S&P500月例レポート(23年10月配信)<前編>
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
THE S&P500 MARKET:2023年9月
個人的見解:金利を長期的に高止まりさせるFRBの政策が浸透したことで、9月は8月を上回る下落。S&P500指数の9月の騰落率は4.87%の下落、第3四半期は3.65%の下落、年初来は11.68%の上昇。
株式市場で材料消化が進んだことは良いニュースです。(それほど強く確信しているわけではありませんが)おそらく、8月の1.77%下落に続き、9月も株式市場が4.87%下落したことで(下落率は2022年9月の9.34%よりは小幅でしたが、2021年の4.76%や2020年の3.92%を上回りました)、市場は悪材料を織り込んだと言えるかもしれません。
指摘できる悪材料としては、第4四半期の消費支出の減少、学生ローンの返済再開問題、中国経済の減速、ドル高の影響、1バレル=91ドルまで上昇した原油価格(消費者物価指数[CPI]よりも生産者物価指数[PPI]への影響の方が懸念されます。なお、10月のCPIに基づいて公的年金の引き上げがどの程度となるかが決定されますが、引き上げ幅は3.2%が見込まれています)、労働コストの上昇、そして(10月の第1週がノンイベントで済むとは考えられませんが)米国政府機関が閉鎖される可能性が挙げられます。
当然のことながら、(理論的には)上記に加えて、以下の点も市場では材料視されています。つまり、依存症患者(米国の消費者)には買い物が欠かせないこと(クレジットカード残高の増大)、政府が進めている支出プログラム(半導体事業支援のためのCHIPS法、インフラ整備事業、IRA[インフレ抑止法]、IRS[米国内国歳入庁]が新型コロナ対策としての従業員雇用継続税額控除[ERC]の新規申請の受理を延期したとしても発生する新型コロナ関連の支出)、堅調な労働市場(ようやく僅かながら減速の兆候が見え始めています ― とはいえ、週間新規失業保険申請件数ではまだ減速の兆候は確認されていません)、そして市場参加者がバックストップ(最後の守り手)として、経済に問題が生じれば、政府が(大統領が署名することで)救済措置を講じる(少なくとも2024年11月までは)と考えていることです。
今後の展開が予測しづらいのは間違いありませんが、私は自分が理解している(あるいは理解していると思っている)ことに基づいて行動していきます。米国経済は想定以上に力強く(財政支援が大盤振る舞い状態にあるとしても)、企業のバランスシートは健全です(少なくともS&P500指数採用銘柄全体として見た場合)。負債コストは(キャッシュフローによって)問題なくカバーされており、保有現預金も引き続き高水準となっています(S&P Industrials指数構成銘柄の保有現預金は1.8兆ドルで、営業利益の82週分に相当します)。営業利益率も歴史的に見て高い水準にあります(第2四半期は11.87%ですが、この先低下が予想されています。過去10年間の平均は10.32%、1993年からの長期平均は8.34%で、これにはストーリー、あるいは対話型読書法であるABDで話題となるような統計もあります)。利益も第3四半期には若干の増加が見込まれています(1%の増益予想。陰では2.5~3%と予想する声も聞かれました)。第3四半期については、前期比と前年同期比では(セクター毎に)状況が大きく異なっています。
10月(58%の確率で上昇し、平均騰落率は0.54%の上昇)は9月(年間で最も騰落率が悪い月で、上昇する確率は僅かに42%、平均騰落率はマイナス1.12%)と比べて株式市場のパフォーマンスは良好で、企業業績が相場を動かす重要な材料となるでしょう。市場参加者は個別銘柄や産業サブセクターへの投資で成功する方法を熟知しています。マクロ的視点から言えば、雇用統計や政策金利(依然として借入に頼っている場合)以外では、原油価格の高騰を背景とした物価やコストの上昇(直接的なものや輸送費、製品価格を通じた影響)が相場の動きに影響する可能性があります(現在はすでに取引レンジの下限で推移)。
米連邦準備制度理事会(FRB)はコアCPIやPPIを注視することを選択するかもしれませんが、消費者には無理であることから景況感が一段と悪化し、最終的には消費活動に悪影響するかもしれません。とはいえ、心配は無用です。政府機関が閉鎖されたとしても10月中旬には再開されるはずです(10日以上も政府機関が閉鎖されれば、その影響は甚大になると考えられています)。そして、政府が私たちを苦境から救出してくれるでしょう(そういえば、かつてレーガン大統領は英語で最も恐ろしい9つの単語から成る言葉は、”I’m from the government I am here to help.”[私は政府の人間です。手助けするためにいます]だと語っていました)。
