■業績動向
3. 中期経営計画
早稲田アカデミー<4718>は2021年1月に4ヶ年の中期経営計画を発表し、「子どもたちの未来を育む 独自の価値を提供し続け 教育企業No.1を目指す」ことを企業目標とし、合格実績戦略を基本戦略として推進していく計画だ。合格実績戦略とは、「本気でやる子を育てる」という同社の教育理念を徹底実践することを起点に、生徒の本気を引き出す授業によって成績向上と志望校への合格を実現し、その結果、顧客満足度を高めて地域での評判を獲得し、塾生数の増加によって収益を拡大していくというもので、これまで同社が継続して取り組んできた戦略となる。
業績目標については、小学生を中心に塾生数が想定を上回るペースで拡大したことを受け、2022年5月に2回目の上方修正を発表しており、最終年度となる2024年3月期は売上高で331.7億円、経常利益で25.5億円を目標に掲げた。2023年3月期業績見込みに対する成長率は売上高で7.0%増、経常利益で17.0%増となり、2023年3月期とほぼ同様のペースで収益成長を見込んでいる。既述の通り非受験学年の塾生数が順調に伸びていることから、2024年3月期も10%近い塾生数の伸びを継続していくことは可能と見られ、校舎当たり生徒数の増加により利益率の上昇傾向も続く見通しだ。現時点での進捗状況は順調で、業績目標は射程圏内にあると弊社では見ている。
同社では、既存コア事業の強化と新領域の創出をテーマに掲げ、取り組みを推進している。コア事業の強化については、授業サービス品質の向上を最重要テーマに掲げ、おおむね順調に進んでいると考えられる。2022年3月期からは新たに人材育成強化に向けて、組織横断の研修体系化プロジェクトを始動した。研修内容の再構築、マニュアルや映像等の研修ツールの充実を図り、対面とオンラインを組み合わせた効果的な指導体制の構築により、さらなる授業品質の向上を目指す。
一方、新領域については、オンライン校の設立や「早稲田アカデミーOnline」による新規サービスの開発・提供、個別指導部門の拡充展開が順調に進んでいる。コロナ禍で停滞していた英語ブランド校舎や海外直営校の展開についても、今後の市場環境を見ながら進めていくことになる。
(1) DX戦略について
コロナ禍で運用を開始したポータルサイト「早稲田アカデミーOnline」は、塾での学習や模擬試験の結果の参照、オンライン学習システムの利用など様々な場面で使用するサイトへのシングルサインオン機能や情報連絡機能、スケジュールカレンダー機能などを実装するなど、利便性の高いサービスとして塾生や保護者から高い評価を受けている。
現在、新たに成績管理システムの開発を進めており、2023年春頃の実装を予定している。塾生の模擬試験の成績を志望校や卒塾生のデータと連携することで、様々な視点で比較可能にした機能で、従来よりも適切な進路指導を行えるようになり、合格実績と顧客満足度の向上につながる効果が期待される。そのほかにも在宅時における学習支援機能など6~7件のプロジェクトが進行中だ。将来的にこれら機能を私立学校や他塾にも提供していく可能性がある。同社では、ICTの活用度合が顧客満足度の向上や学習効率の向上などの面で競争上の差別化要因になるとの考えから、今後もサービスの開発や機能の拡充に注力していく。
(2) 個別進学館の展開について
個別進学館については、難関校合格に向けた個別指導塾としてのNo.1ブランドの確立を目指すべく、今後は積極的に展開していく方針で、2024年3月期以降は年間6校舎以上と出校ペースを加速し、現在の60校(FC校含む)から早期に100校体制の確立を目指していく。
難関校志望の塾生は、苦手科目について個別指導塾を併用して利用するケースも多い。早稲田アカデミー(小学・中学部、大学受験部)の校舎数128校に対して個別進学館は60校しかなく、今までは他の個別指導塾にこうした生徒が一定数流れていた可能性がある。今後、早稲田アカデミーの近隣または同一ビル内に個別進学館を開校していくことで、他塾に流出していた塾生を囲い込み、顧客LTVの最大化を目指す戦略だ。個別進学館については現状では、1校舎当たりの平均塾生数が競合塾と比較して規模は小さいものの、今後連携をさらに強化していくことで塾生数の一段の増加と収益力向上が見込まれる。なお、早稲田アカデミーの塾生のうち、個別進学館も併用している塾生の比率は2022年6月時点の3%弱から9月時点では約5%に上昇している。
(3) 海外展開と帰国生の受け入れ
海外直営校(ロンドン、ニューヨーク)の状況は順調で、特にロンドン校については塾生数が前年同期比20%増と好調に推移している。また、海外提携塾とも連携し、3年ぶりに会場開催による受験講演会なども実施した。通塾できない生徒向けに2021年に開校したオンライン校(小6、中3の受験学年対象)についても堅調に推移している。さらには、帰国生受入専門校舎を2024年3月期に1校開校すべく準備を進めるなど、様々な顧客ニーズに対応すべく体制の整備に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 中期経営計画
