S&P500月例レポート(22年6月配信)<後編>
石油
○英国の石油大手BP
○米国のガソリン(小売り)価格(EIAによる全等級)は7週連続で下落していましたが、その後急騰し、過去最高となる1ガロン=4.694ドルを付けました。
○EU各国首脳は、ウクライナ侵攻に対する制裁措置の一環として、ロシア産原油の輸入を一部禁止することで合意しました。禁輸は、加盟27ヵ国の承認を経て6ヵ月後に発効し、海上輸送による輸入が対象とされ、パイプライン経由の原油は暫定的に禁輸の対象外となります。
○石油輸出国機構(OPEC)が、ロシアでの減産と欧州による一部禁輸措置を理由に、生産協定からのロシアの一時除外を検討しているとの報道がありました。ロシアが除外されると、他のOPEC加盟国は増産が可能になります。
○5月末時点の原油価格は1バレル=115.12ドル(今年に入ってから一時同130.50ドルまで上昇)、年初来の上昇率は52.7%(2021年末は同75.40ドル)となりました。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は年初来で40.1%上昇して1ガロン=4.727ドルとなりました(2021年末は同3.375ドル)。2020年末からは、原油価格は138%上昇し(2020年末は同48.42ドル)、ガソリン価格は103%上昇しています(2020年末は同2.330ドル)。
⇒EIAは2021年のガソリン価格の内訳について、53.6%が原油、16.4%が連邦税および州税、15.6%が販売・マーケティング費、そして14.4%が精製コストと利益だと説明しています。
新型コロナウイルス関連
○新型コロナウイルスの感染者数は5月に増加し、一部の地域では警戒レベルが引き上げられましたが、行動規制を新たに導入した地域はほとんどありませんでした。世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに関連するこれまでの死者数が世界全体で1500万人近くに上るとの推計を明らかにしました。
○ロックダウン(都市封鎖)が続けられていた中国の上海市では、新規感染者数が大幅に減少し、一部の制限が緩和されました。完全な活動再開は6月中旬から下旬になる見通しであり(執筆時点)、出荷前の大量の受注残が一気に動き始める可能性があります。
○北朝鮮では、新型コロナウイルスの(公式の報告では)最初の感染者が確認され、全国レベルでロックダウンが命じられました。ファイザー
○新型コロナウイルス関連データ:
⇒世界全体のワクチン接種回数は119億回となりました(2022年4月末は116億回)。
米国は現時点で:
→ワクチン接種回数が5億8700万回(同5億7400万回)となりました(ブースター接種を含む)。
→人口の77.1%(同76.8%)が少なくとも1回はワクチンを接種したことになり、人口の66.0%(同65.5%)が2回の接種を終えました。人口の30.7%(同29.9%)がブースター接種を受けました。
→新規感染者数の7日間平均は5月末時点で10万9997人となり、4月末時点の5万3432人、3月末時点の2万7621人から増加しました。1日当たりの新規感染者数は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点は8万3120人)。また、死者数の7日間平均は374人でした(4月末時点は355人)。
→米国の新型コロナウイルスによる累計死者数は100万5000人となりました(4月末時点の累計死者数は99万3000人)。
各国中央銀行の動き(および関連ニュース)
○イングランド銀行(英中央銀行)は政策金利を0.25%引き上げて1.00%としました。採決の結果は賛成6、反対3で、反対派は0.50%の利上げを求めていました。利上げを受けて、英ポンドは2020年7月以来の低水準に下落しました。
○米上院は、パウエルFRB議長の再任(任期4年)を承認しました。
○パウエル議長は取材に対し、米国のインフレ抑制に対するFRBの決意を「疑わないでほしい」と積極的姿勢を示し、「明確かつ確実にインフレが低下するのが確認されるまで、取り組みを継続していく」と述べました。
○5月3-4日に開催されたFOMCの議事録では、参加者が0.50%の利上げに前向きで、インフレに対抗するためには中立金利を超える必要もあると考えていることが明らかになりました。
企業業績
○これまでに、S&P500指数構成銘柄の97%以上に当たる489銘柄が2022年第1四半期の決算発表を終え、このうち377銘柄(77.1%)で営業利益が予想を上回り、97銘柄で予想を下回り、15銘柄で予想通りとなりました。また、売上高では486銘柄中350銘柄(72.0%)で予想を上回りました。
