■いちご<2337>の中長期の成長戦略
1. いちごオーナーズが第四の柱として成長
2018年2月期に創業したいちごオーナーズが順調に成長し、実質的には第四の事業の柱となっている。いちごオーナーズは好立地の新築レジデンスを投資対象不動産とし、取得後早期にリースアップを完了し売却するという保有期間1年以内の高回転モデルが収益の大部分を占めている。心築事業は、基本的に機関投資家や事業法人、リートなど大口の顧客を想定し、物件規模では中規模(20~50億円)のマルチアセットが中心であるが、いちごオーナーズは、大口顧客以外にも現不動産オーナーや、これから不動産オーナーを目指す個人や法人も顧客とし、10億円前後の新築レジデンス物件を中心に扱う。また、心築事業は保有期間約3年で粗利率30%超と腰を据えたバリューアップを施すモデルであるのに対し、いちごオーナーズは保有期間1年以内という早期の商品化、粗利率10%超を実現する高回転モデルであり、グループ内でビジネスモデルによるリスク分散が図られていると言えるだろう。実際、コロナの影響でマルチアセットの売却環境が悪化したなかにあっては、いちごオーナーズがフロー収益を牽引する役を担ってきた。年によりばらつきがあるが、右肩上がりで成長している事業である。2023年2月の予想は、取得(簿価)は350億円、売却(売上高)は225億円、セグメント利益は29億円であり、過去最高の仕入れ額を目指している。また、ストック収益によるさらなる利益貢献に向けた取り組みを進めている。新事業「オーナーズビルシェア」を開始し、組成した任意組合を通じた現物不動産による長期資産運用、分散投資、資産承継円滑化など、個人投資家のニーズを満たす不動産小口化商品の提供を行なっており、長期的なストック収益獲得を拡大させるとしている。
2. ソフトインフラ分野への進出:AIレベニューマネジメントシステム「PROPERA」
同社は長期VISION「いちご2030」で“サステナブルインフラ企業”を目指すことを打ち出し、従来のハードインフラに加えソフトインフラを含めた成長戦略を打ち出した。ソフトインフラへの進出の注力分野として期待されるのが、「不動産・観光」と「IT」を掛け合わせた事業領域である。ホテルなど宿泊施設の顧客満足度向上と収益の最大化を図るAIレベニューマネジメント(売上管理)システム「PROPERA」は、同社が保有するホテルのレベニューマネジメントのノウハウを結集して自社開発したもので、導入したホテルでは年間収益が約10~40%向上し、実績は証明済である。宿泊施設にとって、レベニューマネージャーが客室の販売状況や他社のリサーチを行い適切な価格をタイムリーに設定するのが経営上重要であるが、ノウハウを有する人材の不足など課題も多い。このような課題に対して、同社独自のノウハウを搭載した「PROPERA」が価格の提案や設定を行うことで、収益の最大化と労働生産性の向上を図っていく。
導入コストがかからず、実装までの期間が業界最短であることも評価されているポイントとなっている。2022年2月期の導入実績は、ホテルは127施設と前期の2.6倍に拡大し、外販が軌道に乗り始めた。今後はさらなるシェア拡大を目指し、2023年2月期には500施設、4年後の2026年2月期には2,000施設への導入を目指す。現在の国内宿泊施設数は約50,000施設で、このうちサイトコントローラー導入済の宿泊施設約20,000施設を現状のメインターゲットに設定、4年後には10%のシェア獲得を目標とする。PROPERAの利用料はホテル売上に連動し、標準的には売上の1%が利用料収益となる。客室数100室、宿泊料金6千円、100%稼働の宿泊施設のケースでは、導入1棟当たりの年間収益が200万円となる計算である。また、導入拡大に向けたプロモーションプランである月額固定収入(ライトプラン)も備える。ソフトインフラからのストック収益が見込める新事業として期待される。
3. ESG活動の取り組み
同社は、世界的な課題である「サステナブル(人間・社会・地球環境の持続的発展)社会の実現」への貢献を事業活動の目的としており、本業を通じた様々な活動に取り組んでいる。主力の心築事業では「心で築く、心を築く」を信条とし、建物を壊さず生かし、環境負荷の低減を果たしながら現存不動産に対して独自の技術により新しい価値を創造し、日本における「100年不動産」の実現を目指している。またクリーンエネルギー事業では、エネルギー自給率の低い日本において重要な意義を持つ再生可能エネルギーの発電事業を拡大しており、さらに遊休地での発電事業を通じた限りある国土の有効活用を実現している。