早稲田アカデミー<4718>は2021年1月に4ヶ年の中期経営計画を発表し、「子どもたちの未来を育む 独自の価値を提供し続け 教育企業No.1を目指す」ことを企業目標とし、合格実績戦略を基本戦略として推進していく計画だ。合格実績戦略とは、「本気でやる子を育てる」という同社の教育理念を徹底実践することを起点に、生徒の本気を引き出す授業によって成績向上と志望校への合格を実現し、その結果、顧客満足度を高めて地域での評判を獲得し、塾生数の増加によって収益を拡大していくというもので、これまで同社が継続して取り組んできた戦略となる。
業績目標については、小学生を中心に塾生数が想定を上回るペースで拡大したことを受け、2022年5月に2回目の上方修正を発表しており、最終年度となる2024年3月期は売上高で331.7億円、経常利益で25.5億円を目標に掲げた。2023年3月期業績見込みに対する成長率は売上高で7.0%増、経常利益で17.0%増となり、2023年3月期とほぼ同様のペースで収益成長を見込んでいる。既述の通り非受験学年の塾生数が順調に伸びていることから、2024年3月期も10%近い塾生数の伸びを継続していくことは可能と見られ、校舎当たり生徒数の増加により利益率の上昇傾向も続く見通しだ。現時点での進捗状況は順調で、業績目標は射程圏内にあると弊社では見ている。
同社では、既存コア事業の強化と新領域の創出をテーマに掲げ、取り組みを推進している。コア事業の強化については、授業サービス品質の向上を最重要テーマに掲げ、おおむね順調に進んでいると考えられる。2022年3月期からは新たに人材育成強化に向けて、組織横断の研修体系化プロジェクトを始動した。研修内容の再構築、マニュアルや映像等の研修ツールの充実を図り、対面とオンラインを組み合わせた効果的な指導体制の構築により、さらなる授業品質の向上を目指す。
一方、新領域については、オンライン校の設立や「早稲田アカデミーOnline」による新規サービスの開発・提供、個別指導部門の拡充展開が順調に進んでいる。コロナ禍で停滞していた英語ブランド校舎や海外直営校の展開についても、今後の市場環境を見ながら進めていくことになる。
(1) DX戦略について
コロナ禍で運用を開始したポータルサイト「早稲田アカデミーOnline」は、塾での学習や模擬試験の結果の参照、オンライン学習システムの利用など様々な場面で使用するサイトへのシングルサインオン機能や情報連絡機能、スケジュールカレンダー機能などを実装するなど、利便性の高いサービスとして塾生や保護者から高い評価を受けている。
現在、新たに成績管理システムの開発を進めており、2023年春頃の実装を予定している。塾生の模擬試験の成績を志望校や卒塾生のデータと連携することで、様々な視点で比較可能にした機能で、従来よりも適切な進路指導を行えるようになり、合格実績と顧客満足度の向上につながる効果が期待される。そのほかにも在宅時における学習支援機能など6~7件のプロジェクトが進行中だ。将来的にこれら機能を私立学校や他塾にも提供していく可能性がある。同社では、ICTの活用度合が顧客満足度の向上や学習効率の向上などの面で競争上の差別化要因になるとの考えから、今後もサービスの開発や機能の拡充に注力していく。
(2) 個別進学館の展開について
個別進学館については、難関校合格に向けた個別指導塾としてのNo.1ブランドの確立を目指すべく、今後は積極的に展開していく方針で、2024年3月期以降は年間6校舎以上と出校ペースを加速し、現在の60校(FC校含む)から早期に100校体制の確立を目指していく。
難関校志望の塾生は、苦手科目について個別指導塾を併用して利用するケースも多い。早稲田アカデミー(小学・中学部、大学受験部)の校舎数128校に対して個別進学館は60校しかなく、今までは他の個別指導塾にこうした生徒が一定数流れていた可能性がある。今後、早稲田アカデミーの近隣または同一ビル内に個別進学館を開校していくことで、他塾に流出していた塾生を囲い込み、顧客LTVの最大化を目指す戦略だ。個別進学館については現状では、1校舎当たりの平均塾生数が競合塾と比較して規模は小さいものの、今後連携をさらに強化していくことで塾生数の一段の増加と収益力向上が見込まれる。なお、早稲田アカデミーの塾生のうち、個別進学館も併用している塾生の比率は2022年6月時点の3%弱から9月時点では約5%に上昇している。
(3) 海外展開と帰国生の受け入れ
海外直営校(ロンドン、ニューヨーク)の状況は順調で、特にロンドン校については塾生数が前年同期比20%増と好調に推移している。また、海外提携塾とも連携し、3年ぶりに会場開催による受験講演会なども実施した。通塾できない生徒向けに2021年に開校したオンライン校(小6、中3の受験学年対象)についても堅調に推移している。さらには、帰国生受入専門校舎を2024年3月期に1校開校すべく準備を進めるなど、様々な顧客ニーズに対応すべく体制の整備に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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