AIAIグループ、保育事業の安定した収益基盤を維持・拡大しつつ、テック事業の早期黒字化を目指す
投資家説明会 〜with バフェット・コード&IR Agents〜
バフェット・コード氏(以下、バフェット・コード):本日は、AIAIグループの会社説明をインタビュー形式で行いたいと思います。
本日は貞松社長にご登壇いただきます。AIAIグループは認可保育園を運営しています。千葉県や東京都を中心にドミナント出店している点に特徴があります。近年は保育園のみではなく、介護領域にも進出されており、高齢化社会にフィットした事業を展開しています。
補助金というものはビジネス上どう捉えたらよいのか、なかなかわかりにくいものですが、それに関してどう考えればよいのか。また、足元の都心部の待機児童問題はどのような傾向にあるのか。さらに、最近サービスインしたテック領域は、実際はどのようなものなのかについて、お聞きしたいと思います。
まずは簡単に自己紹介をお願いします。
貞松成氏(以下、貞松):AIAIグループ株式会社代表の貞松です。よろしくお願いいたします。
関本圭吾氏(以下、関本):IR Agentsの関本です。よろしくお願いいたします。
バフェット・コード:申し遅れましたが、私はバフェット・コードと申します。よろしくお願いいたします。それでは、ここからは質疑を中心に進めていきます。マイクは関本さまにお渡しします。
(参考)AIAI NURSERYとAIAI PLUSの出店エリア(2022年3月時点)
関本:では、普段の担当者取材をイメージして進めていきたいと思います。
先ほどバフェット・コードさまからも簡単にご説明があったとおり、2007年に介護保育の領域で事業を始め、現在ではそれに加えて障害児ケアのビジネスも行っていると認識しています。よろしければ、まずこのあたりの創業の経緯からおうかがいできますか?
貞松:もともと20歳くらいの時に起業を志しており、「何か貢献度が高い事業で起業したい」という志が根底にありました。当時、私の中にあった貢献度が高い事業イメージのテーマとして、環境問題や人口問題、少子高齢化がありました。
いろいろと考えていくうちに、高齢者や子どもたちに関することが、自分に合っていると思い、まずは保育園事業からスタートしようと考え、2007年に創業しました。
関本:興味深いです。基本的には、こちらは認可保育園というビジネスだと理解しています。手順としては行政から許可を受け、保育園を建ててお子さまを受け入れます。
認可保育園ですので、預かっている人数や、あるいは保育士の体制などに応じて行政からお金を受け取るというかたちで理解していますが、この理解でよろしいでしょうか? また、御社の保育事業と別の保育事業の会社とでは何か差があるのか、このあたりをおうかがいしてもよいでしょうか?
貞松:ご質問のとおりで、基本的には行政、自治体から認可を受けて保育事業を行っている点においては、世の中にある他の認可保育園と、すべて同じビジネスモデルです。その中で、いかに差別化と言いますか、違いを出しているかに関して、最もわかりやすいのはスライドに記載のとおり、地域性です。
基本的に我々は、千葉県で圧倒的なシェアを占めています。千葉県で育った子どもの1パーセントは我々の卒園生になるというくらいのシェアになります。そのため、千葉県におけるドミナント戦略というのは、他社と大きく違うところだと捉えています。
関本:もともと千葉県で始められた理由はありますか?
貞松:もともとはJR幕張駅の近くでスタートしています。理由としては、当時の私の自己資本や持っていたリソースを考えると、結果的に千葉県の総武線沿線になってしまったというところがきっかけです。それが功を奏し、千葉県でシェア1位になれましたので、結果としてよかったと思っています。
Mission / Vision / Value
バフェット・コード:そもそもの問いになってしまい恐縮なのですが、保育園ビジネスや介護なども含めて、御社の主要ビジネスは具体的にはどのような方々の、どのような課題を解決しているのでしょうか? 自明の部分もあるかもしれませんが、あらためてうかがってもよろしいですか?
