■要約
富士紡ホールディングス<3104>は1896年に設立(創業126年)し、研磨材事業と化学工業品事業を主力事業、生活衣料(B.V.D.など)事業を準主力事業として事業展開している。日本の繊維産業とともに栄えてきたが、現在では祖業の繊維・紡績業は現在、事業全体の2割以下となっており、大きく業態転換が行われ、この3つが中核3大事業である。売上構成では研磨材4割、化学工業品3割、生活衣料2の割合。その他事業の中の化成品(樹脂金型)の“第4の柱”事業への育成を図っている。
1. 2023年3月期第2四半期の業績概要
2023年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比1,999百万円(11.4%)増の19,609百万円、営業利益は同197百万円(6.3%)増益の3,343百万円、経常利益は同175百万円(5.4%)増の3,406百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は52百万円(同2.3%)増の2,307百万円となった。また期初計画比では、売上高で7.4%超、営業利益で7.8%超、経常利益で6.4%超、親会社株主に帰属する四半期純利益で2.5%超と、計画を上回り、増収増益となった。
中期経営計画「増強21-25」において、計画期間5年間の前半3年を「高収益体質への転換と種まき」ステージと位置付け、各事業の成長基盤の増強に取り組んでいる。中期経営計画2年目となる当期は、研磨材事業では、研究開発力の加速、生産能力の増強を推進した。化学工業品事業では、山口県の柳井工場及び福井県の武生工場がフル稼働を続けており、原材料高騰の影響が大きい生活衣料事業では、コスト最適化とコストアップに対応した価格改善を進めている。
2. 2023年3月期通期の業績見通し
2023年3月期通期の業績予想については、売上高は37,200百万円(前期比1,284百万円増)、営業利益は6,200百万円(同322百万円増)、経常利益は6,400百万円(同354百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,500百万円(同45百万円増)としている。
同社では、2023年3月期第2四半期の連結業績は、研磨材事業が旺盛な半導体需要に支えられ堅調に推移したことなどから、売上高・利益ともに期初の予想を上回る結果となった。しかしながら、第3四半期以降の業績については、原材料高騰などによるコストアップに加えて、半導体市場が生産調整の局面に入りつつあることから不透明感が増している。このような状況を踏まえ、2022年5月13日に公表した通期連結業績予想の売上高を36,500百万円から37,200百万円に上方修正しているが、営業利益については当初計画通りとしている。また、同社は中長期的観点から、積極的な設備投資を行いEBITDAを向上させるとしている。
3. 事業構造改革
同社では経営危機が続くなか、2006年に現相談役の中野光雄(なかのみつお)氏が社長に就任すると、事業構造改革を断行。繊維事業の構造改革と非繊維分野での成長事業(研磨材、化学工業品)の育成を同時に行い、短期間での事業の入れ替えに成功、結果的に持続的成長・高収益体質の事業ポートフォリオに再構築した。中野氏は現中期経営計画「増強21-25」の原点とも言える中期経営計画「変身06-10」を打ち出し、その後「突破11-13」「邁進14-16」「加速17-20」「増強21-25」と綿々と受け継がれてきた。同社が、今日の高収益企業へ変身できたのは、中野氏の16年間に亘る実行力と先見性の経営があったからであろう。
2022年6月29日付で経営トップ(社長)が交代となった。中野氏から58歳の井上雅偉(いのうえまさひで)氏へバトンタッチされ、経営体制の若返りを図った。井上新社長は、構造改革に加えて現中期経営計画「増強21-25」の策定と推進や設備投資の意思決定などを中野前社長と二人三脚で進めてきたので、経営の舵取りもスムーズに引き継がれている。
4. 中期経営計画
中期経営計画「増強21-25」は2021年4月にスタートして1年半を経過しているが、財務目標はおおむね計画通り達成している。今後の課題は、中期経営計画の後半(2024-2025年)には、2025年のあるべき姿の実現に向け“非連続的成長”を遂げる必要がある。前半の残り1年半(2022年下期-2023年)の間にしっかりとした準備をしていく。最大のキーポイントは研磨材や化学工業品の中核事業のさらなる拡大のための「設備投資」の適時適正な実行である。2022年度の設備投資46億円は着々と進めているようで、来年以降も同様に準備を整える必要がある。「増強21-25」の高収益体質への転換の実現のキーは「適時適正な設備投資の実行」もしくは自社生産力を補完できる外部資源の調達・連携(アライアンスやM&A)の成否にかかっている。
■Key Points
・事業構造改革の断行
・2023年3月期第2四半期は大幅増収増益。通期も増収増益の見通し
・中期経営計画「増強21-25」では適時適正な設備投資の実行がキー
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<NS>
