■要約
サイバネットシステム<4312>は、製造業を中心とした設計・研究開発などで利用されるCAE(コンピュータによる工学支援)ソフトウェアのソリューションサービス大手であり、クラウドセキュリティ製品なども取り扱っている。CAE製品で世界シェア35%のトップ企業であるAnsysの製品を中心に、35社以上の製品を網羅的に取り扱っており、CAEソリューションのパイオニアとして2,600の企業、500の大学・研究機関を顧客に抱える。また、欧米にソフトウェア開発会社3社を子会社に持つほか、中国、台湾を中心にアジア市場でもCAEソリューションビジネスを展開している。単体売上高の6割弱がストックビジネス(既存顧客の更新契約)で占められるため、収益の安定性も高い。
1. 2022年12月期第2四半期累計業績の概要
2022年12月期第2四半期累計(2022年1月~6月)の連結業績は、売上高で前年同期比22.2%減の9,736百万円、営業利益で同53.8%減の1,033百万円となった。2021年10月に米Synopsysとの販売代理店契約を終了したことが減収減益要因となった。ただ、主力製品であるAnsysのマルチフィジックス解析ツール※1が堅調に推移したほか、MBSE※2等のエンジニアリングサービス、クラウドセキュリティソリューションの販売が好調に推移し、既存事業ベースでは増収となった。売上形態別で見ると、代理店売上は前年同期比30.8%減となったものの、自社開発製品が同4.3%増、サービスが同27.5%増とそれぞれ増収となり、会社計画(売上高9,600百万円)に対しても若干上回る格好となった。
※1 研究開発の場において、複数の物理現象を組み合わせて解析することで、現象をより正確に捉えるためのツール。現実世界では複数の物理現象(構造、地場、電流、流体、伝熱等)が同時に作用しており、これらを切り離して解析すると開発対象物の挙動を正確に予測できない可能性がある。
※2 MBSE (Model Based Systems Engineering)とは、開発対象とするシステムを様々な観点で表現したモデルを用いて、システムの要求分析・設計・検証を効率的に行うアプローチ手法を指す。システムの高機能・多機能化とともに、要件定義から設計・検証までの工程もより複雑さを増しており、これらをモデル化することで効率的に開発を行うことが可能となる。主に自動車業界の開発現場で用いられている。
2. 2022年12月期の業績見通し
2022年12月期の連結業績は、売上高で前期比11.9%減の20,000百万円、営業利益で同36.4%減の1,800百万円と期初計画を据え置いた。下期だけで見るとSynopsysとの販売代理店契約終了の影響はあるものの、その他事業の拡大により、増収増益に転じる見通しとなっている。なお、Synopsysの取扱商材であった光学系ソリューションについては、Ansysと新たに販売代理店契約を締結し拡販に取り組んでいる。機能面ではSynopsys製品とほぼ遜色ないため、今後は同社が36年以上にわたって蓄積してきた経験と技術サポート力を生かして、徐々にシェアを奪取していく戦略だ。ここ最近、エネルギー価格高騰の影響による景気減速懸念が強まっているものの、同社の取扱商材は主に研究開発部門で用いられるため、業績への影響が限定的と見られる。実際、足元の受注状況については引き続き堅調に推移している。このため、通期業績についても会社計画の達成は可能と見られる。
3. 中期経営計画の概要
同社は、2022年12月期から2026年12月期まで5ヶ年の中期経営計画をスタートしている。成長戦略として自社開発製品の強化、アジア事業の拡大、モノづくりのDX促進、SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用等に取り組み、トップラインの成長を図るとともに、高付加価値事業の強化と成長投資のバランスを取りながら高水準の利益率を目指す。経営数値目標としては2026年12月期に売上高で30,000百万円(2021年12月期比32.2%増)、EBITDA(営業利益+減価償却費)で3,800百万円(同23.7%増)を目指す。特に自社開発製品・サービスの売上拡大が重要になってくると見られ、同領域において国内外問わずM&Aを前向きに検討する考えだ。2022年6月末で手元キャッシュ(現預金+有価証券)は157億円と潤沢で資金面での不安はない。
4. 株主還元策
株主還元策については、短期的な減益局面においても安定した配当を実施することを目的に、「親会社株主に帰属する当期純利益」の範囲を原則として、DOE(純資産配当率)で6.0%の水準を配当の目安とする方針とした。2022年12月期の1株当たり配当金は前期比0.95円増配となる29.60円(DOE6.0%)を予定している。また、自己株式の取得についても手元資金や株価水準等を総合的に勘案しながら、機動的に判断することにしている。
■Key Points
・CAEのリーディングカンパニーとして36年以上にわたり日本のモノづくりを支援