貞松:我々は保育事業と並んで、障害児保育、保育テック、介護事業も行っています。おおもとは、人口問題の解決というミッションに向けて進むようになっています。すなわち、保育事業であれば待機児童を解消することで労働人口に貢献したり、障害児事業であれば障害児が社会生活に困りごとがないように、きちんとサポートしていったりします。
テック事業であれば、幼稚園、保育園で働く保育者の方々の生産性を上げることで、働きやすくしていきます。高齢者は言わずもがなですが、このようなことを通して少子高齢化という人口問題の解決に貢献していく、ということが大きなテーマです。そのため、人口問題の解決に寄与しない事業には、基本的に進出しないと決めています。
バフェット・コード:一方で認可保育園などは、補助金が入ってくるという点では自治体としても運営してほしいというような、課題感があって提供しているようにも思えます。そのあたりの課題はありますか?
貞松:自治体からの提供してほしいという課題、ですか?
バフェット・コード:自治体の方々も保育園を増やしたいというニーズがあり、そこに御社の事業がフィットしているのかと思ったのですが、一般のエンドユーザーのみではなく、自治体のニーズはありますか?
貞松:そうですね。待機児童問題というのは戦後一度も解消したことがなく、我々が創業した当時は、待機児童が何万人もいてピークに近いような状態でしたが、2010年ごろからどんどん解消されました。子育て支援法が改正されて、急激に保育園が増えました。
現在は、待機児童問題はおおむね解消されていますので、自治体としては、今度は新設というよりも、公立保育所の老朽化に伴う建て替えのニーズに変わってきています。そのような所を、我々のような、いわゆる地域で大手と言われているような会社へ依頼するということへ、ニーズが変わってきていると認識しています。
バフェット・コード:なるほど、よくわかりました。
Appendix 1 認可保育施設の収益化までのイメージ
関本:大事な確認を忘れていました。よく投資家の間で、話題になることなのですが、あらためて事業の全体を見た時に、営業利益レベルでは結構赤字が続いており「結局は補助金ビジネスではないのか?」という指摘があると思います。
このあたりは、私も実は細かく把握していません。先ほどお話しされたように、そもそも保育園は自治体や地域のニーズを叶えるものですので、利益は補助金がもとになるのでしょうか? それとも別の背景があるのか、このあたりを少しうかがってもよいでしょうか?
貞松:保育事業は、基本的には利益が出る事業です。ただし、待機児童のほぼ100パーセントが0歳、1歳、2歳です。そのため、新しく保育園を作ると、0歳、1歳、2歳児のみの定員が一杯になります。3歳、4歳、5歳児はその子たちが大きくなることによって、年度が替わると充足していくというモデルです。そのため、最初の2年から3年というのは赤字になってしまいます。
一方で、我々のように精力的に出店しているグロース企業は、赤字店舗のほうが多くなりますので、赤字フェーズになっていました。しかし、ようやく我々の店舗数も、いったん100箇所に近づくにつれて、変化しました。セグメントで言うとチャイルドケア事業は黒字です。1億8,600万円の黒字まできているため、基本的には利益が出ます。
ただ、これは会計処理のポリシーの問題ですが、営業外収益のほうで、建設補助金というのは計上せざるを得ません。そのため、見方によっては出店を続ける限りは、ここに開設補助金が計上されて、経常利益のほうが大きく見えるのはやむを得ないと思っています。
関本:やはり利益がしっかり出る事業であり、フェーズや投資の量の問題ということですね。
Appendix 2 認可保育施設の開設後収益化モデル
関本:あらためて、これは私たちもよく聞くことで、ライフサイクルと呼ぶものなのですが、保育園を1ヶ所作るには、どれほどの投資が必要で、どれくらいの期間をかけて売上が伸びていくのでしょうか? 利益のできあがりのイメージは、利益率でどう見ればよいのかといったあたりの確認もさせてください。
