■ベルシステム24ホールディングス<6183>の業績動向
(1) セグメント別の状況
セグメント別では、主力のCRM事業は、コロナ禍による影響があったものの、社会インフラとしてのスポット需要及び前期から業務開始した既存継続案件の売上が拡大した。この他、伊藤忠商事及び凸版印刷との協業強化によるシナジー案件も堅調に推移したこと等により、売上収益は前期比で増収となった。利益面では、増収による利益の伸長に加え、収益改善活動による効果等もあり、税引前利益は前期比で増益となった。
この結果、CRM事業の売上収益は145,460百万円(前期比8.1%増)、税引前利益は13,584百万円(同13.8%増)となり、売上収益全体の99.3%、税引前利益全体の100.9%を占めた。売上収益では、継続業務は118,002百万円(同0.8%増)と微増にとどまった。コロナ禍で、スポット業務にリソースを回した影響を受けたようだ。一方、スポット業務は27,458百万円(同57.3%増)の大幅増収であった。特に、コロナ禍関連スポット業務は17,543百万円(同96.8%増)となり、会社全体の増収に大きく貢献した。2022年2月期は、政府のコロナ禍対策の一環としての家賃給付や特別定額給付金(10万円給付)の提出書類に関する問い合わせ、ワクチン接種への対応業務などが急増した結果、大幅な増収となった。
その他事業では、連結子会社のポッケにおいて占い事業の計画を見直したことに伴い、496百万円の減損損失(前期は854百万円の減損損失)を計上した。この結果、売上収益は1,019百万円(前期比13.4%減)、税引前損失97百万円(前期は568百万円の損失)で、売上収益シェアは全体の0.7%にとどまった。
ただ、こうした減損損失の計上も、不採算案件については早めに手を打つという同社の経営姿勢を示す一例と言えるだろう。以上の結果、コア事業であるCRM事業の税引前利益率は前期の8.8%から9.3%に上昇し、会社全体の好業績を支えている。
売上収益における伊藤忠シナジー拡大については、同社の筆頭株主である伊藤忠商事のネットワークを活用し伊藤忠グループ関連の案件をはじめとする新規案件獲得の継続・拡大を図った。同社が定義する伊藤忠シナジーとは、伊藤忠商事の子会社や関連会社だけでなく、その取引先も含むため、対象とする開拓先は広大である。これら伊藤忠グループ案件による売上収益は、2018年2月期通期の97.6億円から、2022年2月期通期には151.6億円(前期比7.1億円増)へと、年々順調に増加している。2022年2月期は、通信キャリアの新料金プラン業務等により、運輸・通信業が増加した効果が大きい。今後も新技術活用における連携(出資、提携など)、海外事業展開における連携などによって、伊藤忠シナジーはさらに拡大し続ける見通しだ。
(2) 財務及びキャッシュ・フローの状況
2022年2月期の資産合計は178,312百万円(前期末比5,424百万円増)であった。うち、流動資産は28,809百万円(同2,428百万円増)となったが、これは主に営業債権が1,537百万円、現金及び現金同等物が678百万円増加したことなどによる。また、非流動資産は149,503百万円(同2,996百万円増)で、これは主に無形資産が646百万円、のれんが496百万円減少したが、有形固定資産が2,783百万円増加したことによる。
一方、負債合計は118,823百万円(前期末比555百万円減)となった。うち、流動負債は67,403百万円(同18,451百万円増)となったが、これは主に借入金が17,246百万円、未払従業員給付が1,581百万円、営業債務が550百万円増加したことなどによる。また、非流動負債は、51,420百万円(同19,006百万円減)であったが、これは主にその他の長期金融負債が1,456百万円増加したものの、長期借入金が20,936百万円減少したことによる。資本合計は59,489百万円(同5,979百万円増)となったが、これは主に利益剰余金が5,635百万円増加したことによる。
以上の結果、有利子負債は59,452百万円(前期末比3,690百万円減)となった。また、親会社の所有者に帰属する当期利益の積上げによって、自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は前期末比2.4ポイント上昇の33.1%となった。2020年2月期末に、リースの会計処理変更に伴い自己資本比率は一時的に低下したが、今後も利益の蓄積により上昇を続けると見られる。同社の自己資本比率は、2021年3月期の市場第1部サービス業平均の6.5%を大きく上回る高水準であり、また同社のネットD/Eレシオは0.90倍と同0.19改善しており、高い安全性を維持している。加えて、同社ではメガバンクとの間でコミットメントライン契約を結んでおり、不測の事態に対しても十分に備えていると言える。
キャッシュ・フローの状況としては、同社の2022年2月期末時点の現金及び現金同等物の残高は6,196百万円(前期末比678百万円増)、また同社が自由に使える現金を示すフリー・キャッシュ・フローは13,847百万円(前期比2,138百万円増)であった。営業活動の結果得られた資金は16,278百万円で、これは主に、税引前利益13,463百万円、減価償却費及び償却費8,242百万円、法人所得税の支払額4,914百万円などによるものである。投資活動の結果使用した資金は2,431百万円で、これは主に有形固定資産の取得による支出1,654百万円、敷金及び保証金の差入による支出が542百万円、無形資産の取得による支出418百万円などによる。財務活動の結果使用した資金は13,181百万円となり、これは主に長期借入金の返済による支出14,936百万円、リース負債の返済による支出6,092百万円、配当金の支払額3,308百万円、長期借入金による収入12,000百万円などによる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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(1) セグメント別の状況