○2022年第1四半期は過去最高を記録した2021年第4四半期から12.7%の減益が見込まれますが、前年同期比では4.4%の増益となる見通しです。
○2022年通年の利益は前年比7.5%増と、過去最高を再度更新する見通しで、2022年の予想PERは18.5倍となっています。
○2023年の利益は同10.5%増が見込まれ、予想PERは16.7倍となっています。
○2022年第1四半期中に株式数の減少によって1株当たり利益(EPS)が大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は17.6%でした(2021年第4四半期は14.9%、2021年第1四半期は5.8%、2019年第1四半期は24.9%)。
○2021年第1四半期の営業利益率は11.97%で、第4四半期の13.41%から低下しましたが、依然として高水準を維持しています(1993年以降の平均は8.21%、最高は2021年第2四半期の13.54%)。
個別銘柄
○コーヒーメーカー兼小売業者のスターバックス
注目点
○米国10年国債利回りは2018年12月以降で初めて3%を上回り(3.21%、終値でも3%を超えました)、2.85%で5月の取引を終了しました。
○ビットコインは、2021年11月に付けた最高値の6万8790ドルから2万6350ドルまで下落し、3万1748ドルで月を終えました。
○サル痘の感染者が少なくとも世界23ヵ国で確認されており、感染件数は(アフリカ以外では)依然として少ないものの、懸念が高まりました。これを受けて、デンマークのワクチンメーカーであるババリアン・ノルディック(Bavarian Nordic)は、サル痘に関連する(天然痘)ワクチンの増産を開始しました。
インデックス・レビュー
◇S&P 500指数
S&P 500指数は5月に0.01%上昇して4132.15で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス0.18%)。4月は4131.93で終え8.80%の下落(同マイナス8.72%)、3月は4530.41で終え3.58%の上昇(同プラス3.71%)、2月は4373.94で終え3.14%の下落でした(同マイナス2.99%)。過去3ヵ月では5.53%下落(同マイナス5.16%)、年初来では13.30%下落(同マイナス12.76%)、過去1年間では1.71%下落(同マイナス0.30%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは22.03%上昇(同プラス26.52%)して月を終えました。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は0.04%上昇の3万2990.12ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス0.33%)。4月は3万2977.21ドルで終え、4.91%の下落(同マイナス4.82%)、3月は3万4678.35ドルで終え、2.32%の上昇でした(同プラス2.49%)。過去3ヵ月では2.66%下落(同マイナス2.14%)、年初来では9.59%の下落(同マイナス8.43%)、過去1年間では4.46%下落(同マイナス2.65%)しました。
S&P500指数の5月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は4月の1.81%から2.41%に上昇しました(3月は1.70%)。年初来では1.96%(4月は1.85%)、2021年は0.97%、2020年は1.73%、2019年は0.85%でした。2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比15%減少した4月から7%増加(営業日数調整後)、前年同月比では6%増加し、過去1年間では27%減少しました。
5月に前日比で1%以上変動した日数は21営業日中10日(上昇が6日、下落が4日)、2%以上変動した日数は7日(上昇が4日、下落が3日)、3%以上変動した日数は3日(すべてが下落)でした。4月は1%以上変動した日数は20営業日中10日(上昇が3日、下落が7日、2%以上上昇が1日、2%以上下落が3日)、3月は23営業日中14日(上昇が9日、下落が5日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は52日(上昇が24日、下落が28日)、2%以上変動した日数は19日(上昇が10日、下落が9日)となりました。