貞松:スライドの収益化モデルをご覧ください。投資額は定員によってさまざまですが、おおむね1ヶ所あたり1億円くらいの投資額がかかると思っていただければよいと思います。その1億円くらいの投資に対して、半分なり75パーセントなりを自治体が補助するということです。この補助した額が営業外収益に入ります。
1億円の投資に対して、どのようにして回収していくかと言いますと、先ほどお伝えしたとおりです。2年目、もしくは3年目くらいから黒字化していくため、回収にはやはり5年から6年くらいかかるというところが、このビジネスモデルの一般的なケースです。
Appendix 3 AIAI NURSERYの事業環境
関本:ちなみに、最近では待機児童の話なども、あまり聞かなくなり、解決されてきたという印象があります。このあたりの御社の認識についてもお聞かせください。
貞松:待機児童問題については、ご認識のとおり、日本にとっては大変よい状況だと思います。倍率に関しては、昨年で言うと新型コロナウイルスの影響もあり、待機児童の倍率は1倍でした。
すなわち、選ばなければどこかに入れる、というような状態になりました。ただし、やはり保育園というのはいろいろなものがあるため、今後の我々のフェーズとしては、選ばれなければならない、ということです。
何をもって選ばれるか、という点に関して、1つの指標があります。それがこちらの教育費です。幼児教育無償化により、3歳児以上は保育料無料になりました。それにまつわるものがすべて無料になったわけです。この無料になった分が、どのようにして家計の中でやりくりされるかというと、やはり教育費に回ります。
我々は、今までは保育園に入りたくても入れなかった方々のために、保育園を作ってきたわけですが、本来、子どもとは育てるものですので、今後は保育園の中でどのようにしてその子たちの才能や、生まれ持った力を育むのかといったところにシフトする必要があります。そこに対し、昨年あたりから幼児教育のプログラムを提供しており、支持を得ているフェーズに入ってきていると思います。
関本:フェーズがかなり変わって、御社としてもそこに向けて取り組みを続けているのですね。
私も中期経営計画の資料を拝見しました。成長戦略として過去よりも出店ペースというのが少し落ちるような見通しです。これは、やはり待機児童解消を受けて出店が減っていることや、今後はより選ばれやすい保育園を目指すということだと思っています。
出店ペースは落ち着くという段階ですが、先ほどのビジネスモデルのお話ですと、先行して建てていた園が落ち着くため、今後はかなり黒字化につながるという理解でよいでしょうか?
貞松:そうですね。赤字の店舗が減るため、必然的に黒字化するということです。
Appendix 4 AIAI NURSERYの事業環境
関本:幼児教育のプログラムなどに、いろいろ取り組むということですが、何かそこに向けて、具体的にどういった施策を行っているのか、教えてください。
貞松:小学校に上がる前のお子さま、いわゆる未就学期の子どもたちは、これまではこども園か幼稚園か保育園に行っているわけです。そのほとんどは保育園に行きます。
おおよそ300万人弱の子どもたちが、保育園に通っているわけです。しかし、その中で保育園というのは、就学支援に全く力を入れてこなかった業態がありました。そのため、我々はスライドの縦軸に記載のように、就学支援に力を入れます。ターゲットとなる保護者や世帯層は、やはり教育への関心度が高いため、我々はこのポジションを取っていきたいというのが、1つの目標です。
どのようなポジションで何を提供していくのかというお話ですが、実は保育園や幼稚園というのは、基本的に共通の目標があり、それは「10の姿」と言われています。そこでは「文字や量の感覚に親しむ」「友だちと一緒に遊んで協調性を育む」「自発性を育む」などといった、いろいろな目標があります。
私たちはその中で、就学期に義務教育となるもの、すなわち量的な把握や、言語として英語のプログラム、保護者に人気があるリトミックを含む体育に関して、積極的に取り組んでいき、この層に選ばれるような保育園になることを目指しています。
関本:リトミックとは、体操などをされるのでしょうか?
貞松:簡単に言うと、ダンスです。
関本:このようなサービスは、すでに提供されているのでしょうか?
