やや“下値の堅さ”が意識される…!? - ドル円

著者:武市佳史
投稿:2023/07/31 11:29

◆ “乱高下”も“往って来い”…! - 日銀会合


注目の日銀会合では『YCC政策の柔軟化』が決定され、この修正を受けてドル円は“138.067円”へと発表直後に落とす場面が見られました。
しかしながらその後は“利益確定の円売り(戻し)”が優勢となるなど、そこから“さらなる下値追い”につながることはありませんでした。

一方でNYタイムに発表の米インフレ指標は“鈍化”し、「米利上げ長期化」への思惑はさらに緩みました。
このため米10年債利回りは“低下(3.98%→3.94%)”したものの、米株式は“堅調推移”となるなど、“リスク選好→円売り”も目立ちました。
この後者がより意識される格好となり、円は「噂で買って、事実で売る」の格言通りよろしく、ドル円は“141.175円”へと上値を伸ばし、そのまま先週末の取引を終えています。

◆ ある意味“お見事”…! - 意識させず、しかし道筋は作った…


前記した日銀の変更は「変動幅上下0.5%程度をメド」としつつも、「10年国債利回り1%の指値オペを毎営業日実施」という、かなり“ちぐはぐ”な印象は否めないところがあります。
しかし植田日銀総裁が『YCC柔軟化は金融政策正常化に向けた動きではない』と説明したこともあり、「政策修正」の色合いはかなり薄れています。
それでいて「政策修正」への道筋を示した格好となるため、「日銀会合絡みの円高要因」は一旦消滅した格好ともいえます。
特に『日銀、YCC政策の柔軟運用を検討』と報じられた28日未明前水準へと押し戻された現状を踏まえれば、日銀の手綱さばきは“お見事”ともいえる状況ともいえそうです。

◆ テクニカル的には“もう一段”も期待される…?


本日は月末ということもあり、「実需絡みの要因」にも目を配らなければならないところです。
このため“神経質な揺れ動き”には十分に注意が必要ですが、本邦国債利回りの上昇度合いを見極めるには“少々時間がかかる”と見るのが妥当です。
そうなると金利格差から見た“円買い圧力”は抑制されやすく、ストップロスを絡めた動きであることを踏まえれば“もう一段の円売り”が進行する可能性も否めない…?

テクニカル的に見ると、先週末終値は“日足・一目均衡表先行スパン上限(本日は141.126円)”とほぼ合致し、先週末にかけて上値を押さえていた“20日移動平均線(同141.014円)”を下に従えています。
さらに先週半ばまで下値を支えていた“50日移動平均線(140.789円)”も近接していることを考えれば、「当該水準では下値が支えられやすい」と見るのが妥当な状況といえます。
一方で上方向のネックラインは“7/21高値(141.953円)”と見られますが、ここを突破するには「もう一段の後押しが必要」…?

本日は“当該レンジ内での揺れ動き”を想定しつつ、やや“下値の堅さ”が意識される展開を想定したいところです。

◆ ドル円 抵抗・支持ライン

※ボラティリティが拡大していますので、いつもより値幅を拡大しています。

144.195(7/7高値)
144.000(大台)
143.221(6/30~7/14の76.4%戻し、ピボット2ndレジスタンス)
142.997(7/10高値、+1σ、大台)
142.208(ピボット1stレジスタンス)
上値5:142.078(6/30~7/14の61.8%戻し)
上値4:141.953(7/21高値、大台)
上値3:141.814(7/24高値)
上値2:141.720(7/25高値)
上値1:141.318(7/27高値)
前営業日終値:141.170(日足・一目均衡表先行スパン上限/基準線、週足・一目均衡表転換線)
下値1:141.014(50日移動平均線、大台)
下値2:140.789(20日移動平均線)
下値3:140.683(7/28高値後の押し目)
下値4:140.442(7/28安値後の23.6%押し)
下値5:140.010(日足・一目均衡表転換線、7/28安値後の38.2%押し、大台)
139.621(7/28安値後の50%押し)
139.254(7/28安値後の61.8%押し)
139.100(ピボット1stサポート)
139.000(大台)
138.915(-1σ)
138.800(7/28安値後の76.4%押し)
138.161(20週移動平均線)
138.067(7/28安値、日足・一目均衡表先行スパン下限、月足・一目均衡表転換線、大台)

《11:15》

武市佳史
株式会社マネーパートナーズ チーフアナリスト
配信元: 達人の予想