米ドル/円、“フェーズ変化のトリガー”が引かれたか

著者:津田隆光
投稿:2022/11/11 10:49

“CPIショック”で米ドル安、株高フローに

米ドル/円・日足・複合チャート
米ドル/円・日足・複合チャート出所:マネースクエアFXチャート

【注目ポイント】「140.000円」で下値サポートされるか否か
【シナリオ①】同レートで下値サポートなら、「145.000円」付近までの戻りも
【シナリオ②】同レート割れなら、「138.560円」付近までの下落となりそう
【シナリオ③】「138.560円」割れなら、「135.410円」付近までの下落も視野に


米ドル/円の極めて重要な“分水嶺”(ぶんすいれい)と見ていた「145.000円」ライン(上図Ⓐ赤色線)を10日時点で下抜け突破し、一時140.000円台前半までの下落フローとなっています。


上図にある各メルクマールを見てみると、1) 21日MA(移動平均線)が右肩下がりであること、2) 遅行スパンがローソク足を下抜ける“逆転”が示現(上図黄色丸印)していること、3) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上方で点灯していること、4) BB(ボリンジャーバンド)・±2σラインが拡張する“エクスパンション”となっていること、そして5) DMI(方向性指数)で-DI>+DIの乖離が拡大し、ADXが右肩上がりになっている(上図青色点線丸印)ことから、米ドル/円・日足チャートは下降トレンド序盤を示唆するチャート形状であると判断します。

他方、本稿執筆(11日午前8時30分)時点において、ⅰ) ローソク足が「売られ過ぎ」のベンチマークとするBB(ボリンジャーバンド)・-2σライン(≒142.630円)を大きくアンダーシュートしていること、さらには(ファンダメンタルズ分析の観点となりますが・・・)ⅱ) 米10月CPI(消費者物価指数)数値が「インフレ鈍化の兆候を示した」との判断ではあるものの、事前予想値に比べ大きく乖離するものではなかったことを合わせると、足もとでは「売られ過ぎの修正」→「(一時的な)反発フロー」となる可能性も視野に入れるべきでしょう。


これらを踏まえた上で、足もとの注目ポイントは・・・心理的な節目であり、同時に直近高安レート(安値:130.316円[8/2]・上図水色三角印、高値:151.899円[10/21]・上図赤色三角印)を結ぶFR(フィボナッチ・リトレースメント)・50.0%ライン、いわゆる“半値押し”水準の近似値でもある「140.000円」(上図黄色矢印および黒色線)で下値サポートされるか否か。

筆者が予想する今後のシナリオは以下の通りです。(シナリオ①、②)


[シナリオ①]
これからの時間にかけて、「140.000円」で下値サポートされた場合は、「心理的節目および“半値押し”水準付近での下値固め」→「反発フロー」となりそうです。当該ケースでは、「BB・-2σライン(≒142.630円)超え」や「-DI>+DIの乖離縮小」なども伴いながら、BB・-1σラインを基準とする「145.000円」(上図Ⓐ赤色線)付近までの戻りもあり得そうです。

[シナリオ②-1]
一方で、「140.000円」を終値ベースで下回った場合は、「心理的節目および“半値押し”水準割れ」→「もう一段の下値切り下げ」となりそうです。当該ケースでは、「下降バンドウォークの継続」や「-DI>+DIのさらなる乖離拡大」なども伴いながら、上述した直近高安レートを結ぶFR・61.8%ラインをメドとする「138.560円」(上図Ⓑ水色線)付近までの下落となりそうです。

[シナリオ②-2]
ただし、「138.560円」を終値ベースで下回った場合は、「重要な基準線割れ」→「さらなる下押し」となる可能性も。当該ケースでは、上述した高安レートを結ぶFR・76.4%ラインをメドとする「135.410円」(上図Ⓑ’緑色線)付近までの下落も視野に入れるべきでしょう。


上記シナリオ①および②-1、2を概括すると、今後の米ドル/円にとって「140.000円」は「145.000円」に次ぐ重要な“分水嶺”(ぶんすいれい)となりそうです。


同時に、米ドル/円が「145円割れ」を示現したことは、日足ベースにおいては“フェーズ(局面)”の変化、つまり下降トレンドへ転換するトリガーが引かれたと捉えて良いでしょう。よって、今回の大幅下落(※11日の高低差:6.423円)を以て、主観的な“値頃感”や“割安感”を主体とする安易な買い・エントリーは避けた方が無難と考えます。買い・エントリーの際は適宜ストップロス等の設定をするのも一案と言えるでしょう。

津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想