貞松:はい、そうです。
関本:それについて、例えば保護者からの評価や、どのようなポジションで評判になっているのかなど、足元の評価について教えてください。
貞松:私たちは、入園説明会を毎年夏頃から10月くらいまで大々的に開催しています。昨年は約2,000人の保護者に「AIAI NURSERY」の見学に来ていただきました。
その時にアンケートを取っているのですが、保護者が一番求めているものは思考教育であり、子どもが自分で考えられるような教育を求めている方が、8割を占めています。次に多いのが体操であり、体を動かすような教育をしているところがよいと考えられているようです。食育や英語は同列3位くらいに並んでくるのですが、このようなプログラムを担任の保育士が自分で考えて毎日のように提供するのは、なかなか難しい部分があります。
そこで、私たちはそれを段階的に進級していくプログラムにしています。30級からスタートして、卒園する頃には1級に上がるようになっています。もちろん1級になる子もならない子もいますが、それはその子の発達のスピードに合わせて個別に最適化していくというサービスを提供しています。そのようなところが支持されているのかと思います。
関本:今後の出店について、このように環境が変わる中で、今までどおりの出店を見てよいのか、それとも、例えば大きくしていかなくてはいけないなど、別のやり方が出てくるのか、このあたりはどのように考えればよいでしょうか?
貞松:先ほどのお話と重なる部分があるのですが、新規施設の建築は、待機児童数の低下に伴って少なくなってきています。一方で、公立保育所の老朽化による建て替えは旺盛です。そのため、とある市が「運営している保育園を数年後に閉鎖することになりました」となったとき、その間に私たちは新しい保育園を作っておいて、老朽化した保育園に通っていた子どもたちが一気に移ってくるというビジネスモデルです。
これは従来の保育園と違い、最初から園児が5歳児クラスまですべて満員に近い状態で運営がスタートするため、赤字がありません。これは私たちにとって非常に喜ばしいことであり、今までの新規出店よりも積極的に出店したいのですが、当然このようなケースは数に限りがありますので、このようなプロポーザルを1つずつ勝ち取っていきたいと思っています。
AIAI NURSERY アクションプラン
バフェット・コード:もう少しお話をうかがいたいのですが、建て替えの費用を考慮しても、新規出店とは収益性が大きく変わってくるという見方でよろしいでしょうか?
貞松:基本的には建て替えの費用は、新規で建てるよりも多く支払われるケースが多いので、ROIが高いです。
バフェット・コード:そのようなケースは、年間で次々と出てくるような感じではないと見てよろしいでしょうか?
貞松:年間で言うと、やはり1つか2つくらいかと思っていますので、新規出店と合わせて毎年4つ作れればよいかと考えています。今までのように年間で10ヶ所、20ヶ所という頻度ではありません。
バフェット・コード:そうすると、結局は公設民営にも取り組みながら新規出店も引き続き重要になってくると思っていますが、新規出店の余地は年間でどれくらい、あるいは何年後に何店舗くらいなど、長期的にどの程度あると見ているのか、うかがってもよろしいでしょうか?
貞松:「AIAI NURSERY」の施設の見通しについては、資料にあるとおり、だいたい毎年2ヶ所から4ヶ所です。
基本的には、先ほどの公設民営などですが、新規と言っても、私たちは千葉、東京、大阪に絞って出店していますので、ほとんどが東京と千葉になる見込みです。それらの地域で精査して出店場所を決めていくと、毎年2ヶ所から4ヶ所になります。そのため、最大でも3年間で12ヶ所程度と考えています。
バフェット・コード:この出店ペースは 、5年後や10年後を考えても比較的穏当な数字なのでしょうか? それとも、少しペースダウンしていくようなこともあり得るのでしょうか?
貞松:少子化のため、当然ペースダウンはすると思います。その代わり、次の事業として、現在非常にニーズが旺盛な障害児保育などへ徐々にシフトしていくと思います。
バフェット・コード:愛知県の名古屋市などの大きい都市にはまだ展開していないようですが、そのような都市に展開地域を増やしていくことで出店数を維持することもあり得るのでしょうか?