過去の10月相場を思い出してみてください(覚えている人は多くはありませんが、彼らはかつての波乱相場を乗り越えて今も投資を続けている人はほんの一握りだと語っています)。1987年10月19日にはS&P500指数は20.47%、ダウ平均は22.61%下落しました。1929年10月28日にはS&P500が12.34%、ダウ平均が11.73%下落し、翌29日もそれぞれ10.16%、12.82%下落しました。
インデックスの動き
○S&P500指数は4.87%下落して4288.05で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.77%)。8月は4507.66で終え、1.77%の下落(同マイナス1.59%)、7月は4588.96で終え、3.11%の上昇(同プラス3.21%)でした。過去3ヵ月では3.65%の下落(同マイナス3.27%)、年初来では11.68%の上昇(同プラス13.07%)、過去1年では19.59%の上昇(同プラス21.62%)でした。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は3.50%下落(同マイナス3.42%)、S&P500指数のマイナス4.87%を上回りましたが、年初来では、S&P500指数のプラス11.68%に対してプラス1.09%(同プラス2.73%)と、引き続きS&P500指数を大きく下回っています。この乖離は、ウェイト付け(時価総額に対して単純株価)によるものですが、歴史的に見ると追随しています。
⇒S&P500指数の時価総額は9月に1兆7210億ドル減少(8月は6670億ドル減少)、年初来では3兆8040億ドル増加し、35兆9380億ドルとなりました。
○9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、8月の1.01%から0.88%に低下(7月は0.68%、6月は0.88%、5月は0.96%、4月は0.92%、3月は1.51%)、年初来では1.07%となりました。2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした。
○9月の出来高は、8月に前月比1%増加した後、3%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では18%の減少でした。2023年9月までの過去1年では前年比11%増加しました。2022年は同6%の増加でした。
○9月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が0日、下落が3日)でした。8月は23営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)でした。7月は20営業日中に前日比で1%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数は187営業日中49日(上昇が27日、下落が22日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。9月は20営業日中8日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。8月は23営業日中12日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。年初来では1%以上の変動が87日、2%以上の変動が12日、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。
過去の実績を見ると、9月は44.2%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.28%、下落した月の平均下落率は4.07%、全体の平均騰落率は1.12%の下落で、歴史的には1年で最も悪い月になっています。2023年9月のS&P500指数は4.87%の下落でした。
10月は57.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.25%、下落した月の平均下落率は4.67%、全体の平均騰落率は0.54%の上昇となっています。
今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2023年は10月31日-11月1日、12月12日-13日、2024年は1月30日-2月1日、3月19日-20日、4月30日-5月1日、6月11日-12日、7月30日-31日、9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日となっています。
主なポイント