環境分野での取り組みの一例を挙げると、同社は事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニシアティブである「RE100」に加盟し、「脱炭素宣言」をしている。同社の宣言は「2025年までに、いちごオフィス、いちごホテルが保有する不動産を含め、事業活動での消費電力を100%再生可能エネルギーにする」と、前年に掲げた2040年という期限を15年前倒した。また、気候変動対策について企業評価を行う世界的なイニシアティブである「CDP 気候変動プログラム2021」においては、最上位である「リーダーシップレベル(総合スコアA-)」を獲得している。これは同社が所属する評価グループにおいて、上位13%の評価に当たると言う。
クリーンエネルギー事業では、太陽光発電、風力発電に加え、安定した出力と地域課題の解決を目的として木質バイオマス発電の事業化へも取り組んでおり、当面では約50億円規模の投資を計画中であるとしている。また同社は、ESG活動状況をまとめた「いちごサステナビリティレポート」を発行し、ESGの情報開示を強化している。
このような取り組みが市場でも評価され、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用対象とする国内ESG指数3つ(FTSE Blossom Japan Sector Relative Index、2022 CONSTITUENT MSCI日本株女性活躍指数、S&P/JPXカーボンエフィシェント指数)に組み入れられている。金融機関による同社ESGの取り組みへの評価も高まっており、2022年2月期のESG評価に基づくサステナブル・ファイナンスによる資金調達実績は約235億円(借入枠含む)と、2020年2月期の約8倍となった。また、CASBEE不動産、GRESBリアルエステイト評価の取得など、積極的に保有物件の環境認証取得に向けた取り組みも加速している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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1. いちごオーナーズが第四の柱として成長
2018年2月期に創業したいちごオーナーズが順調に成長し、実質的には第四の事業の柱となっている。いちごオーナーズは好立地の新築レジデンスを投資対象不動産とし、取得後早期にリースアップを完了し売却するという保有期間1年以内の高回転モデルが収益の大部分を占めている。心築事業は、基本的に機関投資家や事業法人、リートなど大口の顧客を想定し、物件規模では中規模(20~50億円)のマルチアセットが中心であるが、いちごオーナーズは、大口顧客以外にも現不動産オーナーや、これから不動産オーナーを目指す個人や法人も顧客とし、10億円前後の新築レジデンス物件を中心に扱う。また、心築事業は保有期間約3年で粗利率30%超と腰を据えたバリューアップを施すモデルであるのに対し、いちごオーナーズは保有期間1年以内という早期の商品化、粗利率10%超を実現する高回転モデルであり、グループ内でビジネスモデルによるリスク分散が図られていると言えるだろう。実際、コロナの影響でマルチアセットの売却環境が悪化したなかにあっては、いちごオーナーズがフロー収益を牽引する役を担ってきた。年によりばらつきがあるが、右肩上がりで成長している事業である。2023年2月の予想は、取得(簿価)は350億円、売却(売上高)は225億円、セグメント利益は29億円であり、過去最高の仕入れ額を目指している。また、ストック収益によるさらなる利益貢献に向けた取り組みを進めている。新事業「オーナーズビルシェア」を開始し、組成した任意組合を通じた現物不動産による長期資産運用、分散投資、資産承継円滑化など、個人投資家のニーズを満たす不動産小口化商品の提供を行なっており、長期的なストック収益獲得を拡大させるとしている。
2. ソフトインフラ分野への進出:AIレベニューマネジメントシステム「PROPERA」
