■要約
酒井重工業<6358>は道路舗装用ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカー。長い歴史を有し、国内シェアは70%超を誇るトップメーカーである。近年では北米や東南アジアを中心に海外市場の開拓に注力している。
1. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期の連結業績※は、売上高が26,599百万円(前期比23.0%増)、営業利益が1,383百万円(同97.3%増)、経常利益が1,407百万円(同113.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が1,427百万円(前期は4百万円の利益)となった。北米事業子会社において繰延税金資産381百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で大きく拡大した。売上高については、国内は国土強靭化加速化対策を背景に好調に推移した。海外では、中国は中国市場が停滞する中で国内販売が伸び悩み横ばいであったが、前期に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ禍)の影響を受けた北米やその他地域は大きく回復した。販管費は、行動制約から事業活動再開に伴い前期比で増加したが、増収に伴う売上総利益の増加(前期比18.5%増)により営業利益は大幅増益となった。
※2022年3月期の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しているが、2022年3月期に与える影響はない。また、前期は非適用の数値である。
2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績は、売上高で29,300百万円(前期比10.2%増)、営業利益で1,500百万円(同8.4%増)、経常利益で1,450百万円(同3.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で950百万円(同33.4%減)を見込んでいる。親会社株主に帰属する当期純利益が減益となるのは、前期に発生した一過性の繰延税金資産計上(381百万円)の剥落が主因である。所在地別の売上高・利益の見通しは開示されていないが、各地域とも増収を目指す方針だ。世界的にインフラ投資が拡大するなか、世界の建設機械需要は底堅い回復基調であるものの、部材価格のさらなる上昇やサプライチェーン再編圧力の高まりに加え、中国上海でのロックダウンの影響(2022年6月1日に外出制限は事実上解除)、ロシア・ウクライナ情勢の見通しなど不透明な要因も多いことから、営業利益率は前期比0.1ポイント低下する予想となっている。
3. 中長期の成長戦略
同社は、2021年6月に2026年3月期を最終年度とする「中期的な経営方針」を発表している。最終目標として「企業価値・株主価値の向上」を掲げ、これを達成するために「事業の成長戦略」と「効率的な資本戦略」を推進する方針だ。定量的な目標としては、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE(自己資本当期純利益率)8%を実現し、安定的に配当性向50%(DOE(株主資本配当率)4%)を維持することを目指す。売上高が初年度にして計画を上回るペースで進捗するなどしているが、現時点で方針は変わらず、数値目標も据え置いている。配当については、2022年3月期に年間165.0円(配当性向49.0%)を実施し、進行中の2023年3月期も年間配当165.0円(配当性向73.6%)が予定されている。このように、ROEの改善に向けて明白な資本政策を発表し、それに沿った株主還元を実行している同社の姿勢は、評価に値すると言える。
■Key Points
・長い歴史を有するロードローラのトップメーカーで国内シェアは70%超。海外シェアの拡大により成長を図る
・国内外市場ともに需要回復が進み、2022年3月期は大幅営業増益。2023年3月期も前期比8.4%営業増益を予想
・中期的な数値目標として、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE8%を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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酒井重工業<6358>は道路舗装用ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカー。長い歴史を有し、国内シェアは70%超を誇るトップメーカーである。近年では北米や東南アジアを中心に海外市場の開拓に注力している。
1. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期の連結業績※は、売上高が26,599百万円(前期比23.0%増)、営業利益が1,383百万円(同97.3%増)、経常利益が1,407百万円(同113.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が1,427百万円(前期は4百万円の利益)となった。北米事業子会社において繰延税金資産381百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比で大きく拡大した。売上高については、国内は国土強靭化加速化対策を背景に好調に推移した。海外では、中国は中国市場が停滞する中で国内販売が伸び悩み横ばいであったが、前期に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ禍)の影響を受けた北米やその他地域は大きく回復した。販管費は、行動制約から事業活動再開に伴い前期比で増加したが、増収に伴う売上総利益の増加(前期比18.5%増)により営業利益は大幅増益となった。
※2022年3月期の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しているが、2022年3月期に与える影響はない。また、前期は非適用の数値である。
2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績は、売上高で29,300百万円(前期比10.2%増)、営業利益で1,500百万円(同8.4%増)、経常利益で1,450百万円(同3.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で950百万円(同33.4%減)を見込んでいる。親会社株主に帰属する当期純利益が減益となるのは、前期に発生した一過性の繰延税金資産計上(381百万円)の剥落が主因である。所在地別の売上高・利益の見通しは開示されていないが、各地域とも増収を目指す方針だ。世界的にインフラ投資が拡大するなか、世界の建設機械需要は底堅い回復基調であるものの、部材価格のさらなる上昇やサプライチェーン再編圧力の高まりに加え、中国上海でのロックダウンの影響(2022年6月1日に外出制限は事実上解除)、ロシア・ウクライナ情勢の見通しなど不透明な要因も多いことから、営業利益率は前期比0.1ポイント低下する予想となっている。
3. 中長期の成長戦略
同社は、2021年6月に2026年3月期を最終年度とする「中期的な経営方針」を発表している。最終目標として「企業価値・株主価値の向上」を掲げ、これを達成するために「事業の成長戦略」と「効率的な資本戦略」を推進する方針だ。定量的な目標としては、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE(自己資本当期純利益率)8%を実現し、安定的に配当性向50%(DOE(株主資本配当率)4%)を維持することを目指す。売上高が初年度にして計画を上回るペースで進捗するなどしているが、現時点で方針は変わらず、数値目標も据え置いている。配当については、2022年3月期に年間165.0円(配当性向49.0%)を実施し、進行中の2023年3月期も年間配当165.0円(配当性向73.6%)が予定されている。このように、ROEの改善に向けて明白な資本政策を発表し、それに沿った株主還元を実行している同社の姿勢は、評価に値すると言える。
■Key Points
・長い歴史を有するロードローラのトップメーカーで国内シェアは70%超。海外シェアの拡大により成長を図る
・国内外市場ともに需要回復が進み、2022年3月期は大幅営業増益。2023年3月期も前期比8.4%営業増益を予想
・中期的な数値目標として、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE8%を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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