○FRBの「政策金利を長期間にわたって高水準に維持する」という政策運営方針が市場に浸透したため、株式市場は新たに認識した環境下で再び調整局面入りして、9月の株式市場は8月に続いて値を下げ、下げ幅も拡大しました。住宅関連指標は引き続き需要低迷と供給鈍化を示しました。住宅価格はすでに高水準にあり、住宅ローン金利の上昇も続いています。消費支出に対する懸念も強まり、(パンデミックに起因する)「過剰」貯蓄は底をつき、消費者は多額の消費を続けたいのであれば、クレジットカードの残高を膨らませるほかはない状況にあります。政府もまた不透明感の醸成に一役買っており、政府機関は2023年10月1日から閉鎖される状況となりました。
○9月の主なデータ
⇒株式市場は、市場の月間ベースでの連続上昇が5ヵ月で止まった後に(累積で15.59%上昇)、2ヵ月連続で全面安の展開となりました(9月は4.87%下落、8月は1.77%下落)。9月は20営業日のうち11日で下落しました。また、11セクターのうち10セクターが下落し、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました(値上がり銘柄数は7月の362銘柄、8月の153銘柄に対し、9月は74銘柄でした)。9月の出来高は前月比3%減、前年同月比では17%減となりました。
→9月は8月と同様に11セクターのうち10セクターが下落しました(6月と7月は11セクター全てが上昇しました)。9月の上昇率が最も高かったのはエネルギーとなり、2.47%上昇しました(年初来の上昇率は3.25%、2021年末比では64.21%上昇)。パフォーマンスが最低となったのが不動産で7.82%下落しました(年初来の下落率は7.98%、2021年末比では34.16%下落)。
→月末時点で11銘柄が52週高値から2%以内にあり(8月は69銘柄、7月は87銘柄)、52週高値で月を終えた銘柄はゼロでした(8月は26銘柄、7月は32銘柄)。
⇒S&P500指数は9月に4.87%下落して4288.05で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.77%)。8月は4507.66で終え、1.77%の下落(同マイナス1.59%)、7月は4588.96で終え、3.11%の上昇でした(同プラス3.21%)。過去3ヵ月では3.65%の下落(同マイナス3.27%)、年初来では11.68%の上昇(同プラス13.07%)、過去1年では19.59%の上昇(同プラス21.62%)でした。
→バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の大統領選挙以降では27.27%の上昇(同プラス33.25%)でしたが、2021年1月20日の就任以降では11.32%の上昇(同プラス16.12%)でした。
→重要な相場の節目を起点とした騰落率:シリコンバレー銀行破綻前の2023年3月8日からは7.42%の上昇(同プラス8.40%で、金融セクターは4.77%の下落)、2022年1月3日の終値での最高値からは10.60%の下落(同マイナス8.00%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは26.63%の上昇(同プラス34.27%)でした。
○ダウ平均の騰落率は、9月は8月から相対的には改善し、S&P500指数をアウトパフォームしました。とはいえ、騰落率は3.50%の下落(配当込みのトータルリターンはマイナス3.42%)でした。なお、S&P500指数の9月騰落率は4.87%の下落でした。年初来ではダウ平均はS&P500指数に大きく出遅れており、S&P500指数が11.68%上昇したのに対し、1.09%の上昇(同プラス2.73%)となっています。両者のパフォーマンスの乖離は、指数算出方法の違いに起因しています(ダウ平均は平均株価の指数化、S&P500指数は時価総額の加重平均の指数化)。両指数は歴史的には似たような動きを示しますが、短期間では異なる動きを見せることがあります。
○米国10年国債利回りは、8月末の4.11%から4.58%に上昇して月末を迎えました(2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは、8月末の4.21%から4.71%に上昇して取引を終えました(同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは8月末の1ポンド=1.2672ドルから1.2202ドルに下落し(同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは8月末の1ユーロ=1.0842ドルから1.0576ドルに下落しました(同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