同社は長期VISION「いちご2030」で“サステナブルインフラ企業”を目指すことを打ち出し、従来のハードインフラに加えソフトインフラを含めた成長戦略を打ち出した。ソフトインフラへの進出の注力分野として期待されるのが、「不動産・観光」と「IT」を掛け合わせた事業領域である。ホテルなど宿泊施設の顧客満足度向上と収益の最大化を図るAIレベニューマネジメント(売上管理)システム「PROPERA」は、同社が保有するホテルのレベニューマネジメントのノウハウを結集して自社開発したもので、導入したホテルでは年間収益が約10~40%向上し、実績は証明済である。宿泊施設にとって、レベニューマネージャーが客室の販売状況や他社のリサーチを行い適切な価格をタイムリーに設定するのが経営上重要であるが、ノウハウを有する人材の不足など課題も多い。このような課題に対して、同社独自のノウハウを搭載した「PROPERA」が価格の提案や設定を行うことで、収益の最大化と労働生産性の向上を図っていく。
導入コストがかからず、実装までの期間が業界最短であることも評価されているポイントとなっている。2022年2月期の導入実績は、ホテルは127施設と前期の2.6倍に拡大し、外販が軌道に乗り始めた。今後はさらなるシェア拡大を目指し、2023年2月期には500施設、4年後の2026年2月期には2,000施設への導入を目指す。現在の国内宿泊施設数は約50,000施設で、このうちサイトコントローラー導入済の宿泊施設約20,000施設を現状のメインターゲットに設定、4年後には10%のシェア獲得を目標とする。PROPERAの利用料はホテル売上に連動し、標準的には売上の1%が利用料収益となる。客室数100室、宿泊料金6千円、100%稼働の宿泊施設のケースでは、導入1棟当たりの年間収益が200万円となる計算である。また、導入拡大に向けたプロモーションプランである月額固定収入(ライトプラン)も備える。ソフトインフラからのストック収益が見込める新事業として期待される。
3. ESG活動の取り組み
同社は、世界的な課題である「サステナブル(人間・社会・地球環境の持続的発展)社会の実現」への貢献を事業活動の目的としており、本業を通じた様々な活動に取り組んでいる。主力の心築事業では「心で築く、心を築く」を信条とし、建物を壊さず生かし、環境負荷の低減を果たしながら現存不動産に対して独自の技術により新しい価値を創造し、日本における「100年不動産」の実現を目指している。またクリーンエネルギー事業では、エネルギー自給率の低い日本において重要な意義を持つ再生可能エネルギーの発電事業を拡大しており、さらに遊休地での発電事業を通じた限りある国土の有効活用を実現している。
環境分野での取り組みの一例を挙げると、同社は事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニシアティブである「RE100」に加盟し、「脱炭素宣言」をしている。同社の宣言は「2025年までに、いちごオフィス、いちごホテルが保有する不動産を含め、事業活動での消費電力を100%再生可能エネルギーにする」と、前年に掲げた2040年という期限を15年前倒した。また、気候変動対策について企業評価を行う世界的なイニシアティブである「CDP 気候変動プログラム2021」においては、最上位である「リーダーシップレベル(総合スコアA-)」を獲得している。これは同社が所属する評価グループにおいて、上位13%の評価に当たると言う。
クリーンエネルギー事業では、太陽光発電、風力発電に加え、安定した出力と地域課題の解決を目的として木質バイオマス発電の事業化へも取り組んでおり、当面では約50億円規模の投資を計画中であるとしている。また同社は、ESG活動状況をまとめた「いちごサステナビリティレポート」を発行し、ESGの情報開示を強化している。
このような取り組みが市場でも評価され、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用対象とする国内ESG指数3つ(FTSE Blossom Japan Sector Relative Index、2022 CONSTITUENT MSCI日本株女性活躍指数、S&P/JPXカーボンエフィシェント指数)に組み入れられている。金融機関による同社ESGの取り組みへの評価も高まっており、2022年2月期のESG評価に基づくサステナブル・ファイナンスによる資金調達実績は約235億円(借入枠含む)と、2020年2月期の約8倍となった。また、CASBEE不動産、GRESBリアルエステイト評価の取得など、積極的に保有物件の環境認証取得に向けた取り組みも加速している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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