*16:27JST RSテクノ Research Memo(7):需要は堅調で2023年12月期業績計画は保守的な印象
■今後の見通し
1. 2023年12月期の業績見通し
RS Technologies<3445>の2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比1.8%増の50,800百万円、営業利益で同0.6%増の13,100百万円、経常利益で同7.7%減の14,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同4.3%減の7,400百万円を計画している。半導体市場は調整局面に入っているものの、2023年に入ってからも同社の12インチ再生ウェーハや中国8インチプライムウェーハの需要は堅調に推移しているもようだ。ただ、米中貿易摩擦の影響やシリコンインゴット・消耗部材の回復時期が不透明なことから、売上計画は保守的に策定したものと見られる。費用面では燃料費や材料費等の値上げの影響があるものの増収効果で吸収し、営業利益も増益を確保する見通しだ。経常利益が減益計画となっているのは、前期に計上した為替差益1,189百万円がなくなることや補助金収入も減少することを想定しているためだ。なお、為替前提レートは130円/USD、19.9円/RMB、4.4円/NTDとしており、1円/USDの円安で約20百万円の増益要因となる。
半導体市場が調整局面に入っているにも関わらず、再生ウェーハの需要が堅調に推移しているのは、半導体の生産量と再生ウェーハの需要が必ずしも連動しないためだ。例えば、半導体工場の稼働率を100%から70%に落とした場合、プライムウェーハの投入量は30%減少するが、モニタウェーハの投入量は5%程度の減少にとどまる。半導体メーカーは稼働率低下時に、歩留まり向上を目的とした様々な検査を行っており、そのためのモニタウェーハが一定量必要となるためだ。実際、過去20年間で半導体市場の調整局面は何度か訪れたが、再生ウェーハの需要が明確に落ち込んだのは2008年秋から2009年にかけてのリーマン・ショックの時だけである。当時、半導体業界が不況に陥り、大手メーカーが生産工場を相次いで閉鎖したことが再生ウェーハの需要減少につながった。つまり、半導体工場が相次いで閉鎖するような状況まで半導体市場が悪化しない限りは、再生ウェーハの需要は堅調に推移すると見ることができる。また、再生ウェーハ業界が日系3社、台湾系3社で市場の約9割を握る寡占市場になっており、販売価格の値崩れが起きにくい市場環境であることや、同社が品質・コスト面で優位性を維持し続けていることも不況抵抗力が強い要因になっていると考えられる。
弊社では今回の半導体市場の調整は2023年前半までに完了し、後半以降は生産量も回復局面に転じると見ている。同社は顧客需要に対応すべく、12インチ再生ウェーハの月産能力を国内、台湾合わせて前期末の50万枚から54万枚に増強する計画となっており、また販売価格も前期並みの水準で安定して推移しそうなことから、2023年12月期のウェーハ再生事業の売上高は1ケタ台の増収率が予想される。
一方、プライムウェーハ事業についてはコロナ禍の収束によって、8インチプライムウェーハの製品認定が現状の70%台から100%近くまで上昇し、プロダクトミックスの改善が見込まれている。中国における半導体生産も足元は調整局面に入っているものの、落ち込みの大半は12インチウェーハが使用されるメモリやロジック半導体等で、8インチが主に用いられているアナログやパワー半導体については比較的底堅く推移しているもようだ。また8インチプライムウェーハの中国市場におけるGRITEKのシェアは1割程度と小さく、現在はシェア拡大フェーズにあることから販売状況は順調に推移しているもようだ。山東GRITEKでは月産能力を前期末の13万枚から2024年には18万枚まで増強する計画となっており、製造装置の調達が順調に進むようであれば2023年内にも15万枚程度まで増強できる可能性がある。このため、プライムウェーハの売上高についても前期比で増収基調が続く可能性が高い。一方、前述したシリコンインゴット・消耗部材についてはまだ調整局面が続いており、今後顧客とのコミュニケーションを密にしながら需要動向を探ることにしている。
そのほか、半導体関連装置・部材等のうち注力分野の半導体製造装置用消耗部材については、栗原工場の稼働による生産能力増強効果もあって増収を見込んでいる。課題は、神栖工場における生産性の改善となる。新工場では自動加工設備を導入した一貫生産ラインを構築したことで生産性が向上しているが、神栖工場では生産設備が老朽化していることもあり歩留まりが低く、今後生産管理を強化していくことで改善する方針だ。また、原材料コストの上昇に対しては、値上げ交渉だけでなく高単価製品の拡販活動に注力することで吸収することにしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