は8月末の1ドル=145.51円から149.38円に下落し(同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は8月末の1ドル=7.2583元から7.2952元に下落しました(同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○9月末の原油価格は8.8%上昇し、8月末の1バレル=83.57ドルから同90.89ドルとなりました(2022年末は同79.35ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は9月に0.8%上昇しました(9月末は1ガロン=3.963ドル、8月末は同3.931ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は87.7%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は70.1%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。
⇒2023年8月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、50%が原油(7月は50%、6月は47%、5月は49%、4月は51%、3月は50%、2月は53%、1月は55%)、13%が連邦税および州税(同14%、同14%、同14%、同14%、同15%、同15%、同15%)、11%が販売・マーケティング費(同11%、同14%、同15%、同12%、同11%、同13%、同10%)、そして25%が精製コストおよび利益(同25%、同24%、同21%、同23%、同24%、同20%、同20%)となっています。
○金価格は8月末の1トロイオンス=1966.50ドルから下落し1864.80ドルで9月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は8月末の13.57から17.52に上昇して8月を終えました。月中の最高は21.33、最低は15.53でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。
⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。
⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。
⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。
○市場関係者のS&P500指数の1年後の目標値は引き続き楽観的で、11ヵ月連続で小幅に上昇しており(それ以前は9ヵ月連続で低下)、現在値から19.8%上昇の5135となっています(前月は13.9%上昇の5123)。7月末時点の目標値は4990でした。ダウ平均の目標値は3ヵ月連続で上昇し、現在値から17.1%上昇の3万9354ドルとなっています(前月は13.0%上昇)。なお、6月末時点で目標値は若干低下していました(ただし、5月までは7ヵ月連続で上昇)。なお、8月末時点の目標値は3万9226ドル、7月末時点の目標値は3万8516ドルでした。
銀行セクター
○ファースト・リパブリック銀行の救済のために米連邦預金保険公社(FDIC)がFRBから借り入れた額は500億ドルとなりました。
○米銀の預金残高は2023年上半期に年率換算で8716億ドル減少して17兆2690億ドルになり、1994年の統計開始以降で初めて減少しました。
石油・ガス
○報道によると、サウジアラビアのアラムコは過去最大規模となる500億ドルの株式売り出しを(再び)検討しています。
○サウジアラビアとロシアは、合計で日量130万バレル(サウジアラビアが100万バレル、ロシアが30万バレル)の減産を年末まで継続すると発表しました。両国は8月に減産を実行し、その後9月まで延長されていました。1ヵ月の延長が予想されていたために、今回の発表はサプライズであり、またサウジアラビアとロシアの協調を示すという点で懸念されます。
バイデン政権と政治
○米国の公的債務残高が初めて33兆ドルに達しました(参考までに、S&P500指数の時価総額は37兆ドルです)。
○ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、政府機関が閉鎖された場合、米国債のAAA格付けに悪影響が及ぶ可能性があると警告しました。フィッチ・レーティングスは先ごろ、米国債の格付けをAAAからAA+に引き下げ、S&Pグローバル・レーティングスは2011年に同様の格下げを実施しています。
○米国10年国債利回りは4.68%となり、2007年10月以来の高水準を付けました。
新型コロナウイルス関連