富士紡ホールディングス<3104>は1896年に設立(創業126年)し、研磨材事業と化学工業品事業を主力事業、生活衣料(B.V.D.など)事業を準主力事業として事業展開している。日本の繊維産業とともに栄えてきたが、現在では祖業の繊維・紡績業は現在、事業全体の2割以下となっており、大きく業態転換が行われ、この3つが中核3大事業である。売上構成では研磨材4割、化学工業品3割、生活衣料2の割合。その他事業の中の化成品(樹脂金型)の“第4の柱”事業への育成を図っている。
1. 2023年3月期第2四半期の業績概要
2023年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比1,999百万円(11.4%)増の19,609百万円、営業利益は同197百万円(6.3%)増益の3,343百万円、経常利益は同175百万円(5.4%)増の3,406百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は52百万円(同2.3%)増の2,307百万円となった。また期初計画比では、売上高で7.4%超、営業利益で7.8%超、経常利益で6.4%超、親会社株主に帰属する四半期純利益で2.5%超と、計画を上回り、増収増益となった。
中期経営計画「増強21-25」において、計画期間5年間の前半3年を「高収益体質への転換と種まき」ステージと位置付け、各事業の成長基盤の増強に取り組んでいる。中期経営計画2年目となる当期は、研磨材事業では、研究開発力の加速、生産能力の増強を推進した。化学工業品事業では、山口県の柳井工場及び福井県の武生工場がフル稼働を続けており、原材料高騰の影響が大きい生活衣料事業では、コスト最適化とコストアップに対応した価格改善を進めている。
2. 2023年3月期通期の業績見通し
2023年3月期通期の業績予想については、売上高は37,200百万円(前期比1,284百万円増)、営業利益は6,200百万円(同322百万円増)、経常利益は6,400百万円(同354百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,500百万円(同45百万円増)としている。
同社では、2023年3月期第2四半期の連結業績は、研磨材事業が旺盛な半導体需要に支えられ堅調に推移したことなどから、売上高・利益ともに期初の予想を上回る結果となった。しかしながら、第3四半期以降の業績については、原材料高騰などによるコストアップに加えて、半導体市場が生産調整の局面に入りつつあることから不透明感が増している。このような状況を踏まえ、2022年5月13日に公表した通期連結業績予想の売上高を36,500百万円から37,200百万円に上方修正しているが、営業利益については当初計画通りとしている。また、同社は中長期的観点から、積極的な設備投資を行いEBITDAを向上させるとしている。
3. 事業構造改革
同社では経営危機が続くなか、2006年に現相談役の中野光雄(なかのみつお)氏が社長に就任すると、事業構造改革を断行。繊維事業の構造改革と非繊維分野での成長事業(研磨材、化学工業品)の育成を同時に行い、短期間での事業の入れ替えに成功、結果的に持続的成長・高収益体質の事業ポートフォリオに再構築した。中野氏は現中期経営計画「増強21-25」の原点とも言える中期経営計画「変身06-10」を打ち出し、その後「突破11-13」「邁進14-16」「加速17-20」「増強21-25」と綿々と受け継がれてきた。同社が、今日の高収益企業へ変身できたのは、中野氏の16年間に亘る実行力と先見性の経営があったからであろう。
2022年6月29日付で経営トップ(社長)が交代となった。中野氏から58歳の井上雅偉(いのうえまさひで)氏へバトンタッチされ、経営体制の若返りを図った。井上新社長は、構造改革に加えて現中期経営計画「増強21-25」の策定と推進や設備投資の意思決定などを中野前社長と二人三脚で進めてきたので、経営の舵取りもスムーズに引き継がれている。
4. 中期経営計画
中期経営計画「増強21-25」は2021年4月にスタートして1年半を経過しているが、財務目標はおおむね計画通り達成している。今後の課題は、中期経営計画の後半(2024-2025年)には、2025年のあるべき姿の実現に向け“非連続的成長”を遂げる必要がある。前半の残り1年半(2022年下期-2023年)の間にしっかりとした準備をしていく。最大のキーポイントは研磨材や化学工業品の中核事業のさらなる拡大のための「設備投資」の適時適正な実行である。2022年度の設備投資46億円は着々と進めているようで、来年以降も同様に準備を整える必要がある。「増強21-25」の高収益体質への転換の実現のキーは「適時適正な設備投資の実行」もしくは自社生産力を補完できる外部資源の調達・連携(アライアンスやM&A)の成否にかかっている。
■Key Points
・事業構造改革の断行
・2023年3月期第2四半期は大幅増収増益。通期も増収増益の見通し
・中期経営計画「増強21-25」では適時適正な設備投資の実行がキー
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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