カネミツ、自動車の全世界的なEV化に呼応し、新会社でモーターコア事業に参入
目次
金光俊明氏:みなさま、こんにちは。株式会社カネミツ代表取締役社長の金光でございます。本日はお忙しい中、当社のIR説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。本日の説明会を通して当社への理解を深めていただき、投資先としての魅力を少しでも感じていただければと考えています。よろしくお願いいたします。
本日の内容は、スライドに記載のとおりです。
会社概要
当社の会社概要について、簡単にご説明します。当社は、2023年1月に創業76周年を迎えました。兵庫県明石市に本社を置いており、2022年3月期の連結売上高は87億円です。連結従業員数は622名で、グループ会社は国内に3社、海外に3社あります。2022年3月期の年間配当金は27円、2023年3月期の年間配当金予想は28円としています。
数字で見るカネミツ(単体)
参考として、当社単体の数字についていくつかご紹介します。2021年3月時点で、平均有給取得率は64.2パーセント、平均勤続年数は13.1年、社員平均年齢は40.5歳、女性の産休・育休取得率は100パーセント、外国人雇用率は14.8パーセント、雇用割合は新卒採用が61パーセント、中途採用が39パーセントです。
沿革
当社の歩みを大まかに記した沿革です。当社は1947年の創業後、回転成形法やプレス増肉技術といった独自技術を活かし、事業拡大を進めてきました。1999年にタイへ進出したのを皮切りに、中国やインドネシアに海外展開を図っています。
また、技術開発を強化するため、タイにKANEMITSU THAILAND TECHNICAL CENTER、兵庫県にテクニカルセンター、長崎県にリサーチセンターを開設しています。
このような開発拠点の拡大に加え、国内では松本精工株式会社や株式会社津村製作所を子会社化し、2022年10月には株式会社キーネクストを設立しました。
製品紹介①
当社の製品についてご紹介します。当社は、車のエンジンに必要な「プーリ」という部品で、国内で約40パーセントのトップシェアを誇っています。エンジン部品においては、プーリのほか、センサープレートやスプロケットなどの機能部品も作っています。
製品紹介②
EPS部品と呼ばれる電動パワーステアリング部品や、トランスミッション部品なども作っています。
製品紹介③
一般のご家庭でも目にする機会がある製品については、炊飯器の水容器があります。自動車以外の製品のシェア拡大も目指したいと考えています。
Only-One技術
当社の技術をご紹介します。鋼板立体造形技術は、当社のOnly-One技術です。溝部分を作る回転成形法、のこぎりの歯のような部分を作る精密せん断工法、製品に厚みを出すプレス増肉工法の3種の技術を総称して、鋼板立体造形技術と呼んでいます。
回転成形法
回転成形法は、スライド右側のローラー金型をスライド左側の材料に回転させながら当て、形状を成形していきます。熱は加えず、切粉が出ない製法となっています。
Only-One技術ープレス増肉工法ー
プレス増肉工法は、元素材の約2倍まで厚みを出すことができる製法です。この形は、他社では複数の部材を接合して作りますが、当社では1つの素材から製品を作ります。
Only-One技術ー精密せん断工法ー
精密せん断工法は、主にのこぎりの歯のような形に使用されている工法です。他社では、ファインブランキングという専用の設備を使いますが、当社では汎用のプレス機で作ることができ、せん断面は9割を確保できます。また、 ほかの工法と組み合わせて多様な形の製品を作ることができるのが特徴です。
これらの技術を実現する金型はもちろん、生産設備も主要なものは自社で設計します。工法・金型・設備はすべてオリジナルです。
Only-One技術
これらの3つの技術により、当社の製品は「強く」「軽く」「美しく」を実現しています。「強く」では、増肉により製品の強度につながり、品質・安全性が高まります。「軽く」では、減肉により製品の軽量化につながり、燃費向上などに貢献します。「美しく」では、表面粗さの向上により、艶やかな表面光沢を実現します。
Only-One技術
当社では、バーチャルシミュレーションシステムを使用し、試作開発を行っています。「Kanemitsu」「Analyze」「Virtual」「Simulation」の頭文字から「KAVS(カブス)」と名づけました。