セグメント別では、主力のCRM事業は、コロナ禍による影響があったものの、社会インフラとしてのスポット需要及び前期から業務開始した既存継続案件の売上が拡大した。この他、伊藤忠商事及び凸版印刷との協業強化によるシナジー案件も堅調に推移したこと等により、売上収益は前期比で増収となった。利益面では、増収による利益の伸長に加え、収益改善活動による効果等もあり、税引前利益は前期比で増益となった。
この結果、CRM事業の売上収益は145,460百万円(前期比8.1%増)、税引前利益は13,584百万円(同13.8%増)となり、売上収益全体の99.3%、税引前利益全体の100.9%を占めた。売上収益では、継続業務は118,002百万円(同0.8%増)と微増にとどまった。コロナ禍で、スポット業務にリソースを回した影響を受けたようだ。一方、スポット業務は27,458百万円(同57.3%増)の大幅増収であった。特に、コロナ禍関連スポット業務は17,543百万円(同96.8%増)となり、会社全体の増収に大きく貢献した。2022年2月期は、政府のコロナ禍対策の一環としての家賃給付や特別定額給付金(10万円給付)の提出書類に関する問い合わせ、ワクチン接種への対応業務などが急増した結果、大幅な増収となった。
その他事業では、連結子会社のポッケにおいて占い事業の計画を見直したことに伴い、496百万円の減損損失(前期は854百万円の減損損失)を計上した。この結果、売上収益は1,019百万円(前期比13.4%減)、税引前損失97百万円(前期は568百万円の損失)で、売上収益シェアは全体の0.7%にとどまった。
ただ、こうした減損損失の計上も、不採算案件については早めに手を打つという同社の経営姿勢を示す一例と言えるだろう。以上の結果、コア事業であるCRM事業の税引前利益率は前期の8.8%から9.3%に上昇し、会社全体の好業績を支えている。
売上収益における伊藤忠シナジー拡大については、同社の筆頭株主である伊藤忠商事のネットワークを活用し伊藤忠グループ関連の案件をはじめとする新規案件獲得の継続・拡大を図った。同社が定義する伊藤忠シナジーとは、伊藤忠商事の子会社や関連会社だけでなく、その取引先も含むため、対象とする開拓先は広大である。これら伊藤忠グループ案件による売上収益は、2018年2月期通期の97.6億円から、2022年2月期通期には151.6億円(前期比7.1億円増)へと、年々順調に増加している。2022年2月期は、通信キャリアの新料金プラン業務等により、運輸・通信業が増加した効果が大きい。今後も新技術活用における連携(出資、提携など)、海外事業展開における連携などによって、伊藤忠シナジーはさらに拡大し続ける見通しだ。
(2) 財務及びキャッシュ・フローの状況
2022年2月期の資産合計は178,312百万円(前期末比5,424百万円増)であった。うち、流動資産は28,809百万円(同2,428百万円増)となったが、これは主に営業債権が1,537百万円、現金及び現金同等物が678百万円増加したことなどによる。また、非流動資産は149,503百万円(同2,996百万円増)で、これは主に無形資産が646百万円、のれんが496百万円減少したが、有形固定資産が2,783百万円増加したことによる。
一方、負債合計は118,823百万円(前期末比555百万円減)となった。うち、流動負債は67,403百万円(同18,451百万円増)となったが、これは主に借入金が17,246百万円、未払従業員給付が1,581百万円、営業債務が550百万円増加したことなどによる。また、非流動負債は、51,420百万円(同19,006百万円減)であったが、これは主にその他の長期金融負債が1,456百万円増加したものの、長期借入金が20,936百万円減少したことによる。資本合計は59,489百万円(同5,979百万円増)となったが、これは主に利益剰余金が5,635百万円増加したことによる。
以上の結果、有利子負債は59,452百万円(前期末比3,690百万円減)となった。また、親会社の所有者に帰属する当期利益の積上げによって、自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は前期末比2.4ポイント上昇の33.1%となった。2020年2月期末に、リースの会計処理変更に伴い自己資本比率は一時的に低下したが、今後も利益の蓄積により上昇を続けると見られる。同社の自己資本比率は、2021年3月期の市場第1部サービス業平均の6.5%を大きく上回る高水準であり、また同社のネットD/Eレシオは0.90倍と同0.19改善しており、高い安全性を維持している。加えて、同社ではメガバンクとの間でコミットメントライン契約を結んでおり、不測の事態に対しても十分に備えていると言える。
キャッシュ・フローの状況としては、同社の2022年2月期末時点の現金及び現金同等物の残高は6,196百万円(前期末比678百万円増)、また同社が自由に使える現金を示すフリー・キャッシュ・フローは13,847百万円(前期比2,138百万円増)であった。営業活動の結果得られた資金は16,278百万円で、これは主に、税引前利益13,463百万円、減価償却費及び償却費8,242百万円、法人所得税の支払額4,914百万円などによるものである。投資活動の結果使用した資金は2,431百万円で、これは主に有形固定資産の取得による支出1,654百万円、敷金及び保証金の差入による支出が542百万円、無形資産の取得による支出418百万円などによる。財務活動の結果使用した資金は13,181百万円となり、これは主に長期借入金の返済による支出14,936百万円、リース負債の返済による支出6,092百万円、配当金の支払額3,308百万円、長期借入金による収入12,000百万円などによる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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