○米国内国歳入庁(IRS)は、新型コロナウイルス対策として導入されたERCの新規の申請処理を、少なくとも2024年まで停止する予定です。ERCは、2000年3月~2021年12月の期間を対象に、従業員1人当たり最大2万6000ドルの控除を受けることができます。申請処理の停止を決めた背景には、大規模な不正が認められたことがあり(不正問題については主要メディアも報じています)、現在手続き中の60万件を超える申請について見直しを行うとのことです(ERCの申請件数はこれまでに360万件に達しています)。7月の還付額は296億ドルであり、パンデミック期間中の2021年4月には2850億ドルに達していました。
各国中央銀行の動き(および関連ニュース)
○カナダ銀行(中央銀行)は金融政策決定会合を開き、政策金利を5.0%に据え置きました。過去2回(6月と7月)の会合では、それぞれ0.25%ずつ金利を引き上げました。
○FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)では、個人消費と雇用の減速により、7月と8月に経済成長が鈍化したことが明らかになりました。
○欧州中央銀行(ECB)は、政策金利を0.25%引き上げて4.0%としました。これで10会合連続の利上げとなり、同行は利上げを停止する水準に達した可能性があるとの見方を示しました。
○FOMCが開かれ、大方の予想通り(先物市場の予想では99%の確率)、金利は5.25~5.50%で据え置かれ、年内にさらに1回の追加利上げが行われる可能性が示唆されました。メンバーの金利予想を示すドットチャートは、景気見通しに変化が見られることを示しています。2023年末時点の金利見通しは5.6%で変わらず(あと1回の0.25%利上げを意味します)、「高金利の長期継続」というFRBのスタンスが数値で示されました。2024年の金利見通しは3月時点の4.3%や6月時点の4.6%から今回は5.1%に上昇し、これは2024年の利下げ予想が4回から2回に引き下げられたことを意味します。FRBはGDP成長率予想を2023年は2.1%(6月時点は1.0%)、2024年は1.5%(同1.1%)に引き上げ、失業率予想は前回予想の4.1%から3.8%に引き下げました(3月時点は4.5%)。
○イングランド銀行は金利を5.25%で据え置き、2021年12月(当時の政策金利は0.1%)から続いていた連続利上げは14回で止まりました。金利据え置きをめぐる投票結果は賛成5人、反対4人で、反対した4人は0.25%の利上げを支持していました。
○日銀は予想通り、短期金利をマイナス0.1%の低水準に据え置きました。
世界の株式市場
○S&Pグローバル総合指数は、8月の3.08%下落に続き、9月は4.29%下落しました(7月は3.72%上昇)。9月のグローバル市場は、米国の4.88%下落を除くと3.40%下落となりました。8月は米国の2.13%下落を除くと4.46%の下落、7月は米国の3.51%上昇を除くと4.03%の上昇でした。グローバル市場は過去3ヵ月間では3.79%下落、米国の3.65%下落を除くと3.99%下落、年初来では7.68%上昇、米国の11.10%上昇を除くと3.04%上昇しています。2023年9月までの1年間では、S&Pグローバル総合指数は17.86%上昇、米国の18.58%上昇を除くと16.81%上昇しています。
⇒S&Pグローバル総合指数の時価総額は2023年9月に2兆9490億ドル減少し(8月は2兆3520億ドル減)、年初来では4兆9120億ドルの増加となって、総額は70兆6700億ドルとなりました。米国以外の市場の時価総額は9月に8830億ドル減少し(同1兆3860億ドル減)、総額は28兆7270億ドルとなり、年初来では8630億ドル増加した一方、米国市場の時価総額は9月に2兆660億ドル減少し(同9660億ドル減)、総額は41兆9430億ドルとなり、年初来では4兆480億ドル増加しました。2022年にグローバル市場の時価総額は13兆3950億ドル減少し、米国以外の市場の時価総額は4兆2960億ドル減、米国市場の時価総額は9兆990億ドル減でした。
○セクター間のリターンのばらつきは拡大し、9月は11セクターのうち1セクターが上昇しました。8月は11セクターのうち10セクターが下落、7月と6月は全11セクターが上昇していました。9月のパフォーマンスが最高のセクター(エネルギー、2.39%上昇)と最低のセクター(不動産、6.48%下落)の騰落率の差は8.87%と、8月の6.53%や7月の5.65%から拡大しました。年初来でのパフォーマンスが最高のセクター(情報技術、27.70%上昇)と最低のセクター(公益事業、10.96%下落)の騰落率の差は38.66%となっています。2022年のパフォーマンスが最高のセクター(エネルギー、28.08%上昇)と最低のセクター(コミュニケーション・サービス、36.30%下落)の騰落率の差は64.38%でした
