均値は8.87%となっています。2022年の増配率の中央値は8.41%(2021年は8.33%、2020年は6.25%、2019年は9.68%)、平均値は11.80%(2021年は11.76%、2020年は8.63%、2019年は9.80%)でした。
○注目すべき点として、今年は減配と配当停止が24件あり(昨年は5件)、これにより年間配当額は155億ドル分減少しています(対して、増配は258件で319億ドル分増加)。配当の減少は銘柄固有の要因によるものですが、エネルギー銘柄がこれら24件のうち10件、また減少分の42%(65億ドル)を占めています。一部の企業は配当方針を四半期の定額配当から変動配当に変更しています(その結果、過去の実績に基づく配当予想を提示)。
○2023年の予想配当支払額の前年比での水準は、3月に5%増に下方修正されました。これは、融資の伸び率低下に加えて、企業の需要減少と銀行の資本要件の引き上げの見通しに基づくもので、従来、シリコンバレー銀行による銀行問題の発生以前は、6~7.5%増のレンジ(当時の予想は7%弱)と推定されていました。現在は4%増が予想されており、この予想には最近の減配は状況に応じたもので広がらないこと、景気の力強さが持続し、消費者、企業、政府の支出(及びインセンティブ)が維持され、企業利益は横ばいないし微増となることが織り込まれています。
⇒楽観的な予測では、銀行の更なる破綻はなく、FRBによる利上げも終了し(2024年上半期に初回の利下げを実施)、個人消費は安定的に推移することが想定されており、その結果、2023年の現金支払額は前年比4.2%増(2桁増の当初予想からは低下)が見込まれています。
⇒悲観的な予測では、更なる小規模銀行の買収、企業の信用格付けの引き下げ(筆者はS&Pグローバル・レーティングスとつながりはなく、見識もありません)、銀行の資本要件の引き上げ、ならびに失業率の上昇と消費の減退を織り込み、過去最高を記録した2023年第1四半期の配当支払いに支えられる形で、1桁台前半の増加が見込まれています。この予想では、2023年の残りの期間のネットでの変動(増加額-減少額)が僅かにとどまることと(それでも2023年は過去最高を更新する見通し)、2024年への持ち越しも考慮されています。
○2024年の配当に関して、当初予想は景気と配当のパターンの変化(エネルギーと一般消費財にとってはネガティブ、金融にとってはポジティブ)が要因となり、僅かながらもポジティブとなっています。筆者は、FRBによる25bpのもう一回の利上げ(2023年第4四半期)と2024年第3四半期の利下げ開始に加えて、景気の大幅な減速は回避され、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)との見通しを織り込んでおり、2024年の実際の現金支払額は、現在の筆者の2023年の予想値(6130億ドル)から3.5~4.5%程度の増加を予想しています。これにより2024年の現金支払額は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。
インデックス・レビュー
◇S&P500指数
S&P500指数は9月に4.87%下落して4288.05で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.77%)。8月は4507.66で終え、1.77%の下落(同マイナス1.59%)、7月は4588.96で終え、3.11%の上昇(同プラス3.21%)でした。過去3ヵ月では3.65%の下落(同マイナス3.27%)、年初来では11.68%の上昇(同プラス13.07%)、過去1年では19.59%の上昇(同プラス21.62%)でした。2022年は19.44%の下落(同マイナス18.11%)、2021年は26.89%の上昇(同プラス28.71%)、2020年は16.26%の上昇(同プラス18.40%)、2019年は28.88%の上昇(同プラス31.49%)、2018年は6.24%の下落(同マイナス4.38%)でした。2022年1月3日の高値からは10.60%の下落(同マイナス8.00%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは26.63%の上昇(同プラス34.27%)でした。
9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は8月の1.01%から再び0.88%に低下(7月は0.68%、6月は0.88%、5月は0.96%、4月は0.92%、3月は1.51%)、年初来では1.07%となりました。2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした。
9月の出来高は、7月に前月比10%減少、8月に同1%増加した後、3%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では18%の減少でした。2023年9月までの過去1年では前年比11%増加しました。2022年は同6%の増加でした。
9月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(3日全て下落)でした。8月は1%以上変動した日数は23営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)でした。7月は20営業日中に1%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数は187営業日中49日(上昇が27日、下落が22日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。2022年は、1%以上変動した日数は122日(上昇が59日、下落が63日)、2%以上変動した日数は46日(上昇が23日、下落が23日)でした。2021年は、1%以上変動した日数は55日(上昇が34日、下落が21日)、2%以上変動した日数は7日(上昇が2日、下落が5日)でした。