貞松:今のところは、基本的にはドミナント戦略を大事にしています。そのような地域の待機児童は多いだろうと思いますが、やはりドミナントによる恩恵は大きいですので、保育士の採用面や保育士同士の異動について考えると、今からいきなり名古屋、福岡、札幌などに現在のAIAIグループ並みのドミナントを展開するのは非常にコストがかかります。そのため、大きなM&Aなどがない限りは、今のエリアで直営展開していこうと考えています。
Appendix 6 AIAI PLUSのビジネスモデル 1ビジネススキーム
関本:保育事業が落ち着いていく中で、今回の中期経営計画の成長戦略の一番地に挙げられているのは、障害児保育だと思っています。障害児保育をなぜ始めたのか、ビジネスモデルは通常の保育園と違うのか、このあたりを教えていただけますか?
貞松:障害児保育についてですが、いわゆる発達障害や、同じ年齢の子どもに比べておおよそ半年から1年くらい発達が遅れているお子さまが、5パーセントくらいの割合で存在しています。
これは昔から問題になっていて、小学校には特別学級がありますが、保育園や幼稚園にはないため、みんなと一緒に生活することになります。そうすると、一人ひとりに個別に対応することは制度上できません。私はかなり前からこのことに課題感を持っており、実際に2014年から児童発達支援をスタートしました。
ビジネススキームに関して、まず保護者に自治体に行っていただき、「受給者証」という、障害児手帳とは異なる、支援プログラムを個別に受けるための証明書を取得していただきます。取得すると当然保育園にも通えますし、私たちが今行っている「AIAI PLUS」のような施設にも通えます。
保護者が就労中で連れていくことができないという場合は、この「AIAI PLUS」から保育園に出張訪問して、プログラムを提供することも行っています。いずれにしても、単価はプログラムの提供1回で、約1万5,000円から2万円で、下限が1万5,000円くらいです。
このようなモデルですので、「AIAI NURSERY」が増えれば増えるほど「AIAI PLUS」も必要になってきます。また、他の幼稚園や近隣の保育園にもニーズがありますので、このようなサービスを提供しているのが現状です。
関本:先ほどおっしゃたように、保育士の融通や、出向いて教えるといった分野でも下地のあるビジネスとして取り組みたいといったところでしょうか?
貞松:はい、そのとおりです。
Appendix 7 AIAI PLUSのビジネスモデル 2収支モデル
関本:サービスが必要な人や集客などが変わってくると、収益性も違ってくると思います。スライドを見ると、「AIAI PLUS」は「AIAI NURSERY」よりも収益性がかなり高そうだと感じました。結局、何に費用がかかっているのか、なぜ費用が高くなるのかについて教えていただけますか?
貞松:「AIAI PLUS」のサービスは保育園とは根本的に違います。例えば、保育園のように朝来て夕方帰るといったように、1日中施設で過ごすのではありません。場所ではなく、90分間のプログラムを受けに来る施設です。
そのため、敷地面積も保育のように100坪も必要とするのではなく、30坪から40坪くらいの駅前に施設を構えることになります。そうすると、工事費もだいたい2,000万円くらいで済みますし、90分のプログラムを1日当たり約10人受けに来ることができるため、最低でも15万円の売上になります。
人材に関しては、やはり保育士または作業療法士が必要になりますが、保育士は私たちのメインフィールドですので、ここに関しては採用が容易にできます。
したがって、投資が少なく、収益率が高く、運営時間も短いとなると、このような高い粗利率になるのですが、このノウハウを構築するまでに、けっこう時間がかかりました。おおよそ5年ほどかかりましたが、ようやく今年から大量出店できる見込みです。
AIAI PLUS アクションプラン 3. 営業力の発揮と高稼働率の達成
関本:3年目の収支イメージが資料で示されていますが、そのようなビジネスモデルだとすると、1年目から利益は出やすいのか、それとも以前と同じように、1年、2年は多少の赤字を見ていたほうがよいのでしょうか?
貞松:ケースによりますが、今のところ私たちの平均値というか、実例としては、新規オープンから約半年ほどで、100パーセント近くまでは上がります。損益分岐点は約70パーセントですが、1日当たり7人に利用してもらえれば損益分岐点に到達し、残りの3人分はすべて利益となります。
保育士も3名から4名いれば、100パーセントまではプログラムは滞りなく提供できます。そのため、非常に効率的なオペレーションで、集団保育が難しい子どもたちに個別保育を提供できるという、かなりよいモデルではないかと思っています。
関本:4ヶ月目か5ヶ月目くらいから、黒字になっていくようなイメージなのでしょうか?