⇒新興国市場は7月の5.56%上昇、8月の5.34%下落の後に、9月に全体で2.07%下落しました。新興国市場は過去3ヵ月間では2.14%下落、年初来では0.76%上昇しています(2022年は20.46%の下落を記録)。過去1年間では8.49%の上昇ですが、過去2年間では20.94%の下落、過去3年間では6.91%の下落となっています。9月は23市場のうち6市場が上昇しました(8月は3市場が上昇)。9月はエジプトのパフォーマンスが最も良く8.34%上昇し、パフォーマンスが最低だったのはポーランドで9.84%下落しました。
⇒先進国市場は、7月の3.51%上昇、8月の2.82%下落の後に、9月に全体で4.55%下落しました。先進国市場は米国を除くと、7月の3.52%上昇、8月の4.16%下落の後に、9月に3.88%下落しました。先進国市場は過去3ヵ月間では3.98%下落、米国を除くと4.64%下落しています。年初来では8.54%上昇し、米国を除くと3.81%の上昇です。過去1年間では19.03%上昇、米国を除くと19.90%上昇、過去2年間では7.67%下落、米国を除くと13.99%下落、過去3年間では18.45%上昇、米国を除くと7.17%上昇しています。9月は25市場のうち1市場が上昇しました(8月は2市場が上昇)。パフォーマンスが最も良かったのはノルウェーで9月に2.50%上昇し、パフォーマンスが最低だったのはオランダで9月に7.93%下落しました。
○中国の不動産開発大手の碧桂園(カントリーガーデン)は、支払いが遅れていた社債2本の利息(合計2250万ドル)について、30日間の猶予期間が切れる前に支払いを行いました。同社債は額面の10%前後で取引されています。同社は向こう1年以内に約150億ドル相当の社債が償還期限を迎えます。
○中国の8月の輸出(ドルベース)は前年同月比8.8%減、輸入は同7.3%減となりました。
○英国の8月のインフレ率は前月比0.3%となり、予想されていた0.7%を下回りました。前年同月比では7月の6.8%を上回ると予想されていましたが、8月は6.7%と前月から低下し、18ヵ月ぶりの低水準となりました(ピークは2022年10月の11.1%)。食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は、7月の前年同月比6.9%に対して8月は6.2%に低下しました。
○ユーロ圏の9月のインフレ率は前年同月比4.3%となり、8月の5.2%から低下しました。コアインフレ率は4.5%となり、8月の5.3%から低下しました。
米国経済
○8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は47.9と7月の46.4から上昇しました。
○8月のISM製造業景気指数は47.6と7月の46.4から上昇しました。
○8月のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)は50.5と7月の51.0を下回りました。
○8月のISM非製造業景況指数は、7月の52.7から52.4へと低下すると予想されていましたが、54.5に上昇しました。
○9月のPMI速報値は、製造業が47.9と8月の47.8を0.1ポイント上回り、サービス部門は50.2と8月からほぼ横ばいとなりました。
○8月のCPIは予想通り前月比0.6%の上昇となり(7月は0.2%上昇)、前年同月比は3.7%と7月の3.2%から上昇しました。食品とエネルギーを除いたコアCPIは、予想が前月比0.2%上昇だったのに対し0.3%上昇(7月は0.2%上昇)となり、前年同月比は4.3%と7月の4.7%から低下しました。CPI構成比率の3.4%を占めるガソリンの価格が月間で10.6%上昇したことが目立ちました。ただし、前年同月比では3.3%低下しています。
○8月のPPIはエネルギー価格の上昇が響き、前月比0.7%上昇と14ヵ月ぶりの大幅上昇となりました。市場予想はより低めの0.4%上昇でした(7月は0.3%上昇)。前年同月比は7月改定値の1.3%上昇(当初発表値は0.8%)から、8月は1.6%上昇に加速しました。食品とエネルギーを除いたコアPPIは前月比では0.2%上昇、前年同月比では2.2%上昇と、7月の2.4%から低下しました。
○2023年第2四半期の労働生産性改定値は3.5%上昇と速報値の3.7%上昇から下方改定されました。単位労働コストが速報値の1.6%上昇から2.2%上昇へと上方改定されたことを受けたものです。
○8月の鉱工業生産指数は、前月比0.4%の上昇(予想は0.1%上昇)となりました。設備稼働率は79.7%と7月の79.5%から上昇しました。