9月は20営業日中8日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動と3%以上の変動はありませんでした(8月は23営業日中12日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした)。年初来では1%以上の変動が88日、2%以上の変動が12日、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日、4%以上の変動が4日ありました。2021年は1%以上の変動が93日、3%以上の変動が3日ありました。
9月は、11セクター中10セクターが下落しました。8月は10セクターが下落し、7月と6月は全11セクターが上昇しました。9月のパフォーマンスが最高だったのは2.47%上昇して唯一プラスのセクターとなったエネルギーで、年初来では3.25%上昇し、2021年末比では64.21%の上昇でした(指数内で最高)。9月の騰落率2位となったのは3.10%下落したヘルスケアで、年初来では5.32%下落、2021年末比では8.68%の下落でした。これに続いたのが金融で、9月に3.25%下落し、年初来では3.09%の下落とマイナスに転じ、2021年末比では15.06%下落しました。次はコミュニケーション・サービスで、9月に3.27%下落し、年初来では39.43%の上昇(指数内で最高)、2021年末比では16.93%の下落でした。騰落率最下位となったのは不動産で、9月は7.82%下落、年初来では7.98%下落、2021年末比は34.16%の下落(指数内で最低)でした。一般消費財は9月に6.01%の下落(年初来では25.71%上昇、2021年末比では21.53%下落)、生活必需品は4.79%の下落(同6.65%下落、同9.60%下落)となりました。情報技術は9月に6.91%下落し、年初来では33.76%上昇、2021年末比では4.91%の下落とマイナスに転じました。
9月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。9月の値上がり銘柄数は74銘柄(平均上昇率は2.89%)で、8月は153銘柄(同3.92%)、7月は362銘柄(同6.24%)でした。10%以上上昇した銘柄数は2銘柄(同11.49%)で、8月は13銘柄(同13.81%)、7月は77銘柄(同14.55%)でした。25%以上上昇した銘柄はゼロで、8月は1銘柄(同25.88%)、7月は4銘柄(同32.83%)でした。一方、9月の値下がり銘柄数は429銘柄(平均下落率は6.62%)で、8月は350銘柄(同6.45%)、7月は141銘柄(同4.02%)でした。9月は10%以上下落した銘柄数が75銘柄(同13.56%)で、8月は53銘柄(同15.50%)、7月は12銘柄(同11.39%)でした。25%以上下落した銘柄数はゼロで、8月は4銘柄(同29.81%)、7月はゼロでした。
過去3ヵ月間では、値上がり銘柄数が減少しました。値上がり銘柄数は148銘柄(平均上昇率は8.08%)と、8月末の364銘柄(同12.87%)、7月末の340銘柄(同13.45%)から減少しました。値下がり銘柄数は355銘柄(平均下落率は10.74%)と、8月末の139銘柄(同6.42%)、7月末の163銘柄(同6.88%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は47銘柄(平均上昇率15.99%)と、8月末の210銘柄(同18.68%)から減少し、10%以上下落した銘柄数は161銘柄(平均下落率は16.92%)と、8月末の29銘柄(同17.04%)から増加しました。過去3ヵ月間で25%以上上昇した銘柄数は3銘柄(8月末時点は39銘柄)で、21銘柄(同4銘柄)が25%以上下落しました。
年初来では、値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は250銘柄(平均上昇率は20.09%)と、8月末の283銘柄(同23.22%)から減少し、値下がり銘柄数は252銘柄(平均下落率は15.22%)と、8月末の218銘柄(同12.33%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は164銘柄(平均上昇率は28.08%)と、8月末の203銘柄(同30.29%)から減少し、10%以上下落した銘柄数は159銘柄(平均下落率は21.20%)と、8月末の117銘柄(同17.11%)から増加しました。年初来で25%以上上昇した銘柄数は67銘柄(8月末は90銘柄)で、39銘柄(同23銘柄)が25%以上下落しました。
2022年通年では、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回り、値上がり銘柄数は139銘柄(平均上昇率は22.21%)、値下がり銘柄数は363銘柄(平均下落率は24.58%)でした。10%以上上昇した銘柄数は93銘柄(平均上昇率は30.94%)、10%以上下落した銘柄数は283銘柄(平均下落率は30.02%)でした。2022年通年で41銘柄が25%以上上昇し、162銘柄が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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