きちりHD Research Memo(5):コロナ禍が一巡し、2023年6月期は過去最高売上を4期ぶりに更新

配信元:フィスコ
投稿:2023/09/21 13:15
*13:15JST きちりHD Research Memo(5):コロナ禍が一巡し、2023年6月期は過去最高売上を4期ぶりに更新 ■業績動向

1. 2023年6月期の業績概要
きちりホールディングス<3082>の2023年6月期の連結業績は、売上高で前期比58.1%増の10,941百万円、営業損失で83百万円(前期は1,123百万円の損失)、経常損失で274百万円(同355百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失で253百万円(同151百万円の利益)となった。売上高はコロナ禍以降、出店を強化してきた商業施設店舗が好調に推移したことに加えて、ディナー業態も行動規制の解除により徐々に客足が戻り、第4四半期にはコロナ禍前に近い水準まで回復したことが増収要因となり、4期ぶりに過去最高を更新した。

売上原価率は前期の29.3%から28.5%に低下した。食材費の高騰があったもののメニューの見直し等による価格改定を実施したことや、店舗稼働率の上昇による食材廃棄ロスの削減が改善要因となった。販管費は人件費や賃借料、光熱費の増加を主因として前期比1,883百万円増加したが、売上総利益の増加で吸収し営業損失は同1,040百万円縮小した。また、営業外で計上していた助成金収入※が前期の1,143百万円から66百万円と大きく減少したほか、暗号資産評価損益が601百万円悪化したことにより、経常利益段階でも損失計上となった。2020年6月期以降、コロナ禍で厳しい収益状況が続いたが、四半期ベースでは第2四半期以降、黒字基調に戻っており、最悪期は脱したものと見られる。なお、会社計画比で見ると、売上高は既存店売上が想定以上に回復したことで1,141百万円上回ったが、営業利益は食材費や光熱費の上昇、人件費の増加等により243百万円下回った。また、暗号資産評価損243百万円を計上したことにより経常利益段階では404百万円の下振れとなった。

※コロナ禍で政府から店舗の時短営業要請がなされ、救済措置として店舗営業に係る人件費分等が助成金として支払われた。


(1) 飲食事業
飲食事業における売上高は前期比55%増となり、既存店ベースでは同50%増となった。コロナ禍が一巡し行動規制も解除されるなかで、商業施設店舗の売上が好調に推移したほか、「KICHIRI」などディナー業態についても客足が戻り始め、売上高で同1.8倍増と急回復したことが増収要因となった。特に関西の「KICHIRI」については第4四半期にコロナ禍前の売上水準まで回復する月が出てきたほか、首都圏でも80%台まで回復するなど、業界平均(60%台)を上回るぺースで回復を見せた。関西については、若い客層をターゲットとしていることが回復の早さにつながっていると同社では分析している。店舗べースの損益状況では、商業施設店舗が引き続き高い収益力を維持したほか、ディナー業態も売上回復により黒字に転換したもようだ。

店舗の出退店状況を見ると、新規出店は12店舗(うち、1店舗は非連結子会社)、退店は1店舗(フードトラックのたい焼き専門店「たいの八」)となり、期末の直営店舗数は前期末比10店舗増の122店舗となった。商業施設店舗の出店が10店舗と大半を占め、内訳を見ると「いしがまやハンバーグ」が3店舗、フードコートスタイルの「ハンバーグ&ステーキ いしがま工房」が1店舗、「VEGEGO」が6店舗、「とんかつ とん久」が1店舗となり、居抜き出店が可能な「VEGEGO」の出店が過半を占めた。集客力の高いこれら業態ではデベロッパーからの出店要請も続いており、順調に店舗数を拡大している。また、ロードサイド型店舗では「肉の満牛萬」を1店舗出店した。地域別では、愛知県が4店舗、大阪府が3店舗、埼玉県が2店舗、東京都・千葉県が各1店舗となり首都圏以外の出店が目立った。

コロナ禍以降、商業施設店舗の出店を強化してきたことで、商業施設店舗数は2019年6月期末の25店舗から57店舗と2.3倍に増加し、売上高も2019年6月期の2,672百万円から2023年6月期は4,752百万円と1.7倍に増加した。売上構成比で見ると27.0%から43.4%に上昇し、ディナー業態の売上に肉薄するまでになっており、事業ポートフォリオをディナー業態主体から、レストラン業態との2軸体制に変革してきたことが売上高で過去最高を更新する要因になったと考えられる。

(2) その他
PFS事業については、前期比で2倍増の約2億円になったと見られる。主な増収要因は2022年5月に設立したWebrydayのWeb制作・運用事業が通年で寄与したことによるもので、そのほかApplyNowも増収となった。ブランド・コンテンツ活用型サービスについては新たな動きが無かったものの、コロナ禍が一巡し外食業界の環境も回復してきたことから、2024年6月期以降は新たな案件が動き始める可能性もある。一方、FC事業については、FC店舗数が3店舗と変わらなかったものの、既存店の売上増加に伴いロイヤリティ収入が増加し、1千万円強の売上になったと見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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配信元: フィスコ

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