貞松:そうですね。そのくらいあれば十分かと思います。
Appendix 5 AIAI PLUSの事業環境
関本:このようによいモデルだと、市場環境としても各社が参入したがるのではないかと思うのですが、あらためて現在の市場環境や市場規模のイメージ、需要と供給の過不足など、このあたりを教えてもらえますか?
貞松:スライド左側は文科省の発表による、何かしらの障害を抱える子どもの数の推移です。これは小学校就学時点から集計されていますが、直近の2019年を見ると、14万人に迫るような世界です。
何の割合が多いかというと、グラフの一番上にピンク色で示されているADHD(注意欠陥多動性障害)や、黄色で示される自閉症などです。これは小学生になっていきなり現れるのではなく、幼稚園や保育園の時からその傾向があります。そのため、このニーズはそのまま幼稚園や保育園のニーズがあるということでもあります。
10年間で10倍に増加している状況ですので、このあたりは私たちもお役に立てるところがあるのではないかと思っています。
AIAI PLUS アクションプラン 2. 事業間シナジーを発揮した採用強化
バフェット・コード:お話をうかがっていると、出店コストが相対的に低く、半年くらいで収益化・黒字化でき、かつ、その用地確保も大きなボトルネックになるような印象も受けず、ROIが非常に高い状況です。さらに、保育士の確保も御社のシナジーがあって認可保育園のほうから回してきやすいとなると、店舗を出せば出すほど非常に儲かるし、いくらでも出店できるように感じています。
とはいえ、実際の出店ペースは、例えば来月から100ヶ所、200ヶ所といったように無尽蔵というわけではないと思います。出店にあたり、何かしら他にボトルネックになるような要因があるのかうかがってもよいでしょうか?
貞松:ヒト・モノ・カネで言いますと、モノとカネについては困りません。ノウハウがあり、建物も用意できますし、特に「AIAI NURSERY」を展開している地域であれば、ニーズを事前に把握した上で出店できます。
しかし、やはりヒトのところが、どうしてもボトルネックになります。どのような意味かというと、保育士の採用においては、私たちは新卒の保育士を毎年100人以上採用しています。そのような意味では困りませんが、2つの点で困っています。
1つは、経験者の保育士の採用です。少なくとも5年以上の経験がある保育士が働くと、よい療育が提供できます。そうすると国も補助金を加算して支給するわけです。
もう1つは、今まで我々が採用してこなかった層である、作業療法士、理学療法士です。作業療法士、理学療法士は、基本的には医療機関で働いていますが、作業療法士は子どもたちに対して、何に困ってできないだとか、周りから期待されていることは何かを考えながら、保育士とは違ったアプローチで療育が提供できます。より質の高い個別保育が提供できるため、ここを4月に採用できるかというところが、保育士と同様にボトルネックです。
バフェット・コード:つまり、基本的には他で勤めている方がまだ多く、作業療法士と経験のある保育士を採用するには、引き継ぎもあるため、目途が立ちやすい3月に退職し、4月に入社という流れになるのですね。
貞松:そのとおりです。「AIAI NURSERY」には今だいたい1,200人くらいの保育士が常勤で働いていますが、その中には20代が3割、4割くらいいます。
ベテランの層がもう何名かいますが、基本的には「AIAI NURSERY」に新卒が入社し、繰り上がりで、ベテランといわれている5年から10年くらい経験のある方に「AIAI PLUS」に異動していただき、療育を提供していきます。
このようなシナジーを生み出すために配置転換を図っているような段階です。本当に、このAIAIグループがこれだけあったからこそできる採用戦略かと思っています。
バフェット・コード:シナジーがあり、かつROIも高いということで、非常に面白いことに取り組んでいるなと思いました。
貞松:ありがとうございます。
Appendix 11 テックの事業内容
関本:かなりクリアになったと思うのですが、あともう1つ、障害児ケアのビジネスとは別に、テック事業についてです。規模感的には、そこまでまだ大きくないと思うのですが、このあたりは、どのような経緯で始められることになったのかというところからおうかがいしてもよろしいでしょうか?