1. 2023年12月期の業績見通し
RS Technologies<3445>の2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比1.8%増の50,800百万円、営業利益で同0.6%増の13,100百万円、経常利益で同7.7%減の14,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同4.3%減の7,400百万円を計画している。半導体市場は調整局面に入っているものの、2023年に入ってからも同社の12インチ再生ウェーハや中国8インチプライムウェーハの需要は堅調に推移しているもようだ。ただ、米中貿易摩擦の影響やシリコンインゴット・消耗部材の回復時期が不透明なことから、売上計画は保守的に策定したものと見られる。費用面では燃料費や材料費等の値上げの影響があるものの増収効果で吸収し、営業利益も増益を確保する見通しだ。経常利益が減益計画となっているのは、前期に計上した為替差益1,189百万円がなくなることや補助金収入も減少することを想定しているためだ。なお、為替前提レートは130円/USD、19.9円/RMB、4.4円/NTDとしており、1円/USDの円安で約20百万円の増益要因となる。
半導体市場が調整局面に入っているにも関わらず、再生ウェーハの需要が堅調に推移しているのは、半導体の生産量と再生ウェーハの需要が必ずしも連動しないためだ。例えば、半導体工場の稼働率を100%から70%に落とした場合、プライムウェーハの投入量は30%減少するが、モニタウェーハの投入量は5%程度の減少にとどまる。半導体メーカーは稼働率低下時に、歩留まり向上を目的とした様々な検査を行っており、そのためのモニタウェーハが一定量必要となるためだ。実際、過去20年間で半導体市場の調整局面は何度か訪れたが、再生ウェーハの需要が明確に落ち込んだのは2008年秋から2009年にかけてのリーマン・ショックの時だけである。当時、半導体業界が不況に陥り、大手メーカーが生産工場を相次いで閉鎖したことが再生ウェーハの需要減少につながった。つまり、半導体工場が相次いで閉鎖するような状況まで半導体市場が悪化しない限りは、再生ウェーハの需要は堅調に推移すると見ることができる。また、再生ウェーハ業界が日系3社、台湾系3社で市場の約9割を握る寡占市場になっており、販売価格の値崩れが起きにくい市場環境であることや、同社が品質・コスト面で優位性を維持し続けていることも不況抵抗力が強い要因になっていると考えられる。
弊社では今回の半導体市場の調整は2023年前半までに完了し、後半以降は生産量も回復局面に転じると見ている。同社は顧客需要に対応すべく、12インチ再生ウェーハの月産能力を国内、台湾合わせて前期末の50万枚から54万枚に増強する計画となっており、また販売価格も前期並みの水準で安定して推移しそうなことから、2023年12月期のウェーハ再生事業の売上高は1ケタ台の増収率が予想される。
一方、プライムウェーハ事業についてはコロナ禍の収束によって、8インチプライムウェーハの製品認定が現状の70%台から100%近くまで上昇し、プロダクトミックスの改善が見込まれている。中国における半導体生産も足元は調整局面に入っているものの、落ち込みの大半は12インチウェーハが使用されるメモリやロジック半導体等で、8インチが主に用いられているアナログやパワー半導体については比較的底堅く推移しているもようだ。また8インチプライムウェーハの中国市場におけるGRITEKのシェアは1割程度と小さく、現在はシェア拡大フェーズにあることから販売状況は順調に推移しているもようだ。山東GRITEKでは月産能力を前期末の13万枚から2024年には18万枚まで増強する計画となっており、製造装置の調達が順調に進むようであれば2023年内にも15万枚程度まで増強できる可能性がある。このため、プライムウェーハの売上高についても前期比で増収基調が続く可能性が高い。一方、前述したシリコンインゴット・消耗部材についてはまだ調整局面が続いており、今後顧客とのコミュニケーションを密にしながら需要動向を探ることにしている。
そのほか、半導体関連装置・部材等のうち注力分野の半導体製造装置用消耗部材については、栗原工場の稼働による生産能力増強効果もあって増収を見込んでいる。課題は、神栖工場における生産性の改善となる。新工場では自動加工設備を導入した一貫生産ラインを構築したことで生産性が向上しているが、神栖工場では生産設備が老朽化していることもあり歩留まりが低く、今後生産管理を強化していくことで改善する方針だ。また、原材料コストの上昇に対しては、値上げ交渉だけでなく高単価製品の拡販活動に注力することで吸収することにしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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