これは、長崎大学の力も借りて開発したバーチャル試作の解析技術です。試作段階では「KAVS」を使用し、バーチャル試作を行うことで生産の可否を検討することができます。実際に金型を作り、微調整して試作していた従来の作業をパソコン上で行うため、開発期間と開発費用の大幅な削減を実現しています。
国内拠点
拠点についてご説明します。当社は兵庫県明石市に本社事務管理部門があり、そのほかにも兵庫県内に2工場と開発のためのテクニカルセンターがあります。長崎県にも工場と開発のためのリサーチセンターがあります。リサーチセンターとテクニカルセンターでは、バーチャルシミュレーションシステム「KAVS」を使用し、商品開発を行っています。
グループ会社(海外)
海外のグループ会社です。タイにKANEMITSU PULLEY CO.,LTD、中国に佛山金光汽車零部件有限公司、インドネシアにPT. KANEMITSU SGS INDONESIAがあります。
タイには、現主力製品であるプーリの開発機関、KANEMITSU THAILAND TECHNICAL CENTER を置いています。タイのテクニカルセンターは2007年に開設しており、従前は日本で行っていたプーリの設計および開発を、タイでタイ人がすべて行っています。
グループ会社(国内)
国内にもグループ会社があります。大阪府に紙管口金や道路安全資材関連部品などを製造する株式会社津村製作所、兵庫県に機械器具類の部品加工を行う松本精工株式会社と新会社の株式会社キーネクストがあります。
株式会社津村製作所と松本精工株式会社は100パーセント子会社化しており、株式会社キーネクストは有限会社米澤工作所と株式会社カネミツの合弁会社です。
ガバナンス
役員情報はスライドをご覧のとおりです。取締役のうち3名は社外取締役、1名は女性の社内取締役です。監査役のうち1名は、女性の社外監査役です。
ガバナンスは、スライドに記載のとおりの体制となっています。特徴的なのは開発企画会議で、当社の先行的な開発案件の討議を行っています。また、経営戦略会議では、全執行役員の執行状況の確認やタイムリーなテーマ、中長期の経営戦略などを討議しています。
新たな挑戦ー新会社情報ー
新たな挑戦についてご説明します。当社は、2022年10月に新会社を設立しました。EV市場が拡大する中、成長が見込まれるモーターコア関連部品事業に参入します。自動車の急激かつ全世界的なEV化加速で、自動車部品業界の事業環境は激変しました。今の事業路線の先には道はなく、崖っぷちになっています。
電池事業ができない事業者は、多くの会社がモーター事業に着手しています。しかし、モーター金型の設計製作や電磁鋼板の調達など、簡単ではありません。
新たな挑戦ー新会社情報ー
そのような中、モーターコア事業者である米澤工作所社長と私の長年の信頼関係から、新会社株式会社キーネクスト設立に至りました。
ここまでの経緯をご説明すると、2021年3月に当社は先行開発室を設立し、モーターコア金型の開発に着手しました。同年8月に新会社設立の構想を立て、2022年2月に新会社設立構想を公表し、10月に新会社を設立しました。2023年1月には工場が竣工し、3月に生産設備を設置、夏には生産を開始する予定です。
新会社概要
株式会社キーネクストの資本金は6,000万円、出資比率は米澤工作所50パーセント、カネミツ50パーセントです。
工場は、兵庫県加西市にある当社の加西工場敷地内にあります。代表取締役社長は現米澤工作所の社長の米澤重宏で、取締役は4名選任しています。事業内容はモーターコア関連部品の製造・販売で、従業員数は2023年3月時点で5名となっています。
モーターコアとは
モーターコア部品とは、モーターに使用する鉄芯部品です。型に打ち抜いた板を複数枚重ね合わせ、製造しています。株式会社キーネクストでは、まず、モーターコアの製造を行います。エンジン自動車はガソリンで車を動かしていますが、電気自動車は電気モーターを動かすことで車を動かしています。
モーターコアとは、電気自動車に使用される重要な部分であり、日本においてもxEVの普及に向けた本格的な取組みが始まるため、株式会社キーネクストでの事業参入拡大を進めていきます。また、自動車業界以外のモーター市場への参入も進めていきたいと考えています。
株式会社キーネクスト 目指す姿