2021年は前日比で1%以上変動した日数は55日(上昇が34日、下落が21日)、2%以上変動した日数は7日(上昇が2日、下落が5日)となりました。2020年は1%以上変動した日数が109日(上昇が64日、下落が45日)、2019年は1%以上変動した日数が37日(上昇が22日、下落が15日)でした。5月は21営業日中21日で日中の変動率が 1%以上となり(4月は20営業日中16日)、3%以上の変動が5日、4%以上の変動が1日でした。年初来では1%以上の変動が91日、3%以上の変動が11日、4%以上の変動が3日でした。
5月は値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りました。5月の値上がり銘柄数は279銘柄(平均上昇率は6.32%)で、4月の105銘柄(同4.14%)から増加しました。3月は315銘柄(同7.48%)でした。10%以上上昇した銘柄数は、4月の7銘柄(同13.49%)から53銘柄(同16.32%)に増加しました。3月は81銘柄(同15.28%)でした。6銘柄が25%以上上昇しました(同28.62%、4月は1銘柄で26.70%、3月は5銘柄で同36.53%)。
一方、5月の値下がり銘柄数は225銘柄(平均下落率は6.03%)で、4月は399銘柄(同9.29%)、3月は190銘柄(同5.71%)でした。5月の10%以上下落した銘柄数は38銘柄(同16.74%)と、4月の145銘柄(同15.86%)から減少しました。3月は30銘柄(同13.58%)でした。25%以上下落した銘柄数は6銘柄(同28.39%)で、4月は7銘柄(同31.47%)、3月はゼロでした。
過去3ヵ月間では、値下がり銘柄数と値上がり銘柄の差は縮小しましたが、値下がり銘柄数が引き続き値上がり銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は195銘柄(平均上昇率は10.67%)と、4月末の168銘柄(同9.85%)を上回った一方、値下がり銘柄数は309銘柄(平均下落率は12.10%)と、4月末の336銘柄(同12.81%)を下回りました。85銘柄(平均上昇率は18.56%)が10%以上値上がりし、4月末の57銘柄(同19.77%)を上回りました。10%以上値下がりしたのは165銘柄(平均下落率は18.22%)、4月末は193銘柄(同18.70%)でした。過去3ヵ月間で12銘柄が25%以上上昇(4月末時点は9銘柄)、24銘柄が25%以上下落しました(同27銘柄)。
年初来では、値下がり銘柄数と値上がり銘柄数の差が縮小しましたが、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。値上がり銘柄数は148銘柄(平均上昇率は17.88%)と、4月末の143銘柄(同13.80%)から小幅に増加した一方、値下がり銘柄数は355銘柄(平均下落率は18.94%)と、4月末の360銘柄(同18.12%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄数は80銘柄(平均上昇率は28.82%)と、4月末の62銘柄(同25.19%)から増加し、10%以上下落した銘柄数は264銘柄(平均下落率は23.64%)、4月末は265銘柄(同22.93%)でした。年初来で25銘柄(4月末は22銘柄)が25%以上上昇し、101銘柄(同98銘柄)が25%以上下落しました。
2021年通年では、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回り、値上がり銘柄数は434銘柄(平均上昇率は34.30%)、値下がり銘柄数は70銘柄(平均下落率は12.01%)でした。10%以上上昇した銘柄数は367銘柄(平均上昇率は39.77%)、10%以上値下がりした銘柄数は36銘柄(平均下落率は19.27%)でした。259銘柄が25%以上上昇し、7銘柄が25%以上下落しました。
◇世界の株式市場:S&Pグローバル総合指数
S&Pグローバル総合指数は3月の1.70%上昇(米国の3.11%上昇が追い風となり、米国を除くと0.25%下落)、4月の8.11%の大幅下落(米国の9.09%下落を除くと6.70%の下落)の後、5月は月末に反発したことで値下がりが抑制され、0.20%の下落となりました(米国の0.36%下落を除くと0.04%の上昇)。過去3ヵ月間では、世界の株式市場は6.72%下落(米国の6.61%下落を除くと6.90%下落)し、年初来では13.79%の下落で、米国の14.58%下落を除くと12.68%の下落、過去1年間では9.49%の下落で、米国の5.14%下落を除くと14.98%下落しました。より長期では、米国のパフォーマンスが突出していました。過去2年間では、グローバル市場は28.00%上昇しましたが、米国の34.61%上昇を除くと19.76%の上昇でした。過去3年間ではグローバル市場は30.99%上昇し、米国の47.00%上昇を除くと13.38%の上昇でした。2020年11月3日の米大統領選挙以降では、グローバル市場は14.55%上昇しましたが、米国の20.22%上昇を除くと7.43%の上昇でした。