貞松:もともとは「AIAI NURSERY」が10店舗くらいになった時に、自社管理が難しくなり、その自社管理ソフトツールとして開発したのが「Child Care System」です。
作ったのは2011年頃だと思いますが、そこから徐々にSaaSのようになり、大きくなってきたため、これを外販できるのではないかということで外に売り出したのが2014年頃です。そこから徐々に広まっていき、今1,000ヶ所近くの保育園に使っていただいています。
総合ソフトSaaSは、保育士の方が手書きなど、大きな労力を割いていたことを、テクノロジーやデバイスを使って簡素化していき、生産性を上げていくのが主な目的です。
たくさんの項目があるので、1つご説明すると、私が現場にいた時に、初年度で一番大変だったのが連絡帳です。連絡帳を毎日全員分書くのですが、「この子は今日は何をして、どんな子と遊んだ」や、また保護者に伝えないといけないことなどをお昼の時間に一斉に書きます。これが少し大変で、なんとかならないかと思っていた業務の1つです。
当時はネットではなかったのですが、スマートフォンがだいぶ普及して、我々の保育士もスマートフォンを1人1台持っているため、LINEのようなかたちで保育士や関係者が保護者とやりとりできるようになっています。紙がないというだけでなく、アプリで履歴も残りますし、そのような意味で非常に好評をいただいています。
関本:かなりリアルな悩みから生まれてきたソフトで、好評ということですね。
数値目標 / 主要KPI
関本:今回の中計で、テック事業は先行投資期間のようなところで、2025年、2024年くらいに黒字を目指しています。KPIには契約数を掲げていますが、そもそも長期的にはどのようなことを達成したいと思い、このKPIを置いているのか、この中計では何をしたいのか、このあたりをおうかがいしてもよろしいですか?
貞松:テック事業に関しては、今まではずっと投資期間ではあったのですが、3年間で黒字化を目指そうと思っています。ようやくひととおりの投資の目処がついたところですので、今年度から精力的に営業していこうと思っているところです。
具体的には、1,500件の契約を取ることで黒字化ができると踏んで計画していますが、まずは契約件数だと思います。契約件数を取ったあとは、先ほどの連絡帳アプリ以外にも多くの商材があるため、クロスセルやアップセルをしていき、どんどん世の中の保育園の生産性を上げ、保育士が働きやすくしていくことを目指していこうという計画です。
バフェット・コード:1,500件というのは園の数ということでよろしいでしょうか?
貞松:これは契約件数です。
バフェット・コード:1つの園で複数契約することもあるというイメージでしょうか?
貞松:そのとおりです。私たちは写真アプリ販売サービスや、お昼寝センサー、先ほどの連絡帳アプリなどいろいろな商材があるため、件数を重ねていこうと思っています。
バフェット・コード:ありがとうございます。
関本:投資期間ということだったと思いますが、このあたりは、具体的にはシステムの開発になるのか、エンジニアとか営業の採用に使うのか、中身としてどのようなものを想定していけばよいのでしょうか?
貞松:今までは基本的にはエンジニアの人件費など、外注も含めたシステム開発費が大きな投資でした。
今後はUI、UXの向上ということで、保育士の方が見て直感的に触りやすい、使いやすいと思うものでないと長続きしないため、今年からUI、UXの改善を常に行っていくフェーズに入っていきます。
関本:また別の話ですが、テックへの投資や、「AIAI PLUS」「AIAI NURSERY」などの施設を建てるためにもお金が必要ですので、この中計期間で25億円くらいの投資を考えられていたと思います。
自己資本比率もあると思いますが、基本的には施設の箱物を建てたあとは、お子さまが入ってくる、あるいは契約が増えて稼働率も上がり、キャッシュフローが見えやすいので借り入れで大丈夫という意識になるのでしょうか? それとも、エクイティなども含めて考えないといけない話なのか、そのあたりはどのように考えられているでしょうか?