キーネクストでは、2023年夏の生産開始後、2030年までに海外での生産や自動車以外のモーターコア製品の生産を目指します。会社の運営について、当社として積極的に関与していきます。管理業務については、株式会社カネミツ本社で対応します。
また、カネミツの社員が中心になって生産していきます。営業活動は、国内外カネミツグループが主に動きます。金型においては、調達だけでなく、カネミツ商品開発部でも開発を進めています。
第9次中期経営計画の骨子 (2023年4月~2026年3月)
昨日3月8日にプレスリリースした、第9次中期経営計画の骨子および今後の成長戦略についてご説明します。第9次中期経営計画の期間は、2023年4月から2026年3月までの3ヶ年です。
第8次中期経営計画では、世界的規模で激変する社会、および経済環境の中での事業運営となりました。このような外部環境を踏まえ、また、持続的成長を遂げるため、2023年4月からの3ヶ年を「事業構造転換期」と位置付け、第9次中期経営計画を策定しました。
中期経営計画の骨子を、スライドに記載の4項目に分けてご説明します。
第9次中期経営計画の骨子
1つ目の「カーボンニュートラルへの取組み」についてです。当社は、Scope1・Scope2において、取組みを進めています。ものづくりの会社ですので、真っ先に生産効率向上に取り組みます。
2026年3月期には、CO2排出量原単位を2014年3月期に対して35パーセントの削減を目指します。また、新設した株式会社キーネクストが入る加西第5工場では、太陽光発電の設置・導入を行います。
さらに、Scope3の取組みでは、ネットシェイプ技術という一体化できる製法での軽量化や、自動車向けxEV部品の拡販による削減貢献量拡大などを図っていきます。
第9次中期経営計画の骨子
2つ目の「社会的課題への取組み」についてです。当社では、ダイバーシティ経営を推進しています。多様な社員の能力を最大限に引き出せるよう、働き方の制度改革・拡充を進めています。
また、IT技能者の育成や多様な人材の活躍推進、快適な職場環境作りも進めていきます。そして、サイバーセキュリティへの取組み、また、地域との共生活動も同時に進めていきます。
第9次中期経営計画の骨子
3つ目の「事業戦略」についてです。事業戦略は大きく4点あり、1点目の「プーリ事業での収益向上」については、これまでプーリ事業は、2019年の明石工場の閉鎖後、異なる工程を各工場で生産していましたが、2022年以降は三木工場をプーリ専用工場として移管を進めています。
三木工場はプーリ、加西工場はトランスミッションやxEV関連商品を集約し、生産効率向上、品質向上、売上拡大を進めていきます。長崎工場は、自動車以外の製品や、九州地域向け商品などの戦略工場として売上を拡大していきます。さらなる事業効率の向上を目指します。
第8次中期経営計画では、「海外拠点でのプーリ拡大」をテーマに掲げており、アジア市場での定着につながりました。第9次では、国内外でのプーリ残存者利益を追求していきます。
事業戦略2点目の「プーリ外商品の事業拡大」については、ASEANにおいては、トランスミッションおよびxEV関連部品の受注を進めます。また、中国においても、xEV関連部品の受注を進めます。
モーターコア事業の国内外での拡販では、日本では、生産体制の整備、新規顧客への拡販、金型技術の玉成、ASEANでは、KANEMITSU PULLEY CO.,LTDを軸とした事業展開、中国では、佛山金光汽車零部件有限公司を軸とした事業展開を進めていきます。
第9次中期経営計画の骨子
事業戦略3点目の「自動車以外の事業拡大」については、ロボット部品・農機部品・建機部品の売上拡大に加え、BtoC事業へもチャレンジしていきます。
事業戦略4点目の「開発型企業への発展」については、当社独自のバーチャルシミュレーションシステム「KAVS」をさらに極めます。最大限に活用した商品開発を進め、生産効率向上を図り、シミュレーション技術を深掘りしていきます。
第9次中期経営計画の骨子
4つ目の「定量目標」についてです。2026年3月期、連結売上高115億円、連結営業利益5億円、ROE4.4パーセントを目標としています。
連結業績推移ー売上高ー
連結業績推移です。2019年度の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2019年度、2020年度と売上が減少していましたが、2021年度より徐々に回復してきました。