S&Pグローバル総合指数の時価総額は5月に1730億ドル減少しました(4月は6兆3040億ドル減)。米国以外の市場の時価総額は50億ドル減少し(同2兆1410億ドル減)、米国市場は1670億ドル減少しました(同4兆1630億ドル減)。5月は11セクター中4セクターが上昇する中で、セクター間のリターンのばらつきは拡大しました(4月は上昇したセクターがゼロ、3月は9セクターが上昇)。5月のパフォーマンスが最高のセクター(エネルギー、11.05%上昇)と最低のセクター(不動産、3.88%下落)の騰落率の差は14.93%となり、4月の12.26%、3月の6.38%から拡大しました。年初来のパフォーマンスの最高セクター(エネルギー、32.48%上昇)と最低のセクター(一般消費財、23.31%下落)の差は55.79%となっています。
新興国市場は1月の0.98%下落(2021年12月は1.41%上昇)、2月の3.49%下落、3月の2.55%下落、4月の5.63%下落の後に、5月も0.31%下落し、5ヵ月連続での下落となりました。年初来では12.40%下落しています。過去1年間では18.88%の下落となり、過去2年間では17.59%上昇、過去3年間では7.92%上昇しています。
4月は24市場(ロシアを除く)のうち11市場が上昇し、4月の5市場から増加しましたが、3月の16市場は下回りました(2月は13市場、1月は14市場)。パフォーマンスが最高となったのはチリで5月は18.47%上昇し、年初来では30.59%上昇、過去1年間では9.82%上昇しました。2番目はコロンビアで5月は8.23%上昇し、年初来では27.84%上昇、過去1年間では39.25%上昇しました。3番目はブラジルで5月は5.28%上昇し、年初来では16.68%上昇、過去1年間では15.30%の下落でした。
ハンガリーのパフォーマンスが最低となり、5月は15.44%下落し、年初来では37.60%下落、過去1年間では41.07%下落しました。これに続いたのがパキスタンで5月は10.99%下落し、年初来では16.60%下落、過去1年間では34.85%下落しました。3番目がアラブ首長国連邦で5月は8.56%下落し、年初来では5.86%上昇、過去1年間では25.66%上昇しました。
先進国市場のパフォーマンスは新興国市場を上回り、3月の2.21%上昇、4月の8.39%下落の後に(2月は2.25%下落、1月は5.82%下落、12月は4.08%上昇)、5月は全体で0.18%下落しました。先進国市場は米国を除くと、3月の0.54%上昇、4月の7.06%下落の後に(2月は0.51%下落、1月は5.38%下落、2021年12月は4.73%上昇)、5月は0.16%上昇しました。先進国市場は、年初来では13.95%下落、米国を除くと12.77%下落、過去1年間では8.26%下落、米国を除くと13.59%下落となりました。過去2年間では29.39%上昇、米国を除くと20.61%上昇、過去3年間では34.13%上昇、米国を除くと15.23%上昇しました。
5月は25市場中14市場が上昇しました(4月は上昇した市場はゼロ、3月は14市場が上昇、2月は8市場が上昇、1月の上昇はゼロ)。パフォーマンスが最も良かったのはポルトガルで5月は5.47%の上昇で、年初来では0.16%上昇、過去1年間では2.42%下落でした。2番目はスペインで、5月は4.58%上昇、年初来では3.50%下落、過去1年間では14.58%下落しました。3番目はイタリアで5月は2.59%上昇し、年初来では15.87%下落、過去1年間では14.91%下落しました。
パフォーマンスが最低だったのはイスラエルで5月は6.65%下落し、年初来では18.47%下落、過去1年間では8.68%下落しました。これに続いたのがニュージーランドで5月は4.61%下落し、年初来では21.60%下落、過去1年間では23.02%下落しました。3番目はベルギーで5月は4.34%下落し、年初来では13.47%下落、過去1年間では18.88%下落しました。
注目すべき点として、日本は5月に1.36%上昇し、年初来では14.48%下落、過去1年間では16.48%下落しました。英国は5月に0.94%上昇、年初来では5.94%の下落、過去1年間では6.05%の下落となりました。カナダは5月に0.93%下落、年初来では2.72%の下落、過去1年間では0.95%の下落となりました。5月はドイツも0.93%上昇し、年初来では19.70%下落、過去1年間では24.51%下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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