貞松:おっしゃるとおり、箱物でしたら既存で行っていますし、見通しも立つため、銀行借り入れのほうが、キャッシュフローもありますしよいだろうとは思っています。ただ、テックのようなものになると、今後より大きな投資が必要になってきますので、自己資本比率を徐々に上げていき、安定的にしていきたいと思っています。
関本:このあたりは、投資家的には「ファイナンスして、将来伸びることがわかったらよいな」という点ですが、少し気になるところですので、ぜひコミュニケーションなど続けていければと思います。
業績の概要(損益計算書)
関本:事業の全体観や見通しについてはおうかがいできましたので、あらためて終わった期、前期についておうかがいできればと思います。まずは2022年3月期について、目立つところは黒字化だったと思いますが、終わった期についてどのように考えていけばよいか、ぜひこのあたりの復習をお願いします。
貞松:前期の決算については15ヶ月決算のため、単純比較は難しいのですが、約120億円の売上で、4億4,000万円の赤字、経常利益は4億6,000万円ですので、利益はきちんと出たとは思っています。昨年と比べて大きかったのは、大幅な営業利益の改善です。
今期に関してもチャイルドケア事業が、新規出店が落ち着いたこともあいまって、黒字化したというのは大きいと思います。その分、先ほどの「AIAI PLUS」や障害者保育など、テックに対する投資は続いていくため、キャッシュバランスを考えながら、できる限り投資を行い、成長していきたいと思っているところです。
関本:中計3ヶ年の計画ということですが、毎年まんべんなく投資するイメージなのでしょうか? 初年度は投資を先に行う、あるいは少なくするなど、このあたりはどのように考えたらよいでしょうか?
貞松:基本的には、出店数に大きな変動がない限りは、3年間ずっと同じような投資額になると思うのですが、初年度に関して言いますと、新規開発などのテックの投資がまだ若干残っているため、しいて言うなら初年度は少し多いというくらいです。
関本:とはいえ、サイズ感としては施設が多いため、施設数が変わらなければあまり変わらず、今期に関しては、前期に営業利益率の改善が進んできたため、「AIAI NURSERY」の出店速度が少し落ち着いてくるところに合わせて、利益の改善が進んでいくという見通しで違和感はないでしょうか?
貞松:はい、そのとおりです。
関本:中計というところを越えて、貞松さま、あるいは御社が中長期的に何を実現したいのか、中期長期的にこうなりたいといったところがあれば、最後にぜひ、長期ビジョンのようなかたちで、ビッグピクチャーをおうかがいできればと思います。
貞松:ようやく保育事業もまだ志半ばといいますか、たくさんの数を作ることができたのですが、子どもがきちんと育つ施設にするまでには、私の中では、まだまだ理想には遠いと思っています。
一方で、中期経営計画で力を入れると言っている「AIAI PLUS」に関しても、保護者の方が安心して「AIAIグループに子どもを預ければ大丈夫だ」と思ってもらえるようなところまで、この中期経営計画で実現したいと思っています。
我々は介護事業も行っているため、2030年ぐらいになるとは思いますが、その頃には、今もしくは2010年代、我々にお子さまを預けてくださった家庭というのは、次は介護問題で困る年代です。そのようになってくると、この地域でAIAIブランドというものがきちんと根付いているはずです。
保育と介護というのはライフステージにかなり深く影響を与える事業だと認識していますので、「AIAIに任せれば問題ないよね、大丈夫だよね」と言ってもらえるようなグループにしようということを、私も常々社員に言っているため、そのような未来を描いていきたいと思っています。
関本:今メインで展開されている千葉県などを中心に、AIAIブランド包囲網のようなイメージを作れたらよいということでしょうか?
貞松:そのとおりです。
貞松氏からのご挨拶
貞松:中期経営計画を作っていても、まだ投資がかさむフェーズだと認識しています。ただ、事業自体が固いため、基本的には堅実に着実に進めていけば伸びる事業であり、貢献度も高く、創業当時の思いというのは、実現に向かっていると思っていますので、多くの方に知ってもらえるように努力していきたいと思っています。
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