2025年度は、次期商品としていたxEV部品の売上拡大や、キーネクストの生産開始など、連結売上高115億円を目標に掲げ取り組んでいきます。
製品別売上高比率の推移
製品別売上高比率の推移です。主力商品であるプーリをはじめ、トランスミッション部品などが大きな割合を占めています。プーリは2015年度には72パーセントを占めていましたが、徐々に依存度を下げています。
その代わりに、自動車のEV製品の比率が上がっています。今後の自動車業界に必要なトランスミッション部品、およびxEV・EPS部品を継続して伸ばしていきたいと考えています。
自動車生産台数の当社予測と成長戦略
スライド左側の図は、自動車生産台数の当社予測です。急速な電動化の進行によって、プーリの販売数量の減少が予測されます。
このような環境下、当社は、今後需要が見込まれる電動部品であるxEV部品や、モーターコア部品の開発拡販を進めていくとともに、自動車以外の商品開発拡販にも経営資源を投入していきます。
株主還元(配当)
2023年3月期の配当は28円の予想としています。第9次中期経営計画では、安定した配当を実施する方針です。
株主還元(株主優待)
当社では株主優待を以前から継続しています。所有株式数・保有期間に応じた制度で、継続保有期間1年未満の株主さまには500円分、1年以上の株主さまには1,000円分のクオカードを贈呈しています。この制度も第9次中期経営計画で継続します。
SUSTAINABILITY POLICY
当社のサステナビリティについてご説明します。当社は最重要方針として、サステナビリティ方針を掲げています。カーボンニュートラルへの取組みの推進と、社会的課題の解決の2つを軸としています。これらは、第9次中期経営計画にも取り入れています。
カーボンニュートラルの取組みでは、独創技術による商品の軽量化、xEV部品・ロボット部品の開発、省エネルギーでの生産、「KAVS」の活用、再生可能エネルギーの活用を行っていきます。
社会的課題の解決としては、働きやすい職場環境づくり、ダイバーシティの推進、情報セキュリティの対策推進を挙げています。
当社製品のサステナビリティ
当社製品のサステナビリティをご紹介します。前述した、独自の回転成形法やプレス増肉工法を使用すると、ボルト締めや溶接が不要となり、また増減肉による製品形状の無駄削減が実現します。歩留まりが向上し、軽量化を実現することでサステナビリティ活動につなげていきます。
ダイバーシティ
当社はダイバーシティ経営を推進しており、年齢・性別・国籍を問わない採用や評価を行っています。また企業内転勤や実習生受け入れを行い、広い視野で働きやすい職場環境の実現を目指しています。
加えて、女性活躍も積極的に進めています。2021年には、女性取締役を1名選任したほか、管理職比率や女性比率においても、向上に努めています。
ダイバーシティ
また、ワークライフバランスへの取組みとして、テレワークの導入や時間有給制度、フリースペースの導入や、制服自由化導入に向けた取組みなど、働きやすさの向上を日々目指しています。
人材育成においては、記載している研修や制度を活用し、若手育成の強化、技術開発の推進や、グローバル活躍の強化を進めていきます。
タイ人技術者の海外活躍
タイ人技術者の海外での活躍についてです。当社はタイ・中国・インドネシアなどアジアに海外拠点を有しており、各国に優秀な技術者がいます。海外拠点設立当時は、日本人技術者が海外子会社に駐在して技術指導を行っていましたが、2010年よりタイの技術者育成に力を入れ始めました。
日本で2年間の研修を受けた技術者が延べ20名にのぼります。その彼らが海外拠点の技術のトップとして現在、技術指導を行っています。また、日本において役職付きで勤務しているタイ人技術者も存在します。
女性活躍
海外での女性活躍についてです。自動車業界では、海外駐在員のほとんどが男性ですが、当社では女性社員も駐在員として活躍しています。また、カネミツの女性取締役はタイ子会社の社長も務めており、タイで育児をしながら駐在しています。このように当社では、国籍、年齢、性別関係なく活躍しています。
サステナビリティについてのご説明は以上です。カーボンニュートラルの取組みを推進し、社会的課題の解決を進めていきます。
本日はご清聴いただき、誠にありがとうございました。
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