・2022年12月期第2四半期累計業績はSynopsysとの販売代理店契約終了により減収減益となるも既存事業ベースでは増収に
・2022年12月期は期初計画を据え置くも、足元の受注状況に変化はなく下期から増収増益に転じる見通し
・自社開発製品の強化やアジア事業の拡大等により2026年12月期に売上高300億円、EBITDA38億円を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
サイバネットシステム<4312>は、製造業を中心とした設計・研究開発などで利用されるCAE(コンピュータによる工学支援)ソフトウェアのソリューションサービス大手であり、クラウドセキュリティ製品なども取り扱っている。CAE製品で世界シェア35%のトップ企業であるAnsys
1. 2022年12月期第2四半期累計業績の概要
2022年12月期第2四半期累計(2022年1月~6月)の連結業績は、売上高で前年同期比22.2%減の9,736百万円、営業利益で同53.8%減の1,033百万円となった。2021年10月に米Synopsys
※1 研究開発の場において、複数の物理現象を組み合わせて解析することで、現象をより正確に捉えるためのツール。現実世界では複数の物理現象(構造、地場、電流、流体、伝熱等)が同時に作用しており、これらを切り離して解析すると開発対象物の挙動を正確に予測できない可能性がある。
※2 MBSE (Model Based Systems Engineering)とは、開発対象とするシステムを様々な観点で表現したモデルを用いて、システムの要求分析・設計・検証を効率的に行うアプローチ手法を指す。システムの高機能・多機能化とともに、要件定義から設計・検証までの工程もより複雑さを増しており、これらをモデル化することで効率的に開発を行うことが可能となる。主に自動車業界の開発現場で用いられている。
2. 2022年12月期の業績見通し
2022年12月期の連結業績は、売上高で前期比11.9%減の20,000百万円、営業利益で同36.4%減の1,800百万円と期初計画を据え置いた。下期だけで見るとSynopsysとの販売代理店契約終了の影響はあるものの、その他事業の拡大により、増収増益に転じる見通しとなっている。なお、Synopsysの取扱商材であった光学系ソリューションについては、Ansysと新たに販売代理店契約を締結し拡販に取り組んでいる。機能面ではSynopsys製品とほぼ遜色ないため、今後は同社が36年以上にわたって蓄積してきた経験と技術サポート力を生かして、徐々にシェアを奪取していく戦略だ。ここ最近、エネルギー価格高騰の影響による景気減速懸念が強まっているものの、同社の取扱商材は主に研究開発部門で用いられるため、業績への影響が限定的と見られる。実際、足元の受注状況については引き続き堅調に推移している。このため、通期業績についても会社計画の達成は可能と見られる。
3. 中期経営計画の概要
同社は、2022年12月期から2026年12月期まで5ヶ年の中期経営計画をスタートしている。成長戦略として自社開発製品の強化、アジア事業の拡大、モノづくりのDX促進、SDGs分野などでのシミュレーション技術の活用等に取り組み、トップラインの成長を図るとともに、高付加価値事業の強化と成長投資のバランスを取りながら高水準の利益率を目指す。経営数値目標としては2026年12月期に売上高で30,000百万円(2021年12月期比32.2%増)、EBITDA(営業利益+減価償却費)で3,800百万円(同23.7%増)を目指す。特に自社開発製品・サービスの売上拡大が重要になってくると見られ、同領域において国内外問わずM&Aを前向きに検討する考えだ。2022年6月末で手元キャッシュ(現預金+有価証券)は157億円と潤沢で資金面での不安はない。
4. 株主還元策
株主還元策については、短期的な減益局面においても安定した配当を実施することを目的に、「親会社株主に帰属する当期純利益」の範囲を原則として、DOE(純資産配当率)で6.0%の水準を配当の目安とする方針とした。2022年12月期の1株当たり配当金は前期比0.95円増配となる29.60円(DOE6.0%)を予定している。また、自己株式の取得についても手元資金や株価水準等を総合的に勘案しながら、機動的に判断することにしている。
■Key Points
・CAEのリーディングカンパニーとして36年以上にわたり日本のモノづくりを支援
・2022年12月期第2四半期累計業績はSynopsysとの販売代理店契約終了により減収減益となるも既存事業ベースでは増収に
・2022年12月期は期初計画を据え置くも、足元の受注状況に変化はなく下期から増収増益に転じる見通し
・自社開発製品の強化やアジア事業の拡大等により2026年12月期に売上高300億円、EBITDA38億円を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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