○2023年第2四半期のGDP成長率確報値は2.3%と従来の2.1%から上方修正されました。個人消費の伸び率は0.8%(年率)と、従来の1.7%から下方修正されました。
○2023年第2四半期の最終企業利益は2022年第2四半期比で7.8%減少しました。
○8月の個人所得は予想通り前月比0.4%の増加でした。個人消費支出は予想が前月比0.5%増だったのに対し、0.4%増となりました。
⇒個人消費支出(PCE)総合価格指数は前月比0.4%上昇し、前年同月比では3.5%上昇(7月の3.4%から上昇)しました。コアPCE価格指数は前月比0.1%上昇し、前年同月比では3.9%の上昇(7月は4.3%)となりました。
○7月の建設支出は前月比0.7%増と6月の0.6%増から上昇しました。前年同月比は5.5%増と、6月の4.6%増から上昇しました。
○8月の小売売上高は前月比0.6%増となりました。予想は0.2%増でした。7月は前月比0.7%増(速報値)から0.5%増に下方修正されました。目立って予想を上回ったのはガソリン販売で、8月に5.2%増加しました。
○7月の製造業受注は前月比2.1%減となりました。6月の2.3%増の後、2.6%減が予想されていました。
○8月の耐久財受注額は、7月分が速報値の前月比5.2%減から5.6%減に下方修正されたこともあり、前月比0.2%増となりました。予想は0.3%の減少でした。
○7月の卸売在庫は前月比0.1%減と予想されていたのに対し、0.2%減となりました。6月は当初発表の0.5%減から0.7%減に修正されました。
○7月の企業在庫は前月比0.1%の増加が予想されていましたが、横ばいとなりました。6月は横ばいから0.1%減に下方修正されました。
○8月の小売在庫は前月比1.1%増(7月は0.5%増)となりました。卸売在庫は前月比0.1%減(7月は0.2%減)となりました。
○7月の貿易統計によると、貿易赤字は650億ドルでした。これに対し6月の貿易赤字は637億ドルでした。
⇒8月の貿易統計(速報)では、輸入が1.2%減(7月は2.1%増)、輸出が2.2%増(7月は1.7%増)となり、843億ドルの貿易赤字となりました。
○8月の輸入物価指数は0.5%上昇(予想0.3%上昇)となりました。前年同月比では3.0%の低下で、7月の4.6%低下と比べると低下幅が縮小しています。輸出物価指数は1.3%上昇(予想0.4%上昇)となり、前年同月比で5.5%低下し、7月の8.0%低下と比べ低下幅が縮小しています。
○9月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は67.7で、前月の69.2から低下しました。1年先のインフレ期待は3.1%で、前月の3.5%から低下しました。
⇒ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)は68.1となり、速報値から上方改定されました。
○8月の景気先行指数は、予想が前月比0.3%の低下だったのに対し0.4%の低下となりました。7月は速報値の0.4%低下から0.3%低下に修正されました。
住宅関連
○9月のNAHB住宅市場指数は、予想は横ばいの50だったのに対し、45に低下しました。
○7月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は、予想は前月比0.7%上昇でしたが0.6%上昇となり、前年同月比は0.1%上昇と、6月の1.2%低下からプラスに転じました。
○7月のFHFA住宅価格指数は前月比0.4%上昇の予想に対し0.8%の上昇となり、前年同月比は4.6%上昇と6月の3.1%上昇から加速しました。
○8月の中古住宅販売仮契約件数は前月比で若干の低下が予想されていましたが、7.1%の減少となりました。7月は0.9%の増加でした。
○8月の年率換算データは以下の通りです。
⇒住宅着工件数は128万3000件で、市場予想の143万5000件を下回り、7月の144万7000件から減少しました。
⇒着工許可件数は予想以上に堅調で154万3000件となり(予想は144万件)、7月の144万3000件から増加しました。
⇒中古住宅販売戸数は7月の407万件から410万件への増加が予想されていましたが、0.7%減の404万件となりました。前年同月比は15.3%減となり、7月の16.6%減から改善しました。
⇒新築住宅販売件数は67万5000件(予想69万9000件)となり、7月の73万9000件(速報は71万4000件)を下回りました。前年同月比では5.8%の増加でした。
→販売価格の中央値は43万300ドルと前月比で1.4%、前年比では2.3%下落しました。平均価格は51万4000ドルと前月比1.2%上昇しましたが、前年同月比では3.2%下落しました。
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